都道府県警察では3種類の回転式および、2種類の自動式けん銃が主流

携帯性や操作性、安定供給体制、さらには価格などを総合的に評価したうえで選定する――それが警察庁による「けん銃選定基準」です。

この厳格な選考基準をクリアした銃のみが、各都道府県警察に正式配備されます。

これらのけん銃は、国内大手商社が輸入代理店を務めています。

警察庁ではこれらの輸入代理店を通じて、随意契約方式により銃器を調達しています。

現在、各都道府県警察で配備されているけん銃は、大きく分けて回転式(リボルバー)3種自動式(オート)2種が主流です。

中でももっとも配備数が多いのは、戦後からの伝統とも言える回転式けん銃です。信頼性や操作性の高さから、今なお現場の第一線で幅広く使用されています。

正しい射撃フォームの研究を行う女性警察官の写真。日警の制服とシルバーのリボルバーって意外と合いますね。僕は実銃なんて言ってないですよ。※写真は毎日新聞社公式サイトから引用したもの。

1960年から近代まで長らく一本化され、全国の警察本部で標準的であったニューナンブM60(新中央工業およびミネベア大森製作所製造)は、90年代で製造が終了。

耐用年数の限界から徐々に用廃となり、第一線の地域警察官の腰道具としては後述の後継機種と代替が進んでいます。

【悲報】警察さん、威嚇射撃を省略してしまう

その後継として2000年代初頭に「Smith & Wesson M37 Airweight」、さらに2006年ごろからはさらに後継として、同じくSmith & Wesson社のM360を日本警察仕様として細かな改修を施した「M360J”SAKURA”」を選定。

タナカ【ガスリボルバー 】サクラ S&W(スミス&ウェッソン)M360J SAKURA ABS 1-7/8inch日本警察新制式拳銃 TANAKA ガスガン S&W M360J "SAKURA" ABS【付属品:LEDダイナモライト・ガンキーホルダー】【タナカワークスTANAKA】【18才以上用】

全国の警察本部で地域警察官に貸与されている現行けん銃『M360J”SAKURA”』は現在も配備数が増加傾向にあり、法務省入国警備官への配備も確認された。

現在、これら3種の38口径回転式けん銃が、全国の地域警察官、さらに刑事部、生活安全部などの私服捜査員でほぼ標準化しています。

ストライクアンドタクティカルマガジン 2016年 05 月号 [雑誌]

ただし、一部の制服警察官にも自動式けん銃の貸与が行われています。

80年代までは自治体警察時代にアメリカ軍から支給された旧装備品の45口径コルト・ガバメントを吊った愛知県警察の交番勤務員がいたほか、近年ではオリンピック警備強化の特殊事例として警視庁地域部の警察官にグロック45が配備されるケースも。

【悲報】2020東京オリンピックで警視庁自ら隊配備の「GLOCK45」即回収

 

一方、自動式けん銃は刑事部の機動捜査隊などに広く配備。

こちらは小型のP230(32口径)、そして捜査一課内に編成されているSITや、組織犯罪対策局の捜査員、テロなどの重大事案に対処する警備部機動隊の各種機能別部隊には、より威力の強いM3913(9㎜口径)という二種のけん銃を配備中です。

月刊Gun Professionals 2015年9月号
なお、戦後から近代まで日本警察が使用した旧式に分類されるけん銃は警察の銃器.3(旧装備編)として別項にて紹介しています。

戦後の日本警察で配備された旧型けん銃の種類

ミネベアミツミ株式会社(旧・ミネベア株式会社)

かつての新中央工業を吸収合併し、銃器の生産を引き継いだ国内精密最大手のミネベアミツミ株式会社(旧・ミネベア)では、警察庁および防衛省自衛隊向けのけん銃、機関けん銃を製造、納入。

「9mm機関けん銃」って、ホンマに駄作なんか?それとも……?

ニューナンブM60

ニューナンブM60は現在のミネベアミツミが新中央工業を買収する以前、同社によって開発された5発装填の官用38口径回転式けん銃です。

1960年に警察庁に選定され、各警察本部に配分されたほか、法務省の刑務官、海上保安庁、麻薬取締官等でも配備され、国産官用けん銃の雄として広く治安の一翼を担いました。

その後、新中央工業はミネベアの特機部門に吸収合併されて消滅し、ミネベア大森製作所が最終製造まで担当。

3インチのニューナンブM60。引き金の後ろには不意の暴発を防ぐための『安全ゴム』。写真の出典 宮古毎日新聞社『合い服に衣替え/宮古島署』http://www.miyakomainichi.com/2013/11/56395/

ニューナンブM60の原型は、アメリカのS&W(スミス&ウェッソン)社製M36チーフスペシャルです。

とはいえ、完全な複製ではなく、グリップを含め全体的にやや大きく再設計されているのが特徴です。

銃身長には制服警察官用の3インチ(77ミリ)長銃身モデルと、幹部あるいは私服警官用とされる2.5インチ(51ミリ)モデルの2種類が存在します。

1990年代にはグリップ下部を延長し、小指がかけやすくなるよう新型グリップに換装されるなど、若干の近代化改修も実施されています。

このニューナンブM60の口径は.38スペシャル(38口径)で、警察の法執行用けん銃としては必要以上に威力が強すぎず、最もポピュラーな仕様といえます。

新中央工業ではニューナンブM60の海外販売も視野に入れていたようで、”ニューナンブ・サクラ”という競技用モデルをも試作。

銃身を伸ばし、アジャスタブル・サイト、木製のターゲット・グリップ仕様ですが、結局は試作に終わり、海外販売されずに終了。

なお、サクラの名称は現代になって後述のM360J”SAKURA”として返り咲いています。

もし、海外販売されていたら「ポリスリボルバー・ニューナンブ・サクラ」になっていたのかも?

ニューナンブ3インチホルスター分離型本体/本物/警視庁制服用現行初期型//本革/

警視庁制服用ニューナンブホルスター(モデル品)

長らく警察用回転式けん銃として第一線で配備されたニューナンブM60。皇宮護衛官、海上保安官、法務省の刑務官、厚生労働省のマトリでは今もニューナンブM60が主力として配備されていますが、警察では老巧化から配備数も減り、後述する後継銃種に転換が進んでいます。

【7mmキャップ火薬付】 HWS J-Police.38S ポリス 3inch HW 拳銃 ヘビーウエイト 発火モデルガン ブルーブラック仕上 警察

なお、マトリではベレッタM85を使用する場合も。

麻薬取締官が『警察官には認められない連射が可能なオートマチック』を使う理由とは?

余談ですが、自衛隊の中の司法警察である警務隊ではニューナンブM60が配備されなかったものの、当時コルト・ディテクティブ・スペシャルを配備。

警務隊が官品横流しに目を光らせている

また、実は新中央工業ではニューナンブM57という自動けん銃を自衛隊に試作として提示したことも。しかし、こちらも不採用。

エム・アイ・イー総研 LIBERTY CHIEF 3インチ モデルガン完成品

ちなみにアームズさんのリバティチーフがニューナンブになった可能性も…という記事が興味深いですよね。

“ニューナンブ”が登場する作品

ニューナンブ (講談社文庫)

社会正義の象徴、“警察のシンボル”としてのニューナンブM60は、現代警察小説でも多数登場しています。

たとえば、大沢在昌による『新宿鮫』では、主人公の鮫島警部に敵対する密造銃作りの天才・木津要(きづ かなめ)が、鮫島のニューナンブM60を奪取。その際、木津は「コピーするならちゃんとコピーすりゃいいものを。できそこないだよ。このニューナンブ(M60)ってやつは」と、M60をチーフスペシャルの“出来損ない”とまで言い放ちます。

それに対し、鮫島は内心で「俺に言われてもな……。出来損ないを作った連中に言ってくれ」とでも思っていたかもしれませんが、実際の台詞はクールに「だったら返してもらおうか」と一言。これに木津も「返してやるよ。頭に一発」と返す、張り詰めた緊迫のやりとりが。

また、1988年公開の映画『リボルバー』では、沢田研二が演じる冴えない中年巡査部長がニューナンブを盗まれたことをきっかけに、さまざまな人々の人生が交錯する群像劇が展開。ここでもニューナンブは、ただの官用けん銃以上に、物語の象徴的存在として描かれています。

【せつなさ炸裂】一挺のニューナンブM60と共に人々は南から北へ駆けた。1988年公開の邦画『リボルバー 』

一方で、作品の題名にもなっている鳴海章の小説『ニューナンブ』では、こんな印象的な一文があります。

「アメリカ製の拳銃なんてイモだよ。ニューナンブこそ、ニッポンのお巡りさんの象徴だと思わないか。」

引用元 鳴海章:著『ニューナンブ』

――と、ここではニューナンブを肯定的に捉える描写が登場。単なる性能比較ではなく、「日本の警察官としての矜持」や「職業のアイデンティティ」としての意味合いを込めた台詞と。

では――
その“イモ”をご紹介しましょう。

Smith & Wesson(スミス&ウェッソン)

Smith & Wessonはアメリカの歴史ある大手銃器メーカー。

日本警察拳銃 (ホビージャパンMOOK)

今でも米国警察の非番の警官が隠し持つけん銃として定番なのが、同社の38口径仕様のM36や軽量版のM37といった小型回転式けん銃です。

アメリカ警察特集コラム第3回『アメリカの警察で主流のけん銃はやっぱりアレだった!』

M37 Airweight(エアウェイト)

タナカ S&W M37 2インチ J-ポリス スチール ジュピターフィニッシュ 18歳以上ガスリボルバー

交番の地域警察官から刑事まで貸与されるM37エアウェイト

M37は、M36チーフスペシャルの後継モデルとして設計されたリボルバーで、アメリカ国内では古くから民間人のホームセキュリティ用、または非番の警察官が携行するバックアップ用として高い支持を受けてきました。

1990年代中期以降、装弾数の多い自動拳銃――とりわけグロックが市場を席巻し、現在では全米の多くの警察・法執行機関で主力拳銃として採用されるに至りましたが、装弾数の少ないリボルバーはやや苦戦傾向にあります。

それでもなお、M37は米国の警察官や捜査官が予備用・私服時携行用として今なお選ぶ、オーソドックスな38口径・5連発の回転式短銃として一定の地位を保ち続けています。

重量は、スチールフレームのM36が約580グラムであったのに対し、M37はフレームをアルミ製に改修(シリンダーはスチール製のまま)することで、約420グラムへと大幅な軽量化を実現。

その名のとおり「Airweight(エアウェイト)」は、この素材変更と軽さこそが最大の特徴であることを象徴。

タナカ S&W(スミス&ウェッソン) M37エアーウエイト Ver.2 2インチ ヘビーウェイト ラバーグリップモデル J-Police(日本警察仕様) 38口径回転式拳銃 ガスガン・ガスリボルバー 対象年令18才以上(18歳以上)【付属品:LEDダイナモライト・ガンキーホルダー】

フレーム右側面には、S&W社のトレードマークとともに、「Airweight」の文字が白ヌキで刻印されます。

また、Uncle Mike’s製のラバーグリップが標準装備されており、さらにランヤードリングの追加や、ミネベアによる管理番号の打刻が施されるなど、日本警察仕様となっています。

このモデルは、2002年からニューナンブM60の後継として全国47都道府県警察への配備が開始され、以後広く採用されてきました。なお、エアウェイトの採用後は警察用回転式けん銃のバレル長は2インチに統一されています。

しかしながら、本国アメリカではすでに製造が終了しており、日本での調達もすでに打ち切り。現在も運用は続いているものの、警察庁ではS&W社の別の新型けん銃へと段階的に転換が進んでいます。

M38 ボディーガード エアウェイト

ここで一つ興味深い情報があります。

トイガンメーカー・タナカ社によれば、「日本警察は一部限定的に、S&W M38 ボディーガード エアウェイトを配備している」とのこと。

S&W M38 ボディガード エアウェイト ジェイポリス 2インチ ヘビーウェイト バージョン2 18歳以上ガスリボルバー

M38 ボディーガード エアウエイト』は、M37と同じくアルミフレームを採用した軽量モデルながら、ハンマーがフレーム内に一部覆われた独特のシルエット(シェラウド・ハンマー)を持ち、服に引っかかりにくい構造的デザインが特徴。

この構造の意義は、銃を素早く抜く際、ハンマーが上着や衣類に引っかかることを防ぐためのものです。つまり、“とっさの抜き射ち”を前提とした運用が想定されているというわけです。

そして、「日本警察で一部限定的な配備が行われている」というタナカ社の含みのある言い回し。

――具体的な部署名を伏せた表現だからこそ、こちらとしては想像を膨らませる余地があるとも言えるでしょう。

当然、新型樹脂製ホルスターに拳銃を装着し、制服の上から携行する地域警察官にこのモデルが支給される可能性は限りなくゼロに近いと考えられます。

このハンマーシュラウドの“本来の機能”に着目すれば、私服の下にホルスターを装着し、銃を隠して任務に就く警察官こそが、この銃の使用対象と考えるのが自然。

そのうえで、任務の性質から「咄嗟の射撃が求められる特殊な部門」と想定されるとすれば──

おそらくそれは、警視庁の警護課(SP)や、各県警に配置される警護員、またはPO(Protection Officer)と呼ばれる部門の可能性が最も高いと言えるでしょう。

つまり、拳銃の構造から任務の輪郭がうっすらと浮かび上がる――M38のような銃は、警察の“内部構造”に思わず思索を誘う存在でもあるのです。

暴対版SPこと身辺警戒員(Protection・Officer=PO)とSPの違いとは?

いずれにせよ、日本警察が一部で配備しているというM38 ボディーガード エアウエイトについての詳細は不明ゆえに妄想は受け手の自由。

M360J SAKURA

同じくスミス&ウェッソン社(Smith & Wesson)が開発した次世代型リボルバー M360。このモデルをベースに、日本の警察庁の特別な要望に応じてカスタマイズされた特注モデルが、「M360J SAKURA(サクラ)」です。

 

タナカ S&W M360J SAKURA HW モデルガン完成品

前述のM37エアウェイトが本国において製造中止となったことを受け、日本警察が次期制式拳銃を選定。

そして最終的に、M37の後継・発展モデルであるM360を基に、日本独自仕様に再設計されたのが、このM360J SAKURA(サクラ)です。

2006年から調達が開始され、例によって随意契約によりミネベアミツミが国内の代理店として納入を担当しました。

画像は国土交通省外局の警備救難機関が配備する『海サクラ』画像の出典 海上保安庁第9管区海上保安本部公式サイト

海上保安庁も配備。

タナカ M360J サクラ SAKURA HW モデルガン コイルランヤード付

都道府県警察官に貸与されるサクラけん銃にはニューナンブM60やM37と同様、カールコードを装着するためのランヤードリングが備わる。通常、鉄芯入りのカールコードを介して帯革と連結される。

2006年以降、各都道府県警察本部に広く配備が進み、2011年時点ではおよそ25,000丁が配備済みとされており、これは日本警察全体の拳銃配備数の約1割を占めていました。

海上保安庁版のSAKURAも警察庁のものとほぼ同じだが、側面の微妙な箇所に同庁のシンボルマークが入る。 画像の出典 海上保安庁第9管区海上保安本部公式サイト


特徴と改良点

M360J SAKURAは、オリジナルモデルM360と以下の点で異なります。

  • グリップの延長
     小指までしっかりとかかる長めのグリップに変更。これは、ニューナンブM60の改良型でも見られた変更で、特にナスカン(金具)部分に小指が干渉しないようにするための改良です。

  • フィンガーチャンネル付きグリップ
     グリップに指のかかりを確実にするためのフィンガーチャンネルが設けられており、銃の保持感が格段に向上したと評価されています。この種の機能は全ての射手に対応するものではないため、逆に嫌う向きもあります。グロックの例においては最新モデルでフィンガーチャンネルが廃止され、原点回帰しています。

  • 刻印とロゴ
     側面には 「SAKURA M360J NMB」 の刻印が施されており、さらに一部の個体では銃身側面にMinebeaのロゴも確認できます。

  • キーによるロックシステム
     S&W社が開発したセーフティロック機構を搭載。鍵を使って内部機構をロックできる安全装備が備わっています。

  • ランヤードリング
     グリップ底部には、ニューナンブやM37と同様、ランヤード・リングを装備。日本警察ではこのリングに鉄芯入りのカールコードを連結し、拳銃の紛失や強奪防止に用いています。


警察庁以外への配備

M360J SAKURAの配備は警察庁にとどまりません。実際には、

  • 出入国在留管理庁(法務省外局)

  • 国土交通省の外局(例:海上保安庁)

といった政府機関においても、公用けん銃として確認されています

M360Jはスカンジウム合金をフレームに採用し強化されているほか、ハンマーを小型化してハンマー落下および撃発時のショックをやわらげ、ブレを軽減させることで集弾性を高めている。使用する執行実包は前モデル同様に.38スペシャル。画像の出典 海上保安庁第9管区海上保安本部公式サイト

M360J SAKURA における構造不具合の発覚

一見、信頼性の高い新型けん銃として高評価を得ていたM360J SAKURA(サクラ)。しかし、2009年に問題が発覚。

当時の報道によると、銃内部や銃身の付け根部分にクラック(ヒビ)が入った個体が全国でおよそ200丁確認され、警察庁が緊急回収を実施しました。

この問題は、以下のメディアによって報じられました:

  • 不具合の内容
     - 銃身の基部や銃内部にヒビが発生
     - 耐久試験における想定を下回る結果
     - 経年劣化ではなく、設計段階や製造工程上の問題が疑われました

重要な点

  • 重大事故(暴発、破裂など)は報告されておらず、幸い人的被害には至りませんでした。

  • 警察庁は、スミス&ウェッソン社および輸入代理のミネベア社に対し、原因の究明を正式に申し入れたとされています。

この問題に関して、その後の公式な続報や詳細な調査結果は報じられていませんが、2020年代においてもなおSAKURAは調達・配備が継続されていることから、何らかの対策・改良が施されたと考えるのが妥当です。


銃身側面の「Minebea」ロゴが特徴的

銃のディティール面で注目すべきは、「Minebea」刻印の存在感です。

特に、「ストライクアンドタクティカルマガジン」2016年5月号の表紙に登場したM360J SAKURAの個体では、以下の点が確認されています:

  • フレーム右側面に「SAKURA M360J NMB」の刻印

  • 銃身左側面に、白ヌキでデザインされた「Minebea」のロゴ

このロゴは、無骨なけん銃のデザインにあって、どこかスポーツ用品的でモダンな印象を与えるもの。日本の製品らしい繊細な意匠とも言えます。

「銃器全般に対するイメージのよくない日本の国柄云々」などとウィキペディアの「新中央工業」の項目に誰かが個人の感情を書いていましたが、銃器全般に対するイメージのよくない国柄でありながら、ミネベアミツミでは自社のブランドを誇らしげに押し出しているところが好印象。

S&W M360J SAKURA はアメリカ製か?日本製か?

この点には複数の説が存在しており、おおむね以下の2つに大別されます:

  1. アメリカ・スミス&ウェッソン社の本国製造

  2. 日本・ミネベア社によるライセンス生産

実際、これほどまでに銃身に「Minebea」の名を刻み、国内仕様に適合するカスタムが徹底されている状況を見る限り、後者の「国内ライセンス生産」の可能性も十分に考えられます。

しかしながら、2009年に発覚した「クラック問題」に関する時事通信の報道では、明確に「アメリカ製」と記載されており、この点に関しては興味深くもあります。

警察拳銃に不具合200丁、全国に回収指示-納入業者に原因究明要請・警察当局

全国の警察官が使用する米国製の拳銃約200丁に小さな亀裂が入る不具合が相次いで見つかったことが13日、警察関係者への取材で分かった。警察庁は全国の警察本部に不具合の見つかった拳銃の回収を指示。国内の納入業者に対しては、原因究明をするように要請した。関係者によると、不具合が見つかったのは米メーカーの回転式拳銃で通称「サクラ」。

典拠元 時事通信 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011011300888

また『Gun Professionals』の2015年9月号でも、開発・製造のほぼすべてをS&W社で行っており、ミネベア社ではグリップやランヤードリングの追加といった極細かな”改修”にとどまるのみという記述が。

これらのソースから、銃本体の製造はアメリカで、日本警察仕様として銃の左側面に『SAKURA』の文字や管理番号の刻印、それにグリップの換装、ランヤードリングの装着といった細かな改修は日本国内のミネベアミツミ社で行われ、同社経由で警察庁に納入されているというのが通説。

つまり、ミネベアはあくまで製造元ではなく、販売代理店であり輸入業者であるというわけ。

また、同モデルは若干数がアメリカ合衆国の民間市場で流通しているという指摘も。

いずれにせよ、SAKURAという製品は、日本警察における運用実態やニーズに即して独自に改修され、国内での取り扱い・整備・調達が完結している点で、事実上の“日本仕様銃”であることに変わりはありません。

tだし、ニューナンブと同じく、警察もS&W社もミネベアミツミも本製品について詳しい仕様などを公表しておらず、不明です。

制服用ホルスター・ニューナンブ・県警用

制服用ホルスター・ニューナンブ・県警用

ところで、これら日本の警察で配備されている回転式けん銃の外観を見ていると、あることに気がつかないでしょうか。

僕が三才ブックスの「警察の本シリーズ」で一番好きな話『日本警察のけん銃には照星はあっても照門はない』

P230

大きさは皇宮警察やSPも過去に使用していたワルサーPPKよりやや大きいものの、コンシールメント性に優れた小型オートです。

日本警察仕様のP230……「日本警察の迷走」「採用は不適切」とまで評された1丁

M3913

オリジナルのM3913。ただし、日本警察仕様はトリガーが黒色でグリップ下部にランヤードリングを備えるなど相違も。画像引用元の明示 http://www.imfdb.org/wiki/Smith_%26_Wesson_3913

スミス&ウェッソンのM3913は同社のセミ・オートマチック「M39」を基本とした9mm口径の第三世代型自動けん銃『M3913』。

日本では刑事部のSITや組織犯罪対策局、機動隊の専従部隊である銃器対策部隊、特殊部隊SATなどで配備されています。

M3913を被疑者の立てこもる家屋に向ける警視庁SITの刑事たち。SATとは微妙に違う耐熱アサルトスーツやタクティカルベスト、装備品がよくわかるベストショット。右から二番目のSITはかなり高い位置に構えているが、グリップからコードが伸びている様子はない。 写真の引用元「決定版 世界の特殊部隊100」白石光さん著(写真・柿谷哲也さん)

M3913は、強大で組織的な犯罪者たちに立ち向かうために、危険度の高い捜査員に配備される、いわば“火力強め”のけん銃です。まさか、白バイ女子のポニーテールがこれを持ってる姿を見ても、ちょっと笑っちゃいますよね。

でも、もし敵がトカレフやXM177、手榴弾にロケットランチャーまで持ってきたら、対抗する側も強力な装備を持たざるを得ません。そんな装甲厚めの敵に「P230を支給する!(ドヤア」と言ったら、それこそ例のドラマ並みですから。

【フィクション作品考察】『仮面ライダークウガ』でのSIG Sauer P230使用通達の謎…『アギト』登場のリアルな覆面パトカーも紹介

制服の警察官、つまり地域警察官や交通警察官の主力は、今も昔も回転式けん銃。それも38口径(.38スペシャル弾)が圧倒的多数派です。ただ、その威力はといえば、9mmを100%とした場合、およそ50〜70%程度。

そういえば、『釣りキチ三平』で、シャークのジンが万引き少年をキャスティングで逮捕(?)したシーンでは、弁護士の魚紳さんが「お巡りさんのピストルの威力」を持ち出して、ジンの行為に対して説諭していましたが、あれ、よく考えるとまあまあすごい展開ですね。子どもに釣り道具の使い方で説教しながら拳銃の話とは……。まあ、魚紳さんは親に釣り針で片目をぶち抜かれた過去があるだけに、それもやむなし。

さて、ニューナンブの中でも数少ない3インチモデルを除けば、大半は2インチのコンパクトサイズ。銃身が短ければ、当然弾の威力も落ちるわけで、「威嚇射撃の音だけで観念しろ」という、どこか祈るような思惑が見え隠れします。

そこに颯爽と現れるのがM3913。.38スペシャルの最大2倍の威力。これなら「実際に効く」拳銃としての役目も果たせそうです。

……ただし、シングルスタックマガジンなので装弾数は最大で8発。多弾数がウリのグロックと比べると「少なっ!」という印象は否めませんし、ポリマーフレームの軽量銃と比べるとやや重い。まあ、昔気質な“質実剛健型”ってことで。

そしてM3913は、ドラマ界でもちょっとしたスター。特に『アンフェア』で篠原涼子演じるヒロイン・雪平夏見が携帯していたのが有名です。彼女だけが使っていたのは、M3913の中でもスタイリッシュな「Lady Smith」。同僚の男性刑事たちが無骨にM3913吊ってる中、彼女だけが“女性らしいフォルム”のLady Smithを選ぶというこだわりの演出。

……同じ銃なのに、見た目でちゃんと“エレガント差”を出してくるあたり、製作陣のこだわり、なかなかのもの。

なお、『アンフェア』で使用されたプロップガンの製作担当は、特殊部隊SATなどでもおなじみのMP5まで手がけるPYROTECH(パイロテック)さん。あの定番・信頼のMP5も彼らの手によるものです。そして、雪平が使っていた「S&W M3913 Lady Smith」の刻印を手がけたのが、業界では知られた存在、ガン&RCショップ「マッドポリス」さん。もう名前からして、もう。

このM3913、ステンレス・シルバーのピカピカ仕様で、見た目からして「威嚇力、MAX!」といったたたずまい。通常なら艶消しの黒が考慮されるはずのSIT(特殊捜査班)突入係にまで配備されていたりします。ええ、あの突入係りにも、銀ピカ拳銃。

ピカピカのシルバー仕上げなので、無駄に美人刑事が持ってこそ映える銃。マル暴専用防弾覆面に乗った柔剣道有段者枠採用の組対の人が、コレを隠し持ちつつコウカクする姿を想像するとチョット。家裁の人みたいに言うのやめなよ……。

さて、日本の警察における標準的なけん銃は以上の五種が主流ですが、さらに一部の“特別な任務”を担う警察さんには、以下のような特装けん銃も配備されているのです――。

Heckler & Koch

日本警察ではドイツ製の銃器も大量に配備。まずはドイツHeckler & Koch社の各種モデルをご紹介。

H&Kといえば、サブマシンガンのMP5が世界中の特殊部隊や警察で広く普及しており、日本の警察や海保、海上自衛隊も特殊銃という名目で導入済み。

警察の銃器.2 『特殊銃』MP5から自衛隊89式、対物狙撃銃まで

VP9(SFP9)

陸上自衛隊ではすでに2020年、それまでのP220(9mm拳銃)の後継として300丁あまりの新型9mm拳銃・SFP9が制式配備されており、将来的には12,000丁の調達が予定されています。

一方、警察庁での採用も複数のオープンソースから答え合わせ済みです。

“東京オリンピック警備公式けん銃”!?日本警察が新配備のH&K SFP9(VP9)、自衛隊モデルとは「別仕様」の模様

ドイツの日刊紙『ブラックフォレストメッセンジャー』では、2020年に日本がSFP9を新規に取得したと報じており、これは2021年に開催された東京オリンピック警備向けの装備の一つと見られています。

『彼ら(HK社)はまた、成功したSFP9モデルのけん銃2,000丁を日本の警察に納入したことを誇りに思っています。これらは来夏のオリンピックの安全確保のために特別に使用されます』

出典 https://www.schwarzwaelder-bote.de/inhalt.oberndorf-a-n-paukenschlag-bundeswehr-kehrt-hk-ruecken.c5a94795-95ca-4022-a606-0605256b5c74.html

すでに47都道府県警察に2,000丁のSFP9が配分されていても不思議ではありません。

SFP9はピカティニー・レールを標準搭載したポリマーフレームで構成され、グリップのバックストラップを調整することで、射手により良好なグリップフィーリングを提供。

発射方式はストライカー式で、安全面ではトリガーセイフティを組み込んでおり、コンセプトはすでに成功したグロックそのもの。

現代的な銃としてはオーソドックスな仕様です。

トリガーの軽さも特徴的で、すでに多数の警察機関で配備されている米国の現場ではグロックよりも軽いと認識されています。軽すぎて大変なことに・・。

ただ、対策は完了したようですが、2019年には導入直後のドイツ連邦警察で『意図しないマガジンの落下』が原因で大規模なリコール騒ぎの発生も。そういえば、どこかの国のお巡りさんがパトカーに乗った時に、グロックのマガジンがスポーンと…もういいって。

USP

H&Kが1993年にワルサーに代わる自国ドイツ連邦軍の次期制式けん銃として開発したのが、警視庁や愛知県警察、神奈川県警察特殊急襲部隊SATなどで使用される『USP』

Umarex HK USP エアコッキング ハンドガン

作動方式は一般的なショートリコイル方式で、ティルトバレル機構およびダブルアクション方式を採用。

革新的な機構こそないものの、Heckler&Koch製品の品質の高さとグロックが作ったポリマーフレームブームに沸くアメリカ市場で受け入れられ、世界規模での商業的成功をおさめました。

だからと言って、長久手町の住宅街へ県警のSATがUSPを持って出動してくるとは思わなかったなぁ。

ストライクアンドタクティカルマガジン 2021年 11 月号 [雑誌]

おっと久々登場のUSP。握るのは警視庁SPか。ストライクアンドタクティカルマガジン 2021年 11 月号

特殊部隊SATでは ITI社製M2が装備されており、突入時に焚いて悪い人の目をくらませます。

陸上自衛隊特殊部隊でも2004年から特殊けん銃としてサイレンサーを装着させた特殊作戦用USPタクティカルを使用。

不正規戦に対応する陸上自衛隊特殊作戦群とは

USPは9mmパラベラムをはじめ、より大口径の.40S&Wや.45ACPなど複数のバリエーションが用意され、ダブルカラム仕様では9パラで15発、.40S&Wでも13発を装填できる怒涛のハイキャパシティ。

しかし、そのせいでグリップが前後に間延びし、男性でも握りにくいとの声も。

とはいえ、昨今では警視庁も神奈川もSATは後継機種に別の銃をチョイスしたためか、近年の公開映像でのUSP登場は皆無。

世界的に見ても旬は過ぎた中で、トイガン業界では東京マルイがこれを2018年に発売したことについて『ハイパー道楽』管理人のYAS氏も『商機を逸してしまっていると言われても仕方がない』と首をかしげています。

http://www.hyperdouraku.com/airgun/tm_usp/index.html

P2000

Gun Professionals17年2月号

Gun Professionals17年2月号
B01M286QJT | ホビージャパン | 2016-12-27

そしてUSPを改良発展させたのがP2000。

2010年5月6日に日本テレビ系ニュース番組内の特集である「密着!警視庁SP要人警護の舞台裏」において、警視庁SPがP2000の実弾を使用した訓練の場面で画面に大写しになったことでデビュタント。

【悲報】警視庁SPさん、警護対象者の「動く壁」だった

SPを主題にした映画『藁の盾』でもプロップガンとして活躍が見られる日本警察の最新けん銃です。

筆者のようなシャバ僧には同作の作者が『ビー・バップ・ハイスクール(BE-BOP-HIGHSCHOOL)』で知られる漫画家・きうちかずひろ氏であることが今でも信じられない……。

2018年に行われた2020年東京五輪・パラリンピックに向けた、警視庁の警備訓練における1シーン。高速道路上での大臣車列へのテロを警戒し、P2000をかまえるSP。ドチャ怖い。

USP同様、ダブルアクションオンリーのメカニズムでありながら「CombatDefence Action(CDA)」というシングルアクションのように引きシロの少ない軽い引き金の動きで発射できるのが特徴。

グリップ後部のバックストラップのサイズを変更でき、射手の手にあわせて、より良好なグリッピング調整が可能。

また、紛失防止の「けん銃吊り紐」が大好きな日警用として、ランヤード(現在ではカールコード)装着のためのリングが追加装備。

ストライクアンドタクティカルマガジン 2016年 07 月号 [雑誌]

Strike And Tactical (ストライクアンドタクティカルマガジン) 2016年 7月号 [雑誌] B01G71DWU0 | SATマガジン編集部 | SATマガジン出版

現在のところ、警視庁警備部のSP以外では埼玉県警銃対RATS、高知県警察、岡山県警察銃対でも配備されており、全国の警察本部の警備部に配備済みです。

安全かつ即射撃できるのが好まれた可能性も。

SIG

すでに解説したP230のほかにも各種SIGのオートマチックが配備されています。

P226

タナカ シグ P226 アーリーモデル エボリューション 2 フレーム ヘビーウェイト モデルガン完成品

日本の公的機関におけるシグ製品の配備といえば、自衛隊では1982年になって、それまでのガバメントに代えて単列マガジンのP220を国内ライセンス生産し「9mm拳銃」として配備。

自衛隊の9mm拳銃(P220)とは?

警察がP220(9mm拳銃)を調達したか不明ですが、前述したように90年代前半にはP230を採用。

その後、2002年に公開された特殊急襲部隊SATの訓練動画にて、SAT隊員が手にするのがアメリカをはじめ世界各国の警察機関や、軍隊の特殊部隊で広く配備されている複列マガジンで多弾数のP226でした。

東京マルイ No.18 シグ・ザウエル P226 レイル 18歳以上ガスブローバックガン

現在、日本警察ではフレームにレイルが配置されたP226RをSATで配備。

おっと、海上保安庁や自衛隊の特殊さんも使ってましたね。

画像の引用元 防衛省公式カレンダー

自衛隊のP220では弾倉がシングルカラムのために装弾数9発とやや少ないものの、P226ではダブルカラム化。15+1発と大幅に増加(.40S&W弾モデルおよび.357SIG弾モデルでは12+1発)。

マニュアルセフティを備えないSIG独特のセフティメカニズムはP226でも健在で、起こされたハンマーをより安全に落とす(解除する)ためのデコッキング・レバーを搭載。

海上自衛隊特殊部隊『特別警備隊』の装備と部隊概要

P228

タナカ シグ P228 フレーム ヘビーウェイト エボリューション2 モデルガン完成品


P228はP226を小型軽量化したコンパクトモデルとして1989年にデビュー。

アメリカ軍でもM11として採用され、FBIなど多くの法執行機関でも採用。

フルサイズのP226に比べ、スライド、グリップの短縮化で全体的にコンシールメント性が高まり、スレンダーで小柄なスカリー捜査官が身に着けても上着で隠せちゃいます。じゃあマグライトはどこに隠してんだよ?無理ありすぎません?

小型化の影響でP226よりも少ないとはいえ、13+1の装弾数を誇ります。現在はP229の口径9ミリバージョンが実質的な後継。

P226同様にSATや海上保安庁でも配備。

ただ、SATでの配備が確認されたのは警察庁の初公開動画時のみ。現在はやはり前述のP226Rのほうに出番を奪われています。試験配備の可能性も。

Glock

いやはや、日本の警察さんがこんなに『グロック』ラブラブになっちゃうなんて、当時誰が想像しえたでしょうか。

筆者はまだ使いこなせてないです。早く人の悪口言わせまくりたい。え?Xの悪口生成AIのグロックじゃないって?はい。

グロックけん銃をかまえて周辺警戒する警視庁SP。 マルイではないと思いたい。写真引用元・産経新聞

警視庁SATでグロック19、警視庁SPがフルサイズのグロックを使用。

時は2002年。サッカーワールドカップ開催を控え、国民がテロの不安を払しょくできない中、警察庁が一般公開したのはそれまで警察庁がひた隠しにしてきた警視庁特殊急襲部隊SATの訓練映像。

ヘルメットとバラクラバで顔貌を隠し、大声で「警察だ!」と叫びながらハイジャックされた旅客機の中になだれ込む男たちこそが「日本警察の最後のカード」と呼ばれるSAT。

彼らの手に鈍く光る角ばった銃はポリマー製けん銃「グロック19」。それは日本の警視庁がグロックを配備しているという事実が公開された瞬間でありました。

グロックはオーストリアの銃器メーカーで、それまでは軍用ナイフなどの軍用品を納入するのみで、非専業銃器メーカー。

銃の生産開始は1980年以降と米国の主要銃器メーカーに比べるととても浅いものの、革新的な機構とポリマー素材を使ったグロックは鮮烈なデビューを果たし、現在グロックはアメリカをはじめ、世界中の警察や軍隊で採用されており、今では全米の警察の半分以上が9ミリのグロック19を採用。

それ以前にもポリマーフレームのけん銃は、HK社のVP70というモデルがあったものの、こちらは大コケ。

余談ですが、2016年に連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation, FBI)では現行配備の9ミリよりも強力な.40S&W弾を使用するGlock 22 (フルサイズ版) と Glock 23 (コンパクト版)を捨てて、9ミリのグロック17および、19に回帰。

グロックけん銃はマニュアルセイフティや外部露出のハンマーが非搭載。

スライドを引いて初弾を薬室に装てん後、発砲するに当たって実質的に操作するのはセイフティが組み込まれているトリガーを引くのみ。指をトリガーに軽くかけるだけでセイフティは解除されます。

アメリカ国内では実に4000もの各州警察・法執行機関での採用実績が。採用当初は暴発事故が相次いだため、グロック社ではノーマルより重いトリガープルの 「ニューヨーク市警トリガーモデル」 もリリース。日本警察が採用したトリガープルは不明です。

【警備部の装備トレンドは?】警視庁SPの使うけん銃にP2000など登場

日本警察に採用されたモデルはG19、G17、G45と見られている

東京マルイ ガスブローバック GLOCK19 3rd ジェネレーション グロック グロッグ サード G19


グロックには口径やサイズで各種モデルがありますが、サイズの違い以外は遠目に見ただけでは不明。

例えばフルサイズの9ミリ口径モデルだと「グロック17」ですが、見た目は.40S&W弾を使用するGlock22と同じ。

このため、報道写真を見る限りでは、日本の警察が使っているグロックの口径は不明です。

しかし、世界的なスタンダードを鑑みれば、おそらくは9mmでしょう。無論、ちょっと前のFBIを踏襲しているのなら.40S&W弾かもしれません。

G17は2010年に行われたAPECに係る要人警護訓練にて公開され、警視庁ではSP(セキュリティポリス)向けにP2000とともに配備。2018年に行われた公開訓練の様子では警視庁警護員SPの手にグロックが。

また、同じく警視庁の特殊部隊SATがコンパクトサイズのG19を配備。公開された訓練映像でSATが突入時にカールコードとフラッシュライトを装着したG19を構えていたのを確認。

Tokyo Marui Glock Series Item list 2017 (English Edition)

G19はG17に比べグリップが低いコンパクト・モデルですが、さらに小さいG26もあります(警察庁への納入は不明)。

外見はオモチャ感覚。それでも射ちやすいとされるグロック。

グロックのメカニズムはそれまでの銃のシステムに比べ、かなり奇異であり、独特のセーフアクションと呼ばれるメカはトリガーの引きシロが短く「一回撃ったら二発目はほぼ連射」と表現されることも。

しかも.38スペシャル(.38Spl)の交番ピストルより威力があるのだから、現代日本の治安情勢には最適?

なお、グロック社がYOUTUBEにて公開している公式動画では世界各国の警察の徽章が流れるように映し出されますが、そこには警視庁の徽章も映っているのはマニアの間では今更得意げに紹介することも憚れるくらい有名な話です。

このように、グロックが日本警察に採用されているのは紛れもない事実というわけ。

2021年、『グロック45』が警視庁地域部自動車警ら隊で配備!即引退

東京オリンピック警備で地域警察官の火力制圧力向上を目指して配備されたとのこと。

しかし、「ランヤード破損」および「意図しないマガジン脱落」のため、東京オリンピック終了後に即回収という憂き目に。こちらでいじってます。

【悲報】2020東京オリンピックで警視庁自ら隊配備の「GLOCK45」即回収

Beretta

80年代、米軍のサービスピストル受注競争にBeretta92が勝利し、M9として採用され一躍名を馳せたイタリアに本社を置く大手メーカーのベレッタ。Beretta92は現在まで各国の多くの機関で採用されていますが、米国ではすでに法執行機関の3分の2がグロック。米軍の次世代けん銃もSIGに奪われ、苦戦中です。あ、でも日本の自衛隊さんがグレネードランチャー買ってくれました。

ベレッタで最も有名なのは92。お馴染み「リーサル・ウェポン」や「ダイ・ハード」で80年代から90年代一躍有名になったモデルです。ちなみに筆者は「ゴリラ」の山中胡銃撃戦における風間さんの92SB、「クレヨンしんちゃん暗黒タマタマ大追跡」における東松山さんの92FSが好きですね。

日本国内では警察がBeretta92バーテックと90-Twoを、厚生労働省の各地方厚生局が85を麻薬取締官用として配備。

麻薬取締官が『警察官には認められない連射が可能なオートマチック』を使う理由とは?

92バーテック

ベレッタ92FS-Vertecは公的機関向けの自動式高性能けん銃。度重なる凶悪事件で出動する警視庁のSITが携行していたことで日本警察もベレッタを配備していることが報道で明らかに。92FSをベースとしており、 フレームにはライトを装着するためのレールが標準搭載。

警視庁SITのほか、大阪、愛知、茨城、埼玉、神奈川の各警察の特殊捜査班でも配備が確認されている。東京MXテレビ公式チャンネルではニュース報道番組で警視庁SITの公開訓練を見られますが、その中で92Vertecが大写しに。

SIT(大阪府警ではMAAT)に配備されるこのバーテックには、標準でフラッシュライトが装着されており、突入時や制圧時に犯人を目くらましで、ひるませることも想定。


東京MX公式チャンネルによるニュース配信

ベースモデルの92FSとは?

92FSは1974年にイタリアのピエトロ・ベレッタ社が開発した自動式けん銃。92FS-Vertecモデルでは野暮ったいナスビグリップから、スパルタンなストレートタイプになり、銃身長も短縮され、スマートな印象を受けます。

非常に撃ちやすいため、法執行機関や軍のみならず、民間でも世界中から支持があり、また85年にはアメリカ軍に制式採用され、多くの将校、下士官に支給されています。

そのためハリウッド映画の登場回数も多く、主役がこの15連発の軍用けん銃を携行。

日本国内の公的機関による「ベレッタ社製品」の採用は現在まで、警察がバーテックを配備するほかは、厚生労働省麻薬取締官用に支給されるけん銃の一種として85配備が判明しています。

余談ですが、77年には本モデルをベースにしたM93Rも開発されました。M93Rは対テロ任務に就くイタリア国内の警察機関の要求で開発されたもので、単発、3点射撃を可能としたマシンピストル。実は日本国内で『皇宮警察にM93Rが配備されている』という出所不明の情報を信じている人が多くいるようです。

皇宮護衛官の任務とは

実際に配備されているのか真偽は不明ですが、何がそのソースとなったのかは興味深いものがあります。ネット上で調べてみたものの、答え合わせはできませんでした。

「警察が機関銃を使うのは憚られる」という当時の時代背景が生んだ噂なのかもしれません。ただ、現在は皇宮警察もMP5を配備しています。

超小型光学照準器をスライドに直付け

SITではバーテックのスライド上部に超小型光学照準器をスライドに直付け。朝日新聞の報道によれば、オプティマ2000(もしくはミニミルダット)、さらにSUREFIRE X200を装着しているバーテックを持つSITの写真が。

絶対に負けられない戦いに挑むけん銃、それがこのベレッタ・ダブルアクション92。ヒェ~っ、門田泰明ファンなのかテメーは(笑)

90-Twoの配備も新たに判明

2015年、SATマガジンでは栃木県警の銃対がベレッタ90-Twoを配備していることを報じています。

月刊Gun Professionals 2015年9月号

模擬銃の可能性も、という鋭い指摘の一方(トイガンだとしたらマニアックな選定だ)、隊員それぞれのレッグホルスターにおさめられたその90-Twoは、現在配備されているバーテックけん銃の後継機種になるのでは?と同誌では推測。

UMAREX ベレッタ 90-two エアガン ハンドガンケース付 Beretta 90 two 品

90-Twoはバーテックの15発に比べて2発多い、17発装弾が特徴。弾丸の口径については複数ですが、日本の警察で採用されてる口径については不明。作動方式はバーテック同様ダブル・アクションですが、バリエーションは複数あり、安全装置に関するその操作が各バージョンで異なります。

また、バーテックと同様にフレーム前方下部にレールが搭載されており、ライトモジュールの装着も可能。

ただ、この90-Twoについてはアメリカ国内では明らかにセールスに失敗。世界的に見ても売れ行きが良くないとのこと。

本国やアメリカのメーカー、日本の輸入代理業者、誰が警察庁に対して売り込みを図ったのか知る由もありませんが、売れずに残った大量在庫品が売りつけられてゴミをつかまされていたとしたらいやなものですね〜。

警察官はけん銃の予備弾を持つ?

現在では制服警察官、私服勤務員ともに予備弾の携行はなし。けん銃に装填されている弾丸が携行弾のすべて。サクラやエアウェイトであれば5発。

ただし、昭和31年ごろまでは制服巡査がベルトに予備弾納めを着用し、10発あるいはそれ以上の予備弾を携行していた例も。それはなぜ?携帯無線機がすべての外勤員に行き渡らない時代、迅速な応援を見込めないことが背景にあったと考えられます。

警察無線の系統 その2『署活系』

現在の刑事部の特殊班SITや警備部の特殊部隊SATにおいては、わざわざ多弾数のベレッタやグロックを採用するほどですから、おそらくは装填可能の上限、さらに予備マガジンも携行しているものと推測できます。

なお、上述した「グロック45」の一時的な配備の際は自動車警ら隊員一人につき、弾丸10発が支給されたそうです。

警察官に貸与されているけん銃のまとめ

以上のように、日本の警察官に貸与されるけん銃は回転式3種と自動式2種が主流。さらに捜査一課特殊班やSP、SAT向けとして複数の軍用けん銃の配備も行われています。

警察の銃器.2 『特殊銃』MP5から自衛隊89式、対物狙撃銃まで