陸上自衛隊の狙撃手

それまでにも自衛隊に狙撃手がおらんかったわけやないけど、陸自の各普通科連隊狙撃班に対人狙撃銃「M24 SWS」が配備されて、狙撃手の専門教育が本格的に始まったんは平成14年(2002年)やねん。

今、日本で狙撃手を広く配置しとるんは、やっぱり陸上自衛隊や。各普通科連隊の狙撃班はもちろん、第1空挺団、それに特殊作戦群みたいな特殊部隊にも要員が配置されとる。

隊員の腕前はめっちゃ高くてな、世界の先進国軍と競い合う射撃の世界大会でも上位に入賞するくらいやで。

ほんで、防衛省の公告からわかった装備品調達の情報を見てみると、海上自衛隊の特殊部隊『特別警備隊』にも陸自と同じく狙撃手が配置されとるみたいや。

海上自衛隊特殊部隊『特別警備隊』の装備と部隊概要

ただ、そっちはドイツ製のセミ・オートマチック狙撃銃が使われとるっぽいな。

一方で、航空自衛隊には基地警備隊とか基地警備教導隊っちゅう施設の警備を担当する部隊がおるけど、今のところ専用の狙撃銃が配備されとるって話は聞かんし、今後の配備もあんまり現実的ちゃう感じやな。

それではさらに自衛隊の狙撃手および配備される装備品について詳しく見てくで。

陸上自衛隊が導入した対人狙撃銃とは

今ではM24も進化しとって、M24A2、M24A3っちゅう発展型がいろいろあるけど、元祖レミントンM700は1962年に誕生して、いまだに北海道でヒグマ相手に活躍しとるレジェンドライフルや。

【衝撃】北海道には自衛隊員が体重120kgのヒグマを小銃で射止め、小銃持参で地域住民を武装送迎した史実があった

さて、米軍の狙撃銃の歴史もなかなかおもろいで。

昔はウィンチェスターM70やレミントンM40、それにM14のフルオート機構を取っ払ってスコープ乗せたM21を使っとった。でも今はM24のほかに、イギリス軍や日本の警察も採用しとるアキュラシー・インターナショナル製のL96も運用しとるらしいわ。

ちなみに、このアキュラシー・インターナショナルは、日本特装株式会社のカタログにも「日本警察へ対物ライフル納入」って書かれとるけど、SAT(特殊急襲部隊)がまだ公開訓練でお披露目しとるわけちゃうねん。こっそり使っとるんかもしれへんな…。

そんで、アメリカ海兵隊は2008年からナイツアーマメント社製のM110狙撃銃に切り替え始めたんやけど、どうもこのM110、耐久性や寿命の面でイマイチやったらしくて、2016年には「H&K(ヘッケラー&コッホ)M110A」を導入することになった。

対人狙撃銃M24SWSが導入されるまでは64式を用いた

陸上自衛隊では、平成14年(2006年)に対人狙撃銃M24SWSが導入されるまで、普通科小隊から選ばれた狙撃班員が使こてたんは、スコープとストックにチークパッドを追加装着した64式7.62mm小銃やった。こいつは集弾性がめっちゃええことで知られとったんや。

ほんで、64式小銃の数が減ってきたんに合わせて、平成14年から新たに導入されたんがM24 SWSや。

対人狙撃銃はボルトアクション方式

M24 SWSはボルトアクション方式

で、ここが肝心なとこや!

M24 SWSはボルトアクション方式やから、一発撃つたびにボルト(遊底)を手でガチャコンせなあかん。

ボルトを後ろに引いたら薬きょうが排出され、顔のすぐそばをボルトが後退してくるという仕様。

ほんでまたボルトを戻したら次の弾が装填されるっちゅう一連の作業がボルトアクション・ライフルの発射手順なんや。

 

陸自第六師団公式サイトにはストックに迷彩を施したM24SWSを構える狙撃手の写真が掲載され、同銃の説明には『陸自で初めて採用された米国レミントン社製の手動式(ボルトアクション)の対人用狙撃銃』とあるで。

ボルトアクション方式は一長一短

手間のかかる装填方法だが信頼性と精度が高い

射撃後に射手が右手でボルト(遊底)を手動で後退させると、空薬きょうが排出され、顔面間際には後退したボルト(遊底)が迫る、ボルト(遊底)を戻せば次弾が装てんされ、再射撃可能となる・・ちゅう「ボルトアクション機構」な、戦場ではけっこう手間やし、タイムラグもあるし、セミオート狙撃銃のほうが連射できるだけ、有利なんや。

まあ、それを見越して、海自の特警は『MSG90』を導入したんやろな。

ところがね・・。

「一発ずつ手動で装填のボルトアクション」は構造が単純なおかげで信頼性と精度がめちゃくちゃ高い。

素早い連射が強みの一方で、複雑な機構ゆえに精度が劣る半自動式狙撃銃に対するボルトアクション・ライフルのアドバンテージがそこなんや。

つまり、一発必中の銃ってことやな。

有効射程距離と最大射程距離

銃には、「有効射程距離」と「最大射程距離」という二つの基準がある

M24の場合は、それぞれ以下の距離になっとるで。

  • 有効射程距離(約1100m)
     → 「この距離なら狙えば確実に当たる」とメーカーが保証する範囲。
  • 最大射程距離(約3700m)
     → 「弾はここまで飛ぶけど、狙ったとこに当たるかは保証せんど!」という、いわば「最大危険範囲」。

一般的な歩兵部隊は有効射程距離内で運用するもんやけど、特殊部隊のスナイパーともなると話は別やで。

「メーカー保証? 知るか!」とばかりに、自分の腕とカスタムした銃を駆使して、有効射程距離外からでもターゲットを仕留めにいく。

…つまり、スナイパー次第では「1100m超え」の狙撃もアリっちゅうことやな。
(ただし、これは腕と装備次第。一般兵がやったら「ただの無駄撃ち」になるで!)

敵の恐怖心を煽り、進撃遅滞させるスナイパーの運用は心理戦でもある

狙撃手っちゅうのは、映画みたいに派手に身を乗り出して撃つんやなくて、自分の存在をバレへんようにするんが基本や。

アメリカ軍のスナイパーとフィクショナル作品

昼間はブッシュの中に伏せて、草の影からじっくり狙うし、夜間は闇に紛れて撃つ。

せやから、狙撃手がそこにおった痕跡すら残らんようにするんや。薬莢はもちろん、聖水までポリタンクに入れて持ち帰るんが常識やで。

せやけど、こういう「隠れて戦う」戦法を取る狙撃手は、ある意味で敵味方の両方から蔑まされて嫌われることも多いんや。

そんなん今でもあるんか? あるで。むしろ、そういう心理的プレッシャーを敵に与えるんがスナイパーの戦術の一つや。

敵が「どこから狙われるかわからん」っちゅう恐怖を感じたら、それだけで進撃を鈍らせることができる。せやから、「「芋スナ!」言われても、それは狙撃の理にかなっとるっちゅう話や。

あのマイケルムーア監督も2015年、映画『アメリカンスナイパー』に対し『スナイパーは卑怯だ。だって後ろから撃つんだもん』という主旨のツイートをして話題になったで。

実際、高倍率のスコープを覗いて数百メートル先の標的を狙う言うても、思った以上に小さく映るもんや。

十字のヘアラインを標的に合わせたとしても、ちゃんと訓練されとらんかったら照準はブレてまう。人間の心臓の鼓動や、ほんのわずかな身体の動きでも影響を受けるんや。

そんなん止めよう思うても、意識して止められるもんちゃう。ほんのちょっとのブレが命中率を大きく左右するんやで。

これはヒグマ撃ちでも同じ話やな。

【衝撃】北海道には自衛隊員が体重120kgのヒグマを小銃で射止め、小銃持参で地域住民を武装送迎した史実があった

陸上自衛隊の運用構想

「東長崎機関」様の取材では現職隊員のコメントとして『陸自では指揮官を守るためにスナイパーを配置しており、映画のように積極的に敵地へ潜入して任務を行うなどの作戦構想はない』と報じとるで。

諸外国の狙撃手とは運用思想が異なるっちゅうことやな。

また陸自でも諸外国軍同様、通常は狙撃手1人に観測員が1人配置されとるが、この観測員は周囲の警戒ではなく、あくまで目標の監視を行うんやと。

下記は「東長崎機関」サイト様より引用したで。

自衛官:
狙撃手1人には観測1人がつきます。

東長崎機関:
周辺警戒は、観測手1人だけですか?

自衛官:
周辺警戒という考え方ではなく、ターゲットの観測です。

東長崎機関:
その観測手は、狙撃手からどのくらい離れた位置ですか?

自衛官:
狙撃手のすぐ隣です。

東長崎機関:

観測手は、敵に先に発見される危険が高いと思うのですが、狙撃手の近くにいるのでは、狙撃手の位置も暴露されやすいのでは?観測手は、10メートル以上はなしたほうがよくないですか?

自衛官:
自衛隊では、敵を撃ちに潜行させるという形では狙撃手を使わず、味方部隊の指揮官を守るという戦術運用なので、そのような隠密行動はしません。

典拠元:東長崎機関「自衛隊独特の狙撃戦術」
http://www.higashi-nagasaki.com/c2007/C2007_33.html

アメリカ海兵隊では兵科として『前哨狙撃兵(スカウト・スナイパー)』が設けられており、狙撃のほか、陸自の機甲偵察隊員などのように前線偵察も任務になってるな。

一方、2016年に産経新聞が以下の様に報じとるんや。

陸自の狙撃手は指揮官を守ることで指揮命令系統の乱れを避けることを主任務としている。ただ、陸自は「指揮官防護だけに専従するわけではない」と説明する。

典拠元 あの国の特殊部隊を迎え撃つ、世界一の陸自スナイパーが手に握る「対人狙撃銃」

http://www.sankei.com/premium/news/161005/prm1610050003-n1.html

陸自のスナイパーが専従で動いとるんか、それとも別の任務も兼任しとるんかはハッキリせんけど、どのみち手の内なんか明かさんやろうな。

相撲取りにサイレンサー付きのUSPを見せたら写真をブログに上げられたり、米兵にM4バラされたり、散々やからな。

陸上自衛隊の『一部』で配備されるM4に関する「ある事件」とは?

せやけど、今現在、日本のスナイパーたちはアメリカ本国で海兵隊からめっちゃ高度な教育を受けとる最中らしいわ。せやから、アメリカ海兵隊と同じく、前哨狙撃兵(スカウト・スナイパー)の戦術を学んどると考えるのが普通やろな。

過去にはミリタリー専門誌「SATマガジン」で自衛隊スナイパーの特集が組まれたこともあるんやで。その時は自衛隊の取材協力のもと、使用する銃や装備、運用方法についてかなり詳しくレポートされとった。

狙撃銃と共に配備されるギリースーツやバーラップロールとは

一見、銃がホコリまみれに見えるけど、実はこれ、擬装のための塗装なんや。黒一色の銃やと砂漠では逆に目立ってまうから、それを防ぐための工夫っちゅうわけやな。

ほんで、狙撃任務には高度なカモフラージュ技術が欠かせん。狙撃手は、迷彩服の上から「ギリースーツ」っちゅう特殊な偽装網を羽織って、周りの環境に溶け込むんや。

Oikabio 5 in 1ギリースーツ、ジャケット、パンツ、フード、大人用キャリーバッグを含む3Dカモフラージュア...

このギリースーツは、植物を模した化学繊維素材で作られとって、背景に合わせて擬装することで、敵からの発見をさらに困難にする効果がある。

要するに、ムックみたいなボサボサの見た目になることで、人間特有のシルエットを消してしまうんやな。

それだけやなく、狙撃銃自体にも擬装を施すのが基本や。擬装テープを巻きつけたり、迷彩模様を直接描いたりすることで、さらにカモフラージュの精度を上げるんや。

こういう隠密行動のための装備は「隠密行動用戦闘装着セット」として、M24対人狙撃銃とほぼ同時期に陸自に配備されとる。

ちなみに、春夏兼用と秋冬兼用の2種類が用意されとるで。

写真引用元
American, Japanese snipers train on common ground September 8, 2013 By Staff Sgt. Miriam Espinoza-Torres, 5th Mobile Public Affairs Detachment

軍の狙撃手は有名人か

狙撃手っちゅうのは、ただの射撃のプロやなくて、戦場における重要な戦力なんや。

指揮官やエースパイロットと同じように、その存在が際立つこともある。特に、戦争が激しくなればなるほど、戦意を高めるために狙撃手の活躍が積極的に称えられることもあるやろな。

古くはソ連軍が女性狙撃手を大量に任用していた史実もあるで。

最近やと、イラクやアフガニスタンに派遣された米軍のスナイパーが注目されることが多いな。

特に2014年公開の映画『アメリカン・スナイパー』のモデルにもなった、元Navy SEALsの狙撃手クリス・カイルは有名や。

イラク戦争中、彼は武装勢力から「悪魔」と恐れられるほどの腕前やった。

除隊後はアメリカ国内で射撃のインストラクターをしたり、本を書いたりして、PTSDに苦しむ元兵士の支援活動にも尽力しとったんやけど、悲しいことにな、米国テキサス州でPTSDを抱えた元兵士に命を奪われてしもたんや。これはほんまに皮肉な話やな。

陸上自衛隊の対人狙撃手(=対人狙撃課程教育を受ける)になるには?

2015年に新設された対人狙撃課程教育

「対人狙撃課程教育」は、日本全国の部隊から射撃技術の高い隊員を集めて行われるエリートプログラムや。狙撃の技術はもちろん、観測技術や地形判断、戦術の基本までガッチリ学ぶ。

当時の陸上自衛隊北部方面隊第11旅団隷下の第10普通科連隊(北海道滝川市)では対人狙撃手の養成のため富士学校普通科で行われている特技課程『狙撃』を10普連の隊員に受講させるため、入校前教育を実施したんやけどな、その教育内容は射撃理論と観測など、狙撃を行う上での基礎的なものや。

狙撃技術はもちろんの事、観測技術や戦いの要は射撃であるという古典的な事実を学生たちは数か月間、実戦さながらの高度な教育によって身につけていく。

そんなかで最も大切なんが、狙撃課程を受ける隊員に狙撃手としての任務の厳しさを自覚させることだったんやと。

野外で作戦を遂行するためには、レンジャー資格者並みの能力が必要や。

狙撃要員選抜のための各種検査

対人狙撃手となるためには射撃のセンスと厳しい任務を完遂できる士気と体力素養が基本なんや。

せやけど、それに加えて野外で作戦を行うための地図判読能力や隠密行動能力も不可欠な要件や。

これはすなわちレンジャー資格者とほぼ同等の能力が必要ってことなんやな。

一般に自衛隊の各要員に選抜されるには各種の検査が行われとるんやけど、陸上自衛隊の狙撃要員は情緒的安定など心の病気や社会適応能力を見極めるための知能検査、性格検査、クレペリン作業素質検査が行われとる。

知能検査で合格できるのは段階点5以上、性格検査はB、B’、ABE、E’、AEF以外、クレペリンはf(B)、f(C)d、dp、fp以外。

もっとも、上記の検査内容は陸自の心理適性検査に関する達にて公表されているオープンソースや。公表されていない資質検査も行われている可能性もあるかもな。

まとめ

狙撃の役割――敵の指揮系統を混乱させる

狙撃手が敵の指揮官を仕留めると、部隊は一気に混乱する。これは昔から変わらん戦術や。いかに効果的に敵の動きを止めるかがスナイパーの実力やな。

せやけど、逆に自軍の指揮官もまた敵のスナイパーから常に狙われとるから、それに対応する「カウンタースナイパー」っちゅう狙撃手に狙撃手で対抗する戦術も重要っちゅうわけやな。

2024年にはトランプ大統領が演説中に男に狙われた暗殺未遂事件があったやろ?あれを“排除”したのもシークレットサービスのカウンタースナイパーやで。

ただ、陸自はそれ専門の部隊を持ってるわけやないみたいやな。もちろん、素人の取材に手の内明かすほど自衛隊は間抜けではないやろうね。

ただ、スナイパーの運用が本格的になってきたんは最近のことやし、米軍のノウハウを学ぶことはこれからの課題になるやろな。