北海道札幌市東区丘珠町に所在する陸上自衛隊丘珠駐屯地は、「北部方面航空隊」を中核とし、飛行・整備・業務支援を担う航空拠点です。
日本の北端近くという地理的特性を活かし、飛行訓練、防衛警備、災害対応、そして地域との共生を通じて、その存在感を日増しに高めています。

そうです。実は丘珠駐屯地は防衛省が管理する共用飛行場の「丘珠空港」という別の顔も持っています。
基本的に陸自の航空管制は陸自所属の航空機への管制が主なもの。ところが、北海道にある丘珠空港は特殊な空港です。
札幌市にある丘珠空港は本来、『陸上自衛隊丘珠駐屯地』であり、陸上自衛隊の管制官が民間機への航空管制を行う日本唯一の空港なのです。

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北の玄関として
丘珠の顔は自衛隊と同時に空港でもあります。
現在、丘珠空港では道内各空港への路線だけでなく、本州の青森三沢、名古屋まで幅広い路線の運行を行っています。

運行されている路線情報は、札幌市の公式ホームページにて記載されていますので、ご覧ください。

丘珠空港には展望スペースも設けられており、航空機の離発着を楽しむことができます。
北丘珠駐屯地の各部隊
概要
丘珠駐屯地は北部方面航空隊が拠点とし、UH-1Jなどのヘリコプター部隊が防衛・偵察・連絡任務を行います。

丘珠駐屯地には第7および第11飛行隊が駐屯しています。

また航空機の整備を担当する航空野整備隊や、駐屯地業務隊が補給・運用支援を行っています。
なお、丘珠駐屯地の正門近くにはかつて配備されていたV-107大型ヘリコプターが展示されています。毎年の駐屯地記念祭では、V-107が迎えてくれます。

航空野整備隊

航空野整備隊の任務は、整った格納庫での作業だけにとどまりません。時には工具やクレーンといった支援設備がない野外の環境で、航空機の修理や整備を行うこともあります。
例えば、航空機が飛行場の外で、不時着や予防着陸などをした場合は、大型トレーラーで向かって、現場で回収作業にあたることもあります。
道央の防災航空拠点として
丘珠空港と官民共用飛行場としての性格を有し、地域空港として民間利用と自衛隊の役割を共存させる形で、地域の交通・物流の一端も担っています。

北部方面航空隊では北海道という広大な地域に対応するため、災害発生時や緊急連絡での空輸・偵察能力を持ち、地域防災拠点としても機能します。
また、丘珠空港には北海道警察航空隊や北海道防災航空隊がおかれ、ヘリコプターによる緊急対応が行われています。

なお、札幌市消防局のヘリコプターは、丘珠空港ではなく、石狩市に所在する専用の「札幌市消防局 石狩ヘリポート」で運用されています。
石狩市新港東にあるこのヘリポートは、消防ヘリコプターの基地として使用されており、札幌市消防航空隊が活動の拠点としています。
丘珠空港には北海道警察航空隊や北海道防災航空室などが所在しますが、札幌市消防航空隊とは異なります。
丘珠空港の除雪体制
陸上自衛隊唯一の官民共用空港である丘珠には24時間体制で除雪を担う除雪隊が待機しています。

除雪隊は深夜2時に出勤し、降雪に備えて滑走路や誘導路の除雪作業を開始します。
午前7時30分の運用開始までに担当区域の除雪を完了することが求められます。
また、昼間に降雪が続く場合も、航空機の運航スケジュールに合わせて除雪作業を行います。
丘珠駐屯地の現行配備機
連絡偵察機 LR-2
現在陸上自衛隊が運用している固定翼の連絡偵察機になります。高速の巡航性能を有しており、偵察、輸送、災害派遣での救急患者搬送等を担っています。

UH−1J
中型の対応とヘリコプターです。陸上自衛隊の主力ヘリコプターであるUHワンジェイはUh-1Hの後継機として配備されています。
CHー47J
陸上自衛隊で最大の大型輸送ヘリコプターです。
OH-1
観測ヘリコプターです。
対戦車ヘリAH-1S
本来は帯広駐屯地の第1対戦車ヘリコプター隊に所属するAH-1Sですが、記念祭では来てくれます。
かつて丘珠で活躍した翼たち
OH-6
LR-1
丘珠駐屯地では、現在のLR-2が導入される以前、国産の連絡偵察機LR-1が長年にわたり運用されていました。LR-1は三菱重工業が開発した双発ターボプロップ機「MU-2」をベースにした機体で、1967年から配備が始まった機種です。
機動性と信頼性に優れた国産機として、北海道の広大な空を駆けめぐり、連絡任務や偵察任務に従事しました。小型機ならではの機動力は、過酷な気象条件が多い北海道においても重要な戦力となり、多くの隊員にとって思い出深い存在でした。
特に冬季の北海道は、陸路が雪で遮断されることも少なくありません。そのような中で、LR-1は迅速な空輸手段として、作戦行動や防衛体制の維持に貢献してきました。また、災害派遣においても、奥尻島など離島で発生した救急患者の搬送を担い、地域住民の安心を支える一翼を担ってきました。