自衛隊が訓練にエアガンを使用しているという話は事実である。
とりわけ市街地における近接戦闘(Close Quarters Battle=CQB)訓練では、安全かつ実戦的な訓練資機材として、エアガンが正式採用されている。
近接戦闘訓練において、実弾を用いることは極めて稀であり、2006年以降はエアガンを使ったCQB訓練が制度化され、主に陸自で実施されている。理由は明快である。
市街地における実戦的訓練には「リアリティのある射撃」が必要だったからである。
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自衛隊、CQB訓練に「エアガン」導入──安全かつ実戦的な近接戦闘訓練の今
実弾を使わず、実戦に備える──「バトラー」システム
エアガン導入以前より、自衛隊では「バトラー(Battle Laser Training System)」と呼ばれるレーザー式射撃訓練装置が運用されてきた。これは実銃に装着可能な発光部と、隊員が着用する受光部(ヒット・インジケーター)によって構成されるシステムで、実弾を使うことなく交戦訓練を行える装置である。
命中判定はレーザーで行われ、被弾があった場合はブザー音や液晶によって即時にフィードバックが返る。
従来型よりも精密な当たり判定が可能なアップグレード版も配備されており、もはや「ゾンビ行為(当たっても無視して戦い続ける)」は通用しない。
北富士駐屯地に存在する“仮想敵”専門部隊
このような訓練を支える中核的存在が、陸上自衛隊北富士駐屯地に所在する「部隊訓練評価隊」である。
いわゆる“アグレッサー部隊”として、全国の普通科部隊に対し実戦的な模擬交戦を提供する役割を担っている。
迷彩服や装備も専用のものが支給され、交戦評価に特化。
部隊訓練評価隊は、米海兵隊との共同訓練「シンカ演習」においても対抗部隊を務め、実戦的な訓練を通じて国際的な連携強化にも貢献している。
朝日新聞GLOBE+ https://globe.asahi.com/article/15042600
CQB訓練の進化──建物・閉所での対応力向上を狙う
近年では、ゲリラ・コマンドウ(通称ゲリコマ)への対処能力を向上させるため、市街地型の戦闘訓練が重視されている。
特にビルや住宅、商業施設などを模した訓練施設が各地の演習場に建設されており、部隊は閉所・屋内での動作手順や部屋のクリアリング(制圧)技術を磨いている。
エアガンはこうした環境において極めて有効な訓練ツールであり、建物内での射撃訓練を安全に実施することを可能にしている。
実戦に即したリアルさを、最大限に安全な形で再現する
エアガン訓練に対する世間の認識にはギャップもあるが、自衛隊が行っているのはあくまで「実戦的なCQB訓練」であり、玩具的な要素とは一線を画している。
米海兵隊を描いた映画『ハートブレイクリッジ』にも描写があるように、現代の軍隊では実弾を使わない「リアルな模擬戦闘」が、戦闘技術の中核を担う時代となっている。
今後、自衛隊の訓練体系はさらに多様化するだろう。その中で、エアガンやバトラーといった実戦的資機材の果たす役割は、ますます重要となるに違いない。
閉所戦闘訓練用教材の導入
そして、そのために用いられるのが「閉所戦闘訓練用教材」こと89式タイプのエアガンってわけね。
実は以前から一部の戦闘職種の部隊では非公式な戦闘訓練メニューとして近接&閉所戦闘訓練(いわゆる建物内などでのCQB訓練)を東京マルイ製の電動ガンを使って行っていたそうよ。
とくに部隊で64式の代用になったのが同社製の『SG-1』、そして89式の代用が『SIG SG550』って言われてるわ。映画「宣戦布告」でも、外観と雰囲気が似ている折曲銃床式の89式5.56mm小銃の代用品として撮影に使用されたくらいなのよ。
そしてついに2006年、マルイから89式小銃の電動エアガンが発売されたってわけ。
実はこの製品の開発には自衛隊が公式協力しているのよ。図面が提供され、過去に例のないほどリアルなエアガンが爆誕したってわけね。
市販品と自衛隊納入品、いわゆる『閉所戦闘訓練用教材』との違いは、教材は基本的に固定銃床でストックカラーがOD、専用ガンケースに入れて納入されている……などね。
部隊によっては銃身を各種カラーで塗色しているわ。ミリブロNews様では、平成21年度 日米共同訓練~市街地戦闘(MOUT)編~にて米軍との合同訓練時に公開された銃身を紫色にした89式訓練銃の写真を掲載されているわね。
http://news.militaryblog.jp/e89821.html
ちなみに、このマルイ製89式エアガンは海外のドラマや映画にも出るのよ。
なぜか、台湾のテレビドラマBlack & White痞子英雄では反社会勢力側が使う銃として登場しているわ!
さらには、あの超大作「コマンドー」のロシア版リメイク作品「コマンドーR」にもマルイ製が登場しているわ。主人公の敵が日本の悪徳自衛隊員よ!雑魚キャラ扱いだったわよ!
東京マルイでは2018年にガスブローバックタイプの89式も発売しているわ。
自衛隊に訓練用品を納入している一部の専門商社では東京マルイ製の新商品89式ガスブローバック・タイプをカタログに掲載し、自衛隊へ売り込みをはかっていたそうよ。
もともと、エアソフトガンによる訓練は米軍が始めた
沖縄駐留アメリカ海兵隊では80年代、日本の『アサヒファイアーアームズ』という会社の『FNC』型エアガンを調達して模擬の先頭訓練をしていたと80年代末のエアソフトガンのカタログに記載されてたわ!
また、グアムの警察ではユースエンジニアリング社のガスブローバック式MP5を使用して訓練を行っていたという事実もあるわね。
自衛隊としてもエアガンでの訓練が実戦で役に立つと判断したから採用したわけよね。
基本的にBB弾でも極端な近距離でのトレーニングでは、6ミリのプラスチック製BB弾と言えど、当たると痛いわ!
自分の体に弾が当たらないようにするため、本能的に「弾が当たらない防衛技術」を、より恐怖心をもって学習できるのかしら?
このように訓練の臨場感をさらにを強化するために、エアガンでも緊張感をもって訓練に臨めるわけね。
とくにエアガン訓練は日本では最も安全でクリーンな”射撃訓練”かもしれないわね。
ただし、エアガンの訓練でもやはり限界があるわね。何より、エアガンと実銃では銃の操作手順も発射の反動も音も別物よ。
そこで、各国の軍隊や法執行機関ではSimunition – Non-Lethal Training Ammunitionを導入する事例も増えているみたい。
シミュニッションは「ノン・リーサル・トレーニング・アムニッション」の名のとおり、安全な訓練用資機材のこと。
実銃そのもので安全に訓練ができるシステムなの。
在沖縄アメリカ海兵隊の訓練では、実銃とペイント弾による野外での実戦的な訓練が行われているわ。
これは実銃のM16アサルトライフルの機関部を模擬のペイント弾が発射できる専用部品に換装するシステムで、弾丸の初速は日本のエアソフトガンよりも早く危険なため、兵士は眼だけでなく顔全体を守るためのSCOTT(スコット)のフルフェイスゴーグルマスクを着用してるわ!
自衛隊の89式電動ガン……実は東京マルイよりも早く作っていた会社があんのよ
東京マルイが防衛省の公式協力を得て89式電動ガンを製造販売したのが2006年。
でもね、実はマルイより前に89式電動ガンの開発を行っていた会社があるって知ってる?
それが「89R」を出したキャロット社よ!

画像の引用元 キャロット社公式サイトhttp://www.carrot-tokyo.com/
もともと「89R」は既存のマルイ製電動ガンのパーツを利用した外装キットだったの。
その後キャロットでは完成済み89式電動ガンも販売していたわ。その直後に東京マルイが89式電動ガンを開発したってわけ。
キャロットでは「89R」を開発するにあたり、自衛隊や豊和工業から公式に図面提供などは一切受けなかったそうよ。
協力を要請したかはわからないけど、おそらく時代が時代だけに受けたくても受けられなかったのかもしれないわね。
当時の自衛隊は萌えキャラで悪乗りするような「開かれた組織」では、まだなかったみたいね。そうでもないかしら?うふふ。
ともかく、キャロットでは市販の資料や写真を参考としたり、開発スタッフが駐屯地祭へ足を運んでの取材が開発ベースとなったみたいね。
当時は市民団体が自衛隊が市民に銃を触らせたとして自衛隊を告発することもなく、自衛隊の銃器展示も比較的緩やかな実情もあったみたいよ。
皮肉なことにキャロット製89式キットのクオリティの高さ、すなわち再現性は「正式に自衛隊が開発協力した東京マルイの89式」の発売によって、証明されてしまったこともゲーマーには興味深いそうね。
もちろん、自衛隊側から正式に図面を提供された東京マルイ製89式も、そのすべてが正確に作られているわけではないみたいよ。
グリップにはモーターが入るため実物より若干太く、またバッテリーへの雨水対策として、ハンドガードは実銃と別仕様になってるわ。
また、エアソフトガン・ユーザーへの安全を確保するため、限られた素材で強度を出すように肉厚の部分もあるの。
さらには、あえて実物と細部を異なる仕様にし、実銃のパーツを取り付けられないようにするという「実銃ユーザー」に対する安全面の配慮もされたうえでの開発って話よ!
残念ながらキャロット製89式電動ガンは東京マルイほど成功はしなかったわ。
けど、現在キャロットでは陸上自衛隊にラバー製イミテーション89式を納入しているの!
この製品はとくに第1水陸機動連隊の水路潜入訓練で使用されるなど活躍しているみたいよ。
自衛隊の訓練用89式……ペイント弾も
「よりリアルな環境で戦闘訓練するのが狙い」との理由から、防衛省が制式に配備した89式エアガンでは着弾後、血のりのように赤くべっとり染まるペイント弾の使用も想定されているみたいね。
ほかにも自衛隊が採用している模擬銃にはペイントボール専用発射銃があるわよ。
海上自衛隊特殊部隊「特別警備隊」ではMP5を採用しているため、株式会社PDI製品のMP5型シミュレーター(ペイントボール発射タイプ)が海上自衛隊第一術科学校へ納入されているの。また、PDIでも89式型訓練銃の開発研究がされているわ。
マルイの89式との違いは、6ミリBB弾ではなく11ミリのラバーボール弾やペイント弾が発射できることと、駆動方式がガス圧ってとこね。
http://ascii.jp/elem/000/000/076/76461/index-2.html
さらにPDI社では、AK47やM4A1など、世界中の軍隊や警察が使用する小銃を訓練用資機材としてリアルに再現したPDIシミュレーターズという製品もラインナップしているわ。
これらは完全に銃刀法に適合しており、何ら問題なく規制の範囲内で使用できるのが特徴ね。
使用する11ミリのペイントボール弾はアルミケースのカートに装てんされ、排出されるの。アルミケースがコンクリ―トに落下すれば実銃同様の薬きょう落下音を奏でられ、益々リアルな訓練環境を演出できるらしいわよ!
ペイント弾といえば、新谷かおるさんの女性傭兵を主人公とした傑作作品「砂の薔薇」でもおなじみで、閉所や家屋内などで実戦的な訓練をするための安全な模擬弾ね。
着弾すると弾丸の中の水性塗料が飛び散るため命中判定が容易にできるわ。
赤い塗料であれば血ノリのように。ペイント弾は警察や軍隊の訓練のほかスポーツのペイントボールなどでも使用されているわ!
20式の訓練用エアガンも導入!?
それにしてもマルイが89式を発売して20年近いとは月日の経つのは早いものね。
そして、今や89式の後継銃「20式」に続々と更新を進めている陸上自衛隊。
で、界隈で今話題なのが2024年に防衛省が20式の訓練用エアガンの導入を進めているって話ね。

これは防衛省が財務省に提出する、翌年度の予算編成に向けた「概算要求」の書面、つまりお見積もりなんだけど、詳しくはオープンソースである防衛省の情報を見て欲しいわ!
https://www.mod.go.jp/gsdf/gmcc/raising/hoto/hnyu/24hw031s.pdf
上記から引用した情報によると、仕様は以下のような感じね。

威力はこれまでの89式教材と同様に6mmBB弾を使用し、1J規制の範囲内ね。発光弾を使用できることを要求しているのでトレーサーを銃口に装着するのか、銃本体に内蔵するのか興味深いわね。
さらに、防衛省側が要求する“20式エアガン”の発射ソースが不詳ってことも気になるのよね…。
エアガンの発射ソースって現在、電動、ガス(フロン&CO2)、エアコッキングが主流よね。
89式訓練教材が電動だったからそれに倣う可能性はあるけど、「射撃音が伴う機能」ってのも、腑に落ちないのよ。
もしそれを求めているなら、電動ガンの「ウィタタタタ!」じゃなくて、ガスブローバックの「ガショシャッ!」みたいな金属音ってことかしら?
ただ、現時点ではどこのメーカーが製造するのか不明よ。マルイさんかもしれないし、そうではないかも。
でも、マルイさんはこんなのを防衛省に“提案”したみたい。これは何かを匂わせてるわよ!
そして、参考展示のラバーガン!
※一般販売はいたしませんのでご了承ください。#マルフェス pic.twitter.com/vm3VwZwH1J
— 東京マルイ@AirsoftGun (@TM_Airsoft) November 9, 2024
まさか今頃になってキャロットさんに追従とか…!?そんなこと、あるわけないじゃない!
まとめ
そんな感じで、自衛隊では安全な訓練も並行して行っているってことね!
ビデオシミュレーターを使った仮想訓練も行うのよ!