官庁・行政・防災無線の解説

公的機関の無線とは?

都道府県庁や市町村役場などの地方自治体、そして気象庁や国土交通省といった中央官庁やその地方出先機関など、さまざまな行政部門・現業部門が使用する無線通信です。これらは総称して「官波(かんぱ)」と呼ばれます。

1980〜90年代には実に多彩な無線が傍受でき、受信ファンの定番ジャンルでもありました。しかし近年の周波数再編成とデジタル化の進行により、こうしたアナログ無線は急速に姿を消しつつあります。

とはいえ意外なことに――

  • 警察

  • 消防

  • 自衛隊

これらの一部では、今なおアナログ無線が運用中。特に耳寄りなのが、次に紹介する「警察ヘリのカンパニーラジオ」です。


警察航空隊の『カンパニーラジオ』

正式な「警察無線」とは別扱いですが、現在一般の受信機で聞ける“最後の警察系アナログ通信”として知られています。

主な内容

  • 警察ヘリと地上の航空隊本部との飛行に関する業務連絡  - 残燃料の確認

    • 到着時刻や帰隊予定の報告 など

※犯罪捜査関連のやり取りはすべてデジタル警察無線(傍受不可)で行われています。

まれに…

  • 山岳救難など緊急オペレーション時に、カンパニーラジオへ一次情報が流れることもあり要注目。


消防・防災・海保も使用

このカンパニーラジオは、警察ヘリだけでなく、

  • 消防ヘリ

  • 防災ヘリ

  • 海上保安庁ヘリ

なども使用しており、航空無線ファンにはお馴染みの重要ジャンルです。

💡 受信機にメモリーしておいて損はありません。

※具体的な周波数や使用状況は、以下の記事にて詳しく解説しています。

カンパニーラジオは航空会社、警察や消防の地上運行拠点(基地)と、所属航空機とが運航管理に使う航空無線

消防無線

消防ヘリのカンパニーラジオ

2023年現在、消防航空隊によるカンパニーラジオの受信が可能です。警察よりも救助活動に密着した運用が多いため、無線交信の頻度も高く、受信のしがいがあります。

ヘリテレ連絡波も要チェック

一部の地域では、ヘリテレ(空撮映像中継システム)用の連絡波も傍受可能。映像中継の開始や中継状態の調整などがやり取りされており、現場状況の推測にも有用です。


消防署活系無線(460MHz帯)

従来型のアナログ消防署無線も、460MHz帯の活系については現在も受信可能です。
ただし、一部地域の消防本部では音声反転方式の秘話が使用されています。

【朗報】昭和のアナログ警察無線で一世風靡した10番A、家電や消防署活系で今なお生き残る

この場合は、受信改造済みのDJ-X100であれば、復調が可能です。

📦 推奨機種:DJ-X100受信改造済みモデル(秘話対応・裏コマンドマニュアル付属)

デジタル消防無線は聴けない?三つの聴ける「消防関係無線」


地方の例外的ケース

一部の地方消防本部では、なんと登録局型のデジタル簡易無線(DCR)を用いて、消防本署から支署の救急隊へ出動指令を送るという例外運用も確認されています。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

秘話は、受信改造済みのDJ-X100でコード解析できます


自衛隊

2025年現在、自衛隊の無線通信については以下のような傾向があります:

  • 航空自衛隊・海自哨戒機などの航空系周波数(VHF/UHF)

  • HF帯の一部

これらのアナログ通信は傍受可能な場合がありますが、重要通信や司令部間通信などはすでにデジタル化+秘話化されており、内容の把握は困難です。

自衛隊無線に関する詳細は、以下の記事をご参照ください。

自衛隊無線の各帯域(HF、ローVHF、UHF)ごとの受信方法解説

航空自衛隊の『GCI』については、さらに以下の記事にて別途解説しています。

航空自衛隊の戦術用周波数『GCI』とは

土地改良区の無線通信とは?

「土地改良区」と聞いても、一般の人にはあまりなじみがないかもしれません。しかし、防災と非常に密接な関係を持つ重要な地域組織です。

公共性の高い法人

土地改良区は正確には官庁ではなく、法人格を持つ団体ですが、その業務内容はきわめて公共性が高く、一部の地域では自治体職員(=公務員)が兼務しているケースも見られます。

このため、『周波数バイブル』などの受信資料でも、官庁無線のカテゴリーに分類されているほどです。


出動は早朝・深夜も当たり前

台風や大雨による土砂災害・水害が発生しそうな状況では、土日・早朝4時でも出動。地域の減災を目的に、揚水施設などの操作を行い、農業用水や排水の管理を担います。

このとき、140MHz帯の無線通信が活発に使用されるのが特徴です。


現在もアナログ受信可能

2023年現在、変調方式はF3E(FM)であるため、一般的なアナログ受信機での聴取が可能です。

ただし将来的には、デジタル方式への移行も十分に予想されます。今後の動向には注目が必要です。

【2025年版】大規模災害時に活発になるサバイバル無線の周波数解説

 

防災無線(防災行政無線・防災移動系・防災同報無線)

日本は地震・豪雨・河川氾濫などの自然災害が多発する国であり、それに対応するため、都道府県庁や市町村役場では全国的に防災無線網を整備・運用しています。

防災無線その1,防災行政&防災移動系

防災行政無線(150MHz帯)

まず紹介したいのは、**150MHz帯域で運用される「防災行政無線」**です。

  • かつてはアナログ消防無線や一般事業者の連絡波として親しまれた帯域で、

  • 現在も市町村役場や都道府県庁の防災担当部門が利用しています。

災害発生時には、地域の最前線でやり取りされる重要通信が流れ、多くの受信マニアが注目しています。
平常時も定期的に運用されており、日常業務のやり取りも聴取可能です。

ただし最近は、デジタル260MHz帯域への移行も進み、アナログ運用は減少傾向にあります。


防災移動系無線(466MHz帯)

一方で、466MHz帯域の「防災移動系」無線は、現場対応に特化した無線です。

  • 市町村の外回りの職員緊急出動車両が使う無線で、

  • 市民からの通報や苦情に基づき、市役所が車両を出動させる際などに使用されます。

たとえば、道路の陥没、水漏れ、倒木など生活に関わる現場の確認や対応に使われており、現場のリアルなやりとりが受信できる貴重な無線です。


全国共通波:466.7750MHz

加えて、防災無線の全国共通波として知られるのが
📡 466.7750MHz

この周波数は、災害時における自治体間の相互連絡や、広域での調整通信に使われるため、重要な監視対象周波数のひとつです。


これらの防災無線は、地域住民の安全を守るための通信手段であり、災害が発生した際には貴重な情報源となります。受信機を持っている方は、日頃からメモリー登録しておくことをおすすめします。

おもしろ無線受信ガイド 防災行政無線編

防災無線その2:防災同報無線とは?

各自治体が整備している「防災同報無線」は、災害時に住民へ一斉に情報を伝達するための無線システムです。主に60MHz帯のFMで運用されており、地方の生活に根差した存在です。


のどかな風景の中で

のどかな田舎町では、朝夕に時報やメロディが流れたり、役場からのお知らせが住民に届けられたりと、日常の一部として活用されています。

広帯域受信機で聴ける無線、聴けない無線は?


だが、放送内容は時に深刻

しかし、防災同報無線が担うのは単なる広報ではありません。

  • 行方不明者の捜索

  • 不審者の出没情報

  • 弾道ミサイル通過情報(Jアラート)

  • ゲリラ・特殊部隊侵入事案(ゲリコマ)

といった、緊急かつ重大な情報が放送されることもあります。

のどかな音楽の裏に潜む、非常時への備えとしての一面があるのです。


命を守る周波数

このような無線は、災害時や有事の際に命運を分ける情報源になる可能性があります。広帯域受信機をお持ちであれば、必ずメモリー登録しておきたい周波数のひとつです。