警察官の使う『Pチャンイヤホン』が各種業界でも絶賛される理由は?

警察官が装着する片耳イヤホン、「PR-17」。製造元は老舗のアシダ音響だ。
このイヤホンは、受令機に接続され、本部から流れる110番通報の一次情報を静かに伝える。

かつて、警察無線は「Pチャン」と呼ばれていた。それ故にこのイヤホンは警察専用ではなく、プロ向け製品だが、無線マニアたちの間では「Pチャンイヤホン」の名で通る。官給品と市販モデルの違いはほぼない。

プラグは2.5mmと3.5mmの2種類が存在し、汎用性も高い。一般のラジオや受信機にもすんなりハマる。つまり、業務用の皮をかぶったマニア向けアイテムなのだ。

コードの取り回しには、ひと工夫がある。イヤホンジャックが機器の上部にあるならストレート型。横にあるならL型。選び方ひとつで取り回しの快適さが変わる。

さらに、コードを無線機背面のベルトクリップに一周させておくと、抜けにくくなる。万が一引っかかっても、ジャックにストレスがかからない。これは『ラジオライフ』2004年10月号「受信レッスンABC」で紹介された“師匠秘伝”。使える技術は古びない。

PR-17にはもう一つ、隠れた機能がある。コード自体がアンテナとして働くことだ。特にFMラジオでは顕著。アンテナがないと話にならない環境でも、イヤホンを差すだけで感度が劇的に向上する。

ラジオのイヤホンをアンテナ代わりにする仕組みを自作

受信機でも「イヤホンアンテナ機能」を備えてる機種があって、受信活動を密かにやらかす時、スマホ聴いてるふりをしてバレないように受信できる。

なお、無線機の場合は、こんなイヤホンの使い方はNG。

無線通信の基本は、電波の放射だ。送信ボタンを押せば、電波はアンテナから空中へと飛んでいく。だが、道具の使い方を誤れば、機器の不調に繋がるどころか、指令も受けられない。

よくあるのが、イヤホンコードをホイップアンテナに巻きつけるという使い方。これは一見、取り回しの工夫に見えるが、見誤ると、精密な道具は簡単に壊れる。

送信時、アンテナから出るはずの電力が、巻きつけられたイヤホンコードに流れ込む。電力はそのままイヤホンプラグを通じて、無線機本体へと逆流する。結果、最悪の場合、送信回路が焼き切れる。小さな工夫が、高価な機材を沈黙させる。

先述の受令機、あるいは広帯域受信機のように、送信機能を持たない受信専用機なら問題ない。しかし、無線機では事情が違う。

Pチャン用は「1kΩ」タイプ

警察無線の現場で磨かれ、通信マニアの手元で再評価される。片耳イヤホンPR-17は、その典型例だ。

正式には「アシダ音響PR-17」。警察で使われるタイプはインピーダンス1kΩの官給品である。受令機を通じて、110番通報などの指令が耳元に流れ込む。だが、民生用として一般に流通しているのは8Ωタイプ。ラジオライフ2004年10月号でも「ポケットラジオや民生用トランシーバーなら8Ωで十分」と記されている。テレビ局の音声モニターには600Ωが標準だ。

イヤホンコードの長さは標準で1メートル。かつては灰色のコードが主流だったが、現在は目立たぬ黒が定番となっている。実際、私服警察官もこの黒い片耳イヤホンをつけている例が多い。街中で見かけたなら、その人物が“お仕事中”かもしれない。

ただし、刑事が堂々とイヤホンをぶら下げていては意味がない。現場で即バレしてしまう。旧型のUR-3受令機にはコードレスイヤホンも用意されていたが、筐体が大きくかえって目立ったという本末転倒な結末である。

Pチャンイヤホンの特筆点は、長時間装着しても疲れにくい点だ。設計思想はあくまで「人間の声が明瞭に聞こえること」。音楽用途ではない。アシダ音響も公式に「音楽鑑賞には向かない」と注意を促している。現場仕様の製品は、見た目以上に用途に忠実である。

制服警察官はPチャンイヤホンをイヤホン保持器とのセットで使用

制服警官の場合、このイヤホンは「イヤホン保持器」とのセットで使用される。通称「共鳴管」。金属パイプ、イヤホンクリップ、紛失防止用のヒモとフックが一体となったもので、肩のエポレットや制服のボタンホールに固定される。

イヤホンクリップ 共鳴管 新型ナスカンタイプ

運用はシンプルだが実用的だ。業務中にイヤホンを外したい場面がある。しかし、耳から抜けば指令を聞き逃すリスクがある。そこで登場するのが共鳴管の本領。イヤホンをそのパイプの端に差し込めば、管内で音が共鳴し、イヤホンを耳に入れていなくても音声がクリアに聞こえるという仕組みである。

静寂の中で響く指令。
それを聞き逃さない工夫が、このイヤホン周辺機器には凝縮されている。

さあ、キミも今日からPチャンイヤホンをスマホに挿して『私服の人』に!(責任は取れんけどな)

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