米軍が新たに採用した多口径狙撃銃Mk22(バレットMRAD)は何が優れているか

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米軍(および特殊作戦軍)が採用を進めているMk22(Advanced/Precision Sniper Rifle、MRAD系)は、従来の長距離狙撃系装備を統合・更新するために設計された次世代スナイパーライフルであり、いくつかの点で従来の同種の狙撃銃を上回る能力を持ちます。

詳しくみていきましょう。

マルチカリバー(多口径)対応

New Army sniper weapon system contract awarded to Barrett Firearms | Article | The United States Army

MRAD(Multi-Role Adaptive Design)はバレット社(Barrett Firearms)が設計・製造するボルトアクション式の多口径対応狙撃銃です。

最大の特徴はマルチカリバー対応です。複数口径に迅速に切り替え可能なモジュラー設計が特徴です。

Mk22は現場で比較的短時間にバレルを交換でき、7.62×51mm NATO、.300 Norma Magnum、.338 Norma Magnumの各口径に対応します。

Barrettの製品説明と軍側の資料は、MK22が複数のバレルを備え、現場での換装を前提としたモジュール式であると明記しています。

オペレーターレベルでのバレル交換が可能であり、任務や弾薬の事情に応じて口径を変更できます。

つまり、「同じライフル」で、銃身を交換するだけで異なる弾丸を発射でき、任務や弾薬事情に応じて即座に最適な射撃性能を選択でき、部隊の柔軟性と行動半径が向上します。

精度と統一プラットフォーム化

Army inks $49.9M deal to buy 2,800 MK22 MRAD rifles from Barrett Firearms – UPI.com

次に精度と統一プラットフォーム化です。Mk22はMRAD系の設計に基づくボルトアクションで、サブMOA級の精度を狙える性能を備えています。

サブMOAについて https://armsweb.jp/report/1901.html

統一されたシャーシで複数口径を運用するため、訓練や整備の共通化が図れる点も部隊運用上の大きな利点です。

運用面でのメリットも明確です。

従来はM107(半自動の.50口径)やM2010など複数の狙撃プラットフォームを併用していた部隊が、Mk22で中遠距離~長距離任務を一本化できるため、補給や部品管理が簡素化されます。

口径を問わないサプレッサーとスコープのオプション

また、Mk22はサプレッサや高倍率光学機器との統合が前提設計となっている点も見逃せません。

当然、Mk22は異なる口径の弾丸を発射する前提となっているため、オプションもそれに対応する必要があります。信じがたいことに、Mk22には口径に依存しないフラッシュサプレッサーとサウンドサプレッサーが搭載されています。また、口径を問わない7×35パワーの精密デイオプティックも搭載されるのです。

サプレッサ(消音器)/フラッシュ低減装置との統合が前提設計である

Mk22は、システムとしてサプレッサとともに運用されることを前提に開発・配備されており、海兵隊向けの配備パッケージには銃本体・複数バレル・7–35倍の「M317 Precision Day Optic(PDO)」およびサプレッサが含まれると公式に説明されています。

海兵隊の公式説明でMk22 Mod 0 は「caliber-agnostic 7×35 power Precision Day Optic(M317 PDO)」を組み合わせる旨が明記されており、実際の配備資料やプレスリリースにも同表現が出ています。これは光学系がバレルや口径の変更に対応できる設計であることを意味します。

MRAD Sniper Rifle 出典 New Zealand Defence Force

これら弾道の一貫性を維持するオプションがセットで運用されることで、射手のステルス性を高め、実戦での生存率と任務成功率の向上が期待されています。

もちろん留意点もあります。高性能化に伴い導入コストや弾薬の調達・整備ラインの整備が必要であり、また母体がボルトアクションであるため「連続追撃の利便性」でセミオート方式に及ばない場面もあります。

そのため現在は用途に応じてMk22(多口径ボルト式)と、半自動式を任務別に使い分ける運用が現実的です。

将来的な構想

アメリカ陸軍・海兵隊はMk22を既存の狙撃体系の後継として位置づけており、現在配備されている対物狙撃銃であるM107等を代替する予定です。


結論

Mk22は「多口径対応」「高精度」「プラットフォーム統一による運用効率化」を兼ね備えた次世代狙撃銃であり、米軍が狙撃任務の柔軟性と精度を同時に高めるために採用を進めた意義は大きいといえます。

任務に応じた精密射撃の要求が高まる現代戦において、非常に有効な選択肢となるでしょう。

関連リンク

  1. 対物ライフルで兵士を撃ってはいけないはウソ? — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/antimateriel-rifle-legal-limits/
    (対物ライフルの法的・倫理的制約を論じた解説記事)
  2. 陸上自衛隊、新たな対人狙撃銃:ヘッケラー&コッホ社製HK G28 E2を調達 — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/jgsdf-hk-g28-adoption/
    (HK G28 E2 の導入を伝えるニュース/解説)
  3. 陸上自衛隊はなぜ狙撃銃を導入してこなかったのか — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/sogekijyuu-naze/
    (狙撃銃導入の歴史的背景と理由を考察した記事)
  4. 敵の恐怖心を煽り、進撃遅滞させるスナイパーの運用は心理戦でもある — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/sniper_op1/
    (狙撃運用の心理戦的効果を論じた考察)
  5. 陸上自衛隊も配備する「バレット対物ライフル」シリーズの驚くべき実力 — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/barrett/
    (バレット社製対物ライフルの性能解説と陸自導入の文脈)
  6. 陸上自衛隊が導入した対人狙撃銃「M24 SWS」の実力 — https://amateurmusenshikaku.com/jieitai/sniper/
    (M24 SWS の技術解説と運用評価)

出典(抜粋)

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