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2024年現在、広帯域受信機(ワイドバンドレシーバー)はアイコム、アルインコ、AORなどの国内無線機関連メーカーで製造販売されています。
以前はユピテル、マルハマ、ファーストコムも製造販売しており、マルハマは『鳴物入』というホームセンターで買える初心者向け受信機が入門者に支持されました。しかし、ファーストコムの受信機は現在販売されておらず、ユピテルはすでに受信機から撤退、マルハマは2010年に自己破産しています。
さらに、国内向け製品では飽き足らず、ユニデンの北米向け製品のように、近い無線局から送信された電波の周波数を瞬間的に割り出せる「クロースコール機能」など特殊な機能を持つ受信機を活用するユーザーもいます。
機種にもよりますが、多くの広帯域受信機ではアマチュア無線(多くは144/430MHz)のほか、各種業務無線、 航空無線、JR無線、消防署活系無線などが受信できます。一般的にこれら受信機の価格の違いは受信感度や可聴周波数帯域の広さ、さまざまな電波形式への対応、スキャン&サーチ速度、その他機能の多さなどによるものです。
また一般的に受信機には指定した帯域の周波数を連続的に受信し、信号を受信すると停止するサーチ機能と、あらかじめ登録した周波数を受信するメモリースキャンと呼ばれる機能、さらに盗聴器で使用される周波数に絞ってサーチする機能を有した機種もあります。
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受信機のタイプには持ち運びが容易なハンディ・タイプのほか、室内に置くデスクトップ・タイプがあります。「初心者の方がいきなり高い受信機を買う必要はありません」と言いたいところですが、実際には高価なデジタル受信機のほうが楽しめます。
とはいえ、それまで20,000円前後で各社から出ていたエントリーラインの受信機は2024年現在、アイコムのIC-R6を除いて全て生産終了となりました。事実上の入門者向け受信機はIC-R6のみ。
では受信機本体のレビューをして参りましょう。
ICOM(アイコム)
アイコムはアマチュア無線機ならびに業務用無線機の老舗であり、近年では警察無線機も製造納入しています。とくにエントリーラインでは余計な機能を省く代わりに基本性能は高く、鉄壁の硬い作りとなっています。アイコム製品とは10年以上ノートラブルで付き合っている筆者にとっては、推したいメーカーです。
IC-R6(受信改造済み)
エアバンド受信を極めたいユーザーに最も人気の受信機はアイコムのIC-R6と言って過言ではありません。スキャン速度、感度ともに抜群で、各社の広帯域受信機の中でも一番人気です。筆者は主に日中は航空無線のうち、防災・消防・警察ヘリのカンパニーラジオ受信による災害発生状況傍受や・・・
航空自衛隊GCIによる周辺空域におけるUFO・宇宙人出現情報の傍受とか・・・
バス・JR無線からの交通状況チェック、大学の講義のワイヤレスマイクとか変なホテルの客足の推移調査とか制服勤務者の接近監視センサーとか、さらに夜間はアマチュア無線で近隣の高齢局の生存チェック、事故や火災の発生を知らせる274MHzのデジタル消防無線の発報など24時間ぶっ通しで使用しているのもIC-R6(受信改造済み)モデルです。変な使い方をするんじゃない(笑)宇宙人やお巡りさんとの接近遭遇がそんなに気になるのかお前は(笑)
さて、受信家がレシーバーを選ぶ際、テンキー有無をポイントにする人が多いのですが、テンキーレス受信機であるIC-R6に関して言えば、無くてもまったく困りません。合わせたい周波数は、↑キーを押しながらダイヤルキーを回し、お目当ての大まかな帯域を選んだ後の微調整はダイヤルを回すのみ。この柔軟な操作性、受信感度、秒間100chスキャンの威力、胸ポケットに入るコンパクトさ、満充電の単3型ニッケル水素充電池2本で約20時間の駆動など、明らかに性能の平均点が他のライバル機よりも高いでしょう。ただ、後述の他メーカーの機種のような突飛なことはできません。受信という基本機能のみを追求したレシーバーと言えるでしょう。
また、ノーマル機において惜しい点はアイコムの加盟する業界団体の定める自主規制によって、可聴周波数に制限がかかっている”歯抜け受信機”であることです。しかし、受信改造(受信拡張)で回避可能です。航空自衛隊の無線『GCI』の受信を楽しみたい方には以下でご紹介している受信改造バージョンが絶対に必要となります。
周波数メモリーは直接入力も可能ですが、ICOM CS-R6#11 クローニングソフトウェア USBメモリタイプも用意されているので大量の周波数を一括でパソコンからメモリーしたいのなら必携です。なお、PCとIC-R6を接続する専用のICOM OPC-478UC-1 アイコムプログラミングケーブルも必要となります。
ただ、航空無線に強いIC-R6ですが、廉価な受信機であるがゆえ、SSBモードは非対応。洋上管制に使用されるUSBは復調できません。また漁業無線などの周波数ステップにも対応できないことに注意が必要です。
洋上管制のページでも解説していますが、HF帯のSSB通信の受信・復調にはIC-R6ではなく1万円程度で買えるSSB対応BCLラジオをご検討ください。
とは言え、けっしてIC-R6のAM短波受信性能が劣っているわけではありません。近隣諸国のAM短波放送などバリバリに入感します。春から夏はEスポが出れば、ハンディホイップで50MHzで1300キロ先のアマチュア局を受信できる『電波の不思議』を味わえるのは醍醐味です。
IC-R15(受信改造済み)
幸いなことに航空無線はデジタル化の予定はありませんのでエアバンダーの未来は明るいです。そのためか、最近のアイコムは、例のカラーバリエーションのIC-R6やそれをイメージした女性キャラの発表に見られるように、どうやらエアバンダーへの営業に注力したいようです。
そんな中、2023年12月に発売された期待の『IC-R15』。希望小売価格は65,780円で実勢価格は5万円前後。なんと完全アナログ受信機です。未購入のため、簡易な紹介に留めます。108~500MHzをAM/FMモードでカバーし、2波同時受信、録音機能、Bluetoothありです。UHF帯エアバンドの割り当て帯域225~400MHzで歯抜けがありますが、ショップで受信改造バージョンが販売されており、GCIを24時間追っかけ回して録音する方には最適な選択です。もちろんFMモードのその他業務無線も聞けます。うーん・・HF非対応が最近の流行なんでしょうか。エアバンダー向けなら洋上管制聞かせてくれてもよかったんじゃないの?(笑)
IC-R30(生産終了)
2018年に発売されたアナログ・デジタル両対応の『IC-R30』は極めて優秀な受信機でした。残念ながら2022年に突如として生産終了しています。
アイコムファン待望のデジタルハンディ受信機として期待されながらも、デジタルモードはD-STAR/DCR/NXDN/dPMR/APCO P25のみ。2018年に発売されたAORのAR-DV10に比べると少ないとは言え、DV10が12万円、R30は8万円と価格差が大きいので仕方がないかもしれません。とくにIC-R6では受信できない7MHzや洋上管制のSSBモード、そしてデジタル無線であるデジ簡など幅広いジャンルの受信が楽しめます。
ノーマルではIC-R6同様、歯抜け受信機ですが、筆者の使用するIC-R30は販売店による受信改造済みモデル。自衛隊GCI受信も大得意です。ラジオライフ 2018年 6月号 [雑誌]には、IC-R30の受信改造の方法も掲載されています。
事件事故発生時に交信が多くなるテレビ局の160MHz帯域デジタル報道連絡波のNXDN-VNにも対応しており、秘話コードさえ偶然合致すれば傍受が可能ですが、IC-R30にコード解析機能はなく、秘話コードが偶然合った場合を除いて、ケロケロ音のみです。
IC-R30のバッテリーの持ちはIC-R6の約半分の10時間ですが、充電台に差しながらでも受信可能で、車内でもUSB充電が可能です。
ただ、惜しむらくは気軽に楽しめていた趣味の敷居が高くなったことでしょうか。これまで2万円程度だった敷居が、8万円になっては初心者には厳しい壁です。いずれにせよ、デジタル対応の受信機がこれからの主流になります。なお、残念ながら2022年に生産終了となりましたが、アイコムからは2024年現在、IC-R30の後継機の発表は今のところありません。
AOR
通信機専門メーカー「エーオーアール(AOR)」の製品はプロ仕様が多く、広域電波監視業務、混信妨害調査、電界強度測定、通信頻度調査、電波発射状況調査、電波伝搬調査、エリアチェックや空間監視(違法電波、盗聴、盗撮対策)にも使用されており、米軍機にも搭載されています。民生向けではハンディタイプのAR8200シリーズ、デスクトップの AR8600MARK2などが長く支持を得ましたが、すでに製造終了しており、現在は価格帯から考えると標準価格140,800円(税込)のAR-DV10(ハンディ)および、170,500円(税込)となるAR-DV1(デスクトップ)が一般(の受信マニア)向けと思われます。
AR-DV10
2018年発売のデジタル対応受信機。100kHz-1300MHzの広帯域周波数に対応し、アナログではCW/SSB/AM/FM/WFMは当然、世界初の10種類(DCR、APCO P-25(Phase 1+2)、DMR、Mototrbo、dPMR、NXDN、TETRA、D-STAR、C4FM、EJ47)のデジタル無線復調に対応しています。
『デジタルオートモード』と呼ばれる機能で周波数に合わせるだけでデジタル波を判別し、自動で適切なモードで復調できる他、秘話解読にも対応しています。タクシー無線ではT-102モードは復調(かなりの時間を要する場合あり)できますが、T-61は未対応です。HFのSSBにも対応しており、夜中の受信も楽しい。オールモード機の名にふさわしい機種です。
AR-DV1
デスクトップタイプです。デジタル復調モードはAR-DV1と基本的に同等ですが、TETRAトランキング(T-TC)にも対応しています。
アルインコ
同社の本業は建設機械関係で、また健康器具の売り上げも占めており、なんと無線関連は全体としてわずか!とはいえ、デジ簡機では多くのユーザーに支持される優秀な製品を出し、2023年にはついにデジタル対応受信機『DJ-X100』が発売され、大変な話題となりました。一方でアナログ受信機はいずれも生産終了となっており、一抹の寂しさがあります。
DJ-X100
2023年現在、アナログ&デジタルに対応した同社の最新フラッグシップ広帯域受信機で、筆者も受信改造機を使用しています。受信改造で”化ける”、いわゆる”秘めた野獣性”を持っており、デジタル無線が聞きたいなら現状ではベストな選択です。実勢価格は約8万円で、約12万円のAOR AR-DV10よりも安く秘話機能解読つきデジタル受信機を手に入れることができます。旧アナログ受信機で顕著に見られたポップノイズは全く気にならないレベルにまで改善されています。アルインコの本気、と見て良いでしょう。
そう、このDJ-X100はノーマルでは封印された数種類のデジタル無線のデコードや周波数帯域が、コマンド入力することで解放されるのです。その場合、対応するデジタル無線の豊富さは2023年現在、本機が随一。デジタル受信機先行メーカーで、ライバルの『AR-DV10』を製造販売するAOR社のTwitter担当者が悔しさを呟いたほどです。
いずれもデジタル化されたタクシー無線、マスコミ無線に対応しています。
ただ、DJ-X100は受信改造後も拡張される範囲は20MHzから470MHzまでと限定的で、20MHz以下のHF、すなわち洋上管制や、最高に面白い7MHzのアマチュアバンド、さらに800MHzのワイヤレスなどが受信不可。
基本的にはデジタル無線を幅広く受信して検証したい方向けの製品で、ソフトウェアのアップデートで受信できるデジタル無線が増える可能性(逆に塞がれる可能性も!?)もあり、ドキドキを感じさせる今一番人気のデジタル受信機です。
DJ-X8(生産終了)
受信改造不要の歯抜けなし受信機という点で優秀です。本体カバーを装着することで、テンキーとテンキーレスを任意に選べる独特の機構も斬新です。録音機能搭載で各種交信を記録できるものの、トラックごとに削除できず、あくまで簡易的な機能となっています。FMラジオ用のイヤホンアンテナ機能を内蔵しています。
スキャン速度は任意に変更可能で意外と俊足です。しかし、確実に信号をキャッチしてストップしてくれるかは別問題です。IC-R6で受信できた信号が、DJ-X8では引っかからない場合もありました。そうなれば、スキャンスピードを低速に変更しなければならず、足が速くても本末転倒。これではVR-160同様、実用度で減点です。
とくに難点は厚くて胸ポケットなどに入らないそのサイズ(ただし、同社製品にはカードサイズ受信機ことDJ-X7がラインナップされていました)。しかも、筐体はまるでマルハマの受信機くらい安っぽくて驚きます。
おまけに、せっかくのテンキーモデルなのに、キーの感触がグニグニしています。電池の持ちも最悪です。IC-R6の燃費の半分くらいでしょうか。
また、”耳障りな問題”が2点あります。ダイヤルを回すと「パチパチ」とうるさく非常に不快です。そして最もひどいのは、スケルチが開くたびに『ポッ・・』という耳障りなポップノイズが発生する問題です。
DJ-X8はテンキーを多用したい人で、かつスキャン&サーチ速度が欲しい人(ただし、=受信性能が良いわけではない)以外にはお勧め致しません。
DJ-X81(生産終了)
2020年に生産終了となりました。この機種は過去に使ったことが無く、詳しい性能が分からないので簡便な紹介に留めます。
実勢価格は上記の3機種に比べてやや高価ですが、何といっても地デジ放送の音声受信機能、津波や地震などの災害時の緊急警報放送(EEW/EWS)が電源オフ時でも自動でオンになり、聴取できるという防災面で心強い機能が備わっています。
また、国際VHFの聴取に力を入れており、16chへの自動復帰なんて便利な機能もあります。欠点は大人の事情で可聴周波数が歯抜けになっており、いろんな無線を24時間受信していないと心臓が止まる、というような危険な受信家ならショップの受信改造が必要です。
しかし、やはりコレも分厚いので携帯性に難があります。
DJ-X11(生産終了)
DJ-X11はデュアル受信機能などを備えた多機能かつデザインの良い筐体など、アルインコ社の最高級ハンディ・ワイドバンド・レシーバーでした。
DJ-X11は先に紹介した20,000円台の製品より割高の、平均市場価格42,000円となる製品ですが、SSB、CWなど各種電波形式、周波数ステップも漁業無線、CB無線、洋上管制などに対応しており、ハンディ型受信機でもHFが余裕で狙えます。
しかし!残念ながらDJ-X8同様、おかしなスケルチの開き方をするアルインコ独特のポップノイズを耳にしてしまい、4万円も出して買ったものの、即売却致しました。そのため、細かな受信性能を検証する前に手元を離れてしまったので、航空無線を一通り受信したほかは詳しい性能を評価できません。ベッドでまどろみながら深夜に受信していて、スケルチが開くたびに『ポッ・・ポッ・・』という耳障りな音を聴くアルインコ信者の苦行は筆者にはあまりに耐え難く、務まらなかったことを深くお詫び申し上げます。
おすすめできるのか?と問われれば、人によってはポップノイズが気にならない方もいらっしゃると思うので、耐えられるか否かによる、と思います。『IC-R6ではSSBが選択できず、ステップも合わなくて漁業無線や洋上管制が聞けないから今日の漁獲高もわからんし深夜の洋上を飛ぶ国際線パイロットに想いを馳せられない』という方には、IC-R30を8万円出して買うよりも、アナログ波専用ながら、HFの各種電波形式とステップ幅に対応したDJ-X11を購入する選択肢はコスパ的にはアリでしたが、こちらも生産終了です。
なお、ほぼ同じルックスのアマチュア無線機『DJ-G7』もありましたが生産終了です。
バーテックス・スタンダード
モトローラが株主の会社で、無線機部門はYAESU(ヤエス/八重洲無線株式会社)が販売しています。ヤエスの無線機といえば、グリコ・森永事件の時、犯人がライトバンに残していった遺留品に受信改造を施したYAESU FT-208があり、これで滋賀県警察の無線である”滋賀1系”を傍受していたとしてテレビに取り上げられ、八重洲関係者がインタビューに答えてたこともあるそうです。
上述の無線機は『山本無線』で販売された一台で、同店やアマチュア無線家らは捜査当局側からの調べを受けるなど、関係者も困惑されたようです。いいんだよ、そんな昔の話は・・・。
VR-160(生産終了)
バーテックス・スタンダード(ヤエス)もまた、売れる製品ばかり出している会社です。VX-3は初心者から上級者まで超人気の広帯域受信機能付きのハンディ型アマチュア無線機で、防災アイテムとして誰もが勧める逸品。上位機種で3アマ向けのVX-8Dはその決定版と言っても良いほどです。モービル機ではFT-7900も使いやすく、ベストセラーです。
さて、おそらくIC-R6と双璧をなす人気のライバル受信機が、バーテックス・スタンダードのVR-160かもしれません。
受信改造不要の歯抜けなし受信機であることが魅力です。サイズはIC-R6よりもややコンパクトで、手になじむ大きさと軽さが魅力。筐体のカチッとしたつくりと手触りは質感良く、IC-R6よりも好印象。それもそのはず、アマ機のVX-3と筐体が同じです。
対応電波形式はIC-R6と同様、AM/FM/WFMの3種のみ。お勧めしたいのはラジオ放送を聴きながら無線交信を待ち受けして、受信するとラジオ放送から無線に自動で切り替わる『AF DUAL機能』。ただ、他の受信機とたがわず、AMの受信感度はよくないでしょう。一方でFM放送はFBに聴取可能。現在はワイドFMが当たり前なので、そちらを聴くのも手と言えます。FMラジオ用のイヤホンアンテナ機能を内蔵しています。空港のデッキぐらいの距離なら、イヤホンアンテナでも航空無線が受信できるようです。
バッテリーはリチウムイオン電池のおかげで本体を薄くでき、単三電池を2本使うIC-R6よりは短いながら、長時間駆動に貢献しています。ただ、放電には注意が必要で、完全に電池を使い切ると正常に充電できなくなったり、バッテリーの寿命が短くなってしまいます。とはいえ、単3電池3本で駆動させるための専用電池カバーも用意され、出先や緊急時にコンビニで電池が入手できれば、災害時も頼もしいでしょう。
バンクボタン長押しで60機能程度を呼び出せることができ、とにかく高機能。LEDライト機能からモールス練習機能まで詰め込むあたりはVX-3と同じく少し節操なく、無駄な機能が多いと感じるかも。キーはバックライト機能つきで夜間も大変心強く、バンドスコープも面白い機能です。
メモリースキャンでは登録した周波数帯域に絞るバンドサーチが便利。国際VHF、旧アナログテレビ放送、世界のラジオ局(短波ラジオ)、消防、特定小電力など各種プリセットメモリーの豊富さも魅力です。とくに各国の短波放送の周波数がメモリーされており、ラジオ放送を楽しみつつ、各種無線をチェックできるのはIC-R6よりもアドバンテージがあります。ですが、エアバンドは未登録のため、エアバンダーは各ショップオリジナルのエアバンドスペシャルを購入するのが良いでしょう。
フルドットLCDにより、メモリーにはカナで名前を登録もできるので、表示が見やすいのも良い点です。
これらの点を見ると、IC-R6よりも色々できるし頼もしくてイイんじゃないの?って思えなくもないのです。しかし、最大の欠点はスキャンの遅さ。これは受信機として致命的です。
前述のとおり、IC-R6は100chのメモリーを一周するのに約1秒。600メモリーをフルで回しても6.5秒。筆者がIC-R6を一生手放さない理由がそこにあります。対してVR-160は100メモリーを一周するのに約10秒と、実に10倍の差です。したがって、IC-R6に慣れるとVR-160をメイン機にするとストレスがたまります。
また、IC-R6同様、テンキーレスモデルですが、IC-R6のキーのようにソフトな感触ではなく、硬すぎるため、手作業でVR-160に周波数をメモリーするのであれば、大変な作業です。
そこで、ADMS-5という純正のメモリー編集ソフトおよび専用ケーブルが販売されています。PCと同ソフトがあれば、エクセル感覚で入力していくことが可能。将来、VR-160一本でやっていくのなら、非常に重宝するでしょう。
VR-160単体に直接入力していくと万が一の故障の場合、今まで手作業で入力したデータがオジャンになり、精神的なダメージが計り知れません。PCにバックアップデータを保存する”保険”の意味でも同ソフトを購入しておいたほうが良いかもしれません。
結論としては、スキャン速度が致命的に遅い欠点が惜しいものの、受信改造不要かつ、機能も豊富で悪くない受信機です。適宜バンクを切り替えて聞きたい周波数を選り分けて受信するなどの工夫をしましょう。
VR-150(生産終了)
こちらは未使用なので簡便な紹介のみにとどめます。VR-150は2019年に製造終了となりました。
ヤエス公式の製品説明ページでは「アウトドアレシーバー 上級バージョン登場」と記載されているとおり、筐体が頑丈。ただし、スキャン・サーチ速度はVR-160同等のようです。さらに、VR-150はVR-160と違って歯抜け受信機なので注意が必要です。
ショップの受信改造機もありますが、今、中古で買うのであれば、IC-R6を買ったほうが無難でしょう。お勧めいたしません。
広帯域受信機のおすすめ機種のまとめ
というわけで、広帯域受信機を購入する際は可聴周波数の範囲(歯抜けか否か)、対応電波形式、受信感度、スキャン&サーチ速度、携行性(サイズ)、バッテリーの種類や持ちなど、さまざまな面で熟考が必要というわけです。ただ、基本的には『自分が何を聞きたいか?』を考慮して選んでいただければ幸いです。では総括しましょう。
アナログ無線一般を手軽に楽しみたいなら
何を聴きたいのかによりますが、一般的なAM/FM変調かつ、VHF/UHF帯域の航空無線、業務無線などアナログ無線受信を幅広く2万円で気軽に楽しみたいなら、結論はIC-R6(受信改造済み)になります。
IC-R6(受信改造済み)の基本性能の高さにケチをつける販売店も受信家もいません。受信感度、抜群のスキャン速度、バンク切り替えは神業的シフト。なぜ2010年1月に発売されて13年経つ受信機がいまだに絶賛され、カタログ落ちしないのか、実際に使えば答えがわかるはずです。なお、10年目にしてアイコム公式の”萌えキャラ”が登場し、界隈が騒然としています・・。
アナログ&デジタル+αで聞きたいなら
先に挙げたHF帯SSBの洋上管制、それに7MHzのアマチュアバンド、漁業無線などのアナログ無線を受信をしたい場合は無理をしてHF対応の広帯域受信機を買うより、はるかに安価な以下の機材で受信できますのでおすすめです。
DJ-X100は警察や消防を除いて一般的なデジタルモードには比較的多く対応していますが、20MHz以下のHF帯は受信できません。
というわけで、楽しい受信ライフを!おっと、受信機はマナーを守って使ってくださいね。