AH-64D・アパッチといえば、AH-1S・コブラをもっといかつくしたような軍用ヘリです。陸自で配備されているのはAH-64Dで「戦闘ヘリ」として配備されています。AH-1Sが「対戦車ヘリ」という名称での配備でしたから、もっと直接的な任務をイメージさせます。
現在、北海道にはAH-64Dの配備はなく、第1ヘリコプター団の拠点が千葉県の木更津駐屯地にあるため、北海道でアパッチが活動することは基本的にありません。
陸上自衛隊のAH‑64Dは導入機数が限られており、維持整備や訓練の効率を考えて配備先を絞っているため、北海道にアパッチが常時配備されていないのが主な理由です。加えて、北海道方面の防衛構想(装甲師団など)や既存の対戦車ヘリ配置も影響しています。
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結局のところ、配備計画が頓挫した
日本が調達したAH‑64Dは数が限られ、当初の計画より大幅に縮小されました。約60機の配備計画だったものが、13機で配備終了となりました。しかも、2019年には佐賀県において、メイン・ローター・ヘッドとメイン・ローター・ブレードを繋ぐアウトボード・ボルトに亀裂が生じ破断したために墜落、2名が死亡しています。
機数が少ないため、展開先を分散させる余裕が乏しく、まずは整備・訓練・運用を効率化できる基地に集中的に配備する運用になっています。導入規模縮小の背景にはコストの問題があります。
攻撃ヘリのような高性能・高維持費の航空機は整備拠点や専門要員が必要です。少数機を全国に分散させると整備や予備パーツの確保、整備員の熟練維持が難しくなります。こうした運用・整備効率を優先して、まずは特定の基地に集中配備する格好になっています(日本では目達原などに集中配備されていることが公開情報で確認できます)。
また、陸自では以下のように令和6年度版「防衛白書」で公表しています。
人口減少・少子高齢化の急速な進展や厳しい財政事情を踏まえれば、領域横断作戦に対応できる十分な能力を獲得するためには、装備体系の合理化などにかかる取組を一層推進することが必要不可欠である。
防衛力整備計画では、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しなどを行うこととしている。特に、陸自については、航空体制の最適化のため、一部を除き師団・旅団の飛行隊を廃止し、各方面隊にヘリコプター機能を集約する。また、AH-1S対戦車ヘリコプター、AH-64D戦闘ヘリコプターやOH-1観測ヘリコプターの機能を多用途/攻撃用無人機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)や偵察用無人機(UAV)などに移管し、今後、用途廃止を進める。その際、島嶼(しょ)防衛やゲリラ・特殊部隊への対処などのため、既存ヘリコプターの武装化などにより最低限必要な機能を保持する。
引用元 https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2024/html/n410401000.html
北海道の防備は「戦車戦」の構想であること
北海道は装甲機動力を重視する第7師団などがあり、装甲部隊や対戦車体制が防衛の中心です。また、帯広(北海道)には対戦車ヘリ隊があり、既存のAH‑1Sなどが配置されています。アパッチを新たに北海道へ配備するかどうかは、脅威評価、部隊編成、優先配備計画によって判断されます。人数的・運用的な制約がある現状では他地域へ優先配備されている事情があります。
まとめ
要するに北海道にアパッチ攻撃ヘリが常時配備されていない理由は、端的に言えば「導入機数が限られている」「整備や訓練、補給体制を維持する必要がある」「防衛上の優先配備と既存部隊の配置が影響している」、さらには陸自の「将来的なUAVへの転換」といった点にあります。そのため、現状では北海道への恒常的な配備は行われていません。ただし、将来的に機数が増えたり運用方針が見直されれば、配備状況も変わる可能性があります。
とはいえ、「北海道でアパッチがまったく見られないのか」というと、そうではありません。毎年開催される丘珠駐屯地記念祭では、年度によってアパッチの展示が行われており、一般の方も間近で観察できる機会があります。ヘリファンであれば、一度足を運んでその勇姿を目にする価値は十分にあるでしょう。