【80年代アニメ】アマチュア無線を扱った衝撃テレビアニメがあった!

大切なことはミームが教えてくれた

──紹介が遅れた。
この科学探偵団の子どもたちを見守る、いや、導く存在がいる。「ミーム」という名の存在だ。正体は、昭和のグーグルとも言える、パソコンの中に住む妖精である。声を担当していたのは、かの藤田淑子氏──『キテレツ大百科』のキテレツくんや『一休さん』の一休の声で知られる名優だった。彼女が命を吹き込んだミームこそ、本作の主人公。

アマビエちゃうで。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話  (C)日本アニメーション/TBS

まさに「Xファイル」における“機械の中のゴースト”。あるいは、”電波りようこ”とでも言おうか。オカルトとテクノロジーの境界を自在に飛び越える存在である。

「HAM(ハム)の語源を知ってる? “amateur”の頭文字AMだけでは発音しにくいから、Hを足して“HAM”になった──と言われてるわよ」

アマチュア無線の成り立ちを皮切りに、業務無線との違い、電離層の役割、さらには無線が災害時にいかに有効か──そうした話を、子どもたちにとことんまで叩き込むミーム。

画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話  (C)日本アニメーション/TBS

「電波がなぜ世界中に届くか、わかる?」

そう問いかけたミームは、「それは“電離層”のおかげなの」と種明かしする。

「電離層?」と子どもたちが尋ね返すと、妖精はうれしそうに頷く。

「そう。空の上には、電波を跳ね返してくれる層がある。これを使えば、地球の裏側にだって信号を届けることができるのよ」

衛星通信の話題になると、サトルが疑問を口にする。

「でも、衛星に向けて電波を飛ばしても、電離層で跳ね返されるんじゃないの?」

良い質問ね、とミームは笑って応じる。

「周波数によっては電離層を突き抜けるの。だから、アマチュア衛星──たとえば“オスカー10号”みたいな人工衛星とでも、直接交信できるってわけ」

このあたり、子ども向けと見せかけて、実はHF通信の核心に迫る説明が続く。ミームは単なるマスコットではない。科学的裏付けと、それを噛み砕いて伝える力を併せ持った、異様に博識な妖精だ。昭和のチャットGPT。彼女なしでは、この探偵団は成立しなかっただろう。

災害とアマチュア無線──ミームの語りが変わる瞬間

アマチュア無線の魅力は、単なる趣味としての楽しさにとどまらない。それは、危機の時にこそ真価を発揮する。

ミームの表情がちょっと真剣になる場面が、『アマチュア無線による災害時の非常通信』の説明。

ミームの中で興味深いのは被災者がアマチュア無線で非常通信を行っている様子。『オーエスオー、オーエスオー、秋田沖に津波発生・・』と無線電話で発しとるで。画像の出典「ミームいろいろ夢の旅」第73話  (C)日本アニメーション/TBS

彼女からの直接の言及はないが、本作放映時の直近で最も被害が甚大だった災害は、1983年5月26日に発生した日本海中部地震(M7.7)ではないだろうか。​

この地震では建物の倒壊などによる死者も出たが、被害の主因は津波だった。秋田・青森・北海道沿岸で、100人近い人々が波にのまれた。電話では災害時に無力になることがある。だが、無線は違う。電源を確保し、アンテナがあれば、つながる。「ポニョ」でも描かれた通りだ。

『崖の上のポニョ』でリサのアマチュア無線運用と崖の上の自宅が災害時に果たす役割とは

この「命をつなぐ技術」に、ミームは静かに言及するわけである。

余談だが、100人の死者のうち、釣り人が18名だったことから、この日本海中部地震を釣り人の視線から被害調査を行うドキュメンタリー的マンガが、矢口高雄氏の『激濤 Magnitude 7.7』である。※アマチュア無線はでてこない。

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