飛行機に乗ったら、やっぱり機内食が楽しみになりますよね。
青い空と白い雲を眺めながら、ちょっとしたご馳走を味わうのは、旅のひとつの醍醐味です。
しかし、こうした楽しみは旅客機だけのものではありません。実は、自衛隊の航空機にも機上食(フライトミール)があります。
「え、自衛隊の飛行機でも食事をするの?」と思われるかもしれませんが、長時間の飛行任務や訓練、遠隔地での展開を支えるため、航空自衛隊では乗員が空中で栄養を確保できるよう、専用の食事が準備されています。
ここからは、航空自衛隊や陸上自衛隊、海上自衛隊で提供されている機上食や携行食の内容、工夫されているポイントなどを、じっくり紹介していきます。
ゼロ戦乗り達が空の上で喫食した「ラボール巻キ」とは
その前に旧軍の機上食も紹介します。
ゼロ戦乗りの機上食「ラボール巻キ」
零式艦上戦闘機(零戦)の搭乗員が携行した機上食の一例として、細長い海苔巻きが知られています。
これは通称「ラボール巻(ラボール巻キ)」と呼ばれ、再現や試食記事では、長さ約123.8ミリ、直径約2センチといった小さなサイズで、梅肉、おかか、かんぴょう、紅生姜など複数の具を組み合わせたものが紹介されています。
片手でつかんで食べられるよう工夫されており、当時の操縦手が航空手袋をはめたままでも扱いやすい携行食として用いられていました。
「ラボール巻」という名称の由来については諸説あります。
たとえば「ラバウル(Rabaul)」に由来するとする解釈などがありますが、名称の起源は明確ではありません。
また、旧日本海軍が食に強いこだわりを持っていたことを示す逸話もあります。
たとえば戦艦大和にラムネ製造設備があったといった話も紹介されています。
ラボール巻キとは…
- 長さ123.8mm、直径2cmの細長い海苔巻き!
- おかか、梅肉、かんぴょう、しょうがの4種類の具材。
- 一本に2種類の味が入っとるのがミソ!(味噌は入ってないで)
- 手袋したままでも片手で食べられる!
要するに「なが~い海苔巻き」です。これなら戦闘機のコックピットでも、パクッといけるわけです。
日本最大の造形イベントワンダーフェスティバル 2017冬にて、このラボール巻キが軍事評論家の青山智樹氏監修のもとで再現され販売されています。
出典 https://gigazine.net/news/20170219-food-wf2017w/
ほかにもパイロットたちは、栄養があるちゅうてバナナや羊羹も好んで食べていたそうです。
飲み物も、水、番茶、サイダー、リボンシトロン、カルピス、牛乳、甘酒をたしなんだそうです。
自衛隊の機上食
今回は、自衛隊の航空機で乗員が食べる機内食、つまり機上食を紹介します。
民間の国際線の機内食と比べると、見た目は少し控えめかもしれませんが、味はしっかり美味しいです。
基本的には弁当スタイルかレトルトパックスタイルで機内に持ち込まれ、機内の電熱器で温めて食べることもできます。
陸上自衛隊の野戦食と比べると、少し贅沢な内容といえるでしょう。
どんな人が食べるのでしょうか。代表的なのは以下の乗員です。
- 航空自衛隊のE-767 AWACS(空の見張り番)
- 海上自衛隊のP-3C哨戒機(海の監視員)
これらの乗員は、長時間のミッションの合間に、機内で食事をとります。
海上自衛隊 P-3Cの乗員が食う機上メシ
P-3C哨戒機は、8時間以上にわたり海上を警戒・監視する対潜哨戒機です。現代では外国の潜水艦や軍艦のみならず、海上を航行する民間船も警戒対象となります。海上自衛隊では、2018年1月に経済制裁対象であった北朝鮮船舶の瀬取り行為を確認したほか、これに関与する中国船と見られる船舶も観測し、国連安保理制裁委員会に報告するなどの任務実績があります。
P-3Cの乗員は、通常10〜11名で編成され、パイロット、戦術航法士、通信員、レーダー員、ソナー員、機上整備員などが搭乗しています。長時間の飛行任務を行うため、乗員は機内で食事をとる必要があります。
また、海上自衛隊では毎年、気象庁からの協力要請を受け、船舶の安全確保を目的として青森県八戸市所在の第2航空群が、北海道稚内市の宗谷岬から東数百キロのオホーツク海で流氷観測を実施しています。P-3Cの乗員は、流氷観測任務中にオホーツク海の真っ白な流氷を3000フィート上空から眺めながら、海自特製の弁当を機内で温めて食べることができます。
P-3Cの機内には電熱器が装備されており、弁当を温めることが可能です。潜航中の潜水艦を探知する際は、機体後部からソノブイと呼ばれる使い捨ての対潜音響捜索機器を海中に投下し、機上のソナー員が送られてくるデータを解析します。また、海上の船舶に対しては、乗員が見張り窓から双眼鏡で直接目視し、デジタルカメラで撮影することもあります。
さらに、P-3Cの機内には、乗員の作業効率を維持するための簡易キッチンや仮眠用の簡易ベッド、トイレなども備えられています。ただし、仮眠用ベッドは本来の目的で使用されることはほとんどなく、荷物置き場として活用されることが多いと報告されています。
航空自衛隊 AWACSの乗組員が食う機上メシ
空の警戒を担当する航空自衛隊のE-767 AWACS。旅客機B-767をベースにしているので機内は広めですが、やることはレーダーとにらめっこし続ける仕事。

航空自衛隊E-767の機上食
航空自衛隊のE-767 AWACSの乗員は、「冷弁(レーベン)」と呼ばれる冷凍弁当を機内で食べます。
AWACSはB-767を改造した航空機で、機内は広々としていますが、乗員は長時間にわたりレーダー画面とにらめっこをする任務が続きます。そこで活躍するのが、カレー、焼き鳥丼、牛丼、ハッシュドビーフなどのレトルト飯です。これらの冷凍弁当は、出来立てを急速冷凍しているため、味や風味を損なわずにフレッシュな状態で提供されます。
航空自衛隊の機上食は自前で調理されており、担当するのは給養小隊機上食分隊です。冷弁やレトルト食品をそのまま食べるわけではなく、機内には電子レンジが搭載されているため、温かい状態で食べることができます。
AWACSの機内で牛丼を食べられる状況は、一見未来的で少しシュールに感じられるかもしれませんが、現代の航空自衛隊では、長時間飛行任務を支えるためにこうした工夫が行われています。
食中毒防止
民間旅客機のパイロットは機長と副機長で食中毒防止のため、まったく別々の食事をとっていることは有名だが、やはり航空自衛隊の航空機の機長と副機長でも同様の措置を取っている。
現代の戦闘機パイロットは機上で食えない!
現代の戦闘機パイロットは、機上で食事をとることはできません。長時間飛行する任務をこなす航空機は存在しますが、現代のジェット戦闘機では与圧環境の制約から、零戦時代のように機内で弁当を食べることは不可能です。
ただし、例外もあります。ロシアのSu-34戦闘爆撃機は与圧されており、機内に食品用の保温装置や排尿用の設備が備わっています。さらに、仮眠用のスペースも設けられており、戦闘機としては非常に珍しい仕様です。
また、アメリカ軍のU-2偵察機も例外的です。高高度飛行や成層圏での偵察任務中、パイロットは宇宙服のような高度対応服を着用し、チューブ入りのペースト状の栄養補給食品(宇宙食に近いもの)を口に入れて栄養を補給します。
このように、一般的なジェット戦闘機では機上での食事はできませんが、特殊な長距離飛行機や高高度偵察機では、パイロットが任務中に栄養を摂取できる工夫が施されています。
さらに豪華な政府専用機の機内食
政府専用機の機上食は別格
自衛隊の中で最上級の機上食といえば、やはり政府専用機です。
内閣総理大臣や天皇陛下が搭乗する飛行機ですので、食事も非常に豪華に用意されています。
ステーキや高級ワイン、寿司や高級日本酒など、乗員が通常の任務で食べる機上食とは一線を画した内容です。
一方で、同行するマスコミや警備担当のSP、SAT(特殊急襲部隊)の乗員には、ウインナーやハム、目玉焼き、ブロッコリーといったシンプルな食事が提供されます。内容に大きな差があるのは事実です。
自衛隊の機上食まとめ 〜空の上でも食事は重要です〜
- 自衛隊の航空機で長時間飛行する乗員は、機上食を食べます。
- 現代の戦闘機では食事はできません(ただしロシアのSu-34は例外です)。
- 政府専用機のVIP用機上食は非常に豪華です。
地上にいる隊員も、空を飛ぶパイロットも、しっかり食べることは任務の効率を高めるうえで欠かせません。たかが食事、されど食事です。食事をおろそかにしてはいけません。

































































