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自衛隊のパイロットが使うTACネームとコールサインの違い

アマチュア無線局がそうであるように軍用機や自衛隊機も機体ごとに割り当てられた固有の呼出符号、いわゆる『コールサイン』があります。

多くの国の軍用機は飛行隊ごとにこれら固有の呼出符号を使用。

日本の自衛隊では空自第4航空団飛行群第11飛行隊が愛称の『Blue Impulse(ブルーインパルス)』をそのまま使用しているほか、初等操縦訓練を担う海自第201教育航空隊は『rookie flight(ルーキーフライト)』を使用しています。

陸上自衛隊は基本的に飛行隊を問わず、機種が同じならコールサインも全国共通。

ただし、オペレーションによっては医療緊急搬送を示すサインを付加したり、編隊飛行では部隊のニックネームや地名由来のコールサインを使う場合も。

自衛隊無線の各帯域(HF、ローVHF、UHF)ごとの受信方法解説

航空自衛隊および海上自衛隊は所属航空団または飛行隊ごとのコールサインに機体番号をつけたコールサインを使います。

下記に典拠を示した図は海上自衛隊第22航空隊公式サイトから引用させていただいた資料ですが、同隊ではSH/UH60系のヘリは『ワイバーン』および『スカイラーク』の使用を公表。

自衛隊機コールサインの例(海上自衛隊公式サイトより引用)
コールサインについては海上自衛隊公式サイトにて公表されているものを出典を明記した上で引用する。 https://www.mod.go.jp/msdf/22aw/introduction/22fs/02_gaiyou.html

また、同じく海自の第203教育航空隊はP-3C型航空機の操縦士をはじめ、各種航空士の教育部隊として、飛行に必要な知識及び技能を修得させるための教育を行う部隊ですが、コールサイン「アトラス」の使用を公表しています。

画像の出典 https://www.mod.go.jp/msdf/simohusa/203ats/203ats.html

広帯域受信機で航空無線を傍受すると、その運用がわかりやすく学習できます。

買ってはいけない広帯域受信機は?

一方、それぞれの機体(飛行隊)が持つ「コールサイン」と異なるのが「TACネーム(Tactical Name)」です。

TACネームは戦闘機パイロット自身が持つ個性的な”ニックネーム”と考えるのが適切です。

TACネームの運用は米軍をはじめ、各国の空軍でもポピュラーですが、自衛隊では不思議なことに陸自と海自には存在せず、航空自衛隊でもTACネームがあるのはファイター(戦闘機)パイロットのみ。

輸送機やヘリのパイロットは持っていません。

航空自衛隊の公式サイトでのパイロット紹介や、航空雑誌を読むとわかりますが、通常は戦闘機の機体の横やパイロットのヘルメットにTACネームが記載されています。

曲技操縦士であった故・ロック岩崎氏の「ロック」も空自時代のTACネームに由来しています。

確定的な理由は不明ですが、戦闘機の場合は一人乗りが大半で、また機体同士で連携というより、やはりパイロット同士が連携して作戦を行う上で関係を密にするため、このようなTACネームが必要とるからではと推測できます。

https://jieitaisaiyou.com/hikoukyoudougun/

また、同姓の隊員だった場合、姓で呼ぶと混乱するなど不都合が生じたり、冒頭で言及したとおり、航空自衛隊の無線と言えど誰でも傍受できるので、姓を公にするのも問題がありそうです。

そのような理由から、戦闘機が飛行中、地上の管制塔と無線交信する際はそれぞれの部隊や機種別のコールサイン(呼出符号)を使用しますが、戦闘訓練中の際はパイロット固有のTACネーム(tactical name)を使うというわけです。

TACネームは着任した部隊で先輩パイロットや教官から命名されるのが慣例

さて、戦闘機同士の無線交信で使用する、このユニークなTACネーム。

航空自衛隊では慣例的に名付けてくれるのは先輩や教官とのこと。

その事実は愛知地方協力本部で以下のように言及されています。

航空自衛隊の戦闘機パイロットがもつ個人の愛称、ニックネームのことです。訓練や任務で戦闘機パイロット同士が講話する場合などは、このタックネームで呼び合います。着任した部隊で先輩パイロットから命名されるのが慣例のようです。

典拠元 https://www.mod.go.jp/pco/aichi/j_recruit_oshiete_pilot.html

なお、あまりにも奇を衒ったTACネームだと、基地司令など偉い人からダメ出しを受けることもあるといいます。

ちなみに航空自衛隊千歳基地の第二航空団を舞台にF-15イーグルのパイロットたちを描いた映画「BEST GUY」でも、TACネームには興味深い演出があります。

織田祐二が演じる同作の主人公・梶谷二尉にはTACネーム「GOKU(ゴクウ)」が与えられていますが、命名の由来は「第5航空団から(2空へ)来たのでゴクウ」というもの。

故・古尾谷雅人演じる教官の吉永三佐(TACネーム/ゾンビ&デモン)が付与したものです。

梶谷にTACネームが与えられた瞬間、それまで彼をよそ者かつ半端者扱いしていたクセの強い2空のメンバーらが、新たな仲間として笑顔で受け入れる演出に思わずニヤリとしてしまいます。

CB無線で女性を装う悪ふざけの代償は予想以上…?驚愕スリラー映画『ロードキラー』解説

画像の引用元『ロードキラー (原題・Joy Ride)』配給:20世紀フォックス映画

インターネット黎明期、男性が女性のフリをして、ある特定の趣向に好奇心の強い男性を掲示板上で”釣る”行為『ネカマ』が流行ったことをご存知だろうか。

顔が見えない匿名性を利用した、ある種のネット文化とも言えるが、現在でもSNSなどで、騙される(騙す)例があるようだ。

また、とくに最近では中年男性がバーチャル美少女のアバターになりきってしまう『バ美肉』というカルチャーも登場。

そんな今時のネットのノリをCB無線でやろうと考えた浅はかな兄弟が、騙した相手から粘着的に仕返しされる恐怖を描いた作品が2001年の映画『ロードキラー (原題・Joy Ride)』である。

CB無線を使った悪ふざけが相手を激高させ、取り返しのつかない凶悪事件へと発展していくというサスペンス・スリラー映画。

だが、アメリカの広大なハイウェイを背景に展開される追跡劇は、古典的なロードムービーでもあり、単なる閉所的なサイコスリラーとは異なる開放感とスリルを同時に楽しめるのだ。

当然、無線趣味を嗜む我々にも興味深い。

米国のCB無線の文化とは?

CB無線といえば、日本でもお馴染みのフリーライセンス無線。

国内におけるCB無線制度の解説は以下の記事にて。

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

 

では、アメリカのCB無線の概要を含め、映画『ロードキラー』のストーリーを解説していこう。

アメリカにおけるCB無線、いわゆる市民無線は1958年からCitizens Band Radio Serviceとして制定され、道路情報の交換や、事件事故、災害時における緊急通報のために使われている。

とくに70年から80年代にかけては爆発的に利用者が増加し、大衆に親しまれてきた。

送信機がFCC(連邦通信委員会)から保証認定を受け、またFCCの提示するルールでの運用ならば、アマチュア無線のように免許や資格がいらないライセンスフリーラジオであることが、多くの人々に親しまれている理由のひとつ。

米国の自動車旅行ではCB無線機は必須?

アメリカ国内ではドライブツーリストが道路状況、(警察による)交通取り締まり、その他の旅行情報、基本的な社交や友好的なラグチュー(おしゃべり)まで、スマホ全盛の現代でもCB無線を頻繁に使用することは珍しくない。

モーターツーリズムとCB無線はアメリカにおいて、もはや文化と言える。

とくに州間高速道路を東西南北に横断するようなトラックドライバーなどはその道中、人っ子一人いない砂漠や森林地帯のルートを走ることも日常茶飯事。

当然、スマホは圏外となれば事故発生時に危うい。

そのため、彼らトラッカーの無線家が多く、お互いの身の安全(つまり、速度取り締まりや武装強盗出没の情報、事故や急病時のSOSなど)のため、常に相互にリポートを送ったり中継をしている。

アメリカのテレビドラマ『Xファイル』では、トラッカーらしき人々がCB無線でUFO目撃の情報交換をしていたシーンがある。

また、彼らトラック野郎たちがCB無線を駆使して団結し、権力に抗う様を描いたのが1978年公開の映画『コンボイ』だ。

州によっては保安官事務所や警察機関も常にCB無線を傍受している。

非常時に使う緊急通報用チャンネルはもっぱら9ch。

それほどまでにアメリカ社会でCB無線は緊急通報手段として確立されているのだ。

映画『ロードキラー』の劇中では兄のフラーがCB無線の交信可能距離は8キロ程度と答えているが、一般的に遮蔽物が全くない見通し距離なら数十kmでも余裕で交信ができてしまう。

さらに夏場に突発的に発生するEスポの利用によっては、2000キロもの距離を越えるDXも可能。

日本国内であれば、北海道から沖縄まで交信できてしまう距離。これは27MHzという短波無線の特性と利点である。

なお、米国で販売される米国仕様のCB無線は周波数の違いがあり、日本国内では電波法上、使用不可。

ただし、周波数は近似であり、その特性はそっくり。

米国のCB無線で使用が許されているのは26.965〜27.405MHzの周波数にそれぞれ10kHz間隔で割り当てられた番号付きチャネルで、合計40ch。短波帯でAM/SSB変調を使用する。

短波(HF:High Frequency)と電離層を利用すれば外国との交信も可能!

ただし、米国ではCBは依然として人気があるものの、昨今ではFMモードかつUHF帯を使うGMRS(General Mobile Radio Service)に急速に押されつつある。

GMRSはFRS同様の無線機(出力5W又は50W、FRSの14CHを含む30CH)で、米国、カナダ国内で使用が認められている米国規格の無線機である。

なお、日本国内では使用できない。

GMRSは約0.5 ~ 3マイルの交信範囲と予測できる。

CB無線機を使ってトラック運転手相手に悪ふざけ・・・彼らが払った代償とは?

この便利なCB無線を馬鹿な行為に使った兄弟が払う代償。これが本作の見どころだ。

少しの悪戯心が震え上がる大事件に発展させるとは誰が予期しえたであろうか。

酔っ払って騒ぎを起こして収監された兄のフラー(スティーブ・ザーン)を引き取りに行くよう、母親から頼まれた弟のルイス(故・ポール・ウォーカー)。

彼女であるヴェナとドライブのため、ビンテージカーを購入したルイスは乗り気ではないが、兄の身元を引き取りに行くため、コロラドへ向かった。

しばらくぶりの再開に兄弟は感激に浸り、オンボロのビンテージカーで走り出した彼ら。

旅の途中、立ち寄った給油所のメカニックに、フラーは車内のコンソールにCB無線機を取り付けてもらう。40ドルだ。

彼の目的は自動車ツーリストがそうであるように、道路情報を入手するためなのか、果たしてそれ以外の目的があるのか・・・。

一方、弟のルイスはCB無線にあまり興味はないどころか、自分の車の後部にホイップアンテナを取り付けるための”穴”を開けられて苦笑。

さっそくフラーはCB無線のおにぎりマイクを握り締め、州内を走る不特定の運転手らにステートトルーパー(州警察のハイウェイパトロール)による交通取締り情報の提供を願い出た。

『交信求む。西に向かう車はいないか?こちらはブラックシープとマザコン坊や(ルイス)。高速80号を東向きだ!パトがいたら教えてくれ!』

“ブラックシープ(厄介者、鼻つまみ者を意味する)”を名乗るフラーに誰かが応答する。

『ジェームズタウンに一台いるぜ』

2人のオンボロ・ビンテージカーに取り付けられたCB無線機Cherokee Nightrider 150。なお、チャンネル表示は19ch。これは実際に非公式の「高速道路情報」チャンネルとして米国で一般的。州間高速道路を走るトラックの運転手や旅行者が主に使用するのだ。Copyright © 2001 21st Century Fox Inc. All Rights Reserved.

CB無線と親切な運転手の道路情報アドバイザリーにより、しばらくは快適な車の旅になる予定だったフラーとルイスの兄弟2人。

しかし、今となってはバカ兄貴フラーがガソリンスタンドでCB無線を車につけた本当の目的は道路情報の交換なのか、それとも別のところにあったのか不明だ。

直後、雨を気取って語る”レインマン”の交信を耳にしたフラーは彼の気取ったしゃべり方が気に食わない。

そこで、弟のルイスに女のフリをさせ、レインマンをCB無線でからかおうと画策。

レインマン、いや、トラック運転手のラスティ・ネイル。

兄の恫喝に嫌々ながらも裏声で女を装うルイス。

ところが、乗り気ではなかったこの悪戯に最初は戸惑いながらも、だんだんと快感を感じていくルイス。

彼も幼少時代、女の声音で男子をからかっていた経験があり、まんざらではないのだ。

立派な”共犯”となったルイスが名乗るコールサインはcandy cane(キャンディ・ケイン)。アメリカで親しまれている硬い杖(ステッキ)の形のキャンディである。

身長は175センチ、碧眼で肩までのブロンド。麗しき白人美女という設定までつけた。

女の声音を駆使し、ラスティを騙すキャンディこと、ルイス。

ラスティが下ネタに乗っかって来たころを見計らって『バーカ!俺は男だ青葉俊介、ザ・根性!』と、ネタばらしをしてぎゃははと笑って早々に終わりにする他愛のない暇つぶしのジョークのつもりだった。

そう考えていたであろう馬鹿な兄弟。だが、運命の神はかぼちゃワインを許さなかったようだ。

無線機の不調か、はたまたお空の調子か、何らかの混信妨害により、ラスティとの交信が途絶したキャンディ・ケイン、いやルイス。

結果としてラスティはルイスをマブイ女と思い込んだまま、ストーカーに変化。CB無線で『誰か、キャンディ・ケインを知らないか?』と探し始めた。悪夢の始まりである。

フラー主導のこの冗談半分の悪ふざけが、本気で悪意を持った『罠』に変わるのは、彼らが泊まるために訪れたモーテルの受付で、先客の初老の男がフラーを小突いたときだ。

そして運悪く、このときラスティがキャンディケインを呼ぶ声が無線機から聞こえ、車内のルイスは戦慄する。

フラーはこのチャンスを逃すまいと、先ほどの初老の男への仕返しのため、彼の泊まる部屋へ、ラスティを押しかけさせようと画策。

兄に言われるまま、キャンディケインことルイスは、昼間の女の声音でラスティに応答し、モーテルの(初老の男が泊まる)17号室へと誘うのだ。

ラスティを罠にかけて憂さ晴らしをしたつもりのフラー。

だが、完全にラスティの怒りを買ったことにいまだ気がついていない。

その結果、初老の男はラスティに何処かへ連れ去られた挙句『顎を持ち去られる』という大変な悲劇を招いてしまう。

翌朝、当然警察沙汰になり、後悔する彼ら。CB無線での悪ふざけの顛末を正直に保安官に告げたことで直接的な容疑者とはならなかった2人。

だが、厳重注意され、早々に州外へ出て行くように命じられる。

二人もラスティがガチのサイコパスであることを確信し、足早にこの地を立ち去ろうと決意。

しかし、この驚愕の事態を皮切りに、彼らはさらなる恐怖体験へと向かう……。

まとめ…というか、教訓

今回は偶然、相手がガチのサイコパスだったとはいえ、便利で頼れるアイテムも悪意のある使い方をすれば、途端に『インスタントカルマ』の代償が待つ。

とはいえ、20代の男性が無線で女性を偽ることが可能なのだろうか。

これが声変わり期の男子中学生なら、同年代か、やや上の女子として偽ることもできるであろう。

実際にアマチュア無線のレピーター妨害が華やかなりし80年代、声変わり期の思春期男子中学生が、その手の愛好家のおじさんに勝手にYLと思い込まれてハァハァされていたらしい。

先日などは7MHzの交信を途中から聞いていると、「あと、僕は男の子です」と、何かツンとしながら応えている少年ハムがいた。

おそらく全国のおじ局に勘違いされて自身の持つ繊細な「声のアイデンティティ」を傷つけられた経験が何度もあるがゆえ、念のため性別を明言しておきたかったのだと思う。

筆者が聞いても彼の声は少女のそれに聞こえたし、彼が明言しなければ、筆者も彼を高校か大学のアマチュア無線同好会のYLかと思い込み、珍しいなと感心したかもしれない。

ただでさえ、女性が少ない無線趣味。興奮した男性無線家が先入観で声の主を「YL」と決めつけてしまうケースは古今東西なきにしもあらずか。ハァハァ。

CB無線に男が女を偽れる余地はあるのか、正直わからない。

とはいえ、このあと、2作、3作とこのシリーズは続き、変態のラスティは悪の限りを尽くすわけなのだが、楽しむために知ってて馬鹿兄弟をハメた背景もあるのではないだろうか。

余談だが、当初は『スクェルチ(Squelch)』という題だったという。

ご存知、無線通信において信号を選択するためのノイズ遮断技術で、普段はノイズを遮断しておき、音声を受信したときに解放するのがスケルチ。

悪意まで解放させないよう、くれぐれも出来心には御用心。ハァハァ。

GCIでおなじみの航空自衛隊さんのレーダーサイト、敵の無線情報も収集してしまう

登山やハイキングの際、たまに山頂(一等三角点の場合も)にそびえたつ白いドーム状やゴルフボール型の建造物を目撃してしまう場合があります。

これ、実は全国28カ所で全力で目を光らせる自衛隊の『レーダーサイト』です。

その多くは必要性から見晴らしの良い山頂に設置され、まさに『わが国の主権への侵害行為』に対する措置を実施する重要施設。

実は例の無線『GCI』と深い関係あり。

航空自衛隊の戦術用周波数『GCI』解説……公開すると逮捕される!?

その役割を詳しく見ていきましょう。

防空指令所(DC)と連携して対領空侵犯措置を担う

レーダーサイトを配備するのは航空自衛隊航空警戒管制団の警戒管制隊。

稚内から沖縄宮古島まで、全国28箇所が設置されたレーダーサイトでは、日本周辺を飛行する航空機や大陸間弾道ミサイルの監視など、いわゆる要撃管制を支える超重要施設。24時間営業で日本の四方を絶え間なく見張っています。

我が国の領空を侵犯する可能性がある航空機(彼我不明機という)を確認した場合、必要に応じて対領空侵犯措置(スクランブル)が発令され、戦闘航空団(ロシア機に対処する北海道なら千歳基地の第2航空団、青森県三沢市の第3航空団が担任する)から戦闘機が緊急発進。

スクランブルにおいては防空指令所(Direction Center:DC)がレーダーサイトと協力しながら要撃戦闘機に対する目標までのコース指示など要撃管制を行います。

一方、そのロケーションの良さを活かし、とくに短波無線など、外国の無線傍受など知られざる任務も。

HF無線の世界はアングラだった・・・やべえ通信まとめ(傍受の際は当該工作機関から十分に適切な社会的距離を保つ必要あり)

北朝鮮からは日本国内の工作員へ向けて送信される短波による暗号指令があるとされています。

【陰謀論とラヂオ】日本人拉致との関連性を指摘されている北朝鮮によるA3放送とは?

これらは防衛省情報本部で解析され、明日降ってくるミサイルの予測にも役立てられています。知られざる諜報活動は以下のページで詳しくご紹介。

自衛隊さん、無線などからシギント (Signals Intelligence:SIGINT)してしまう

なお、海上自衛隊でもレーダーを用いて監視をする「警備所」が全国にあり、こちらの任務は海上を行き交う船舶の監視となっています。

レーダーサイトはゴルフボール”から”カメの甲羅”へ?

網走分屯基地の三次元レーダーJ/FPS-4
網走分屯基地の三次元レーダーJ/FPS-4。グラスファイバー製のレドームは過去、白色カラーであったが、近年は暗緑色カラーが多い。典拠元 航空自衛隊公式サイト

レーダーサイトの象徴とも言えるのが、”ゴルフボール”型の球形三次元ドーム・レーダー。現在配備されている球形レーダーにはJ/FPS-2、J/FPS-3、J/FPS-4があるほか、さらに高性能のJ/FPS-5も配備。

J/FPS-5は建屋から3面それぞれに飛び出したレドーム部の形状がユニークな亀甲模様をしており、俗称で”ガメラレーダー”とも。

J/FPS-5"ガメラレーダー"
J/FPS-5″ガメラレーダー” 出典 防衛省公式サイト

日本が開発した防空用固定式警戒管制レーダーJ/FPS-5は弾道ミサイルやステルス機も補足できる超高性能レーダー。我が国のミサイル防衛構想であるMDシステムの一翼を担っています。

弾道ミサイル迎撃のための日本の防備とは

ただし、一基あたりの設置費用が100億円以上と高額で、配備は打ち切りに。

今後しばらくはJ/FPS-2およびJ/FPS-3が継続運用されますが、後継のJ/FPS-7の開発も進められています。

山の頂上で気が抜けない24時間態勢の空域監視はまさに最前線

北海道や東北、日本海側など、豪雪地域の冬場のレーダーサイトなら苛酷な環境と言えるでしょう。

道内では奥尻島に奥尻分屯基地があり、神威山山頂にレーダーが設置されています。航空自衛隊北部航空警戒管制団第45警戒群が分屯している北海道当別町の当別分屯基地では実に百人以上もの人員が配置されています。

雪国の厳しい環境下にある当地での勤務はときに命がけ。部外者の通れない敷地内からサイトに通じる道路までの除雪は航空施設隊の自前作業。過去にはあるレーダーサイトで、防衛道路の除雪作業において車両ごと谷へ転落するなどして、2名の殉職者が発生しています。

もともと当別分屯基地は昭和29年に米国空軍が開設したレーダーサイトでしたが、当時米兵と軍属が240名ほど居住しており、当別の街はだいぶ活気づいていたそうです。その後、昭和34年にレーダーと兵舎2棟が自衛隊に移管され、米空軍は撤退。

勤務する隊員たちはサイトの分屯基地内に併設している宿舎で寝起きします。レーダーサイトでは電源が確保できなければレーダー装置を作動させることができず、このため、サイトではいかなる時も電源喪失に陥らないよう、非常用電源の確保も万全。

レーダーサイトは諸職種が混成

レーダーサイトと一言で言っても、総務、人事、その他基地全般に関わる事務を行う群本部や、メイン部隊の監視管制隊、それにレーダーを保守整備する通信電子隊などなど、諸科混成です。また、レーダーサイトの警備は基地警備隊員と、他職種の隊員による当番制。

さらに補給、施設、車両、警備、厚生、給食、会計、消防、除雪などといった、サイト運営に関するあらゆる任務を遂行するための「何でも屋」である業務隊。日々、隊員の腹を満たすのも彼らの仕事です。福岡と佐賀の県境の山頂に位置する背振山分屯基地は元自衛官で漫画原作者の武論尊(史村翔)氏が勤務した部隊としても知られていますが、隊員はやはり九州出身者が多く、毎日の食事はできれば郷土の料理が食べたいとの声が多いことから、同サイトの隊員食堂では給養隊員が日々その声に応えているそう。そのなかでも、佐賀の郷土料理とも言える「シシリアンライス」が人気。これはメシの上に生野菜と、いためた牛肉を載せた料理で、佐賀県の喫茶店ではド定番。無論、隊員にアキが来ないようにアレンジもしています。

そして、航空自衛隊ではからあげに異常なこだわりを持っており、空自の部内ではからあげを、より上を目指すという意味というか願いを込めて『空上げ』を呼称するなど独特の価値観を持っているそうです。このため、各基地および各分屯基地ではご当地版「空上げ(からあげ)」が出てくるのです。

前述の北海道の当別分屯基地でも『当別空上げ』があります。同じく道内の長沼分屯基地(地対空ミサイル部隊)の『長沼空上げ』はジンギスカン風味。青森の車力分屯基地の『車力空上げ』では、やはり摩り下ろしたリンゴをソースに使うなどご当地ならではのアイデアが光ります。

レーダーサイトには幹部の要撃管制員と曹士の警戒管制員が配置されていますが、当然、隊員は航空自衛隊の中でも高い状況判断能力と機密保持能力を持つ者が選ばれます。航空自衛隊の職種でも戦闘機パイロット同様、最前線。希望者の倍率は高く、なれるのは一握りの適格者だけ。僻地手当てもあるよ。レーダーサイトと一言で言っても、いろんな役割を持つ部隊がそれぞれ配置され、メシも特色があるわけ。どの部隊もサイト運営には欠かせないんだね。唐突に飯の話をするのはやめなさい。みんな引いてるよ。

航空自衛隊の分屯基地(Sub air base)の種類

ここで、レーダーサイトが設置される航空自衛隊の分屯基地について、おさらい。

航空自衛隊の分屯基地(Sub air base)には主にレーダーサイトと、地対空ミサイル基地の二つがあります。レーダーサイトでは主に日本の領空に近づく外国機、大陸間弾道ミサイルの監視、外国の無線傍受が任務です。一方、地対空ミサイルが配備されている分屯基地は航空自衛隊の基地や施設を敵の航空機や大陸間弾道ミサイルから防空するのが任務。

通常、これらの分屯基地は基地に比べて敷地はそう広くなく、固定翼機の離着陸も不要なため、ヘリポートのみ。しかし、北海道の八雲分屯基地だけは航空自衛隊で唯一滑走路を有しており『八雲飛行場』があります。滑走路は長さ1800メートルと、基地の滑走路と比べてそん色なく、大型ジェット輸送機も離着陸可能です。95年に函館空港で起きたハイジャック事件で、警視庁のSAP(SATの前身部隊)隊員を秘密裏に函館空港に展開させるため、空自のC-1輸送機が八雲に降り立ったという逸話もあります。

八雲飛行場はバトルオーバー北海道が起きた際に代替滑走路として使用されることを想定しているほか、民間機の緊急着陸の際にも使用が想定されているんだよコナン君。室蘭の崎守埠頭より、八雲のほうが良かったのでは。

つまり、基地も分屯基地のどちらも航空自衛隊の任務上、重要な施設であり、欠かすことができないのというわけです。

警戒管制員も空を飛ぶ!空飛ぶ管制室、E-2Cホークアイ&AWACS

実はレーダーサイトで活躍する警戒管制員は地上以外でも勤務します。それが空中警戒管制機(E-767:AWACS)や早期警戒機(E-2C:AEW)の搭乗員。警戒管制員は適性、健康状態、能力等を満たせば、”空飛ぶレーダー基地”での勤務も可能。また、AWACSには女性乗組員も存在する。フォトジャーナリスト・宮嶋茂樹さんの「空飛ぶ大和撫子」がおすすめ。

航空自衛隊では地上のレーダーサイトとは別に、各部隊が味方の戦闘機に対する管制を行うレーダを載せた航空機を用いて、広大な空域をそれぞれ警戒監視しています。

米軍のグラマンE-2Cホークアイは昭和62年度より航空自衛隊でも”実戦配備”されています。4時間程度の哨戒飛行が可能で、地上や海上のレーダーでは発見できない遠距離目標を空の上から補足できる能力を持っています。

さらに、250もの目標を同時に追尾して30の目標を友軍機に要撃管制することも可能。胴体の上には大きな円盤型レーダーが搭載され、毎分6回転して360度をカバーし、最大で500キロ以上も離れた遠距離を飛ぶ航空機を発見できます。E-2Cホークアイはパイロットとコパイ、そして電子システム担当のレーダー手の5名クルーで運用されています。

低空侵入機の早期発見は重要な任務ですが、自衛隊の歴史の中でも汚点となったソ連空軍軍人による函館空港ミグ強行着陸がE-2Cホークアイの導入理由となっています。さらに捜索・救難においても活躍し、通信の中継なども行います。E-2Cホークアイは配備から30年が経ち、防衛省では新たにE-2Dアドバンスド・ホークアイの導入を決定しています。

さらに高性能!早期警戒管制機 AWACS エーワックス

E-2Cホークアイも要撃管制可能でが、その能力は限定的。平成12年からは新型の「早期警戒管制機」として日本の空の目を担う、超高性能レーダー機E-767、通称AWACSが配備されましたが、本機は敵機を機上レーダーで捕捉、さらに味方の迎撃機の誘導(要撃管制)機能がより強化され、機体を大型化かつジェット化したことにより、乗員の負担を軽減し長時間の哨戒任務を可能にしています。

E-767 AWACSにも約10秒で一回転する皿型レーダー・アンテナを載せています。レーダーは地上で電波を発射することは法令で許されないほど強力。そのため、AWACSには強烈な電波から乗員を防護する目的でコックピット以外に窓がありません。強い電磁波の影響で乗員の子息が将来女の子ばかりになってはたまりません。アマチュア無線家かよ……。

なお、安全な自軍の制空域でのレーダー監視が任務であり、戦闘空域での飛行は考慮されないため、固定武装はなく、有事では護衛機が随伴。

長時間のフライトでは当然、乗員の食事も空の上で機上食だが、乗員にはレトルトタイプや弁当の食事が配給されています。密閉された4万フィートの上空で電子機器に囲まれつつ牛丼を食べるのも、山の上のゴルフボールのようにシュール。

なお、AWACSは空中目標のみを補足する空飛ぶレーダーだが、アメリカ軍には地上の車両などを補足することが任務のE-8 J-STARS(Joint Surface Target Attack Radar System ジョイントスターズ)も配備しています。

国際緊急周波数の解説!救難要請から領空侵犯まで!航空自衛隊のGCIとも関わりあり

 

スクランブル(scramble)とは主に外国の航空機による国際法に違反するような領空侵犯および、領空侵犯のおそれに対する航空自衛隊による「対領空侵犯措置」のための緊急発進です。

日本の空は24時間絶え間なく、航空自衛隊のレーダーサイトや早期警戒機、さらには内閣官房の運用する情報収集衛星によって監視されていることはレーダーサイトの記事でも言及のとおりです。

https://jieitaisaiyou.com/%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88/

ひとたび彼我不明機による領空侵犯が生起すると、基地にはスクランブル警報が鳴り響き、真夜中や吹雪であってもエンジンに火を入れて漆黒の空へと飛び立ち、実際の迎撃対処行動『インターセプト』に移行するのが通常の流れ。

激しさを増す日本周辺空域における安全保障環境

近年では周辺諸国との緊張の高まりから、航空自衛隊のスクランブルは多発傾向にあります。

周辺国と我が国の防空識別圏および領空を示した図(右)と空自のスクランブル対象となった外国機の飛行ルート図(左) 。 図の出典 航空自衛隊公式サイト

ロシアが『パトロール飛行』と称して行う日本近辺に対する偵察・哨戒飛行ではウラジオストク近郊の基地からTu-95戦略爆撃

図の出典 航空自衛隊公式サイト

機などを発進させ、日本海側または太平洋側からのいずれかの南下で、わが国の領空をかすめてほぼ一周する間に自衛隊や在日米軍を挑発して、その対処能力や無線通信の情報収集を行うのが通例です。

北海道の防空を担う空自第2航空団(千歳)では主にロシア機への対処が多く、必要に応じて三沢基地の第3航空団からも戦闘機がスクランブル発進しています。

一方、九州沖縄の西方、尖閣諸島周辺では領有権をめぐって、中国軍機による威嚇的な活動が頻発しており、空自南西航空方面隊ではさらなる警戒を強めています。

 

 

 

対領空侵犯措置の法的根拠は

領空侵犯に対する措置、対領空侵犯措置を明記した自衛隊法第84条(領空侵犯に対する措置)は以下のとおりです。

第84条(領空侵犯に対する措置)
長官は、外国の航空機が国際法規又は航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。

つまり外国航空機への退去行動はこの84条が根拠となっています。

防空識別圏と領空侵犯、その対処方法

航空自衛隊では防空のための作戦も定めています。具体的には以下に示すとおりです。


航空侵犯に対しては、「侵入する航空機の発見」「発見した航空機の識別」「敵の航空機に対する要撃(来襲する空中目標を撃破するため、戦闘機を発進させまたは地対空誘導弾を発射させること)・撃破」といった防空のための作戦が遂行されます。

引用元 航空自衛隊公式サイト
http://www.mod.go.jp/asdf/about/role/bouei/

日本の防空識別圏は1945年にGHQが制定した空域をほぼそのまま使用しており、航空自衛隊の対領空侵犯措置の実施空域に指定していますが、これは日本の領空の範囲を示してはいないことに留意が必要です。

わが国に対して、防空識別圏を超えて周辺国軍の戦闘機や爆撃機によるDQNの煽り運転みたいな威嚇因縁挑発行為を領空侵犯と呼び、国籍などの不明な航空機を彼我不明機(ひがふめいき)と呼びます。

意図を持った悪意による威嚇か、単なるコースの間違いかはレーダーで当該機の航跡を辿ればすぐに判明します。

領空侵犯機に対しては、スクランブル発進した戦闘機が接近し、侵犯機が官民のいずれであるか、韓国が飛ばしたチョコパイと宣伝ビラ付きの気球か、北朝鮮の時限タイマー付きサリン気球か、中国による他国の偵察気球か、宇宙人のUFOかその他か、パイロットが目視で直接確認する必要があります。その上でデジタル一眼レフを使って乗員が侵犯機を撮影します。

侵犯機が有人の外国軍用機であったなら、レーダサイトまたは戦闘機乗員が直接、国際緊急周波数(ガードチャンネル)で「貴機は日本の領空を侵犯しようとしている。進路を変更せよ」と周辺国の複数の言語で呼びかけて警告を行います。

国際緊急周波数の解説!救難要請から領空侵犯まで!航空自衛隊のGCIとも関わりあり

しかし、侵犯機が空自機の警告を無視して挑発的な侵犯を続けたならば、空自の対領空侵犯措置行動はより重いフェーズへと移行。実弾発射の信号射撃による警告や、日本国内の基地へ強制着陸を命じる手はずになっています。

信号射撃警告については1987年、領空侵犯を行ったソ連空軍機に対し、空自の戦闘機が実際に20mm機関砲M-61A1を発射して警告を行った例もある。

HUD越しに見た空中戦の世界

単なる挑発が取り返しのつかない事態にならないとも限りません。しかし、自衛隊では日本国憲法に則って、とくに慎重に対処しているのが実情です。自衛隊が後に「悪質」と公式表明したこのソ連機侵犯事件でも撃墜は行わず、アメリカ政府にその慎重な対応を高く評価されています。

上記の図中にある「CAP」とはCombat Air Patrol、日本語で戦闘空中哨戒あるいは空中警戒待機と呼び、対象航空機の接近に対し、速やかに対処できるようにスクランブル用の戦闘機を事前に上空待機させておく戦術です。Combat Air Patrolの態勢では戦闘機が効率的に空中警戒を行えるよう、滞空時間を伸ばすための空中給油機も必要です。

図中では戦闘機のみならず、敵機の攻撃から基地を守るため地対空誘導弾を配備する高射(ミサイル)部隊も連携して動いているのが分ります。

このように領空侵犯事案が発生すると、第一義的に航空自衛隊が対処する手はずになっており、スクランブルがかかると、各部隊および受信マニアがそれぞれ警戒体制に突入します。

領空侵犯機はどのような航空機か?

北方空域と南西空域の防空

北方空域ではロシア軍の航空機による領空侵犯、また南西空域においては中国空軍機による恣意的、挑発的な領空侵犯が相次いでおり、近年では国籍不明の無人機と見られる航空機の問題も起きており、2020年6月には正体不明の気球が宮城県仙台市上空に現れ、社会が騒然となった事は記憶に新しいでしょう。

過去、航空自衛隊が公表している領空侵犯事件の資料によると、侵犯機には戦闘機のほか大型の爆撃機、それに情報収集活動を行う電子戦機などが日本周辺へ飛来しています。

とくに「Tu-95」と呼ばれるロシアの大型の戦略爆撃機、さらには電子偵察機は日本列島付近を「パトロール」と称して威嚇的に周回し、自衛隊や在日米軍を挑発しつつ、その対応能力や無線通信などの情報を常日頃から収集。

航空自衛隊によるスクランブル発進の代表的な事例であった70年代の”東京急行 “でおなじみ、Tu-95の尾部機関砲。通常、尾部機関砲は上向きでロックされており、インターセプトされても、ヘタに動かさず「戦意は無い」ことを表明するという”仁義”らしき国際マナーもあるっちゃあるんですけど、この尾部機関砲には冷戦中の面白い話があります。

迎撃に上がった米軍要撃機のパイロットに対し、ソ連機の尾部機銃手(ガナー)が嬉しそうにピースサインをしたり、コーラの缶を見せたり大はしゃぎ。米軍戦闘機が撮影したそれらの写真は当時、日本の雑誌にも掲載されたが、空自機には「平和」と漢字で大きく書いた紙を見せたこともあるそうです。斜め上の煽りなんでしょうか?

現代の大型爆撃機では尾部銃座はことごとく廃止されており、Tu-95の尾部銃座にも人員削減でもはや乗員はいないとか、遠隔操作式になったなどの話もありますが、冷戦時代の思わず頬が緩むような逸話です。

ところが、日本の防空にとっての脅威はロシアにとどまりません。こちらは航空自衛隊の邀撃機が撮影した中国空軍のH-6戦略爆撃機。H-6は巡航ミサイルや爆弾、機雷なども投下できる多目的戦略爆撃機で、日本国の脅威です。中国軍が日本を侵略する際、離島に自衛隊があらかじめ仕掛けておいた地雷をH-6は燃料気化爆弾の投下により、効率よく破壊するとみられています。

“5分待機”のアラート任務とアラートハンガー

過酷な任務をこなす航空自衛隊のスクランブル要員は領空侵犯による突然の緊急発進に備えるため、滑走路のすぐ近くに設けられている『アラートハンガー』と呼ばれる格納庫にて、実弾を装填しミサイルを翼に吊り下げ、いつでも飛び立てる要撃戦闘機と共に、ハンガー併設の待機室にて交代で24時間待機をしています。

この待機状態を『アラート任務』と呼びます。ひとたび、スクランブル発進のアラームが鳴り響けば、彼らスクランブル要員は即座に待機室を飛び出して格納庫へ走り、F-15にラダー(梯子)で駆け上がり、3分以内で離陸準備、5分以内に離陸する決まりです。通称『5分待機』です。当然、アラート待機室詰めの彼らパイロット、整備員のため、3度の食事も食堂から車で運ばれます。

ロシア機対処のため、千歳基地から飛び立ったF-15の場合、札幌市を越え、石狩湾上空に抜けると、コンバットopenに向け、20mmバルカン砲の作動チェック。

しかし、航空祭でのスクランブル発進実演展示では外国に手の内を明かすことを避けるため、わざと時間をかけてノロノロと手際悪く発進しているのが恒例です。なんちゃって。

航空自衛隊のレーダーサイトとスクランブル任務まとめ

このような外国軍機の対処に航空自衛隊は今日も24時間営業しています。

  1. レーダーサイトは航空自衛隊の分屯基地。任務は外国の航空機や弾道ミサイルの監視と無線の傍受
  2. レーダーサイトが未確認飛行物体を捉えれば直ちに要撃機がスクランブル発進、要撃管制も行う
  3. レーダーサイトは侵犯機に対して国際緊急周波数による警告通信を行う
  4. レーダーサイトは機密性が高く、一般公開されても敷地内での撮影は禁じられる
  5. レーダーサイトには任務ごとに各種部隊が配置される
  6. レーダーサイトの警備は空自の基地警備隊および他職種の隊員が当番制で行う
  7. レーダーサイトのごはんは美味しい
  8. レーダーサイトの警戒監視によって日本の空は24時守られている

年に一回、開庁記念日に一般の人も見学できる場合がありますが、行われない年度も。機密のカタマリである自衛隊レーダーサイトは、レドームそのものから全景まで写真撮影を制限される場合があります。

参考文献

日本防衛秘録/守屋武昌、MAMOR 2013年5月号

DJ-X100(受信改造済み)では電源投入後に『誓約』画面が表示される意味とは

無線の受信に関しては、各国で異なる法律が適用されますが、一般的に「受信」と「送信」では法的な取り扱いが大きく異なります。

アマチュア無線では、とくに無資格・無免許での運用が違法行為。その他にも周波数の逸脱や営利業務での利用など。

では、受信機で受信するだけなら大丈夫?いいえ、気をつけなければいけません。

特に刑事責任が問われるのは、受信した内容を違法に利用したり、他者に害を与える目的で使用した場合が多いです。

裏コマンドを入力したDJ-X100(受信改造済み)では電源投入後の起動画面にて以下の文章が表示されます。

『私は、電波法上、受信した通信の存在・内容を漏洩したり窃用したりすると刑事罰が課されることを理解しています。』

筆者の知る限り、受信機を使うにあたってこのような『同意』や『誓約』に準じた画面が用意された機種は過去になし。

上記の選択画面で『はい』または『いいえ』を選択可能ですが、実はこの画面で『いいえ』を選び、同意しなかった場合でも本機を使用可能。

ただし、せっかく広がった各種拡張機能は使えません。

ここで『はい』を選んで同意すると『私が拡張機能を使う目的は窃用ではありません。そのようなことは絶対にしないと誓約します』さらに『拡張機能を使うにあたり第三者の権利を侵害しない範囲でのみ使用することを誓約します』との内容の2つの誓約確認画面が表示されます。

まさに法的な『誓約書』にも似た文面です。

これら1つの同意と2つの誓約に電源投入のたびに毎回従わなければ、タクシー無線のT61モード復調、コード解析など拡張機能が使えないというわけです。

同意も誓約もせずに使ってたら、この前まであったデジタルモード一覧からT61モードなどがごっそり消えたり、”虫めがね”も機能せず、大慌てした筆者です。

POCSAG方式の文字データに対応

実は上記の誓約画面に最も関連しそうなのが、タクシー会社が個別のタクシーへ配信するPOCSAG方式による文字データ。

デジタル・タクシー無線はDJ-X100でより簡単に受信可能に!

なんと、受信改造後のDJ-X100ではT61復調のほか、POCSAG方式の文字データ受信と表示にも対応し、最大3件までの文字データを保持し、本機画面上で閲覧できます。

文字データに含まれる内容は客の個人情報や配車時間、停車位置などセンシティブなものまであり、電波法のギリギリを攻める受信機がDJ-X100というわけです。

とはいえ、これには発売当初からDJ-X100の徹底解説を行なっている『ラジオライフ』誌面でも慎重な立場を表明。

文字データの厳密な取り扱いをすべきとするほか、同誌編集長もXで『誓約画面が3回も出ることを理解してください』と注意喚起。

DJ-X100の秘話解析についてはラジオライフ2023年7月号で紹介されています。

なお、上に挙げた書籍はAmazonの『キンドル・アンリミテッド』に入会すれば、月額980円で読み放題・無料で読むことができます。

Amazon Kindle Unlimitedに入会すると、月額980円で三才ムックが出版している多くの無線関連書籍をはじめとして、キンドル本として販売されている本(小説、コミック、雑誌、写真集など)のうち、100万冊の電子書籍がでどれも無料で読み放題です。Kindle端末がなくても、Kindleの電子書籍はパソコン(ブラウザやアプリ)やスマートフォン(アプリ)で読むことができます。この機会にぜひ入会しませんか。

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まとめ

無線の受信趣味で刑事責任を問われることは少ないですが、内容を不正に漏洩したり、法律で保護された通信を漏洩目的で傍受すると違法行為となります。受信機を使用する際は、法律に従って正しく利用したいもの。

いずれにせよ、DJ-X100の裏機能(拡張機能)を使うユーザー側はアルインコ側に『法を守ったうえで製品を使います』と誓約済み。

私たちの趣味は電波法が深く関わっているのは言うまでもなく、この法に拠れば、その内容はもちろん、通信があった日時、場所、”通信の存在”そのものも漏らしてはなりません。

したがって、このサイトに書いている”受信内容”の例は存在しないフィクションです。

そうしなければ、例の『ICDU』と『TYPX』モードのようにアップデートで塞がれてしまう可能性も。

DJ-X100に『ICDU』と表示されています。

https://twitter.com/jm3lgf/status/1668929796347428864

DJ-X100に『TYPX』モードと表示されています。

北海道の無線発祥の地・落石無線送信所は飛行船ツェッペリン伯号やリンドバーグとも交信した歴史的な無線局

北海道根室市の根室半島の付け根に位置し、太平洋に突き出た落石岬(おちいしみさき)。20世紀初頭、その落石岬(現・灯台横)の付け根にかつて開局した無線局が北海道の無線発祥の地ともされる『落石無線送信所』です。のちに受信所は根室の桂木へ移され、別々の運用となりました。

1908(明治41)年、北海道最初の無線局として設立され、1920年代から1930年代にかけて、日本とヨーロッパ間の通信を担う海岸局として開局した落石無線送信所は大正4年、カムチャッカ半島ペトロパブロフスクの電信局と日本初の国際無線通信を開始。

昭和4年にはドイツ飛行船『ツェッペリン伯号』と日本初の対航空機通信に成功。

さらに同6年にはリンドバーグの太平洋横断飛行に際して通信や航法援助も行うなど、日本の通信史において重要かつ特筆すべき役割を果たしています。

1922年にスウェーデンで開局した”ヴァールベリの無線局”も同じく歴史的な無線局として有名ですが、落石無線送信所はまさにその日本版と言えます。

【ロマン】世界遺産「ヴァールベリの無線局」はモールス信号を使用し大陸間の重要な通信手段を担った

落石無線送信所の設立と使命

落石無線送信所は1908(明治41)年に開局、ヨーロッパやアメリカとの国際無線通信を担う施設として稼働を開始。北海道根室の落石岬は、ユーラシア大陸に近い位置にあるため、地理的に通信の中継地として理想的であるほか、北米航路の付近でした。

特に、この時代の通信手段として短波とモールスは最先端技術。海底ケーブルに比べて距離や地形に制約されないことから、無線送信所は国際通信インフラの要として期待されていました。

  1. 長距離航路の重要地
    ヨーロッパとアジア、アメリカを結ぶ航路の要所として、根室の落石岬は極めて重要な位置にありました。
  2. 先進的な技術設備
    当時の最新技術を用いた無線設備が整備されており、国際通信の重要な拠点となっていました。
  3. ツェッペリン号との交信以外の業務
    公衆電報・遭難信号・気象通報・航行警報など日本国内外の通信インフラを支えました。

落石無線送信所の生活環境

落石岬での生活環境は厳しく、ときには不便だっとのことですが、それでも同所には居住棟が5棟・格納庫・共同浴場・テニスコートなど、最低限の居住環境と文化的な施設が整備されたとのこと。当時、居住区となっていた落石宿舎では職員の家族を含めて50人前後が生活していたそうです。

出典 http://www.nemuro-footpath.com/ochiishi/2011/04/post_37.html

なぜ受信所と送信所を切り離したのか?

本来、無線局は受信と送信を同一場所で行う場合が多いものですが、短波無線では送信機の強力な電波発信のため、その近くに受信機を配置すると受信機がノイズで干渉され、微弱な信号を受信しづらくなります。

送信所は、できるだけ広範囲に電波を届かせるため、電波を効率よく送信できる平坦で障害物の少ない場所が求められました。受信所は微弱な信号を拾うため、静かな電波環境(ノイズの少ない地域)が必要でした。通常、受信所は市街地や送信所から離れた、電磁的干渉の少ない静かな場所に設置されます。

これらの理由から、通信品質維持のため、受信所と送信所を別々に設けることもあります。

落石無線送信所の場合、受信所は送信所のある落石岬から20km離れた当時の根室町桂木に設けられました。

落石無線送信所、外国の航空機を通信で援助

落石無線送信所は1920年代から1930年代にかけて日本と世界をつなぐ重要な通信拠点でしたが、単なる通信施設にとどまらず、世界の通信史において重要な存在としても注目されます。

1929年、ドイツ飛行船・ツェッペリン伯号と日本初の対航空機通信

その代表が1929(昭和4)年に成功したドイツ飛行船「ツェッペリン伯号」(LZ 127)と日本初の対航空機通信です。

これは巨大飛行船による世界一周飛行という壮大なプロジェクトにおいて、日本が当時の国際社会で果たした役割を果たしたことを示すエピソードです。

LZ 127、愛称「グラーフ・ツェッペリン」(Graf Zeppelin…ツェッペリン伯号)は長距離航行が可能でヨーロッパからアジア、さらにはアメリカや南極に至るまで飛行できました。同号が補給のため、1929年8月19日、茨城県の霞ヶ浦海軍航空隊基地(霞ヶ浦海軍飛行場)に着陸したのです。

ツェ号は、1929年8月7日にドイツのフリードリヒスハーフェンを出発し、世界一周飛行を敢行。この壮大なプロジェクトは、飛行船が持つ長距離航行能力と航空機による旅客運送の可能性を示すものでした。ツェッペリン伯号の全長はボーイング747大型旅客機の約3倍となる236メートル。乗り込める乗客はわずか20名。

ツェ号はヨーロッパからシベリアを通り、北海道西部の日本海側上空を経由してアメリカへ向かうルートを採りました。この間、ツェッペリン伯号と無線通信を担ったのが、北海道の落石無線送信所。ツェッペリン伯号と同送信所が交信し、航路上での情報提供や通信中継を行いました。

超巨大な飛行船はゆっくりと遥かドイツからユーラシア大陸を経て北海道の神威岬上空へ差し掛かりました。ツェ号の実際のコースは太平洋側の根室付近ではなく、日本海側の寿都村(現:寿都町)付近を飛行した記録が残されています。この地域の人々は比較的低高度を飛ぶツェッペリン伯号を目撃しており、空に浮かぶその「巨大な鯨」が大きな話題となりました。

このため、根室の人々はツェ号を目視できなかったと思われますが、短波とモールスにより、航路や気象情報の提供、無線による安否確認などが行われました。この際、無線通信士たちが総力を挙げて交信を成功させたと伝えられています。

この交信は日本国内でも話題となりました。

リンドバーグ、空路で来道

また落石無線送信所は1931(昭和6)年7月、アメリカの飛行士であるチャールズ・オーガスタス・リンドバーグ(Charles Augustus Lindbergh)による航路調査のための飛行でも、通信に一役買い話題となりました。

リンドバーグは妻で無線通信士のアンを伴って、水上飛行機「ロッキード・シリウス」号で、千島列島を経由して北海道まで飛行。霧や天候不良が多い地域での航法は非常に困難でした。

落石無線送信所は、この航路でリンドバーグが安全に根室港へ到達するための重要な無線援助を提供しました。

その後の落石無線送信所

1930年代以降、無線通信技術はさらに発展し、落石無線送信所の役割は一時的に薄れましたが、第二次世界大戦中には再び軍事通信の拠点として利用されました。

1933(昭和8)年の三陸大津波の際には、当時の釜石漁業無線局の宇佐美敏男無線電信技手が国際遭難周波数を使い、落石無線局や千葉県銚子市の銚子無線局と交信。県に津波被害の第一報を伝えています。また、1952(昭和27)年3月4日の十勝沖地震では、落石無線局が浜中村霧多布の被災住民のための通信に活躍。

落石無線局は1966(昭和41)年に電電公社の札幌中央電報局に統合され廃局となりました。

受信所は解体され、現在では当時の送信所跡が残るのみです。関係者の一部は記念として、送信所で絶縁体として使われていた重たい「碍子(ガイシ)」を漬物石として使ったともされています。

無線局の歴史的な役割は今も無線通信や航空史に関心のある人々には興味深いものです。

【ロマン】世界遺産「ヴァールベリの無線局」はモールス信号を使用し大陸間の重要な通信手段を担った

1920年代、大陸間通信の要として活躍していたヨーロッパのとある中立国の無線局。若くして女性電信手として無線局に配属された主人公のエルザ・リンデンはモールスを通じて重要なメッセージを世界中に届ける責任を負う。大陸間の緊張が高まる中、エルザはある極秘メッセージの送信を任され、それが彼女自身や海軍士官の兄の運命、そして世界の未来を左右するものだと気づく。果たして彼女は、その任務を全うできるのか?『ヴァールベリの婦人通信手』

そんな漫画の構想を思わず練ってしまいそうになるロマンあふれる無線局が実際に存在します。

ヴァールベリの無線局、あるいはグリメトン無線局(Grimeton Radio Station)は、スウェーデン南部のヴァールベリ近郊に位置する初期の長波無線通信技術を代表する無線通信施設であり、世界遺産です。

設立された背景には第一次世界大戦後、国際通信の需要急増があります。

スウェーデンとアメリカ(ニューヨークのロングアイランド)間の長距離無線通信で、海底ケーブルがまだ発達していなかった時代、主に商業通信や外交通信といったモールス信号を使用した長波通信によって大陸間の重要な通信手段を担いました。

アレクサンダーソン発電機(Alexanderson alternator)を使用し、高周波電波を生成する画期的な技術で、長波(17.2kHz)通信を可能にしました。

コールサイン「SAQ」で特別記念局運用も

ヴァールベリ無線局が稼働していた時代の呼出符号は「SAQ」。

現在も年に数回、世界中のラジオ愛好家や無線通信愛好者に向けた記念運用時に使用されています。

SAQの記念運用を企画・実施するのは「アレクサンダー協会(Alexander Association)」です。

画像の出典 Alexander Association https://alexander.n.se/en/the-alexander-association/

最近の運用例

  • 国連デーの運用 毎年10月24日ごろに行われる記念運用。
  • クリスマスイブ運用 特別な祝日運用で、これも多くの受信報告が寄せられるイベントです。

送信周波数は17.2 kHzでモールス信号によるオンエアです。

ただ、残念ながら日本国内での受信はアンテナの向きからNG。

Web上に公開されているSDR受信機にアクセスし、リモートSDRでの受信が良いでしょう。

ヴァールベリの無線局と中立国スウェーデンの立場

ヴァールベリの無線局が設立された理由はスウェーデンは戦時中も中立を保っていたこと。

さらに、地理的な位置や技術的な能力から通信の拠点としても理にかなっていました。

当初は商業や外交通信などの平和利用が主でした。

海底ケーブルが発達すると、超長波送信だけにとどまらず、短波帯、FM放送、テレビ放送の送信も行っています。

また、軍事目的にも利用され、1950年代から1996年の間は同国海軍の潜水艦への送信も行われました。

超長波(VLF)と潜水艦通信

ヴァールベリの無線局が送信していた周波数は主に17.2 kHz。

これは長波(Low Frequency, LF)と呼ばれる周波数帯域、HFよりもさらに低い3 – 30kHzです。

東京のNHK第一放送の周波数がAMで594kHzですから、圧倒的に低い周波数です。

この極端に低い周波数のため、信号が減衰しにくく、地球規模の通信が可能です。

低周波のため、海洋や地形の影響を受けにくい点も利点です。

VLF波長は10 – 100kmととてつもなく長いため、アンテナが問題となります。

超巨大な長波送信用のアンテナを支えるため、高さ127mの6本の鉄塔が直線状に並ぶヴァールベリの無線局の構造は壮観。

技術史においても独自性を持っています。

長波は潜水艦との通信に最適

潜水艦と地上基地との通信は、長波(LF:Low Frequency)や超長波(VLF:Very Low Frequency)が優れています。

通常、潜水艦は深い海底を潜航し、作戦を遂行し、その際の通信はHFよりもさらに低いVLF(VLFは3 – 30kHz)で交信します。

米国海軍や日本の自衛隊でも同様にVLFで通信を行っています。 出典 海自えびの送信所の取材 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1029795?page=3

超長波(VLF)は長波(LF)よりさらに深く伝播し、潜水艦が浮上せずに通信を受信可能にします。

第二次世界大戦

ドイツ海軍の潜水艦(Uボート)も長波通信を利用。イギリスによる暗号解読作戦(エニグマ機の解読)が重要な役割を果たしました。

そのほかの長波通信の利用

現代では衛星通信や光ファイバー技術が主流となっています。

しかし、現代でも長波通信はその伝播特性や信号の安定性から、信頼性の高い補完的手段やバックアップ技術として利用されています。

航空管制 NDBでの使用

LORAN 電波航法システムの一種。船舶や航空機で利用されます。GPSの普及により多くの地域で廃止されましたが、一部で運用が続いています。

標準電波 標準電波は電波時計の時刻修正に利用されます。福島県のおおたかどや山と佐賀県のはがね山から送信されています。

鉄道無線 地下鉄などで使用されています。

まとめ

1924年に完成したヴァールベリの無線局は1996年に運用を停止しましたが、世界で最も保存状態が良い歴史的な無線局の一つ。

この技術を使用した無線局は世界に数カ所しかなく、完全な形で残ったうえ、現在も動態保存がされているのはヴァールベリの無線局が唯一です。

そして、ヴァールベリの無線局が担ってきた長波通信は今なお、現代社会で利用されています。

なお、日本にも歴史に名を残す無線局として「落石無線局」があります。ドイツ飛行船ツェッペリン伯号と交信した北海道根室の無線送信所です。

北海道の無線発祥の地・落石無線送信所は飛行船ツェッペリン伯号やリンドバーグとも交信した歴史的な無線局

【地球終了のお知らせ】「スカイキング、応答するな」米軍が核攻撃を指令する短波無線HF-GCS

「認証コード、アルファ・チャーリー・エコー、ロミオ・セブン・ナイン」

これを聞いたとき、我々は何が起きているのか深く想像します。そしてその想像が、往々にして最悪のシナリオへと向かいます。

アメリカ空軍で配備される『高周波グローバル通信システム・HF-GCS (High Frequency Global Communications System)』。

それは原子力艦隊を含む世界中の米軍航空機に対する米国空軍の管轄するHF系指揮統制通信です。その歴史は古く1950年代に遡ります。

日本の防衛省防衛研究所によれば以下の通りです。

短波(HF)帯を使用して飛行中の戦略爆撃機などに核攻撃命令を送信するための地上固定通信施設として、米空軍の HF-GCS(High Frequency Global Communications System)がある

出典 https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/pdf/2022/202203_07.pdf

米国メリーランド州にあるアンドリュース空軍基地(メインステーション)にHF-GCS管制センターが置かれ、日本の横田基地を含む世界13カ所の米軍基地(サブステーション)から送信され、米空軍基地、米海軍航空基地、米海兵隊航空基地、米陸軍飛行場、民間空港の空軍予備隊または空軍州兵施設、陸軍予備隊または陸軍州兵の航空支援施設間の世界規模での通信を担っています。

ロシアの「UVB-76」もナンバーステーションまたはHF-GCSと似た用途の軍用無線局と推測されています。

ちなみにUVB-76はその占有する周波数で美少女アニメの歌や、君が代を流されて妨害されてます。

【陰謀論とラヂオ】ロシア軍の短波無線局『UVB-76』が電波ジャックされ日本の美少女アニメの主題歌が流れた?

HF、つまり短波無線の世界はときに非合法や陰謀論めいたアングラでミステリアスな世界観を醸し出すもの。

「何か隠されている」という要素が人々の興味を引くとともに陰謀論的な見方を助長します。

HF無線の世界はアングラだった・・・やべえ通信まとめ(傍受の際は当該工作機関から十分に適切な社会的距離を保つ必要あり)

ただし、日本の自衛隊が開かれた公式サイトで言及している通り、HF-GCSは米国政府ならびに軍が指揮命令システムとして公表しており、非公然ではありません。

HF-GCSはこれら究極命令の伝達が目的ですが、実際には日常的に気象状況、給油手配、基地に航空機の搭乗者の人員数、機内の不具合報告といった業務無線として利用が普段の顔。

しかし、いったん世界情勢の緊張が高まれば、その本来の目的に回帰。

核戦争が起きる前段階では緊急行動メッセージ(EAM)や、EAMを遮るほど優先度の高い通称「Skyking(スカイキング)」と呼ばれるメッセージが送信され、恐ろしい指揮統制通信の面目躍如です。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件の際には、HF-GCS通信がかつてないほど増加したとされています。

当然ながら、HF-GCSで行われる通信のうち、重要度の高い交信や命令はNATOフォネティック・コードで暗号化されており、解読コードを持たない外部の傍受者による解読(答え合わせ)は不可。

しかし、冷静かつ機械的な声で「認証コード」を繰り返し読み上げる米軍コマンドの一方的な指令を受信すると、映画の世界にいるような感覚に没入できます。

主な目的は三つ

HF-GCSはホワイトハウス通信局 (WHCA)、統合参謀本部 (JCS)、航空機動コマンド (AMC)、航空戦闘コマンド (ACC)、空軍航空情報局 (AIA)、空軍資材コマンド (AFMC)、空軍宇宙コマンド (AFSPC)、米国欧州空軍 (USAFE)、太平洋空軍 (PACAF)、航空気象局 (AWS) といった部隊間で円滑に命令を伝達するためのシステムです。

米軍の地上軍事基地から戦略爆撃機、空中給油機、および他の航空機に指示を送るために使用されます。

EAM (Emergency Action Messages)

緊急行動メッセージ(Emergency Action Messages)は核攻撃の作戦指示を含む可能性がある重要な暗号指令で、繰り返し送信されることがあります。空中指揮所が飛行中に発令します。

航空機からの非機密電話

航空機に搭乗している操縦士や搭乗員が地上へ公務として非機密の電話をする際にもこのネットワークが利用されます。通常はDSNに接続されます。

周波数と変調方式

アマチュア無線によるHF通信がそうであるように、HF-GCSも低い周波数、単側波帯(Single Sideband, SSB)変調方式のうちのUSBモード、電離層を利用して地球の裏側まで電波を届かせることができます。

短波(HF:High Frequency)と電離層を利用すれば外国との交信も可能!

ただし、デジタルのALE送信モードも使用されています。

主な HF-GCS 周波数

HF-GCSは4.721kHzから15.016kHzまでの間に主要周波数が複数あります。以下はよく知られる周波数の例です。運用状況により変更される可能性があります。

  • 4721 kHz
  • 6739 kHz
  • 8992 kHz
  • 11175 kHz
  • 13200 kHz
  • 15016 kHz

上記のうち、主要な周波数は11175 kHz(昼間)と4721kHz(夜間)で24時間、365日送信しています。

日本国内某所で筆者が受信した際は、日本時間で平日の15時30分すぎ。周波数は11175kHzでした。受信機材はいつものD-808。

XHDATA D-808がすごかった!HF帯SSBモードの洋上管制や海上自衛隊アツギオーシャニック、7MHzも!

ノイズが酷いながらも、航空特殊無線技士の送話試験で自信なさげな受験生のような抑揚のない男性の声で「ゴルフ、アルファ、フォクストロット……」と読み上げる声が、とても不気味。

一回の送信時間は2分弱で送信間隔は15分でした。

これが1日の間、完結的に送信されているはずです。

世界の終わりは緊急行動メッセージ「EAM」とともに…

「緊急行動メッセージ(Emergency Action Message)」は米軍の核攻撃命令、すなわち核攻撃部隊への指揮・コントロールのための通信です(米国公文書である「米統合参謀本部議長指示に記載)。

アメリカ大統領が直接指令する軍事行動、すなわち核攻撃命令です。

不幸にして核戦争が開始される前段階、合衆国大統領の核ミサイル発射命令に関して、長距離パトロール飛行中の戦略爆撃機などにHFGCSを通じて、ミサイルの発射のための暗号コードがこの周波数で伝えられるのです。

世界の終わりに飛ぶ飛行機・・E-4BやE-6Aから発せられる最後の緊急行動メッセージ

アメリカ合衆国の国家空中作戦センター(NAOC)として運用される航空機E-4B(ナイトウォッチ)はボーイング747-200Bを核戦争時の作戦司令用航空機(空中指揮所)として改修した機体。「緊急行動メッセージ(Emergency Action Message)」は最終的に同機から発令されます。

[aside type=”normal”]国家空中作戦センター(NAOC)

地上の指揮統制施設が破壊された場合でもアメリカ政府の指導層(大統領、国防長官、参謀長など)が、空中から指揮をとれるよう設計された四種類の航空機を「国家空中作戦センター」(NAOC)と呼びます。特に核攻撃で地上インフラが破壊された際に戦略的決定を行い、軍隊を指揮することができます。

[/aside]

最終的に、というのは本来、EAMはペンタゴンの国家軍事指揮センター(NMCC)から発せられますが、敵の先制攻撃によって破壊された場合は、ペンシルベニア州レイヴンロックの代替国家軍事指揮センター(地下核ミサイル防護基地)サイトRがその機能を代替し、最終的に空軍のE-4B ナイトウォッチ、または海軍のE-6A (TACAMO)からEAMが発令されるのです。

E-6Bマーキュリーの飛行経路をFR24で追ったもの。平時はトランスポンダーを入れているので追跡が可能ですが、有事はもちろん不可能。翼端のフェアリングにESMアンテナやHFアンテナを装備している一方、同機が超長波(VLF)通信を行う場合、胴体後部より長大なアンテナを機外に展開。

超長波(VLF)は深海にいる海軍の戦略核ミサイル原潜とも確実に連絡を取ることができます。

いずれも真っ白な機体が不気味ですが、これらの任務が「世界の終わりに飛ぶ飛行機」と呼ばれる理由です。

EAMは6文字のヘッダーで始まります。このプリアンブルにはいくつかの異なる用途がありますが、NPSはミニットマン ミサイル発射について、「プリアンブルは、乗組員に非封印認証のどの版とページ番号を使用するかを伝えます。正しいページに移動すると、乗組員はどのメッセージ チェックリストを使用するかがわかります。」と述べています。

受信乗組員は、メッセージと指示がコピーされた緊急アクション チェックリスト バインダーにアクセスします。その後、メッセージが続き、繰り返されます。

EAMメッセージは基本的に30文字。しかし、以前は200文字を超える冗長なEAMもありました。メッセージは通常「Mainsail Out」で終わり、送信元に基づいて変更されることがあります (例: Offutt out)。Mainsail は、ネットワーク内のすべての地上局の集合的なコールサインです。2013 年から 2015 年 4 月まで、「Mainsail Out」は発信元よりも一般的に使用されていました。

それ以来、送信者/受信者にはコールサインが使用されることがほとんどです。

もう一つのユニークなコールサインはスカイマスターです。これはUSSTRATCOMの全ての空挺指揮ユニットの集合コールサインです。

発令された場合は横田を含む世界各国の複数のHF-GCS局から同時に同じメッセージが放送されているため、特異なエコーが聞こえます。

「スカイキング、スカイキング… 答えるな」これは何を意味するのでしょうか?

深く息を吸い、抑揚のない声で話し始める米空軍女性兵士。

「Skyking,Skyking,   do not answer」

「アルファ・チャーリー・エコー、ロミオ・セブン・ナイン、認証」
(少し間を空け、メッセージを再確認する)

通称「Skyking message(スカイキング・メッセージ)」は米国戦略軍から発信される指令のメッセージです。”スカイキング”は現在、HFGCS上にネットワークされている全ての軍部隊を意味するコールサインとされています。

上述のEAMの派生と考えられますが、EAMを含む他のすべてのトラフィックを中断するほど重要な位置づけです。研究者によれば、EAMで指示された作戦(核攻撃)の最終指令(”go” or “do not go”)とされています。

[aside type=”normal”]“DO NOT ANSWER”

  • 意味: このメッセージに対する返答は不要、または禁止されている。
    • 受信側が応答すると、その位置や存在が敵に暴露されるリスクがある場合に使用。
    • また、極めて重要な一方通行の指令であることを強調。

[/aside]

通常、通信オペレーターの「Skyking,Skyking, do not answer(応答するな)」という発言で始まる怖い極秘指令です。航空機側に応答させないのは、航空機の位置を秘匿するため。命令に背いて応答し、自分の位置を敵勢力に晒す航空機はいません。

スカイキングの不気味なメッセージは「答えるな」に続き、特定の指令コード(例: NATOフォネティックコードを用いた暗号化メッセージ)で行います。コードワード、時刻を表す2つの数字が続き、2文字の認証文字列で終わります。

分単位の時間 (0932 Z の場合は「32」と発音されます)、および「チャーリー ジュリエット」などの2つのNATOフォネティックからなる認証文字列で構成されます。スカイキングは1回繰り返され、受信状態が悪いことがよくあります。

「スカイキング」メッセージは「フォックストロット ブロードキャスト」とも呼ばれ、EAM とは異なる形式で送信されます。

The Air Force Space Command (Blazers: U.S. Armed Forces)
The Air Force Space Command (Blazers)

スカイキングメッセージは優先度が最も高いため、進行中のEAMを中断することもあります。「スカイキング」は、戦略爆撃機、偵察機、およびさまざまな支援機の配備も担当するすべての単一統合作戦計画 (SIOP) 航空機およびミサイル作戦にメッセージを送信するためのグループ的なコールサインです。

指揮官から受け取った命令は暗号形式のため、傍受する者の想像をかき立て、特に「核戦争の準備」と関連付けられると、恐怖を感じる人もいるでしょう。

しかし、実際にはスカイキングが送信されたとしても、必ずしも核戦争など、暗い未来の暗示ではありません。また、スカイキングやEAMは敵性国家に指令の頻度を探られぬように意図的に通信頻度を増加させています。

HF-GCSによるEAMやスカイキングメッセージは映画に登場することもあります。『ウォー・ゲーム』(原題: WarGames)や『First Strike』では米合衆国大統領から核ミサイルの発射命令をNATOフォネティック・コードで下達した米国戦略ミサイル空軍の兵士たちが冷静に手際良くコードの答え合わせをして発射準備を行う場面が描かれています。

アメリカ空軍女性士官が今日も米軍基地から謎のコールサインで行うスカイキング・メッセージ。それがSSBモードの場合は安くて高性能の上側波帯 (USB)対応短波ラジオと少しの忍耐力があれば、「何か地球が終わるような重大な事態が起きているのではないか」という精神不安を呼び起こす通信を聞くことができます。

XHDATA D-808がすごかった!HF帯SSBモードの洋上管制や海上自衛隊アツギオーシャニック、7MHzも!

出典 wikipedia https://www.numbers-stations.com/usa/hfgcs/

まとめ

アマチュア無線家がEAMやスカイキング ・メッセージを聞いたとしても、できることは発信された時間と周波数を記録し、フォーラムで同好の士と考察することのみ。

何の通信が行われたかなど、答え合わせは不可能。これが演習であることと平和をただ祈るのみです。

しかしながら、冷戦時代から現在に至るまで、核戦争の危機が何度も語られてきた歴史において、このような通信が実際に行われ、「究極命令を冷静に遂行しようとしている存在」がいた可能性があると考えると、これが持つ重みをアマチュア無線家個人としても無視できないものがあります。

怖いけど…聞き逃せない。これも無線家の性(さが)…?邪気眼全開で、触れるべきでない秘密の扉を開いてしまったような「世界の影」を垣間見た者だけが持つ感覚。スカイキング、それが・・世界の選択なのか。

余談ですが、1996年に公開されたアメリカのSF映画『インデペンデンス・デイ』(Independence Day)では、米軍統合司令部が地球外生命体への反撃を日本の自衛隊含む世界各国の軍隊に呼びかける際、その通信はまさにHF帯でのモールス通信でした。

通常の衛星通信などが不能になるなか、世界各国と連絡がつき、宇宙人に一矢報いるチャンスをHF無線で得たことに「よくこんな方法で連絡が」と感心する米国大統領に「こんな古臭いモールスでね」と米海兵隊の将軍は自嘲気味に答えています。

また、同作では『ニューヨークのハム無線愛好者たちが日本へ流した噂によりますと、軍隊は反撃による全滅を恐れ云々』と、ニュース番組のアナウンサーが読み上げるシーンもあります。

古臭いどころか、2025年現在も米軍の第一線で使われているのが短波無線であり、このHF-GCSなのです。

アマチュア無線好きの刑事が出張捜査先で毎回CQ、CQ!異色刑事ドラマ『あいつと俺』が配信中

あいつと俺』という、アマチュア無線が登場する作品をご存知だろうか。

『ああ、ひょんなことから身体が入れ替わってしまった少年少女を描いた作品ね』と思ったそこのあなた。

それは、君の名・・じゃなかった『おれがあいつであいつがおれで』。全然違うっ!そうか?

『あいつと俺』は1980年に製作され、同年から1984年にかけて東京12チャンネル(テレビ東京)で放映された刑事ドラマ。

名優・川谷拓三演じる主人公の警視庁捜査一課刑事・峰山凡太郎と、その相棒の山田平太(清水健太郎)が主人公のバディもの。

なんと峰山はアマチュア無線好きの”変人”刑事という異色の設定なのだ。

『あいつと俺』

ベテラン刑事と新米刑事の2人が日本を旅しながら、行く先々で起こる様々な事件を解決していくロードムービースタイルの刑事ドラマ。地方への出張捜査ばかりを任される、野暮ったくて変人と呼ばれながらも人一倍心の温かいベテラン刑事・峰山に川谷拓三、そんな峰山の生き方に惹かれ、自ら望んで峰山と組んでいる新米刑事に清水健太郎が扮する。また彼らに興味を持ち取材という名目で二人を追いかける雑誌の記者役で、「ひまわり娘」でおなじみの人気歌手、伊藤咲子が出演。ほとんどのシーンが各地のロケで撮影されたぜいたくな作りとなっている。

出典 Amazon

当時の刑事もので、必ず主人公が携行していた3つのアイテムといえば、警察手帳、けん銃、手錠である。

だが、峰山は『警察手帳と私物のアマチュア無線のトランシーバー』しか持たない風変わりな刑事、という設定なのである。

では峰山の無線機はどんな使われ方をするのだろう。

彼は捜査一課刑事として、相棒の新人刑事・山田と共に毎回全国各地へ捜査で出張するのだが、手荷物の中にハンディー型のアマチュア無線機を紛れ込ませている。その道中や各地でCQを出すポータブル運用で息抜きを・・という描かれ方がなんとも風変わりな刑事ドラマである。

”ロードムービースタイルの刑事ドラマ”といえば、海外では『Xファイル』なんてのがあったが、例えば、もしモルダー捜査官が毎回の出張で、宿泊先のモーテルの窓辺から捜査の合間の息抜きにアマチュア無線をやっていたら、と妄想するといい。スカリーは呆れるわけである。

とはいえ、我々視聴者が期待しがちな「アマチュア無線が事件のきっかけ」にはならない。

さて、第1話では峰山が初っ端から真冬の北海道オホーツクを行く国鉄の車内でトランシーバーを鞄から出し、8エリア管内で堂々のCQ呼び出しを披露(笑)

ところが、同僚たちは彼の趣味に理解がない。車内では電波の送受信環境が悪いため、列車の窓を開ける峰山であったが、相棒の若い新人刑事・山田はハムに全く興味がなく『寒いでしょう!』とピシャリ。

第1回「男、オホーツクに消える-北海道-」でのワンシーン。峰山がワニ皮の旅行鞄から取り出したのは協賛企業・トリオの2メーター・トランシーバー『TR-2400』。ウキウキ気分で『CQ、CQ!こちらはJR2SHY……』と呼びかけるも、相棒の山田は冷ややか。現在でも出張のお供にハンディタイプのアマチュア無線機やデジ簡を持っていく人は多いが、この43年前のスタイル、現代とさほど相違がないのは感慨深い。 画像の出典『あいつと俺』(C)ティーエムプロダクション

また、第2話では別の刑事が旅館で映りの悪いテレビのチャンネル合わせに苦労する隣で、峰山はトランシーバーの周波数を合わせ、受信に興じている。

『どこが面白いのそんなの?趣味が悪いよな』

同僚刑事に疎まれる”変人峰山”の姿には、当時思わずテレビの前で苦笑したアマチュア無線家も多かったのではないだろうか。実際、同僚と出張したときに同じことをやって呆れられる無線家はいないだろうか。

さらにレストランでパスタを美味そうに頬張る峰山だが、その傍らにトランシーバー。こんなに美味そうにパスタ(ボンゴレ!)を食うシーンが描かれた作品を見るのは『カリオストロ』以来だ。

川谷拓三といえば、山城新伍とのコンビで76年から90年まで出演した日清『どん兵衛』のCMを思い出すが、パスタ(彼によればボンゴレ!だそうです)を食べる拓ボンは珍しい。というより、テーブルにはやっぱり愛用のハンディ機が(笑)。それにしても川谷拓三がドラマでアマチュア無線家を演っていたなんて驚いた。画像の出典『あいつと俺』(C)ティーエムプロダクション

地元の女性ライダー”アーマライトM16の女”に『それなに?』と聞かれてサラダの具の”ハム”をフォークで刺しつつ、『ハム!』と答え、『あなたは誰?』と問われて『JR2SHY!』と自局の呼び出し符号で答える、風変わりだがどうにも憎めない峰山刑事。それにしても、”ハムにハムをかける描写”って、崖の上のポニョ、ミーム、そして本作と多岐に渡るものだ。

以降、本筋とはあまり関係のない形で峰山のポータブル運用シーンが挿入されてゆく。

同じ刑事ドラマの『太陽にほえろ』では、レギュラー刑事の一人『殿下』が有資格者で、アマチュア無線による非常通信の結果、犯人逮捕と事件解決につながるエピソードがある。

しかし、本作『あいつと俺』では刑事のアマチュア無線趣味とトランシーバーが捜査や事件解決の直接の手助けになるシーンはない。

とはいえ、第9話の大分出張における峰山が船酔いと飛行機酔いで悪心のなか、トランシーバー片手に交信する場面では川谷の演技が光る。CQ呼び出し、相手局からの応答、そしてサブチャンネルへQSYしてからラグチューに至る一連のやりとりが、今まさに43年後の私たちがやっている運用と全く同じで、見入ってしまう。

第5話の釧路ロケでの交信は峰山が自局のサフィックス(SHY)と、送信場所を意味するQ符号『QTH』とを勘違いしてしまったらしき場面など、”NGシーン”もあるのが見もの。

また、第11話では悪役たちがアマチュア無線を悪用している場面があるものの、このシーンはとくに峰山の無線趣味とは関わらない。

そして最終回の第12話でようやく彼のトランシーバーが、心を悪に染めた青年たちに呼びかけるために使用される場面が描かれてはいるのだが、彼ら(特定の局)への呼びかけの際に不特定多数の呼び出しである『CQ、CQ』はちょっと変ではあった。

さて、いかがだっただろうか。行く先々の地方のアマチュア無線コミュニティが協力して、彼らの情報網や通信スキルが事件の解決に大いに貢献したり(『じゃがいもと三日月』だね)、峰山刑事の覆面パトカーのアンテナをクリエイティブな方法で隠すアイディアを提供するアマチュア無線仲間たちが描かれたり(当時の覆面でもラジオアンテナに擬態していたから余計なお世話か)、善良なハムショップだが正体は肉屋でプリマハムが販売される凄惨な事件とかまったくなく、単に仕事と趣味のバランスを取る一人の中年刑事が描かれる、という『あいつと俺』。

なお、エピソードは全12話。だが、実際にはわずか4話で打ち切りとなってしまった。残りの8話はなんと4年の時を経た1984年の再放送時に一緒に放映されたという。

したがって、制作年は1980年であるが、放映は足掛け4年である。当時、アマチュア無線がまだまだ盛り上がっていたとは言え、無線家にとっては期待しがちな”アマチュア無線好きな刑事”という設定を活かせる脚本は少々難しかったのかもしれない。

とまあ、派手なアクションはないもののロードームービーの作りは80年当時の全国各地の古き良き風景がよく記録されており、情緒と人情溢れた古き良き刑事ドラマである本作。

捜査の合間に刑事がほぼ毎回、アマチュア無線のポータブル運用をする本作『あいつと俺』は極めて異色で、ある意味無線家にとっては伝説的なドラマかもしれない。

現在『あいつと俺』はAmazonプライムでNihon Eiga Net(月額550円)対象作品として配信されている。

フリーライセンス局が使う秘話コード『27144』の由来とは?

趣味のフリーライセンス局で広く普及しているコード『27144』

この数字は何に由来しているかご存知でしょうか。

それはフリーライセンス無線の元祖とも言えるCB無線の8chの周波数、27.144MHzです。

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

 

また、80年代、90年代に流行したパーソナル無線は周波数が任意で選べない代わりに、好きな『群番号』を仲間と事前に取り決め、同じ番号を共有することで互いに交信できました。

この際に入力した群番号が、やはり『27144』でした。

すなわち『27144』はフリーライセンス局にとっては伝統的で親しみのあるナンバー。

この『27144』をデジ簡の秘話コードとして使う呼びかけを行っているのが、ライセンスフリーラジオのミーティングイベントを主宰するFLRM

ただし、FLRMでは交信内容を秘匿する目的ではなく、あくまで業務局への配慮と趣味のフリーライセンス局の合言葉としての使用を推奨。

したがって、27144の使用はアマチュア無線のレピーターのローカルルールのように誰かに強制されるものでもなく、また法で決められたものでもありません。

趣味のフリーライセンス局では秘話コードを普段使っていない局も多くいます。

27144はあくまで趣味のフリーライセンス局が気軽に使用できるものとして広く普及、推奨されています。

デジ簡の無線機やCB無線機といったフリーライセンス無線機の写真。27144、実はCB無線に大いに関係があるのだ!

フリーライセンス局同士で秘話交信を行う場合、15chで呼出し時に秘話の使用も同時に宣言するのがスマート。

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

単に『秘話ありで交信お願いします』と言うよりも、やはり『秘話コード”27144″で交信お願いいたします』など、コードナンバーそのものを明示したほうが良いでしょう。

秘話コードは互いに設定されていないと交信不可。気をつけたいところです。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

 

中古デジ簡機を第三者が登録申請→東海総合通信局「へ?すでにこの無線機は登録済みやが…」→元登録者へ連絡→消防団から盗まれた無線機と発覚

愛知県内の消防団詰所から防災行政無線機やデジ簡機が盗まれる事件がありました。発覚は第三者の「登録申請」と、総合通信局からの元登録者への確認電話でした。

盗まれたのはデジタル簡易無線機および防災行政無線機

  1. デジタル簡易無線機 携帯局2台、充電器2台
  2. 防災行政無線機 携帯局1台、充電器1台

参照元 愛知県豊田市役所公式サイト 『報道発表資料 消防団の詰所格納庫における無線機の盗難について』

https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1061614/1061700.html

上記報道発表によれば、令和6年10月20日(日曜日)、豊田市消防団第2方面隊第3分団(以下、同団)の団員が、上記の無線機3台及び充電器3台が無くなっていることを発見。10月22日(火曜日)、市が同団分団長から無線機と充電器を紛失した旨の連絡を受けとのことです。

参考画像 盗まれたとみられる無線機『ICOM IC-DPR6』の同型機(中央)

他に紛失したものが無いことや、侵入の形跡がなく室内が荒らされていないことなどから、他の団員が利用している可能性があったため、同団の団員を中心に捜索を継続。

盗難発覚はデジ簡機の登録申請

11月12日(火曜日)午前9時44分、無線機の登録を所管する総務省東海総合通信局から、豊田市の名義登録となっているデジタル簡易無線機1台について、別の第三者から名義登録の申請があった旨の連絡が市に入り、盗難の疑いが高いことが判明。

その他2台の無線機については登録申請などの動きはないとのことですが、市は愛知県警豊田署に無線機3台の盗難被害届を提出済みです。

【デジ簡】包括申請で登録した局が手元に一台も無線機を残さないまま廃止届を出してしまうと、包括登録そのものが失効します

登録申請については当サイトでも解説していますが、当然ながら総通への重複登録は簡単に判明することが今回の事件でも明らかになりました。

デジ簡(登録局)の申請方法は書類申請と電子申請の2種類