自衛隊の公式情報で96式40mm自動てき弾銃の威力が「手榴弾と同じ」という表現の意味を読む

陸上自衛隊が装備する96式40mm自動てき弾銃について、防衛省(陸上自衛隊)の装備紹介ページが示す諸元から、その“威力”の実像を改めて整理したいと思います。

「40mmてき弾」は手榴弾と同等の破砕効果

96式40mm自動てき弾銃は96式装輪装甲車に搭載された装備です。

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結論を先に言えば、公式ページは銃本体や性能(口径、発射速度、使用弾薬など)を明示しており、96式40mm自動てき弾銃が発射する「40mmてき弾」は手榴弾と同等の破砕効果を想定した榴弾性弾薬であることが読み取れます。

これが「手榴弾と同じ威力がある」と受け取られている背景です。まず一次情報を示します。

公式ページの要点は、口径40mm、銃身長や重量、発射速度(約250〜350発/分)や使用弾薬の仕様など、装備としての性能諸元を提示している点です。

画像の出典 豊和工業(製造メーカー)

これ自体は「威力=何メートル先で人体にどの程度のダメージを与えるか」を直接的に数値化したものではないものですが、弾薬の種類(多目的榴弾であること)と有効射程(数百〜1500m程度の実効範囲が示唆される)から、どのような効果を期待して配備されているかは明らかです。

この96式40mm自動てき弾銃は、米軍のMk19 自動擲弾銃に相当します。

軍事知識として一般的に、自動てき弾銃は歩兵支援や面制圧、軽装甲車両や接近する小型目標に対する抑止力として有効です(射程や弾種・発射速度は後述)。

96式40mm自動てき弾銃の性能(代表値)

  • 弾薬:40×56mm

  • 発射速度:約250–350発/分

  • 装弾:ベルト給弾(50発リンク等)

  • 有効射程:対人・対車両で数百メートル〜最大約1,500m程度(状況に依存)。

自衛隊公式情報としての装備紹介で「96式40mm自動てき弾銃が発射する弾は手榴弾と同程度の威力がある」とは以下を意味します。

  1. 榴弾(破片)効果が主目的
    96式40mm自動てき弾銃は成形炸薬や高爆外殻などの設計で、当たった際に破片を撒き散らして広範囲の人員・軽装甲目標にダメージを与える「榴弾的」効果を重視している。手榴弾も同様に近距離で破片効果を発揮するため、効果の性質が似ているという説明である。

  2. 携行・投擲による手榴弾よりはるかに長い射程
    ただし重要なのは、96式40mm自動てき弾銃は推進力で発射されるため、手榴弾(人が投げる)より遥かに遠く(数百~千メートル)まで届く点だ。単に「威力が同等」というだけでなく、到達距離と連射性によって戦術的な用途が根本的に異なる。

  3. 弾薬の種類差
    軍用の40mm弾でも仕様は複数ある(40×46mm低初速/40×53mm高速など)。96式40mm自動てき弾銃が使用する弾薬は日本独自開発の「40mm対人・対装甲てき弾」等で、成形炸薬性や多目的榴弾的特性を持つとされる。これが「手榴弾と同等の破片効果」と表現される根拠の一つ。

「GLX160 A1」と弾薬は共通か?

ここで気になる点が、自衛隊が近年、20式小銃と同時に配備を決定したベレッタ社のグレネードランチャー「GLX160A1」です。

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結論から端的にいうと、GLX160 A1が使う40×46mm(低速度弾)と、96式40mm自動てき弾銃が使う40×56mmは種類が異なり、相互に互換性はありません

一方、陸上自衛隊の96式40mm自動てき弾銃は車載・支援火器で、自動連射が可能な別系統の高初速弾(自動擲弾用)を使用する仕様であり、GLX160系の低速弾とは弾薬が異なるとされています。

公式・技術情報や解説でも互換性は示されていません。

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なお、陸上自衛隊で運用される水陸両用車AAV7が装備するMk19オートマチックグレネードの40x53mmとも互換性はありません。

まとめ「手榴弾と同じ威力」をどう評価すべきか

威力=危険性の正しい読み方

以上のような性能から、40mm自動擲弾発射器は「榴弾(破片)効果」を活かして遮蔽物後ろの歩兵や集団、軽車両、近接脅威の面制圧に優れます。

装輪APCに搭載することで、機動中に即応火力で味方普通科の突入・展開を支援できます。

96式40mm自動てき弾銃は対人支援や短距離の面制圧向きで、89式装甲戦闘車の35mm機関砲や87式自走高射機関砲の専業近接防空(高密度火網・専用レーダー)とは用途・性能がやや異なり、曲線弾道で遮蔽物越しに効果を発揮できるのが特徴です。

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「手榴弾と同じ威力がある」という短い表現はセンセーショナルに聞こえますが、正しくは次のように読み替えるべきです。

  • 短距離での破片効果の性質が類似している(=人員にとって致命的な破片を発生させ得る)。

  • 連射・長射程でその効果を遠隔で・継続的に行使できるため、単体の手榴弾より戦闘における影響力は遥かに大きい。

  • したがって、安全面や運用面での取り扱い(配備場所、友軍被害の回避、弾種管理など)が重要であり、自衛隊がAGLを装備するのは「火力支援と面制圧」を合理的に担保するためである。

つまり「96式40mm自動てき弾銃は強力な支援火器だが、IFVや専用対空車の火力やセンサー体系を完全に代替するものではない」という点です。

96式40mm自動てき弾銃が「手榴弾と同じ威力がある」と言われるのは、弾薬が手榴弾と同様の破片効果(榴弾効果)を有していることに由来します。

しかしAGLは連射性・長射程という点で手榴弾とは次元の異なる戦術的効果を発揮します。

防衛省の公式ページは性能諸元を示すだけですが、解説的な文脈では「手榴弾と同等の破片効果を持つ弾薬を車載・連射で運用する武器」と理解するのが正確です。

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