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消防署と隊員、それに消防車両が連絡のために使っている無線を一般に消防無線と呼びます。

消防無線には消防署からその支署や車両などへ出場指令を出したり、隊員から本部へ状況連絡などをする際に使用する市町村波、それに隊員同士が現場で交信する署活系といった無線があります。

多くの場合、一つの消防署や消防本部には火災事案と救急事案に対応するため、複数の周波数が割り当てられています。

消防無線発足当時から長らくアナログ無線でしたので誰でも受信が可能でしたが、2016年(平成28年)3月をもって、すべての市町村でデジタル化が完了されたと総務省消防庁が発表しました。デジタル化への費用はアマチュア無線家もおさめている「電波利用料」から捻出されています。

このたびのデジタル化に伴って、消防無線を傍受することはできなくなってしまったのでしょうか。いいえ、残された道はあります。

それでは消防無線について詳しく解説していきましょう。

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アナログからデジタルへ・・課題は多い

これまでアナログの消防無線では140Mhzから150MHz台のいわゆるVHF帯が割り当てられていましたが、今回のデジタル化に伴い、これまでよりも高い帯域の260Mhz帯へと移行しています。

UHFに近くなるため、論理的には以前よりも通信距離が短くなり、とくに山などでは不感地帯が発生する懸念も指摘されています。

それまでの140から150MHzといったVHF帯は、状況によってはかなりの広範囲に届く場合もありますから、これまでは消防・救急波として公開されている周波数をとりあえず全部、受信機に入れてサーチしておけば、昼間は聞こえない遠い地域の消防無線でも深夜には傍受することができました。

また、このデジタル無線特有の仕様として電波が弱いとモガってしまい、受信(復調)ができないという特徴や、PTTボタンを押してから実際に送信されるまでにタイムラグが発生してしまいます。

これは現在民間で広く普及している「デジタル簡易無線(登録局・免許局)」でも同じ指摘があります。

とくに2016年に全市町村で完全デジタル化された消防無線では人命救助の現場で使用されるもっとも重要な無線であることから、消防活動において指示の送れによる危険性が指摘されており、直接人命の救助に係る現場においては全く交信ができない状態に陥る可能性を指摘する消防団員の声を以下の記事で報じています。

デジタル通信はクリアに聞こえる半面、アナログ式の時代は建物や山の陰でもわずかに聞こえた音声が全く聞こえないこともあり、 郡部の消防本部などからは「はっきり聞こえるか、全く聞こえないかのどちらかというのは不安もある」「電波が入りづらくなった」との指摘もある。 消防庁によると、3月末で全国の消防救急無線のデジタル化が終了したという。

典拠元
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=354801&nwIW=1&nwVt=knd

このように報道でも指摘されています。

一方、デジタル消防無線のアンテナは消防車両に取り付けられるアンテナでは以前よりも短くなっています。

ダイヤモンド M260-NS 260MHz市町村デジタル移動通信・消防救急デジタル移動通信用

ダイヤモンド M260-NS 260MHz市町村デジタル移動通信・消防救急デジタル移動通信用
B00DXFYNGQ | 第一電波工業 |

中には、アンテナメーカーからドルフィン型アンテナも登場しています。

関係者以外は傍受不可能に

今回の消防無線デジタル化にあたり、最も際立った点としてはデジタル消防無線受信機が一切市販されていない現状では、一般人が傍受することは不可能になったことです。

一般人どころか、消防団員もデジタル消防無線用受令機が無ければ受信ができません。

これまで、アナログ消防無線の時代における消防団員は非番時などにも対応するため、個人的に市販の広帯域受信機を使って消防無線を傍受するなどしていました。

しかし、デジタル消防無線を受信できる受令機は現在のところ、一般の方には市販されないことになっています。

アルインコなどアマチュア無線機メーカーからもデジタル消防無線を受信できるいわゆる「受令機」が発売されていますが、総務省消防庁の指導によって消防関係者向けに限定されているため、どのメーカーも一般人への販売は自主規制しているえに製品の特性上、その仕様すら関係者のみしか開示せず、一般人の質問へは答えられないとも明記しています。

あるメーカーでは「消防団員様でも個人販売しておりません」とのことですから、消防団員も少し困惑しているようです。予算の問題で団員用の受令機までは買えない自治体が多いそうですから困りものです。

アルインコ社公式サイト
http://www.alinco.co.jp/product/prod_item.html?itemId=I20130411001

受令機には、もし万が一、第三者に不正にわたった場合、自己破壊コードを受信させてプログラムを停止させる機能もあります。

これらデジタル消防無線は無線機のみならず、受信機(受令機)も含めて大変厳重に管理されており、一般人がデジタル消防無線を傍受するのは困難、不可能に近いでしょう。

アナログの広帯域受信機で聞こうとしても、警察無線同様にデジタルノイズだけで音声は聞けません。でも、本当に消防デジタル無線は傍受不可能になってしまったのでしょうか・・?いいえ。実は・・・

逆にアナログ署活系無線は全国の小規模消防に使用が緩和され、活発になった!

冒頭でも述べましたが、消防無線には466MHz帯の署活系無線(アナログのFMモード)という系統もあります。

実は今、デジタル化して聞けなくなった市町村波とは逆に署活系無線は活発化しています。

消防署活系は火災現場などで消防吏員(消防隊員)が使う無線ですが、これまで署活系無線は政令指定都市といった大規模な消防局でしか配備、運用が認められず、政令指定都市以外の小規模な市町村の常備消防(消防本部)では運用が認められなかったのです。

それが今回のデジタル化に伴って、総務省が規制緩和を検討し、現在では政令指定都市以外の消防でも使用が許可されています。

また、消防無線としてはかなり自由度が高い無線ともされており、ラジオライフさんのサイトにこのような興味深い説明もありました。

消防無線はアナログ波の署活系でデジタルを聞く

消防無線の署活系は運用方法に自由度があり、いろいろなシステムが作られています。その1つが、260MHz帯のデジタル消防無線中継システムです。消防本部と消防車を結ぶ260MHz帯のデジタル波を受信した消防車は、車載の中継装置でFMモードに変換。466MHz帯のアナログ波で送信されるのです。
(文/さとうひとし)

引用元 ラジオライフ.com
http://radiolife.com/security/7632/

上記のようにデジタル化によって聞けなくなった指令波なども一部の消防本部では独自運用として、アナログに変換して現場の隊員に伝えるという場合もあるようです。

このようにデジタル化によって、消防無線が聞けなくなってしまったからといって、せっかく買った広帯域受信機を手放す必要は今のところまだありません。

このように多くの地域ではむしろ、今まで運用もされておらず聞こえなかった署活系無線が活発になっているのです。おっと。まだまだ聞ける”消防無線“が以下にも。

消防団でデジタル簡易無線(登録局)を配備する実例が増えているが、第三者が傍受できるのか

消防署員のほか、消防団員もまた466Mhzの署活系無線を使うことがありますが、消防関係では消防団員のみが使用している無線として一部の消防団では民間企業でお馴染みの「デジタル簡易無線」の配備と使用も確認されています。

デジ簡機についても本サイト内の「デジタル簡易無線」のページにて詳しく解説していますが、消防の業務で関係者がこれを使うことについては、なかなか法的根拠の判断が分かれるところです。

東日本通商株式会社さんのサイトでは以下のように説明がなされています。

なお、最近、消防団がデジタル簡易無線を消防活動で導入運用された実例やお問い合わせが増えていますが、この簡易無線局免許の運用目的は「簡易な業務用」であって「消防用」や「防災用」としては免許運用は認められません。

引用元 http://www.hnt.jp/service/shoubou.html

と記載されています。

一方で株式会社エクセリの吉田さんは

デジタル簡易無線機は消防団で使用できます。電波法で消火活動にデジタル簡易無線免許局を使用することは禁じられていますが、見回りや消火活動以外の通信には使用できます。

引用元 http://d.hatena.ne.jp/ibukiy/20100420/1271737451

とおっしゃっています。

消防団の業務と言っても、消火活動以外にも、行方不明者捜索などもありますから、人命救助、防災業務、見回り・・・どこで区切りをつけていいのか、なかなか判断の分かれるところでしょうか。

現在では、全国的に見てみると消防団向けとして数百台のデジタル簡易無線方式(登録局)が配備されている実例は多数あるようです。

2011年に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市では翌年の2012年、団員約700人用としてデジタル簡易無線機を配備しています。

疲弊する消防団、わずかな訓練・装備と報酬で危険な任務–震災が突きつけた、日本の課題《1》/吉田典史・ジャーナリスト

市では、消防団に配備されている車両に無線を備え付けていた。だが、車を離れると無線からの情報を得ることはできなかった。結局、団員51人が犠牲となった。

市は12年度から、団員約700人にデジタル簡易無線機を配備することにした。津波の到達時間や高さなどをすべての団員に連絡できるようにする。

出典 http://toyokeizai.net/articles/-/9365?page=2

また、札幌市でも200台近いデジタル簡易無線機を消防団用に配備していますが、公開されている無線運用マニュアルのなかで秘話に言及しており、以下のように説明しています。

デジタル簡易無線機には、秘話コードを設定しているので、一般の方が保有する無線機では、消防団の無線交信を傍受できません。

参照 札幌市消防団 無線運用マニュアル https://www.city.sapporo.jp/shobo/saiyo/documents/musen.pdf

鹿屋市でも平成29年にデジタル簡易無線機(消防団用)を配備しています。

市では、平成29年度特定防衛施設周辺整備調整交付金を活用し、消防団へ「デジタル簡易無線機」を配備しました。これにより、火災現場等において、これまで以上にスムーズな連携・伝令が可能となり、迅速な活動が期待されます。

出典 http://www.e-kanoya.net/htmbox/anzenanshin/syouboudan_seibi_4.html

新潟県の魚沼市消防本部は魚沼市消防団が使用するデジタル無線装置の発注仕様書を公開していますが、方式としてデジタル簡易無線方式(登録局)を求めています。

デジタル簡易無線機 17台 魚沼市消防団に配置しているデジタル簡易無線機(IC-D60)と互換性があるもの

出典http://www.city.uonuma.niigata.jp/docs/2017072700064/file_contents/290810_12_uoshodanbutsu17_shiyou.pdf

 

酒田市消防団用無線システム概要として公表されているこちらの資料ではチャンネルとともに秘話も設定済みです。

運 用 要 領

1 運用チャンネル
①②③のデジタル簡易登録局は、メイン21CHとし、22・23CHは予備とする。

(21~23CHは秘話を設定済)

出典 https://www.city.sakata.lg.jp/bousai/bousai/bousaisoshiki/dan-top.files/dan-musen.pdf

 

デジタル簡易無線機の交信の傍受はIC-R6などの一般的なアナログの広帯域受信機ではできませんから、デジタル簡易無線機を購入し、きちんと届け出をして登録を行った上で傍受するか、デジタル対応の受信機で傍受することが前提ですが、上の資料で言及されているとおり、デジタル簡易無線機には秘話モードを設定できるため、各消防団で秘話を設定している場合、秘話コードが一致しなければ第三者は傍受できません。

2016年現在はデジ簡易機もだいぶ値下がりしましたが、それでも本気でデジ簡無線機を楽しみたい方はともかく、消防団の交信を聞くためだけに購入するのはなかなか躊躇してしまうのではないでしょうか。

そのほかの消防関連周波数

防災相互波もアナログ無線用の周波数ですが、大規模災害時のために残されているようです。帯域は150MHzです。こちらは複数地域にまたがる大規模災害などが起きた場合に活用される一方、近隣の消防組合と連絡を取るために平時でも使うことがあります。

たとえば、ある市消防本部が遠方の市消防ヘリに用件を伝達するために隣接の消防組合に伝達を要請する時などに使用されます。

ほかにもドクターヘリが飛来する事案では、ドクターヘリ専用波のほか、都道府県共通波、地元消防周波数の三つを駆使して連携を密にしています。さらに近隣の飛行援助局(飛行場や滑空場の管制)から、周辺のトラフィック情報も仕入れたり、逆に自機の飛来を通報したりしますから、それらも含めると4つの無線が活発化します。

ドクターヘリの要請がなされると、着陸予定地点(公園の駐車場や学校のグラウンドなど)には消防車が駆けつけて土ぼこりが舞うのを防ぐため、地面に対して散水を行います。

万が一のヘリの事故の際に対応するためレスキュー車も待機しています。

5分もしないうちに驚くほど静かなローターの音を響かせてドヘリがどこからともなく飛来して着陸すると、待機していた救急車から傷病者がヘリに移送され、医師の手当てを受けながら、すぐさま搬送されます。

これらを交互に傍受すると、オペレーションの状況がわかります。

救急車側の無線が聞こえないんだけど?(アナログ無線)

これはかつてのアナログのころの例ですが、消防本部によって本部側と救急車側の両方の通信が聞こえる場合がある一方で、本部側しか聞こえない場合もありました。

その場合、救急車側は本部側より4MHz低い周波数で送信していると考えられますから、受信機の周波数を本部側の周波数より4MHz低くすると聞こえました。

例として、本部が147.760MHzだと救急車側は143.760MHzです。ただし、本部側の送信出力に比べれば救急車側の送信出力は微小ですので 場所によっては雑音混じりで聞こえるか、あるいは全く聞こえない可能性もありました(これはアナログ時代の例です)。

消防無線のすべて (三才ムック VOL. 246)

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4861991994 | 三才ブックス | 2009-05-28

消防用語

消防無線では専門用語が飛び交います。

その一部をご紹介いたします。近隣の災害発生状況を知る上では消防無線は欠かせない存在なのは事実ですから、消防救急用語を覚えておきましょう。

消防車両は各コールサインを持っています。○○タンク、○○指揮、など。○○の部分は市町村消防本部名称です。大抵は本部自らが公開しネット上で誰でも見られる情報になっています。

南十勝消防事務組合無線通信運用規程
http://www.minami119.hiroo.hokkaido.jp/sab_8/reikisyuu/reiki_honbun/au05901001.html

上田地域広域連合消防通信運用規程
http://www.area.ueda.nagano.jp/reiki/honbun/08300600.html

美作市消防無線交信要綱
http://www.city.mimasaka.lg.jp/static/reiki/reiki_honbun/r140RG00000722.html

印西地区消防組合消防通信規程運用要綱
http://fire-inzaichiku.eco.coocan.jp/reiki_int/reiki_honbun/aw29400851.html

用語は消防局によって異なります。以下は無線技術雑誌などに掲載されていた例です。

用語概要
カガイ
加害 イジメ暴行など。
マルショー
傷病者
マルヨン
火災による死者
マルソン
自損行為
マルキュー
要救助者
マルヨイ
酒酔い
マルゲン
現場
ナナマル状態
パニック状態
マルセン
有線連絡。
CPA
心配停止
CPR
心肺蘇生法
特命出場
人員補充のための追加出動
イチマルマル
警察官 ※イチイチマルではない。本部によってはそのまま「警察」と呼称する場合もある。
口頭指導
119番オペレータが通報者に電話で救命方法をレクチャーすること。

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