96式装輪装甲車

自衛隊の解説

96式装輪装甲車(Type 96 Wheeled Armored Personnel Carrier)は、陸上自衛隊の装輪式の装甲兵員輸送車(APC)であり、各師団・旅団に配備され、普通科部隊の機動力向上を目的に運用されています。歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車の中間的役割を担います。

89式装甲戦闘車は運べて戦える兵員輸送車?
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以下に詳しく解説します。

■ 1. 概要

96式装輪装甲車は、装輪式(タイヤ式)の装甲兵員輸送車(APC)です。

  • 形式名称:96式装輪装甲車(Type 96 WAPC)

  • 製造:三菱重工業、富士重工業など

  • 初度配備:1996年(平成8年)

  • 全長:約6.0m、全幅:約2.5m、全高:約2.3m

  • 乗員:3名+兵員7名程度

  • 最大速度:100km/h前後(舗装路)


■ 2. 武装と防護

96式は普通科隊員の安全な輸送を目的としており、火器や防護力は限定的です。

  • 主武装:96式40mm自動てき弾銃、12.7mm重機関銃M2

  • 装甲:小火器弾・破片からの防護を重視した軽装甲

  • 防御能力:対戦車戦闘能力はなく、あくまで歩兵支援・輸送用

この点で、35mm機関砲を装備する89式装甲戦闘車とは明確に区別されます。96式は火力よりも機動性と運搬能力を優先した設計です。

また、銃眼も装備されていません。

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96式40mm自動てき弾銃

96式装輪装甲車(Type 96 WAPC)は車上に

  • 96式40mm自動てき弾銃 または

  • 12.7mm M2重機関銃
    のいずれかを搭載でき、A型とB型(M2装備)の二種類があるとされています。

全国的にはこの40mm弾発射器を装備したA型が主に普通科に配備されています。

以下の記事で詳しく解説しています。

自衛隊の公式情報で96式40mm自動てき弾銃の威力が「手榴弾と同じ」という表現の意味を読む
陸上自衛隊が装備する96式40mm自動てき弾銃について、防衛省(陸上自衛隊)の装備紹介ページが示す諸元から、その“威力”の実像を改めて整理したいと思います。「40mmてき弾」は手榴弾と同等の破砕効果96式40mm自動てき弾銃は96式装輪装甲...

■ 2. 73式との比較

陸上自衛隊の装甲兵員輸送車(APC)の歴史を整理すると、基本的には73式装甲車がAPCとして長く主力でした。ここで整理します。

73式は、隊員を運ぶ輸送手段としてのAPCであり、戦闘力は限定的でした。火力は小銃・機関銃レベル、主に防御・輸送を目的としています。

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96式は装輪化・車体の近代化を行った後継車両ですが、73式の直接の後継とは言い切れません。役割としては「輸送重視の装輪APC」ですが、73式よりも高速道路での長距離移動や情報装備の搭載を考慮しています。武装は73式と同程度か若干強化されているものの、89式装甲戦闘車のような高火力は持ちません。

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■ 3. 運用

  • 高速道路や一般道を含む長距離移動に適した装輪式車両

  • 師団・旅団の機械化歩兵部隊で、戦車やIFVの後方支援

  • 陸上自衛隊の演習でも、装甲兵員の安全な輸送や連絡任務に使用


■ 4. 89式装甲戦闘車との関係

  • 89式が35mm機関砲搭載で歩兵支援・軽対空能力を備えるのに対し、96式は火力を抑え兵員輸送と機動力に特化

  • 戦術上は、96式が歩兵を戦場近くまで安全に運び、89式や戦車が直接支援する形で運用されることが多い


■ ■ 5. 現在の発展

  • 96式の装輪プラットフォームは、新型装輪装甲車(Type 16 MCV)や新型装輪IFVの開発に技術的なベースを提供

  • 電子装備・通信装置・防護力向上などの近代化改修も進行中

まとめ

  • 73式装甲車:伝統的な陸自APC、兵員輸送重視、6輪駆動

  • 96式装輪装甲車:装輪化・高速化・近代化改修、輸送・機動重視

  • 89式装甲戦闘車:IFV、火力重視、歩兵支援・一部対空能力

つまり、陸自APCの役割は73式が基盤であり、96式は装輪式の近代化版、89式は戦闘支援型という棲み分けです。

要するに、96式装輪装甲車は陸上自衛隊の歩兵機動力の中核であり、戦闘支援よりも兵員輸送・機動性に特化した装輪装甲車という位置付けです。

89式装甲戦闘車は運べて戦える兵員輸送車?
地上戦では戦車は圧倒的な戦力を誇りますが、携行式をはじめとする対戦車ミサイルには十分に対応できません。そのため、戦車の行動を支えるためには、敵の対戦車兵器を扱う歩兵を排除する役目を、味方歩兵が「護衛」として担う必要があります。IFVというカ...
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