画像の引用元 陸上自衛隊公式SNS
バレット(Barrett)は米国のBarrett社が製造する大口径対物ライフルのシリーズで、主に.50 BMG(12.7×99mm)弾を用い、遠距離から車両の機関部や通信・光学機器、強化ガラスなどの物的目標(materiel)を無力化する用途を想定して設計されています。
モデルには半自動式のM82/M107やボルトアクションのM95などがあり、設計様式や作動方式はモデルによって異なります。また近年は.416 Barrett(10.4×83mm)など別口径の展開もあります。
対物ライフルについては以下の記事にて解説のとおりです。

バレットは高威力の弾薬と頑強な作りにより、遠距離から車両の機関部や通信・光学機器、強化ガラスといった「物的目標(materiel)」の無力化を主眼に設計されています。
バレット・シリーズと自衛隊での配備状況を詳しく見ていきましょう。
バレット社とシリーズの概略
バレット(Barrett Firearms Manufacturing)は、1980年代初頭にロン・バレット(Ronnie Barrett)によって設立された米国の小火器メーカーで、大口径の対物/狙撃銃で国際的に知られています。
創業以来、同社は.50口径(.50 BMG:12.7×99mm)弾を中心とした大口径ライフルの実用化と量産化を進め、軍・警察・民間双方で幅広い採用例を生み出しました。
バレット・シリーズはバレット M82 (Barrett M82) として1982年に開発されました。1986年に改良型のM82A1が開発され、M107(M82A1M)として、米軍で配備されています。
やはり配備の主体は軍隊です。米軍をはじめ複数国の陸軍・海兵隊でM82/M107等が採用され、車両無力化や長距離制圧、偵察支援などで運用されています。
一方で、対テロや重要施設防護の観点から、警察特殊部隊にも配備事例が多数あります。
民間向けにも民生モデルが販売され、スポーツ射撃やライフル収集での人気があります。ただし多くの国・地域で使用・輸出に規制が存在します。
代表的なモデルと特徴
バレットにはサイズや発射方式で複数のモデルがありますが、標準的な運用弾は.50 BMG(12.7×99mm)で、車両の機関部や通信装置、無人機、強化ガラスなどの破壊、または長距離での貫通力・打撃力を重視した設計です。
近年は高弾道係数弾(BCの高い弾)や、別口径での精密性向上に対する要求も高まり、弾種や口径の多様化が進んでいます。
Barrett M82 / M107(セミ・オート式)
半自動式の.50 BMGライフルで、車両や機材、軽装甲目標を遠距離から無力化する用途で広く採用されています。対物狙撃と車載・固定座射の両面で運用され、米軍をはじめ複数国の軍隊で制式採用例があります。
半自動のため、再装填のボルト操作を必要とせず、引き金を引くごとに次弾を発射できるのが特徴です。
Barrett M95(ボルトアクション/ブルパップ型)
ボルトアクションの.50 BMG対物狙撃銃で、比較的軽量かつコンパクトに設計されたブルパップ様式を特徴とします。
高い精度と耐久性を両立しており、固定射撃や狙撃任務で評価されています。陸上自衛隊を含む一部部隊で配備・使用が確認されています。
Barrett M99 / M98(ボルトアクション)
単発または単列マガジンのボルトアクション式対物ライフルで、精密性を重視した設計です。対人狙撃と対物撃破任務の双方で使われます
その他(.416 Barrett 等)
近年は.50 BMG以外の弾薬も選択肢が増えており、.416 Barrettのように弾道係数や風耐性を高めつつエネルギーを維持する口径を採用するモデルも開発されています。
ブルパップ方式の特徴
Barrett(バレット)の銃はBarrett M95など、一部のモデルがブルパップだというだけで、すべてがブルパップではありません。
特に有名なM82/M107は半自動式の.50 BMGライフルで、銃床~銃身が前方に伸びるオーソドックスなレイアウトであり、ブルパップではありません。M99 / M98もこの系統です。
その他、AR系のREC7もやはりブルパップではありません。
同社のラインナップにはブルパップ式と通常レイアウトの両方があります。
ブルパップの利点
銃器におけるブルパップ方式は、装薬室(ボルト)がトリガーの後方に配置されているため全長が短くでき、ライフルでもカービン並みのコンパクトサイズにできます。これは携行性や取り回しに有利です。
ブルパップの欠点
反面、ボルト操作や装填時のスムーズではない操作、射手の頬付けや銃声・排莢の位置など運用上のトレードオフがあります。
陸上自衛隊での配備モデルはM95
陸上自衛隊にM95が配備されていることは、陸自側の公開記録や映像、装備一覧などでも言及があり、配備が確認されています。
具体的には自衛隊公式アカウントが映像や写真を公開した事例があり、これが配備確認の根拠の一つとなっています。
バレットM95は本来、戦車正面装甲を撃破するための兵器ではなく、対物用途として設計されている点が重要です。
有効射程約1,800メートルを活かして、航空機の地上破壊、軽装甲車の機関部無力化、レーダーや光学機器の破壊、さらには長距離からの制圧射撃や偵察支援など、射程と貫通力を活かした任務で配備されていると見られ、それを担うのは特殊部隊である特殊作戦群です。

なぜ自衛隊はボルトアクション方式のM95を選んだのか
陸上自衛隊においてM95は、特殊作戦や要人警護、重要施設の防護といった任務において、特殊部隊で限定的に運用される可能性が高く、現時点では一般部隊への配備は行われないものと見られます。
とはいえ、なぜボルトアクションのM95が採用されたのでしょうか。
ボルト、セミオート…それぞれの利点と欠点
セミオート(半自動)は撃発→自動排莢→装填が自動で行われるため、複数射撃を素早く行える。移動目標や状況が刻一刻と変わる場面で「一発で仕留められなかった場合」に即時に次弾を発射できる点が評価されました。対物任務では単発の貫通だけでなく、複数箇所を狙って機関部や装備を確実に無力化する必要がある。セミオートの連続発射性はこうした用途で実用性を高めます。
とはいえ、ボルトアクションの優位点も残ります。
一般論ではボルト式は可動部が少なく、半自動に比べて故障箇所が少ないため砂塵・寒冷地など過酷な環境での稼働信頼性が高いです。
また1発ごとの精度が出しやすい特性があります。軍事作戦で.50口径を高精度で使う任務では、1発の致命性を追求する運用が中心です。迅速連射よりも弾道の再現性や弾着の確実性を優先する場合、ボルト式を選ぶ合理性があります。
これはすでに一般部隊や特殊作戦群でも配備されているM24から得た知見が活かされ、統一性を持たせた可能性もあります。
また、半自動は射撃時にガスや機関部の作動音が出やすいのに対し、ボルトアクションは比較的静かです。ステルス性が重要な狙撃任務では、発見リスク低減の観点から有利です。
ただ、米軍は実戦運用の結果、対物/長射程狙撃用途においてセミオート(例:Barrett M82 → 制式名称 M107)を採用する利点が大きいと判断し、M107を長距離狙撃・対物ライフルとして運用してきました。
しかし、精密性や射程を最優先する任務ではボルトアクションも依然重要であり、最近はマルチカリバーのボルト式採用(Mk22等)という流れも出ています。
ほかにも、M95はブルパップ様式で全長が比較的短いことから、狭い車内や装備の搭載、航空機・車両への搭載・空挺作戦などで取り回しが良い点があります。短い全長を好む部隊運用に合致します。
とはいえ、主な理由は極めて長距離かつ精密射撃ではボルトアクションの優位が残るため、と推測します。
M95は対物狙撃や遠距離精密射撃を主眼に置く運用に適しており、「一撃で確実に仕留める」ことが重要な任務には合理的といえるでしょう。

まとめ
近年のバレットは軽量化・精密化・弾薬の高度化(BC改善、超音速/亜音速の最適化)が進んでおり、これまでの.50口径一辺倒ではない選択肢が増えています。
陸上自衛隊での配備と運用も気になるところです。



