自動車警ら隊の任務『機動警ら』とは?

自動車警ら隊(通称「自ら隊」)は、警察本部地域部に属する本部直轄の執行隊であり、パトカーによる街頭パトロールと職務質問を主な任務としています。

通常、警察署ごとに市区町村単位で管轄が分かれていますが、自ら隊はその管轄にとらわれず、広域的な機動警らを実施することで街頭犯罪の抑止に努めています。

パトカー乗務員は地域部の地域警察官であり、基本的には所轄警察署地域課の自動車警ら係と見た目は変わりません。しかし、自ら隊の車両には特有の表記やマークが施されており、パトライトには白テープが貼り付けられるなど、所轄警察署のパトカーとは区別されています。

警ら用無線自動車の解説

警視庁の場合、自ら隊は第一から第九まで編成された大所帯となっています。隊員はパトカーに乗車し、広域にわたって巡回しながら職務質問を行い、街頭犯罪防止活動に従事します。また、110番通報による事件の初動捜査にも対応しており、その性質から「制服版の機動捜査隊」とも称されることがあります。

機動捜査隊に課せられた『4つの任務』とは?

警視庁第一自動車警ら隊のパトカーは、所轄署のパトカーとは異なり、ルーフや前後のウインドウに記載されるのは通し番号のみで、所轄署名は記載されていません。

勤務は3交代制の激務であり、新人警察官の職務質問実地訓練も兼ねています。そのため、職務質問技能指導員の資格を持つ警察官が新人を指導する体制が整えられています。

■ 自ら隊が存在しない警察本部もある

全国的に見ると、自ら隊を編成していない警察本部や、「自動車警ら隊」という名称を用いない警察本部も存在します。

例えば、大阪府警察、岡山県警察、宮城県警察、群馬県警察では「機動警ら隊」という名称が用いられています。

また、兵庫県警察では特定の事情により「自動車警ら隊」を解散し、新たに「機動パトロール隊」を発足させています。

加えて、大規模な部隊を編成せず、各所轄署の地域課内に「自ら班」や「自動車警ら係」を設置する警察本部もあります。さらに、本来は地域部の所属となる自動車警ら隊が、生活安全部や警備部に吸収されているケースも見られます。

しかし、名称が異なっていても、これらの部隊が行う業務は、いずれもパトカーを用いた街頭犯罪抑止活動という自ら隊の本来の活動と共通しています。

■ 自ら隊員の制服

自ら隊員の制服は、交通機動隊員のような特別な制服ではなく、丈が短く動きやすい「活動服」と「活動帽」を着用し、恒常勤務に就いています。

警察官の制服、旧制服と現行制服は何が違う?

所轄署の地域警察官とほぼ同じ格好ですが、自ら隊の腕章をつけていることが多いようです。

自動車警ら隊の配備車両は「白黒パトカー」が基本

自動車警ら隊では、基本的に白黒の無線警ら車を運用しています。

埼玉県警などでは、車両への体当たり対策のため、日産のエクストレイルなどの大型四輪駆動車の白黒パトカーも配備されていますが、全国的には高排気量の200系クラウンやレガシィが主流です。地域部では交通部と明確に区別するためか、パトライト昇降装置も搭載されています。

所轄の警らパトカーと異なる点としては、パトカーのルーフ上やウインドウに表記されたコールサインが3桁の数字であることや、サイドに自動車警ら隊を示すステッカーなどの表示があることが挙げられます。

また、福岡県警察の自動車警ら隊のパトカーは、パトライトにホワイトのラインが斜めに入っているのが特徴です。


衝撃!地域遊撃車

大阪府警察本部地域部機動警ら隊(他県警の自動車警ら隊に相当)では、試験的に配備した覆面パトカー「地域遊撃車両」の運用を開始しました。

大阪府警察本部地域部第一方面機動警ら隊では、カーチェイス対策の特殊車両として、カンガルーバー付きのトヨタ・ランドクルーザー・プラドを「地域遊撃車」と称し、試験的に配備することを公表。

大阪府警地域部が試験導入した『地域遊撃車』 (産経新聞社公式サイトから引用)

この地域遊撃車は、覆面パトカーとして普段は流動的な警ら活動を行い、逃走車両が発生するなどして応援要請があれば、直ちに現場に駆けつけます。

典拠元 産経新聞社 http://www.sankei.com/west/news/170317/wst1703170040-n2.html

これまで、覆面パトカーの運用といえば交通部や刑事部が主に行ってきました。警視庁地域部の遊撃隊が私服で覆面パトカーを用いて警らする例もありますが、制服の地域警察官が覆面パトカーを恒常的に運用するのは、全国的に見ても異例の試みとされています。

車をぶつけての逃走を防ぐための特別な装備

大阪府警が地域遊撃車を導入した理由として、府内で2015年に18件、2016年に15件、2017年は2月までに3件発生した逃走車両事件を挙げています。犯人の逃走を防ぐ目的から、衝撃に強い四輪駆動車(4WD)を導入したとしています。

さらに、逃走車両にパトカーがぶつけられた際の修理によりパトロールに支障が出ることを防ぐことも目的の一つです。大阪府警では、パトカーがぶつけられると修理のために平均で1か月間は稼働できなくなるとしています。

第1方面機動警ら隊の西田達哉隊長は、「被害を最小限に抑えるのはもちろん、車体に威圧感があり、犯人の逃走をあきらめさせる効果もある」と期待を寄せています。

地域遊撃車には前面にグリルガードと呼ばれるスチール製パイプが装備されており、大阪府警ではランドクルーザーの車体とともに、このグリルガードによって逃走車両の進路を阻止するとしています。

衝撃に強い四輪駆動車を要人警護時の「鉄の壁」として運用する方法は、警備部のSPや警護隊でも採用されており、現在はスズキ・エスクードや日産・ハイラックスサーフなどが「遊撃警護車」として配備されています。


遊撃特別警ら隊の任務

パトカーを機動展開の手段として積極的に活用し、広域的な職務質問に強い自動車警ら隊ですが、さらに神出鬼没で職務質問のプロ集団とされるのが、警視庁地域部地域総務課に2個中隊で編成されている「遊撃特別警ら隊(通称:遊撃隊)」です。

遊撃隊は、治安の悪い繁華街を抱える警視庁第7方面の深川警察署に本部を置き、自動車警ら隊と同様に犯罪の未然防止を目的とした機動警らを任務としています。特徴的なのは、選抜された隊員が職務質問のエキスパートであることです。

警察さんに職務質問で怒られるNG行動とは

実際、遊撃隊の車長には、警察庁指定の「広域技能指導官」に任用されている者が多くいます。この広域技能指導官とは、全国の警察官のうち、特に優れた能力を持つ者に与えられる称号であり、被疑者の取り調べや情報収集・分析、サイバー犯罪や薬物・銃器事犯の捜査、交通事故捜査、通信指令、交通規制などの分野において極めて卓越した技能を有する警察官のみが警察庁によって指定されます。

広域技能指導官は、所属の警察本部のみならず、全国の警察本部へ巡回し、実技指導を行うことも求められます。そのため、若手警察官への指導も厳しくなる傾向があります。

遊撃隊の活動は、自動車警ら隊の機動的な警ら活動と同様、パトカーを積極的に活用し、不審者に対する職務質問を行うことが主な任務です。

繁華街の中で遊撃隊が職務質問の対象とするのは、凶器を隠し持った者や特殊詐欺の受け子、不法残留の外国人などです。彼らの特有の目つきやパトカーを見た瞬間の態度、さらには覚醒剤中毒者の独特な歩き方などを見極めると、すぐにパトカーから降りて職務質問を開始します。

このような地道な職務質問から犯罪の端緒が発覚することは少なくありません。遊撃隊は、些細な不審点も見逃さない職務質問のエキスパートなのです。

百発百中とは言い切れませんが、彼らに目をつけられた者の多くが、何らかの犯罪に関与していることが多いといわれています。

また、警視庁では各方面本部に自動車警ら隊が置かれていますが、遊撃隊は東京都内全域が担当エリアとなっています。さらに、驚くべきことに、遊撃隊員は地域警察官でありながら、例外的に本職の機動捜査隊のように私服および覆面パトカーで警らすることも許されています。

当然、遊撃隊は同じ地域部に所属する自動車警ら隊とも密接に連携しています。


自動車警ら隊のまとめ

このように、自動車警ら隊とは警察本部地域部直轄のパトカーによる機動警らと職務質問の専門部隊です。

所轄の警察署とは異なり、広範囲にわたって活動できるのが特徴です。

また、警視庁では、同じ地域部内に職務質問の技能に特化した「遊撃隊」が編成されており、さらに高度な職務質問能力を発揮しています。