ところが、電波の探索を続けるうちに、ついにあるマンションにたどり着いた彼らは、”容疑者”の同級生に対して、とんでもない行動に出てしまう……。その行動とは。
正義の暴走と偏見からの誤認逮捕
そのマンションには、彼らとあまり交友のない陰気な同級生、イヤミくんが住んでいた。何よりも、その空気感が――薄暗く、胡散臭い。
マンション、ひっそりと静まり返る廊下を、二人の足音が響く。
ドアを、叩くこともなく。サトルが力任せに蹴り飛ばした。
――バン!
飛び散る木片。
驚愕するイヤミくんの前に、怒気をはらんだサトルが歩み寄る。
無線機も、アンテナも、証拠らしいものは何ひとつない。
だが、サトルの目はすでに断罪していた。
声を荒げ、肩をつかんで揺さぶる。
その時、後ろから小さな声が飛ぶ。
「やめて!無線機はないのよ」
ひろ子の言葉に、空気が一瞬、凍った。
沈黙――重い、逃れられない現実。
サトルと武の目から、徐々に怒りが抜け、代わりに後悔がにじみ出す。
誤認であった。ただの、”怪しい”という理由だけで暴走した正義。
アマチュア無線の資格を持っていたとしても、電波を悪用する者に停波させる直接的権限はない。
――電波法第80条第2号。総務大臣への報告、それだけが許された道だった。
――ともかく、彼らも本職の総合通信局(当時は電波監理局)と同じく、司法警察権がない。
それを越えてしまった瞬間、彼らは正義ではなくなる。
まるで、”正義”に憑かれた者の末路をなぞるかのように。
無線の世界には、一見、都市伝説のような話もあるが、事実もある。
いたずら電波の主に激昂したトラック運転手が乗り込んで、屋根のモービルホイップをへし折ったとか……。
「いや、同軸抜いただけ。すぐ直る」なんて言い訳も、虚しく響くだけだ。
だからこそ、”電波の発信源を突き止める”という探究心自体と、妨害電波を強制的な手段で停波させる危うい行為は、まさに一部のフォックスハンターが陥る”誤った正義”そのものと描写されてるところは見逃せない。
余談だが、今回の脚本はアニメやドラマの脚本でおなじみの一色伸幸さんである。この”アマチュア無線とフォックスハント”の話は、同氏が脚本&原作を手掛けた映画『七人のおたく』でも描かれている。