ヘリのワイヤーカッターは意味ない?その役割とは

航空機

ヘリコプターが低空飛行中に送電線や通信線(いわゆる“ワイヤー”)に衝突する「ワイヤーストライク(wire‐strike)」事故は、民間機・軍用機問わず安全上の重要課題です。

こうした事故を防ぐために、ヘリコプターには「ワイヤーカッター(wire-cutters)」「ワイヤーストライク防護システム(Wire Strike Protection System, WSPS)」と称される装備が採用されてきました。

例えば、装備品カタログでは「実際の事例において複数のワイヤーストライクに対して有効だった」と明記されています。

以下では、その役割・効果・限界を、公式資料・学術分析等に基づいて整理します。

ワイヤーカッターの役割・目的

ワイヤーカッター/WSPS の主な目的は、飛行中に「航空機が気づかずワイヤーなど水平に張られたケーブル等に衝突してしまう」事態において、ワイヤーを鋭利なカッター部で切断し、機体・可変翼・ローター等に巻き込ませることを防止、あるいはその被害を軽減することにあります。

航空機カタログ等では「水平に張られた機械的・電気送電線または通信ケーブルに対して、ワイヤーが機内・コックピット内部へ侵入する可能性を下げ、飛行制御部の損傷を減少させる」と記載されています。 

また、UH‑60JAをはじめとするヘリコプター機体仕様に「ワイヤーカッターをオプション装備」と明記しているメーカーの情報も確認できます。 

このように、ワイヤーカッター装備は「低空飛行時に防ぎきれないワイヤー衝突リスクに対する最後の防護手段」として位置づけられます。

効果と限界

しかしながら、この装備が「万能」であるわけではなく、複数の分析文献では明確に限界が指摘されています。

例えば、学術論文 “Capabilities and Limitations of Military Helicopter Wire Strike Protection Systems” では、「装備されているワイヤーカッターでも、切断可能なワイヤーの種類・太さ・材質、飛行速度・進入角・ワイヤーの張り具合・機体姿勢などの条件が性能に大きく影響を与える」としています。 

また、別の分析では「民間・軍用問わず調査対象のワイヤーストライク事故のうち、ワイヤーカッターが有効だったと見られるのは約49%」との統計も示されています。 

このことから、「ワイヤーカッターを装備していればワイヤー衝突のリスクが完全にゼロになる」という誤解は避けるべきであり、あくまでも“被害軽減”に寄与する手段の一つと捉えるのが妥当です。

日本における装備状況・位置づけ

日本国内では、陸自のUH-1JやUH-60JA、OH-1、AH-1S、空自のUH-60Jのような機種にワイヤーカッターが搭載されています。

軍用ヘリにとって、ワイヤカッターの役割は重要です。

電線のような公共物としてのワイヤーではなく、意図的な飛行妨害を狙うため、敵が横方向にロープなどを張り巡らせる場合があります。

それを切断するのが軍用ヘリにとってのワイヤーカッターの目的です。

まとめ・・・ワイヤーカッターは意味ない?運次第

「ワイヤーカッター」の役割について、装備による効果が実証されているが、性能には明確な限界がある。補助的な安全措置として装備されていても、低空飛行時の運用リスクをゼロにするわけではない。完全無意味とまでは言えないものの、過度な期待も避けるべき」というのが結論になります。

装備されているヘリコプターにおいては、ワイヤーを切断・逸らす機構が備わっており、実際に過去のケースで有効に働いた例も報告されています。

一方で、性能を過信すると“ワイヤーがあるから大丈夫だ”と低空飛行で不用意になる危険も指摘されており、装備そのものの性能限界・運用上のリスク軽減策(パイロットの回避技術・ワイヤー探知装置・低高度運行規定など)を併用する必要があります。 

よって、「万能ではないが、適切に理解・運用すれば重要な安全装備である」という見方が、現時点の学術・技術文献に即した中立的な表現です。

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