防衛装備庁は、対小型無人航空機(UAV)対処を目的とした散弾銃「対小型UAV用散弾銃 M4AI」を契約したことを公表しました。
契約は2025年9月に行われ、数量は1式です。これは評価・試験目的での取得と見られ、直ちに部隊配備や常時運用が開始されたことを意味するものではありません。
今回導入されたモデルはM4 A.I. Drone Guardianで、小型UAS/FPVドローンなどに対するキネティック(発砲)による最終手段として提案されているモデルになります。
自衛隊が取得したベネリM4 A.I.Drone Guardianとは?
自衛隊ではすでにイタリアのBenelli(Benelli Defense / Benelli Armi)製12ゲージ半自動ショットガンである「ベネリM4」を海上自衛隊で配備していますが、今回調達されたM4 A.I. Drone Guardianはそのバリアントの一種です。
「M4 A.I. Drone Guardian」は、対ドローン用途を想定した12ゲージ半自動散弾銃で、Benelliは本機を電子妨害やレーザー等の手段が及ばない場合の「最後の砦」として位置付けています。
参照:Benelli Defense https://www.benellidefense.com/product/m4-a-i-drone-guardian-185/
自衛隊が試験的に導入した目論見は、電子妨害やレーザー等の層が破られた後の“最後の砦”という位置づけです。

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M4 A.I. Drone Guardian技術諸元
Benelliの製品説明では、内部形状を最適化した「Advanced Impact(A.I.)」バレルを特徴とし、標準的には近接から中距離(メーカー公称で最適レンジ0–50メートル、条件次第で100メートル程度まで到達を想定)でのドローン無力化を念頭に置いています。メ
M4 A.I. Drone GuardianはAIの利用等はなく、Benelli独自のAdvanced Impact(A.I.)バレル(内部コーン形状を変える特許的設計)で、散弾の到達や破壊力を従来より伸ばすことを狙っており、散弾の射出特性を変化させることで到達性と破壊力の向上を図っているとされています。
これにより上空より飛来する無数の小型ドローンを撃破する用途に向いています。
対ドローン用途では、タングステン等を用いた長射程・高貫通を謳う特殊散弾や、Norma(ノルマ)などの専用弾薬との組み合わせが想定されています。
有効レンジ
有効レンジ(メーカー公称)は0–50 m、条件によっては100 m程度まで到達が期待できるとされます。
弾薬
弾薬は専用の高性能ショット(タングステン等を用いる長射程/高貫通の散弾)や、ノルマ(Norma)製の対ドローン向け弾薬との組み合わせを想定しています。
対ドローン用として散弾銃は使い物になるのか?
本製品は特殊部隊や展示会(SOF Week、IDEX等)でデモ/評価が行われ、実戦的な“最後の手段”装備として注目を集めています。
「有効範囲」「命中率」「破壊効果」は、実戦環境やドローンのサイズ/速度/高度によって大きく左右されますが、すでにウクライナでの実戦では散弾銃がドローン撃墜用途として、一定の効果を示しています。
散弾銃を対ドローン手段として用いることは、近距離での“最後の手段”として一定の合理性があります。
実戦・演習の報告や業界記事では、ウクライナをはじめとした紛争地で散弾銃がドローン対処に用いられ、一定の実効性があったとする例もあります。
自衛隊はM4 A.I. Drone Guardian配備するのか
散弾銃によるドローン対処は、あくまで近距離での“最後の手段”として位置付けられています。
実戦や演習では、すでに散弾銃が一定の効果を示しており、電子戦やレーザー、ネットなどの多層的対策と組み合わせることが重要とされています。
自衛隊でもすでにFPVドローン等の小型UASに対する戦術として、電子妨害などが研究されていますが、今回のベネリ調達は完全な部隊配備ではなく、試験・調達(評価)目的の1式(=1丁分)単発契約です。
1式契約は「評価→運用方針策定→必要なら追加調達」の典型的第1ステップです。
防衛調達の公表でよく使われる「1式(いちしき)」は、単に“1丁”という意味だけでなく「運用に必要な機材一式(本体+付属品・予備弾・治具・ケース・簡易訓練等)」を含むことが多いです。
内訳としては本体+アクセサリ+輸送費+試験・導入費用などが含まれている可能性があります。
部隊の配備や運用開始の正式発表(防衛省・自衛隊側のプレスリリースや調達実績の追記)が出れば、その時点で“配備”と言える状態になります。
参考(主要ソース)