【朗報】七人のおたく(1992年)で描かれる無線傍受おたく女子中学生。脚本家曰く「アマチュア無線は冒険アイテム」

画像の出典 映画 七人のおたく (C)フジテレビ

ミリタリーオタクの主人公・星(演・南原清隆)にコミケでスカウトされた格闘技オタクの近藤(演・内村光良)をはじめ、Macintoshを愛するIT会社の社長・田川(演・江口洋介)、その恋人のりさ(演・山口智子)、アイドルオタクの国城(演・武田真治)、そして無線傍受オタクの女子中学生・水上令子(演・浅野麻衣子)ら、それぞれの分野のオタク(スペシャリスト)たち、さらにはおたくを封印しつつも正義の心を忘れない特撮ガガガ(!?)な丹波(益岡徹)など、いずれ劣らぬ濃いおたくたちが、それぞれの知識を武器に所狭しと暴れまわるアクションコメディ映画・七人のおたく(1992年)

画像の出典 映画 七人のおたく (C)フジテレビ

当サイトが推すのは、やはり無線傍受オタクの水上令子の活躍。そんな令子の”消防無線傍受”にドン引きする、もう一人のヒロイン「りさ」を演じる山口智子。山口智子といえば、アニメ映画「崖の上のポニョ」で演じたのも「リサ」で、同作では颯爽とアマチュア無線の運用を行なっていたのも、今となっては面白い偶然です。

『崖の上のポニョ』でリサのアマチュア無線運用と崖の上の自宅が災害時に果たす役割とは

※以降、物語のネタバレにご注意ください

「七人のおたく」のあらすじ

常に迷彩服の主人公、星亨は世間一般で言うミリタリーオタク。アパートの自室には軍事専門書、エアガン、ガス缶、軍装品が転がる中、本棚にはミリタリー本に混じって「友だちの作り方」という本が。そう、人からは嫌悪されそうな趣味を持つ星は、決して悪い人間ではないにもかかわらず、同好の士以外は友達がいません。

一方、不良漁師集団のボス・高松は他の漁場を荒らす密漁行為で財を成した静岡某島の網元。どうやら島に警察機能は働いておらず、海上保安庁がかろうじて島の周辺で密漁船取締りのパトロールを行っていますが、密漁集団のしっぽをなかなかつかむことはできません。

そんな高松は外国人女性・ティナとの間に子・喜一をもうけますが、ティナは高松のDVに嫌気が差して島を去り、子供と共に東京のアパートで静かに暮らす日々。しかし、それも束の間。ある日、ティナの元へ乗り込んできた高松はティナに札束を叩きつけ、喜一を奪い去ります。

たまたまティナと同じアパートに住んでいた星に待ち望んでいた瞬間がやってきます。『俺ぐらいになるとただのサバイバルゲームでは満足できないんだ』と、正義心ではなく、自身の満足感のために子供を奪還すべく、まずは各方面の分野に精通したそれぞれのオタク系男女たちのスカウトを開始。

かくして、それぞれのオタクが自身の知識と技術を使って”任務”を達成すべく、静岡の旅館に集結します。

「無線傍受おたく」の水上令子の一連の見どころ

本作では主人公の星から、おたくたちが各種の方法と様々な場所でスカウトされていく過程が描かれます。

「無線傍受おたく」の女子中学生・水上令子(演・浅野麻衣子) 画像の出典 映画 七人のおたく (C)フジテレビ

どのオタクたちもキャラが立っており、星によるそれぞれのスカウト方法も面白いのですが、そのスカウト方法はぜひ本編を視聴していただくとして、当サイトとして注目したいのはやはり「無線傍受おたく」の女子中学生・水上令子(演・浅野麻衣子)です。

彼女のスカウトから訓練、実戦までの活躍をご紹介。

「無線傍受オタク」をスカウトせよ!

水上令子は都内の学校に通う中学生。男の子や流行には興味がないようで、昼休みは学校の屋上で同級生がダンスなどに興じる中、一人静かにアマチュア無線機で今日も空を飛び交う様々な電波を傍受しつつ、テレホンカードを削っては違法なスルーカード作りに没頭中。

彼女の興味の対象は消防無線やコードレスホンなどまで幅広いようです。それら電波の傍受中、ただ住所を読み上げる男の不気味な声と時報だけが繰り返される奇怪な微弱電波をキャッチ。

『渋谷区松涛3の2の5……渋谷区松涛3の2の5……』

コードレスフォン?自衛隊のGCI?どうやら違うようです。ポシェットにハンディ機を入れ、放課後一人で松涛へ向かう彼女。松涛と言えば政界の要人も邸宅を構える閑静な住宅街です。当該の住所を尋ねた制服姿の少女。草木に覆われ、朽ちた洋館のような廃墟の前に立ちます。

恐る恐る、ほの暗い建物内に足を踏み入れ階段を上る令子。微弱な電波は次第に大きくなり、ついには電波ではなく肉声となります。すると突然、迷彩服の男が通路の奥から飛び出してきます。悲鳴を上げて逃げる令子ですが、迷彩男に微弱な電波の探査能力を称賛され、戸惑いながらも悪くない気分です。

脚本は一色伸幸さん

本サイトで以前取り上げた1985年放映のテレビアニメ「ミームいろいろ夢の旅」の中で、アマチュア無線を扱った一編がありましたが、驚くことに当該の回の脚本と「七人のおたく」の原作・脚本は同じ一色伸幸氏。

「ミーム」で描かれたフォックスハントの一場面。7年後、「七人のおたく」でも”無線オタク少女”に同じ活躍をさせるのは脚本家の一色伸幸氏。「ミームいろいろ夢の旅」より(C)日本アニメーション

1984年放映のテレビアニメで登場したアマチュア無線の驚きの描写とは?

 

その一色伸幸氏、やはりアマチュア無線には思い入れがおありのようで、アマチュア無線を冒険アイテムと定義しています。

ともかく、『キミ(の能力)が欲しい』という星の謎の言葉に令子はドン引き。令子は顔をしかめますが、なりゆきで令子は星のスカウトを受け入れ、メンバーとなります。

りさ(山口智子)『(消防無線なんか聞いて)楽しい?』→令子「○○○」

令子を含め、星は様々な能力に長けた「おたく」たちを集め、いざ、熱海へ。彼らはある旅館をベースキャンプに作戦実行前の打ち合わせを行うのですが、そのわずかばかりの時間ですら、当然それぞれの趣味に没頭しています。格闘技オタクの近藤は肉体鍛錬に汗を流し、隣の部屋ではアイドルオタクの国城(武田真治)がアイドルもの同人誌の編集作業に没頭している最中、静岡ローカルのTVCMに”推し”のアイドルグループが出ていることを見逃さず、間髪を入れずに録画ボタンを押します。

『まさかCoCoが静岡でコンビニ、パブってるとは思わなかったな……おっまだ瀬能あづさがいるもんな。まったく……ローカルは宝箱だ』

本作では彼、国城こそ最も”ステレオタイプ的なおたく”を表現していたかもしれません。武田真治の怪演は鳥肌が立つほどですが、それを唖然として見ていたのが、PCオタクの彼氏・田川(江口洋介)にバカンス気分でついてきた同じ会社のOLのりさ。国城にドルオタ同人誌を980円で売りつけられた直後、りさは星のエアガンの射撃練習に巻き込まれ、目の前をBB弾がかすめます。ウンザリとした顔で「私だけはオタクじゃない。この場で私だけが唯一、ふ・つ・う!」と言いたげな様子。

公式設定で、りさは「レジャーおたく」と銘打っていますが、映画の広告でのテロップでは「ふ・つ・う」になっております。確かに、このメンバーの中では彼女は至ってノーマルで、唯一の常識人かもしれません。田川に早く東京に帰ろうよと縋るりさですが、彼も彼でIT会社社長。レッキとした”パソコンオタク”。星から指示され、Macintoshによる偽造音源製作に没頭中。

そして、令子はと言うと……。もちろん、彼女も自分の趣味である無線の傍受に没頭中。なお、田川の偽音源のソース元は令子が受信したコードレスフォンの音声。ともかく、礼子は今、一人テーブルに向かい、分厚い周波数帳を開いてメモを取り、静岡県内のアクションバンド(※この映画に協力したのはラジオライフではなく、ライバル誌のアクションバンド電波のようで、スタッフロールにクレジットが入っていました)傍受に夢中。

画像の出典 映画 七人のおたく (C)フジテレビ

令子のハンディ型アマチュア無線機の広帯域受信機能により、浜松市消防局の消防無線が傍受されています。救急隊が搬送する患者の容態が刻々と通話コードで浜松市消防局へと伝えられ、緊迫した状況を伺わせます。

『これ・・・?』

「消防無線…955は怪我した人」

『(救急浜松1)955、944に移行』

『きゅーよんよんって?』

りさは浜松市消防局の無線通話コード「944」の数字の意味を令子に尋ねると、令子はノートに「倒れた人」と「天使の輪っか」を描き、りさは絶句。

山口智子が演じるのはオタクとは正反対の旅行好きでジュリアナ東京が似合いそうな快活な女性。オヤジギャルってのも当時はやってましたが、それでも消防無線の傍受なんてまるきり理解できないはず。最近の若者はジュリアナ東京を知らないそうです。OL改造講座とかも知らないの?知るわけがない(笑)

いや、そんなことはないでしょう。この活躍から15年後、山口智子は「崖の上のポニョ」において、息子の宗助の前でアマチュア無線機(しかもHF機)を華麗に運用してましたし(笑)。ともかく、りさは呆れつつ、令子に「楽しい……?」と尋ねると、少女は「とても」と、さも当たり前のことのように答えるシーンには一色伸幸さあああああん。・゜・(ノД`)・゜・。てなりました。

そして作戦決行は深夜。高松邸へ斥候の令子がアマチュア無線のハンディ機で旅館の星に状況を報告。『高松、151、151』。知っている方にはご説明不要と思いますが、151は「出動」を意味する東京消防庁の通話コード。しかし、ミリタリーおたくの星でも、さすがに消防無線には疎かった様子(笑)。当然、アマチュア無線での暗号使用はNG。それに加えてのメリット交換なしの目的外通信。かなりグレーな運用です。ところで、令子はともかく、ベースで思いっきり軍用無線機のような無線機を扱う星。従事者免許を持っているのだろうか!?

令子の報告で星らは敵である密漁団のボス・高松の邸宅へ浸透作戦を展開します。星はエアガンで電灯を撃ち抜き(ということは3ジュールくらいある改造品でしょうか?当時からマルイの電動ガンは1J超えないレベルでした)、近藤が門戸を見事に蹴破り突入。『まさかこのために俺を呼んだのか……?』と近藤。しかも、門戸を破らなくても入れた衝撃の事実が発覚。星に対する近藤の不信感が露になります。

そして星は目的である幼児・喜一を”奪還”。パソコンオタクの田川は星に「これは誘拐なのか?」と真意を問います。

おたく、失意の撤収。そして輝く

しかし、時はまさに世紀末。高松やその手下ら不良漁師集団の追っ手が淀んだ夜の漁港に迫ります。絶体絶命のその瞬間、港に海上保安庁の巡視艇が滑り込み、拡声器で漁師らに呼びかけます。『また出たんだ。密漁船が……』しかし、不良漁師たちはいつものように海保をあしらってしまいます。『本土のやつらでしょう?ご苦労様です』星は『本土まで乗せてくださーい!』と、事情を知らない海保に助けを求めますが拒否され、もはや退路無し。じわじわとヒャハーッ集団に追い詰められ、高松に喜一を奪い返され、アジトに連行されそうに……。

しかし、りさの機転で形勢逆転。星からエアガンを奪ったりさは海上保安庁の巡視艇にBB弾を叩き込み、船の照明設備を損壊させて海保を介入させ、からくも窮地から脱出します(罰金とエアガン没収で済んだ)。りさの機転と度胸、『ふ・つ・う』どころか、ただの女性会社員とは思えません。

しかし、国城の車の中でメンバーが安堵しつつ作戦の継続可否を話し合うのも束の間、再び漁師らから今度は本気の襲撃を受けます。角材で国城のクルマを襲撃しようとする漁師の一人は運転席に飾られたアイドルのフィギアを見つけると、なぜか戸惑って襲撃せず、結果、国城はクルマを急発進させて逃れることに成功。しかし、メンバーは漁師たちの恫喝と暴力で、ついに戦意喪失。作戦継続が不可能に。星と近藤のみは感傷に浸りながらも反撃、奪還の機会をうかがうため、現地に残留するも、他のメンバーは東京へいったん撤収します。

すっかり自信を失ったクセの強いオタクたちは実生活でもトラブルが待っていました。田川は利益より趣味を優先したがために、会社は経営難。ドルオタの国城は同人仲間に全国183人の読者の定期購読料を持ち逃げされた挙句、高橋由美子の写真集ロケにネパールまで追っかけるために使い込まれて回収不能となり、次の同人誌が出せなくなってしまったとしてアイドルの京野ことみのイベント会場で仲間と揉めています。この部分が後半の伏線となります。

なお、一色氏によると京野ことみさんについて、以下のような回想を述べています。

もしかして、無線オタク少女は京野ことみになる可能性もあったのかもしれません。ともかくとして、令子はサバゲーフィールドを訪ね、星のサバゲー仲間兼上司からパワーアップしたスタンガンを貸してくれるように頼むなど、一度は散りながらも…少女は星のために奔走。

画像の出典 映画 七人のおたく (C)フジテレビ

サバゲー協力はホビージャパンの月刊アームズマガジンが担当していますが、たぶんこのゲーマーの皆さんは編集部員かな。無関係の親子がフィールドを通り過ぎてるのにゲームを中断しなかったり、ゴーグルしてない令子をゲーム中に入場させたり(そこはそもそも専用のフィールド?)、今だと炎上する可能性も。実際、近年でも映画「世界は今日から君のもの」のサバゲーシーンで俳優がゴーグルを外してスマホで通話したため、炎上が起きています。

ともかく、令子は星がサバゲー仲間から『あいつはビビリで、チームに入ると必ず負ける。だからアイツはいつも一人チーム。負けボシ』と愚痴を聞かされます。もちろん、スタンガンは『貸せないねえ』と一蹴。そこで、電子回路に精通する彼女は結局……。

不良漁師集団でただ一人の正義漢で隠れオタクの丹波さん登場

一方、星と近藤は反撃の機会を得るべく、再び島へとバナナボートと遠泳でネイビーシールのように隠密上陸を開始。山中の廃屋を発見した二人は前進基地として篭りつつ、星は夜間に暗視スコープで敵情視察を行いますが、番屋で魚を焼いていたため、あっさり発見されてしまいます。『こんなところじゃ、すぐ見つかるぞ』番屋に入ってきた男に星と近藤は身構えます。しかし、男の顔を見た星と近藤は驚きます。

『タンバさん……!?あのホビージャパンのジオラマの』と星。近藤も『フィギアの神様だ……コミケで買いました。ウルトラマン、ゴレンジャー……』と驚愕を隠せません。

丹波達夫。特撮フィギアに造詣が深い伝説の原型師。彼は島の漁師で高松の手下ですが、実は今でこそ妻子ある彼も5年前まで元おたく。僻地の30男が嫁を獲得するべく、オタ趣味を封印していたことが彼の口から語られます。

先日の漁港での襲撃で国城の車に飾られたフィギアに目を奪われ、襲えなかった漁師は実は彼。しかも原型製作者が丹波自身だったのです。この番屋は丹波の隠れ作業小屋。隠し棚には丹波の秘蔵品である特撮ものやミンキーモモなど各種フィギアが飾られています。

『ジオラマは愛だ。作るぞ……きっちり!』

丹波は二人の作戦を支援するため、ジオラマによって島の全景を作成。3人は明け方までジオラマつくりに没頭します。丹波は(丹波達夫として)自分のできる協力はここまでだ……もう帰れと言い、高松は予想以上に凶悪で強敵だと二人に言い残し、去ります。

『第二次作戦開始だー!』

さすがにガガガの丹波さんに帰れと言われれば、帰るしかありません。星と近藤はついに撤退を決め、浜津駅にて東京行きの電車を待っていました。しかし、彼らの想いとは裏腹に、散っていたオタクたちはそれぞれの理由から静岡に戻ってきたのです。オタクではないため戦力外だったりさも、星が行おうとしている”人道的救出ミッション”に賛同し、手を貸します。

しかし、令子が戻ってきた理由はいまいち不明なのです。スタンガンを借りられなかった令子は、自分が自作するからと、星に再参加を懇願しますが、星自身が『おまえ……なんで !?』と不思議そう。この、令子と星の微妙な関係の描き方は逸品です。ここは視聴者が妄想を膨らませましょう。どうも令子のほうは星にまんざらでもない様子。『キミが欲しい』が効いたんでしょうか。星当人はオタクのくせに当初から”普通の女性会社員”であるりさにぞっこんで(電車男みたいなフィーリング)、”女としての令子”は眼中にありません。彼はおそらく、令子のことをサバイバルゲーム仲間くらいにしか思っていません。

無線傍受おたくとミリタリーおたくってやっぱり波長が合うんでしょうかねえ。二人が将来的に結婚すれば、ラジオライフのペディに参加していた可能性もあったでしょうねぇ。

そんなこんなで第二次作戦開始です。敵にハニートラップを仕掛けるため、高松らのたまり場であるスナックに化粧をして向かう令子。しかし、彼女には役不足でした。しょせんは女子中学生。ハニトラは痛々しく失敗に終わります。代わりにりさが参戦し、歌と踊りで高松ら荒くれどもを魅了します(先日のM16乱射事件で高松らに顔割れてるはずですが……?)。令子はりさに魅力で負けた嫉妬からハイヒールを軽トラのフロントガラスに無言で投げつけて割る演出が笑えます。

後半ではまたもアマチュア無線の出番がありますが、この無線機の使い方もかなりグレーです。令子は用意しておいた遠隔操作式発煙筒をハンディ無線機からの電波送信によって作動させます。

『誰でも空が飛べるシミュレーションソフト』が映画ラストの伏線

こうして、星は満足感達成のため、近藤は本当の正義のために、田川は自身が開発したシミュレーションソフトの実証実験のため、国城は同人誌を刷るお金のため、令子は星のため(!?)、仮面男ダン(丹波)は……なんだろう、日ごろの高松への不満か、心に眠る正義が目覚めたのか。りさはティナへの同情心かな?それとも単にレジャーを楽しんだだけ?

まとめ

日本では珍しい最後にほろりとさせるバランスの取れたアクションコメディの金字塔です。92年と言えば、まだまだバブルの余韻が残っており、日本の街並みや人々に痛々しさや寒々しさがなく、貧乏臭くないのがいいですね。これが94年以降になると、途端に世の中はブルセラとリストラで痛々しくなるわけで…。

ラストのスタッフロールではそれぞれの趣味を象徴するアイテムと共に彼らオタクのフィギュアが登場(笑)当然ながら星はエアガン、近藤は太極拳ウェア、国城は同人誌、田川はMac、令子はアマチュア無線機です。ところが、りさだけは”パスポートと海外旅行のパンフレット”。うーん、やはり彼女はオタクではなく『ふ・つ・う』のOLのようです。なんだ普通って(笑)

ところで、『七人のおたく』から13年目となる2005年、フジテレビは『電車男』を放映し、社会現象となりました。原作は「2ちゃんねる」のあるスレッドで綴られた実際のやりとりが着想で、フジテレビが一から作った原作ではないということになっていますが、もしこれが、フジの仕込みではないとしたら、うまい題材を見つけたなと思います。

ドラマ化にあたっては、七人それぞれのおたくが持つ知識を結集させて人助け(?)をする『七人のおたく』のコンセプトと、気弱なオタク青年の主人公がインターネット掲示板を介してオタクたちの手を借り、目標に進むという『電車男』のプロットと本質的に通じており、13年前に伊豆諸島で散った(散ってない)彼ら先代のオタク戦士たちの活躍を筆者にしみじみ思い起こさせたのです。

フジテレビは『七人のおたく』から13年目にしてどのようにおたくへ問い掛けるのか興味深く見ていましたが、予想以上に初回から面白く、実際に放映時間帯はドラマの舞台である「2ちゃんねる」の実況スレッドがあるサーバーが落ちる寸前だったほどです。

なお、フジテレビ出版(扶桑社)が1992年に出した映画「七人のおたく」の解説本にはこのようにオタクに対する見解が肯定的に書いてあります。

「おたく」とは、心の中に自分だけの小さなパラダイスを持っている人たちのこと。自分にとって、大切にしているものや、自分の好きなジャンルは誰にでもある。その中で時間の感覚を失うほど没頭できる何かひとつのことを持っているのが「おたく」。 そしてそのパラダイスを大切にしながらそれを最大限に楽しめる人こそがおたくなのだ。

出典 「七人のおたく」フジテレビ出版(現・扶桑社)1992年

そしてこちらは一色氏がフジテレビに企画を持ち込んだ際に言われた言葉です。

気持ち悪いからやめようよ(笑)あまり乗り気ではなかったようです。なお、「七人のおたく」は2022年に「七人のおたく THE STAGE」として舞台化もされており、根強い人気を誇っている作品です。

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