国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士とアマチュア無線で交信する『ARISS』

宇宙飛行士と地球を結ぶ無線交信──ARISSとは?

アマチュア無線家が国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士と交信できる夢のプロジェクト、それが「ARISS(Amateur Radio on the International Space Station)」です。

ARISSは、NASAやJAXAをはじめとする宇宙機関とアマチュア無線団体が共同で実施する国際的な教育プログラムで、ISSに搭載されたアマチュア無線設備を通じて、地上の学校や個人局と宇宙飛行士が直接交信を行う機会を提供しています。

ISSは地球上空約400kmを秒速約7.7kmで周回しており、日本上空を通過するのは1回あたりおよそ10分間しかありません。その短い時間の中で交信を成立させるには、タイミングと技術の両方が求められます。

使用される周波数は主にVHF帯の145.800MHz(ダウンリンク)で、FMモードによる音声通信のほか、パケット通信や画像送信(SSTV)なども行われることがあります。

特に、小中高校との交信イベントでは、児童生徒たちが宇宙飛行士に直接質問をする機会が設けられています。これまでにも日本各地の学校で多数の成功事例があり、科学教育への関心を高める活動として注目されています。

ISSの通信予定はARISS公式サイトなどで随時告知されており、アマチュア無線の免許があれば誰でも参加を目指すことが可能です。地上と宇宙をつなぐ貴重な交信の瞬間は、多くの無線愛好家にとってかけがえのない体験となっています。

3つの区分

ISS滞在の宇宙飛行士によるアマチュア無線の交信は『ARISS』と呼ばれるもので、主に3つの区分があります。

(1) 日時を決めておこなう学校交信:スクールコンタクト(Scheduled School Contact)
(2) 宇宙飛行士の希望する相手との交信(Crew QSO)
(3) 一般交信(General QSO)

これらは、アマチュア無線の免許を持った宇宙飛行士により、(1)と(2)は、勤務時間内に、(3)は余暇時間におこなわれます。

出典 JARL公式サイト https://www.jarl.org/ariss/

そう、実は宇宙飛行士もアマチュア無線の資格を持っており、余暇または勤務時間中に地上のアマチュア局と交信を行っています。その目的は宇宙飛行士の心理的安定を保つための要素のひとつとのことで、いわばレクリーションによるストレス解消が目的のようです。NASA(米国航空宇宙局)始め各国宇宙機関で活動が認められています。

教室と宇宙を結ぶ感動の10分間 ARISS─Scheduled School Contact

アリス・スクールコンタクト(Scheduled School Contact)は、事前に選ばれた学校に通う子どもたちと宇宙飛行士がアマチュア無線で交信するプログラムで、米航空宇宙局(NASA)の提唱で2000年に始まり、これまで米国を中心に世界で120校以上が交信に成功しています。

典拠元 http://www.ariss.jp/aoyama/yomiuri_aoyama.htm

教室と宇宙を結ぶ感動の10分間──ARISSが育む未来の科学者たち

ISS(国際宇宙ステーション)とアマチュア無線で直接交信する教育プログラム「ARISS」は、世界中の子どもたちに宇宙の魅力を届け続けています。

日本でも多くの学校がこのプログラムに参加しており、文部科学省の後援のもと、選ばれた学校では宇宙飛行士との事前質問を準備し、当日の交信に臨みます。交信時間はわずか10分程度。しかし、その短い時間は、子どもたちにとって一生忘れられない体験となります。

例えば、2023年に行われた東京都内のある小学校でのARISS交信では、宇宙飛行士が子どもたちの「宇宙で食事をするのは難しいですか?」「無重力で寝るときはどうしていますか?」といった質問に、リアルタイムで丁寧に答えていました。教室には緊張感と興奮が漂い、交信が終了した瞬間には拍手が巻き起こりました。

ARISSは単なるイベントではなく、理科や英語、技術家庭科といった教科と結びついた総合的な学びの場として位置づけられています。事前学習では軌道計算や電波伝播の原理、英語による質問文の作成、交信機材の操作方法などを学びます。

交信に必要な機材

技術面では、VHF帯(145.800MHz)を中心に、時にはUHF帯やデジタルモードも使用されます。ISSとの交信には移動速度による「ドップラーシフト」の補正が必要で、専用の追尾ソフトや自動アンテナローテーターなどの支援機材が活用されることもあります。

また、ARISSでは音声交信だけでなく、SSTV(Slow Scan TV)による画像の送信も行われることがあり、ISSからの画像を受信して保存する愛好者も少なくありません。こうした多彩な通信手段が、アマチュア無線の奥深さと宇宙技術の融合を象徴しています。

このようなARISSの取り組みは、アマチュア無線の魅力を再発見させるとともに、次世代の科学者やエンジニアの育成にも貢献しています。

事前に選ばれた主に小中学校などの児童生徒が対象となっており、一般のハムは交信の対象外ですが、もちろん彼らの交信を傍受するのは誰でも可能です。

なお、ISSには『クロスバンドレピーター』が設置されており、このレピーターを介して地上のアマチュア局同士が交信できます。

国際宇宙ステーション(ISS)設置のクロスバンドレピーターで地上のアマチュア局同士の交信を受信せよ!ISSが日本上空を通過する一瞬だけ437.80MHzで奇跡が起きる!