【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、無線受信や運用に関して総務省総合通信局の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、各種記事はそれらの調査結果に基づいて構成しています。

自衛隊のGCI周波数を書いたら違法になる?電波法と“公開の限界”を整理する

この無線受信趣味の世界では「聞こえる範囲で記録された周波数」が非公式に出回っていることは多いものです。

専門誌でも45年前から、取り上げられている情報です。ただし、ある周波数を除いて。

その周波数とは、いわゆる自衛隊の使うGCIです。

航空自衛隊の戦術用周波数『GCI』とは

このGCI(地上要撃管制)に使用される周波数だけは、受信家の間でも長年「聞くのはいいけど、周波数の公表はしない暗黙の領域」とされています。

実際、通信の秘匿性が極めて高く、任務運用に直結することから、自衛隊が自ら公表することはなく、総務省総合通信局でも「非公開」となっています。

そして、趣味界隈でも“普通に聞いてるけど”その周波数が公然と明示されることはほぼありません。

では、このGCI周波数をネットに書くことは、違法なのでしょうか?

電波法、自衛隊法、そして現実の運用からその線引きを考えます。

  • 🚫 免責事項

    本記事は、公開情報および法令、専門誌の対応などを考察して一般的な見解を述べたものであり、特定の事例における合法・違法の法的判断を提供するものではありません。判断に迷われた場合は、専門の法律家や関係当局の見解を確認してください。

航空自衛隊の使うGCIについては、すでに別項で詳しく解説していますが、ざっくり説明すると、以下のような目的で使用される周波数です。

GCIの周波数

そもそもGCIとは何か?

  • GCI=Ground-Controlled Interception(地上要撃管制)

  • 地上から戦闘機に対して交信で指示を与えるシステム

  • 自衛隊では防空指令所(DC)と要撃機の間で用いられる

  • 通常、UHF帯やVHF帯、HF帯の専用周波数を用いる

  • デジタル化され、部外者の傍受ができない場合もある

つまり、航空自衛隊の作戦そのものを遂行するために使用される重要な戦闘用周波数です。GCIには訓練用、ホット(実戦)用、部隊間連絡用などがありますが、前述の通りGCIの周波数は非公開です。

とは言え、周波数自体がわかれば、その通信自体は多くがAM変調であり、市販の受信機で誰でも受信できます。

「非公開周波数」を書いたら違法になるのか?

この記事に訪れる読者の多くは、「GCI周波数をネットに書いたら違法になるのか?」という疑問を抱いています。

そのため、まず法的にどうなのかという点について、考えます。

あくまで一般論ですが、仮に誰かが傍受した“GCIの周波数”をネットなどで公開したとしても、ただちに電波法違反に該当するかと言えば、そうとは限らない可能性があります。

実際、過去には『月刊ラジオライフ』誌上でアナログ警察無線の周波数が詳細に公開された事例があり、警察当局が問題視して当時の郵政省電波監理局に確認を求めました。

しかし、電監は「違法には当たらない」と判断し、摘発には至っていません。

ただし注意すべき点として、警察無線などでは音声の録音・公開といった“内容の漏洩”行為をした人物が電波法違反で摘発された例が存在します。

2002年に摘発された『警察無線録音テープ販売事件』で警察さんが激怒した理由

したがって、GCI音声データそのものを公開した場合は刑事責任が問われるリスクが高いと考えられます。

周波数の公開と法的な観点

では、内容ではなく周波数そのものの公開についての観点です。

法的観点:

  • 周波数そのものの公開には直接的な法律の禁止規定は存在しない
     → ただし、電波法第59条(秘密の保持)により、「業務上知り得た秘密の漏洩」は違法

ただし以下の場合は、違法とされる可能性があります。

違法の可能性があるケース:

「GCIの周波数を職務上知り得る立場にある現職の自衛官」が漏洩した場合は、電波法に限らず、自衛隊法や国家公務員法上の守秘義務違反など、より重い責任が追及されるおそれがあります。

  • 元自衛官や防衛関係者が職務で知った「周波数情報」を公開 → 守秘義務違反

  • 暗号化・秘話化された通信内容を傍受し、復号・公開 → 電波法違反(電波法59条違反)

  • 周波数の公表が「防衛上の機密に関わるとみなされる場合」 → 自衛隊法または防衛秘密保護法(特定秘密保護法)違反の可能性

違法にならない可能性が高いケース:

  • 一般の民間人が、自身の受信機で傍受した「周波数(内容ではなく)」を共有
    → 公然と運用されていないものであっても、あくまで「傍受可能だった事実」や「直接的な周波数」の共有は合法

書いても違法とは限らないが、専門誌や愛好家側はあくまで自主規制している

このように、明確に違法とまでは言えませんが、興味本位の公開は結果として運用当局者に何らかの損害を与える可能性もあるため、道義的リスクがあるのが実情です。

その根拠が、専門誌がGCI周波数を直接的に明示していないという事実です。

それはどういう事でしょうか。次のページで見ていきましょう。

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