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アマチュア無線の「ゲストオペレーター制度」とは?
ゲストオペレーター制度は、1997年2月24日からスタートした制度で、「アマチュア無線局免許状(局免)を持っていなくても、他のアマチュア局開設者のシャックを借りて運用できる」という仕組みです。
この制度により、自分で無線局を開設していなくても、資格さえあれば他人の無線設備を使って通信ができるようになりました。
たとえば、知人の無線局を訪ねて、そこから無線通信を行う――
いわば「お客さん(ゲスト)」としての運用が可能になる、便利で柔軟な制度です。
ここでは、この制度の注意点や運用ルールについて詳しく解説します。
【ゲストオペレーター制度に必要な資格は?】
ゲストオペレーター制度を利用するには、以下のいずれかの無線従事者資格を持っていることが必要です。
-
第1級アマチュア無線技士
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第2級アマチュア無線技士
-
第3級アマチュア無線技士
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第4級アマチュア無線技士
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その他、業務用無線の相当資格(技術的に同等と認められるもの)
つまり、アマチュア局の「局免」(=開設許可)は不要ですが、操作するための資格は必須です。
【外国人が社団局をゲスト運用する場合】
外国人もゲストオペレーター制度を利用できる?
外国籍の無線技士が、日本で自分のアマチュア局免許を持っていない場合でも、日本国内の社団局を訪問してゲスト運用をすることは可能です。
以下の国で発行された有効な免許または資格証を持っている外国人も、日本国内でゲスト運用が可能です(相互運用協定に基づく)。
国名 | 国名(英語表記) |
---|---|
アメリカ合衆国 | United States |
カナダ | Canada |
ドイツ | Germany |
フランス | France |
オーストラリア | Australia |
韓国 | South Korea |
フィンランド | Finland |
アイルランド | Ireland |
ペルー | Peru |
ニュージーランド | New Zealand |
インドネシア | Indonesia |
これらの国の資格証を持つ方は、日本のアマチュア無線局を借りて運用することができます。
ただし、あらかじめ総務大臣への登録手続きが必要になります。
つまり、外国の免許を持つ方が日本の社団局で運用するには、
-
対象国との相互運用協定に基づいた免許を持っていること
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総務大臣への登録を済ませておくこと
が条件となります。
【運用には免許人の立会いが必要】
ゲスト運用時には、訪問先の無線局の免許人が立ち会い、免許人の責任のもとで運用を行うことが原則です。
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個人局の場合:免許人本人が立ち会う
-
社団局の場合:代表者または構成員の立ち会いが必要
免許人は、その無線局のコールサインでゲストに運用させる責任を負うため、信頼関係に基づいた運用が求められます。
【使用できる周波数・出力は「ゲストの資格に応じて」】
訪問先の無線局が、たとえば第一級アマチュア無線技士(1アマ)の免許を持っていたとしても、ゲスト自身が第四級(4アマ)であれば、操作できるのは4級で許可された範囲の周波数・出力のみです。
例:
条件 | 操作できる範囲 |
---|---|
訪問先:1アマのOMさんの局 | 設備は1アマの範囲まで対応 |
あなた:4アマ | 4アマで許可されている周波数帯と出力のみ使用可能 |
これは、無線技士資格が操作可能な範囲を規定しているためで、どの設備を使うかに関係なく、自身の資格の範囲に制限されます。
【コールサインの使い方】
ゲスト運用時には、訪問先の無線局のコールサインを使用します。
また、運用がゲストによるものであることがわかるように、交信の際にはコールサインに加えて自分の名前をつけてオペーレートします。
例:
これにより、聞いている相手に「この無線局を今運用しているのは誰か」が明確になります。
【参考リンク】
-
JARL(日本アマチュア無線連盟)による制度説明:
http://www.jarl.or.jp/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/guest_op.htm
【こんな使い方も】
「免許は取ったけど、まだ自分の局免が届いていないor開設するか迷っている」
「とにかく早く交信したい!」
そんなときは、経験豊富なOM(年長のハム)さんにお願いして、ゲストオペレーターとして運用させてもらうのもひとつの方法です。
実際の運用を通じて交信のコツを学べるため、初心者の実践練習の場としても活用されています。
【まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
外国人ゲスト運用 | 総務大臣への事前登録が必要(社団局の場合) |
運用の立会い | 免許人または社団局の構成員の立会い必須 |
操作範囲 | ゲスト自身の資格に応じた周波数・出力のみ可 |
コールサイン | 訪問先の局のコールサインを使い、自分の名前も名乗る |
初心者活用 | 局免が届く前でも実運用ができる学習機会として有効 |
ゲストオペレーター制度は、免許取得後すぐに実践の場を持ちたい方や、設備を持たない方にとって、非常に便利で実践的な制度です。無線仲間との交流を深めるきっかけにもなるでしょう。
ゲストが操作できる範囲
ゲストは自分の資格の範囲内で、かつ、訪問先のアマチュア局の免許の範囲内での運用のみ認められます。
HF帯で200W機と10W機、144MHz帯で20W機の無線設備で免許されている第2級アマチュア無線技士の局に第4級アマチュア無線技士が訪問してゲスト運用する場合は、第4級アマチュア無線技士の操作範囲内で運用します。
したがって、HF帯の10W機および144MHz帯の20W機の無線設備を使用できますが、HF帯の200W機の運用はできません。
また、A1電波や1.9MHz、10MHz、14MHz、18MHz の各周波数帯でのゲスト運用も許されません。
HF帯の無線設備で免許されている第4級アマチュア無線技士の局を第2級アマチュア無線技士が訪問してゲスト運用する場合は、その局の免許の範囲内での運用になりますので、A1電波や1.9MHz、10MHz、14MHz、18MHzの各周波数帯での運用はできません。
出典 ジャール公式サイト http://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-2_Regulation/guest_op.htm
訪問先の局の免許人による立ち会いが必須です
ゲスト運用は訪問先の局の免許人(社団局の場合は代表者または構成員)がすべての責任をもって実施するもので、必ず訪問先の免許人の立ち会いのもとで運用しなければなりません。
無資格の学齢児童生徒は『アマチュア無線の交信体験制度(体験運用)』による体験運用が可能に
先に紹介したゲストオペレーター制度は従事者免許を持つ方を対象とした制度ですが、これとは別に2021年3月からは、従事者免許を持たない小中学生を対象としたアマチュア無線の体験運用が可能となりました。
これは『アマチュア無線の交信体験制度(体験運用)』と呼ばれるものです。
【どんな制度?】
この制度では、アマチュア無線技士の免許証を持っていない無資格の小中学生が、有資格者の監督のもとでアマチュア無線の交信体験を行えるようになりました。
つまり、資格がなくても実際にマイクを握り、交信の基本を体験する画期的な制度です。
【体験運用の概要】
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 小学生・中学生(=学齢児童生徒) |
必要な資格 | 本人には不要。ただし監督者は資格保有者であること |
監督者の例 | 保護者(アマチュア無線技士)、学校教職員(同様)など |
運用形態 | 有資格者が操作を補助しつつ、児童生徒が交信を体験 |
操作範囲 | 周波数の選択や無線機の設定などはすべて監督者が担当 |
禁止事項 | モールス通信の操作は禁止、その他技術的操作も不可 |
【どんなことができる?】
この制度で児童生徒が行えるのは、音声による基本的な交信体験です。
たとえば以下のような内容が想定されています:
-
「こちらは〇〇小学校の△△です、聞こえますか?」
-
「お名前を教えてください、ありがとうございました!」
つまり、“話す”ことそのものが体験の中心であり、周波数やモード設定などの技術的操作は監督者が全て行います。
【制度のポイント】
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資格がなくても交信体験ができる:アマチュア無線の魅力を早期に知るチャンス
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教育機関や家族単位での運用が想定されている:安心安全な環境での体験
-
将来的な資格取得のきっかけづくり:興味喚起と人材育成を兼ねた制度
【注意点】
注意項目 | 内容 |
---|---|
操作責任 | すべて監督者が負う(技術操作やログ管理など) |
コールサインの使用 | 運用局のコールサインを使用(体験者の名前を添える) |
対象外操作 | モールス通信やデジタル通信など、特別な操作は禁止 |
公的機関の協力 | 学校での運用などは、事前に適切な準備が必要 |
【まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
制度名 | アマチュア無線の交信体験制度(体験運用) |
開始時期 | 2021年3月 |
対象 | 無資格の小中学生 |
監督者 | 保護者や教職員など、有資格者であること |
運用内容 | 音声交信の体験のみ、技術的操作は監督者が担当 |
禁止項目 | モールス、機器設定など |
【最後に】
この制度は、子どもたちが無線通信に触れる入り口として極めて有効な制度です。
「技術の話がよくわからなくても、無線って楽しい!」――そんな体験が、将来のアマチュア無線技士や技術者を育てるかもしれません。
家庭や学校の行事、イベントなどで、積極的に活用されることが期待されています。
アマチュア無線の「ゲストオペレーター制度」について(まとめ編)
1997年2月24日から制度が開始された「ゲストオペレーター制度」では、自分の局免を持っていなくても、他人の無線局を訪問して、その設備を使って無線通信ができる制度で、アマチュア無線の普及と利便性の向上に大きく寄与してきました。
この制度により、アマチュア無線を始めたばかりの方でも、経験者の無線局で気軽に体験・運用ができるようになりました。見学を兼ねた運用や、無線機を(忘れて)持たずに、手軽な旅行先での一時的な通信など、活用の幅は広がっています。
【まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
制度名 | ゲストオペレーター制度 |
開始日 | 1997年2月24日 |
必要なもの | 操作資格(1〜4級のアマチュア無線技士など) |
不要なもの | 自分のアマチュア局免許(開設許可) |
対象 | 日本人・外国人ともに可能(条件付き) |
特徴 | 他人の設備を借りて手軽に運用できる制度 |