広帯域受信機の同価格帯のライバル機種比較

各社の広帯域受信機(ワイドバンドレシーバー)の代表機種を軽くレビューしてみよう。受信機を出しているメーカーにはアイコム、アルインコ、バーテックススタンダードなどのほか、AOR、ユニデン、ファーストコムなど各社が犇く。

以前はユピテルやマルハマも出していたが、ユピテルはすでに受信機業界からは撤退、マルハマは2010年に自己破産して倒産している。マルハマと言えばホームセンターで買える受信機『鳴物入』が人気を博し、一世を風靡したメーカーだが、寂しい限り。スケベな中高生時代、お世話になったものだ。ムフフ。お、おう。

ICOM  IC-R6

テンキーレスながら柔軟な操作性、受信感度、秒間100サーチの威力、胸ポケットに入るコンパクトさ、満充電の単三型ニッケル水素充電池で約20時間の受信能力など、性能の平均点が他のライバル機から群を抜いており、他の受信機じゃそうはいかないけど、IC-R6で聞けないなら、もうすっぱり諦めきれるほど。。

惜しいのはアイコムの自主規制によって可聴周波数に制限がかかっている歯抜け受信機であること。しかし、受信改造で回避可能だ。航空自衛隊の特別なGCI無線の受信を楽しみたい方には以下でご紹介している受信改造バージョンが絶対に必要だ。

【航空無線受信テク】航空無線を受信するためにはまず広帯域受信機を購入しよう!

ただし、受信改造は各ショップで行っているものであり、受信改造機はアイコムの無償修理が受けられない可能性がある(壊れたことが無いので修理に出したことはなく、この点について筆者は存じ上げない)。

周波数の入力は手打ちの直接入力も可能だが、クローニングソフトも用意されているので大量の周波数を一括でパソコンからメモリーしたいのなら必携だ。

なお、PCとIC-R6を接続する専用のクローニングケーブルも必要となるので注意。

ただ、廉価な価格帯の受信機であるがゆえ、SSBモードやCWなどは復調不可。航空無線に強いIC-R6だが、洋上管制に使用されるHFのSSBは復調ができないのだ。また漁業無線などの周波数ステップにも対応できない。

【航空無線受信テク】「洋上管制」とは?

そもそも短波帯を狙うのであれば、IC-R6ではなくデスクトップ型のオールモード機をすすめたい。とは言え、けっしてIC-R6の短波受信性能が劣っているわけではない。近隣諸国のAM短波放送などバリバリに入感する。春から夏はEスポが出れば、ハンディホイップで50MHzで1300キロ先のアマチュア局を受信できるのも醍醐味。

あとはとくに欠点らしいものは無いものの、2波同時受信機能、ラジオ放送を聞きながら待ち受けできる機能も欲しかったが、実勢価格2万円前後では高望みか。

2021年現在、アイコムからはIC-R6の直接的な後継機は発売されていないが、2018年3月には待望のアナログ、D-STAR/国内DCR/NXDN/dPMR/APCO P25などのデジタル両対応機「IC-R30」が発売された。

残念ながら歯抜け受信機だが、ラジオライフ2018年6月号にはIC-R30の受信改造の方法も掲載されており、幅広いジャンルの受信が楽しめそうだ。

バーテックス・スタンダード(ヤエス) VR-160

バーテックス・スタンダード(ヤエス)もまた、売れる製品ばかり出している会社だ。VX-3は初心者から上級者まで超人気の広帯域受信機能付きのハンディ型アマチュア無線機で、防災アイテムとして誰もが勧める逸品だし、上位機種で3アマ向けのVX-8Dはその決定版と言っても良いほどだ。モービル機ではFT-7900も使いやすくてベストセラーだ。

さて、おそらくIC-R6と双璧をなす人気のライバル受信機がこのバーテックス・スタンダードのVR-160だろう。

受信改造不要の歯抜けなし、IC-R6よりもややコンパクト。手になじむ大きさと軽さが魅力。筐体のカチッとしたつくりと手触りは質感良く、IC-R6よりも好印象。それもそのはず、アマ機のVX-3と筐体が同じ。

対応電波形式はIC-R6と同様、AM/FM/WFMの3種。

とくにお勧めしたいのはラジオ放送を聴きながら無線交信を待ち受けして、受信するとラジオ放送から無線に自動で切り替わる『AF DUAL機能』だ。だが、他の受信機とたがわず、AMの受信感度は悪く、NHK以外はマトモに入らないと思ったほうが良い。一方でFM放送はFBに聴取可能。現在はワイドFMが当たり前なので、そちらを聴くのも手だ。

バンクボタン長押しで60機能程度を呼び出せることができ、とにかく高機能。LEDライト機能からモールス練習機能まで詰め込むあたりはVX-3と同じく少し節操なく、無駄な機能が多いと感じるかも。キーはバックライト機能つきで夜間も大変心強い。バンドスコープも面白い機能だ。

バッテリーはリチウムイオン電池のおかげで本体を薄くでき、単三電池を2本使うIC-R6よりは短いが、長時間駆動に貢献している。

ただ、放電には注意が必要で、完全に電池を使い切ると正常に充電できなくなったり、バッテリーの寿命が短くなる。ただ、単3電池3本で駆動させるための専用電池カバーが標準セットになっているため、出先や緊急時にコンビニで電池が入手できれば、災害時にも強いと言える。

メモリースキャンでは登録した周波数帯域に絞るバンドサーチが便利だ。国際VHF、旧アナログテレビ放送、世界のラジオ局、消防、特定小電力など各種メモリーが登録済みだが、エアバンドは未登録のため、エアバンダーは各ショップオリジナルのエアバンドスペシャルを購入するのが良いだろう。

フルドットLCDにより、メモリーにはカナで名前を登録もできるので、表示が見やすい。

だが、IC-R6に慣れてしまうと、スキャンの遅さは受信機として致命的であることに留意すべきだ。

VR-160はあらゆるスキャンが遅い、遅すぎる。100メモリーを回すのに10秒かかる。600メモリーで1分。これはもはや、メイン機種にはとてもできない致命的な欠点である。

前述のとおり、IC-R6は100chのメモリーを約1秒で走り抜ける受信機界のトップランナーだ。600メモリーをフルで回しても6.5秒。VR-160の項目でIC-R6をベタ褒めするのもよくないが、筆者がIC-R6を一生手放さない理由がそこにある(さすがに航空無線がデジタル化したら別だが・・・・・・)。1年を目安に手持ちのIC-R6を売却し、新たに買いなおし、新しい個体に更新していく。

また、はっきり言って、手作業でVR-160に周波数をメモリーしていく作業は大変だ。IC-R6のキーのようにぐにゃあっとした感触に比べると、キーボタンが硬すぎるからだ。←まあ、それは個人の好みである。

そこで、ADMS-5という純正のメモリー編集ソフトおよび専用ケーブルが販売されている。

PCと同ソフトがあれば、エクセル感覚で入力していくことが可能だ。将来、VR-160一本でやっていくのなら、非常に重宝するだろう。

VR-160単体に直接入力していくと万が一の故障の場合、今まで手作業で入力したデータがオジャンになり、精神的なダメージが計り知れない。PCにバックアップデータを保存する”保険”の意味でも同ソフトを購入しておいたほうが良いかもしれない。

それと、言うまでもなく旧アナログテレビやアナログ消防救急指令波のメモリーについては、現在では使い物にならないので留意。

VR-150

こちらは未使用なので簡便な紹介のみにとどめたい。現在、スタンダードでは上記のVR-160と、前モデルのVR-150のハンディ受信機を製造販売している。

VR-160が発売されてもVR-150が製造中止にならず、今もアマゾンなどで普通に販売されているということは、アイコムのIC-R6とIC-R5の関係のように後継モデルということではなく、あくまで上位機種と下位機種という区別なのだろうか。

追記 2019年5月現在、アマゾンでの新品での取り扱いがなくなった。製造中止になったようだ。

ヤエスの公式の製品説明ページでは「アウトドアレシーバー 上級バージョン登場」と記載されているとおり、筐体が頑丈。0.1~1299.995MHzをフルカバーしているものの、サーチ速度はIC-R6の秒速100chの十分の一ほど。さらに、VR-150はVR-160と違って歯抜け受信機なので注意。ショップの受信改造機もあるが、それであれば、普通にIC-R6やVR-160を買ったほうが無難。

アルインコ DJ-X8

受信改造不要の歯抜けなし受信機という点では優秀。本体カバーを装着することで、テンキーとテンキーレスを任意に選ぶことができる独特の機構だ。録音機能搭載で各種交信を記録できるが、トラックごとに削除できず、あくまで簡易的な機能となる。スキャン速度は任意に変更可能で意外と俊足だ。

悪い点はサイズ。厚くて胸ポケットなどに入らない。しかも、筐体はまるでマルハマの受信機くらい安っぽくて驚く。

ただし、同社製品にはカードサイズ受信機ことDJ-X7がラインナップされていることを付け加えておく。

また、ダイヤルを回すと「パチパチ」とうるさいのが気になる。おまけに、せっかくのテンキーモデルなのにキーの感触がグニグニしてるのが嫌だ。電池の持ちも悪い。IC-R6の燃費の半分くらいだろうか。ちょっとこれを日常のメイン機として使う理由はないと思う。

アルインコ DJ-X81

この機種は過去に使ったことが無く、詳しい性能が分からないので貶すことは控えたい。

※2020年に生産終了となった。

実勢価格は上記の3機種に比べてやや高価だが、何と言っても地上デジタルテレビ放送の音声が聞けるほか、津波や地震などの災害時の緊急警報放送(EEW/EWS)が電源オフ時でも自動でオンになり聴取できるところが売り。これでキミも防災マイスターになれる。

また、国際VHFの聴取に力を入れており、16chへの自動復帰なんて便利な機能もいい。欠点は大人の事情で可聴周波数が歯抜けになっており、いろんな無線を24時間受信していないと心臓が止まる、というようなヤバイ受信家ならショップの受信改造が必要だ。

しかし、やはりコレも分厚いので携帯しにくい。

アルインコにはさらに上位のハンディ受信機にDJ-X11というモデルがあるが、こちらはデュアル受信が可能。

おまけ アルインコ DJ-X11

こちらのレシーバーは先に紹介した20,000円前後の製品より割高の、平均市場価格42,000円となる製品だ。高いだけあって、SSBにも対応。アンテナ次第ではハンディ型受信機でも洋上管制が狙えるのだ。また、2波同時受信可能のデュアルバンダーである点もありがたい。さすがに高いだけはある。そこだけ見れば。

ただし、筆者はDJ-X8でおかしなスケルチの開き方をするアルインコ独特のクセを耳にしてしまった以上、4万円も出してコレを買う勇気はない。まどろみながら深夜に受信していて、スケルチが開くたびに『ポッ・・ポッ・・』という耳障りな音を聴くのはあまりに耐えがたいと思う。

なお、ほぼ同じルックスのアマチュア無線機『DJ-G7』もある。

まとめ……広帯域受信機のおすすめは?

何を聴きたいのかによるのだが、一般的なAM/FMのVHF/UHFといった航空無線、業務無線などアナログ無線受信を2万円で気軽に楽しみたいなら、結論はIC-R6(受信改造済み)か、VR-160になる。

IC-R6(受信改造済み)の基本性能の高さにケチをつける販売店も受信家もいない。受信感度、抜群のスキャン速度、バンク切り替えは神業的シフト。なぜ2010年1月に発売されて10年近く経つ受信機がいまだに絶賛され、カタログ落ちしないのか?実際に使えば答えがわかるはずだ。

ただし、無改造のノーマル機では聞けない帯域があるので、各ショップの受信改造済みモデルを買うこと。それが間違いのない選択と言える。

一方、バーテックススタンダードのVR-160は受信改造不要の歯抜けなしであることや、プリセットメモリーの豊富さが魅力。とくに各国の短波放送の周波数がメモリーされており、ラジオ放送を楽しみつつ、各種無線をチェックできるのはIC-R6よりもアドバンテージがある。ただし、スキャン速度が致命的に遅いので、適宜バンクを切り替えて聞きたい周波数を選り分けて受信するなどの工夫が必要だ。

余裕があればどっちも買って損はない。筆者はそうしてIC-R6を相棒に選んだ。アルインコのDJ-X81はともかく、DJ-X8はテンキーを多用したい人以外は買わないほうが無難だ。

また、先に挙げた洋上管制などのSSB、漁業無線などを聞きたい場合は高価だがDJ-X11という手もある。

というわけで、広帯域受信機を購入する際は、可聴周波数の範囲(歯抜けか否か)、対応電波形式、受信感度、スキャン&サーチ速度、携行性(サイズ)、バッテリーの種類や持ちなど、さまざまな面を考慮して選んでいただければ幸いだ。

今後アナログ専用受信機であるIC-R6の後継機は出るのか気になるが(出るとすれば、USB充電などを搭載して欲しい)、航空無線は今後もアナログで運用され続けていくことだろうから、航空無線を愛好するエアバンダーの未来は明るい。

しかしながら、世はとっくにデジタル通信の時代。すでに総務省では周波数再編を行っており、将来的に多くの業務無線もデジタル化は避けられない。現状ではいくつかの国内デジタルモードにも対応した受信機も発売されてはいる。

ただ、惜しむらくは気軽に楽しめていた趣味の敷居が高くなったことだ。これまで2万円程度だった敷居が、8万円になってしまった。

いずれにせよ、デジタル対応の受信機がこれからの主流になる。現状ではAORからハンディ機のAR-DV10、固定機のAR-DV1の2機種、そしてアイコムのIC-R30の1機種が国内デジタル対応受信機のメインストリートだ。

これら次世代のデジタル無線受信機が普及することで価格が下がることを期待したい。

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