2025年、陸上自衛隊は7.62×51mm弾を用いるセミオート式狙撃銃(DMR:Designated Marksman Rifle)として、ヘッケラー&コッホ社製「HK G28 E2」を導入しました。
「HK G28 E2」はセミオートでの即応性と狙撃レベルの精度を両立させる設計で、従来のボルトアクション式M24とは運用上の役割分担を明確にする狙いがあるとみられます。
これまでボルトアクションのM24で行われてきた陸上自衛隊の狙撃・運用概念がどのように変化するのかを詳しく見ていきましょう。
陸上自衛隊の「HK G28 E2」導入の経緯と目的
防衛装備の近代化や運用上の多様化のなかで、対人精密射撃を単独の「一撃必殺」任務だけでなく、部隊の即応援護や遠距離での精密火力支援として幅広く活用するニーズが高まっています。
複数発の迅速な応射が可能な「HK G28 E2」は、セミオート式の利点を生かして中距離(600〜800m級)での即応的な火力投射を担うことが期待されています。
導入決定はこうした戦術運用の要請と歩調を合わせたものと見られます。
「HK G28 E2」の基本仕様
「HK G28 E2」は7.62×51mm NATO弾を使用するセミオートのみのマークスマンライフルで、20発弾倉を基本とします。
工場保証で最大1.5 MOA(約45mm/100m)程度の精度が謳われ、標準でSchmidt & Bender 製などの高倍率ズーム光学照準器を組み合わせることで600〜800m、条件次第では1,000m級まで「狙える」性能を有するとされています。
メーカーの公式情報ではOTM/HPBT/Sierra Match King弾を10発発射した場合、100メートルで45mm(0.45ミルまたは1.5モア)の精度が保証されます。
重量は機種・仕様で約5.1〜5.8kg(本体のみ)で、バイポッドや調節式ストック、レールなど、戦術と運用性を高める装備が整備されています。
陸上自衛隊が調達したE2モデルはSchmidt & Bender 3–20×50 PM II を搭載した最も標準のタイプです。
ほかにSchmidt & Bender 1–8×24 PM II を搭載した G28 E3 (パトロール) があります。
サイレンサーも同時導入
陸上自衛隊は新型狙撃銃G28E2の配備に合わせ、サプレッサー(俗に「サイレンサー」)も同時に導入しています。
これまでのM24対人狙撃銃でもサイレンサーの導入は行われてきましたが、今回も配備されます。
G28向けのサプレッサーはH&Kの協力企業であるBrügger & Thomet(B&T)などが製造する専用型が用いられるのが一般的で、銃声の低減やマズルフラッシュ(発射時の閃光)抑制、発射ガスの逆流低減といった運用上の利点が主な目的です。
これにより射手の聴覚保護や発見リスクの低減、暗視装置使用時の視認性向上などが期待されます。
自衛隊での想定配備規模と実務的意味合い
防衛省が複数年にわたる調達計画で「HK G28 E2」を選定したとの報道があり、一部では最大で900挺を調達対象に含める想定が報じられています。
ただし、具体的な調達数や配備単位、運用開始時期については防衛省の正式発表を確認する必要があります。
実運用面では、M24のようなボルトアクション式狙撃銃が「精度での一発必中」を担い、「HK G28 E2」はより機動的なDMRとして部隊の中間的精密火力を補完する役割を持つ可能性が高いです。
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