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現在のアマチュア無線機には『広帯域受信機能(ワイドバンド機能)』が備わっている機種が多く、例として筆者のお勧めするハンディ型アマチュア無線機『VX-3』にも搭載されています。
しかし、アマチュア無線機に搭載される広帯域受信機能では受信性能が高くありません。
そこで、アマチュア無線のみならず、航空無線や各種業務無線、さらに低い周波数のHF帯など、幅広い無線交信を聞きたい(傍受)のであれば『広帯域受信機(ワイドバンドレシーバー)』がおすすめです。
また、広帯域受信機は送信機能がありません。つまり無線機ではないため、免許や資格が不要。どなたでも無線が受信可能なのです。
電波法では『無線局とは受信を目的とするものを含まないとなっていますが、取締りを行う総合通信局では『電波を発射しなくても、電波を発射できる状態で使用している』のなら、不法無線局の開設罪に問われる場合もありますのでご注意ください。
- アマチュア無線機の『広帯域受信機能』は限定的
- 広帯域受信機は幅広い周波数と各種の電波形式に対応する
- 広帯域受信機はアマチュア無線の資格や免許がなくても扱える
- 無資格者が送信可能な状態のアマチュア機を受信機がわりに使う法的リスクがない
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広帯域受信機でできること、できないこと

自分の地域で緊急車両がサイレンを鳴り響かせて忙しく走り回るのを見るのは不安です。
近隣に灰色や黒の覆面パトカーがいっぱい集まってきて、物々しい雰囲気の現場で制服や腕章着用者に何が起きているのか聞こうとしても、自分を捕まえに来たのでもない限り「アタシがここにいる理由を考えればわかるでしょ。ふんっ」と言って、情報を独占し、あまり教えようとしません。犯罪捜査に関わることでもあり、当然とは言えます。しかし、自分の地域で今何が起きているのか、その端緒だけでも知りたい……。
もし、それをしたいなら、近所の物知りおばさん同様、消防署活系無線、ドクターヘリ無線、マスコミ無線、市町村の防災無線、防災移動系など受信(傍受)できる広帯域受信機はとても役に立つアイテムです。
では具体的に何が受信できるのでしょうか。広帯域受信機でできること、できないことを見てみましょう。
アマチュア無線が傍受できる
何はともあれ、趣味の無線であるアマチュア無線が傍受できます。そしてアマチュア無線は『遊びの無線』だけではありません。
災害とは切っても切れないのがアマチュア無線です。災害発生時には多くのボランティアが非常通信を行うためです。
大規模な災害でなくとも、山岳事故、海難事故などで救援が必要な際に非常通信が行われる場合もあります。聞き逃してはなりません。
また私たちハムは、ときに宇宙から電波を受信する場合があります。
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防災同報無線などの傍受ができる
災害時に市町村役場から放送される60MHz帯のアナログの『防災同報無線』であれば通常、防災無線受信機で受信できますし、アナログ広帯域受信機でも受信が可能で、情報収集に役立ちます。
災害情報を迅速に入手すべく、普段から受信機を手元や枕元、車に置いておくと良いでしょう。
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災害系航空機、公共機関の無線で災害発生を推測できる
災害や事故が発生すると、消防や防災ヘリが飛来する場合があります。警察や自衛隊など、実に多くのヘリもまた飛来するでしょう。
そのとき、近隣に小規模な飛行場に援助用航空無線局があれば、お互いの飛行上の安全配慮のため、飛来の目的や滞在時間、位置などを飛行場に通告します。必ずしもすべての情報を知ることはできませんが、断片的な情報を集めて推測し、ある程度の事故事件現場の位置を把握する事ができますから、これらの航空無線もまた有用です。
そのためにも、普段から近隣の飛行場などの交信の傍受に努めるとよいでしょう。
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広帯域受信機でも受信できない無線
残念ながら広帯域受信機も万能ではありません。現在、国内で販売されている広帯域受信機にはアナログ受信専用とアナログ・デジタル受信両対応の機種があります。アナログ無線とは、AM、FM変調方式などの通信を基本とするもので、これらはアナログ広帯域受信機で受信が可能です。
現在はAORやユニデン製品など、各種デジタル無線に対応しているレシーバーも出そろいはじめており、マスコミ用デジタル無線、デジタル簡易無線、米国警察や在日米軍も使うPublic Safety(公共保安)P25規格などは受信して復調できます。とはいえ、まだまだ価格は高く、防災マニアや受信マニアに普及はしていません。
デジタル警察無線・デジタル消防無線
しかし、デジタル変調方式の無線となると、アナログ広帯域受信機では復調できず、受信できませんので注意が必要です。
例えば重要通信である警察無線や消防無線(指令波)です。警察無線はすでに80年代から90年代にかけてデジタル化され、消防無線の市町村波については2016年3月末で全国の市町村でデジタル化が完了しており、最も使用される市町村波(指令波)を聞くことはできなくなりました。デジタル消防無線を傍受できる”受令機”は現在のところ、消防機関向けに販売されてはいますが、総務省の指導により、メーカーが一般への販売を自主規制しており、消防団員であっても個人購入は不可能です。
いくら受信範囲を広げる改造をしてある広帯域受信機であっても、これら警察無線や消防無線の市町村波など、すでにデジタル化してしまった無線はアナログ専用受信機では聞けないのです。聞けるデジタル受信機も売っていません。
また、消防の市町村波や警察無線などデジタル処理された無線通信はアルインコ社が『電波法に違反し罰則がある』と言っているので、解読を試みないでください。
ただし、デジタル化に伴って、これまで政令指定都市の消防局のみ使用が許されていたアナログの署活系無線については総務省が規制を緩和しており、全国の小規模消防で使用が活発になっています。
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マスコミ無線
警察は事件事故が発生すると、すぐに親しくしている警察本部内の記者クラブ詰めやサツまわりの記者に耳打ちサービスするので、ヒトタビ報道ヘリが2機も3機も集まると、大事件・大事故の発生は確実です。
したがって報道局とヘリの交信するマスコミ無線を聞いて、事件事故の概要、すなわち今何が起きているのかを2016年のマスコミ無線デジタル化まではアナログ受信機でうかがい知ることができました。現在、報道連絡波についてはほぼすべてデジタル化されています。ただし、・・・!?
2018年現在、近隣の災害や事件事故を無線から知るには、防災同報無線・消防署外活動系無線、防災ヘリ無線、消防、警察ヘリ、ドクターヘリ無線、市町村役場防災移動系が要です。これらの基本的な周波数は受信機にメモリーして、常に傍受しておさえておきたいですね。災害時、どんなアナログ無線を聴取するべきか以下のページにてまとめておきました。
またほかにも、電力、ガス会社などライフライン各社の無線や、道路管理者(都道府県庁)の無線を傍受しておくのも良いでしょう。
広帯域受信機のまとめ
このように、広帯域受信機があれば、様々な周波数を受信することができます。
ただし、日本国内で受信するのは問題がなくても、一部の国では広帯域受信機の持ち込みが法律で規制されている場合もありますので、海外旅行へ受信機を持っていく場合は事前に該当国の大使館へ確認するなど調査が必要です。
また、フレンドシップデーなどで在日米軍基地内に無許可あるいは隠して持ち込まないでください。憲兵隊からの厳しい取り調べが待っていますので、充分にご注意くださいね。
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