アマチュア無線やデジタル簡易無線の電波利用料、いくら払うの?

日本で一番優しい国家試験と呼び声高い第四級アマチュア無線技士。国家試験または養成課程講習会の修了試験に合格し、従事者免許証を申請、取得して無線局免許状が交付されれば、どなたでも楽しめる趣味がアマチュア無線です。

しかし、国家試験での出題のとおり『電波利用料』が課されることはご存知かと思います。

そう。アマチュア無線局の開設を行って、電波の利用を国に許可されると、300円/年の電波利用料(2023年現在)を納めなければなりません。

この電波利用料は1993年から今日まで、ずっと導入されています。

電波利用料が導入された経緯

電波およびその周波数は電波法という法律によって国(総務省)が厳格に管理しています。つまり、電波を発射する市販の機器であれば、そのへんの女子高生のスマホから、おっさんのアマチュア無線機まで基本的に総務省の認可を受けているわけです。

さて、この電波利用料が制定されたのは平成4年6月5日の電波法の改正で、翌年の平成5年4月1日から電波法103条に電波利用料が導入され、無線局の免許を取得した人は、必ず開設から30日以内に電波利用料の納付が義務となり、局免の有効期間内は毎年納める決まりとなりました。

電波利用料徴収の目的は不法電波の監視など、電波の適正な利用確保のためとなっており、電波利用によって得られる直接的な利益を受益する放送事業者の放送局、それに携帯電話会社などの電気通信事業者が開設する基地局や固定局のみならず、さらに私たち個人が開設する『利益を目的としない』アマチュア局など、全ての無線局が公平に負担するものとされています。

電波利用料の使途はさまざま

各事業者やアマチュア無線局開設者などから徴収された電波利用料は電波法第103条の2第4項において、以下の12もの役務のため、電波利用共益費に充てると総務省で定められています。

  1. 電波の監視及び規正並びに不法に開設された無線局の探査
    総務省総合通信局による電波監視業務の実施にあてられています。当サイトでも紹介している高性能な不法電波監視システム『DEURAS(デューラス)』も平成5年度に電波利用料によって整備されたものです。

    画像は車両型のDEURAS-Mによる不法無線局探査イメージ図(引用元・総合通信局公式サイト)

  2. 総合無線局管理ファイルの作成及び管理
    無線局申請処理、周波数管理等の電波監理事務の迅速かつ効率的な実施を支援するためのシステムである、総合無線局監理システム(いわゆるパートナー)の管理実施のために使用します。モービル局から証票のシールが廃止されたのも、このシステムの運用開始によるものです。
  3. 周波数を効率的に利用する技術、周波数の共同利用を促進する技術又は高い周波数への移行を促進する技術としておおむね五年以内に開発すべき技術に関する無線設備の技術基準の策定に向けた研究開発並びに既に開発されている周波数を効率的に利用する技術、周波数の共同利用を促進する技術又は高い周波数への移行を促進する技術を用いた無線設備について無線設備の技術基準を策定するために行う国際機関及び外国の行政機関その他の外国の関係機関との連絡調整、試験並びにその結果の分析
    電波資源拡大のための研究開発の実施など。
  4. 電波の人体等への影響に関する調査
    電波の安全性に関する調査及び評価技術を行っています。
  5. 標準電波の発射
    標準電波による無線局への高精度周波数の提供
  6. 特定周波数変更対策業務
    特定周波数変更対策業務
  7. 特定周波数終了対策業務
    特定周波数終了対策業務
  8. 現に設置されている人命又は財産の保護の用に供する無線設備による無線通信について、当該無線設備が用いる技術の内容、当該無線設備が使用する周波数の電波の利用状況、当該無線通信の利用に対する需要の動向その他の事情を勘案して電波の能率的な利用に資する技術を用いた無線設備により行われるようにするため必要があると認められる場合における当該技術を用いた人命又は財産の保護の用に供する無線設備の整備のための補助金の交付
    周波数有効利用促進事業(無線システム普及支援事業)
  9. 電波の能率的な利用に資する技術を用いて行われる無線通信を利用することが困難な地域において必要最小の空中線電力による当該無線通信の利用を可能とするために行われる次に掲げる設備の整備のための補助金の交付その他の必要な援助
    当該無線通信の業務の用に供する無線局の無線設備及び当該無線局の開設に必要な伝送路設備など
  10. 電波の能率的な利用に資する技術を用いて行われる無線通信を利用することが困難なトンネルその他の環境において当該無線通信の利用を可能とするために行われる設備の整備のための補助金の交付
    電波遮へい対策事業など
  11. 電波の能率的な利用を確保し、又は電波の人体等への悪影響を防止するために行う周波数の使用又は人体等の防護に関するリテラシーの向上のための活動に対する必要な援助
    周波数の使用等に関するリテラシーの向上や、4K・8K普及促進等のための衛星放送受信環境整備支援等(BS/CS-IF対策)など
  12. 電波利用料に係る制度の企画又は立案その他前各号に掲げる事務に附帯する事務

出典 総務省公式サイト http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/

電波利用料が免除されている無線局

現在、電波利用料の納付対象者は携帯電話会社、放送事業者、衛星電話会社、簡易無線局(デジ簡含む)、そしてアマチュア無線局などとなっていますが、警察無線、消防無線、防災無線、独立行政法人の使う公共性の高い無線局などは全額または半額免除となっています。

放送事業者の電波利用料はいくら?

なお、テレビ局や通信事業者(実際は利用者が払っている)にかけられている電波利用料ですが、TV局への徴収料が、その受益の規模と比例せず、安すぎるとして批判が上がっています。

2013年の報道によれば、テレビ局が年に納める電波利用料は携帯電話会社の実に10分の1だそうです。

テレビ局全体の電波利用料負担は、総計で34億4700万円にしかならないのに対し、営業収益は3兆1150億8200万円もある。電波の“仕入れコスト”は、営業収益のわずか0.1%ということになる。Copyright © Business Journal All Rights Reserved.

引用元: https://biz-journal.jp/2013/05/post_2051.html

電波利用料の滞納について

電波利用料の滞納については、国税の滞納取立てに準じており、私たちアマチュア局の300円と言えど、税金や国民年金などと同様に納めなければ、催促および督促が行われ、督促後は延滞金も発生してしまうので滞納しないようにしましょう。

電波利用料を滞納している場合にとられる法的手続き

  1. 電波利用料を納付期限までに納めなかった方には、催促(さいそく)状で催促が行われます。それでも納めない場合、督促(とくそく)状を発布し、納めるべき期限(督促の日からおおよそ20日後)を指定して督促を行います。
  2. やむを得ない事情があると認められる場合を除き、督促後も納めなかった方に対しては、財産の差押え、強制換価など、国税滞納処分の例により強制徴収を行います。なお、督促後は年14.5%の割合で計算した延滞金が発生します。

詳しくは総務省 電波利用ホームページにて http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/index.htm

ご注意

各地で『電波利用料の督促状』を騙る不正請求の事例が確認されています。『はがきの督促状』により、指定された金融機関の口座にお金を振り込ませようとするものですが、総務省から銀行などの口座を指定して電波利用料の振込をお願いすることや、民間の第三者機関などに徴収代行することはありません。

出典 総務省公式サイト http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/other/cation/index.htm

電波利用料のまとめ

電波利用料は法律で規定されており、また4アマのみならず、陸海空特殊無線技士などプロの無線資格でも国試の試験問題の法規に出題されますので、これから各国家資格を取得される方は、ぜひ覚えておいてください。

私たちの場合は、アマチュア局で年300円、フリーライセンス無線のデジタル簡易無線(登録局)で年、個別登録600円、包括登録450円となっており、とても安価です。

不法無線局を取り締まる総務省総合通信局(総通)とは?

局免が届いたら30日以内に納付書(コンビニで支払い可能の振込用紙)が送られてきますので、電波利用料を忘れずに納めましょう。