5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ)──国産軽機関銃としての歩みとその背景
「5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ)」は、ベルギーのFNハースタル社が開発した分隊支援火器「M249 MINIMI」を基に、住友重機械工業がライセンス契約のもとで国内生産した軽機関銃である。防衛省は2019年度までに約4,922丁を調達しており、これは分隊支援火器としての標準装備を目的としたものである。
それまで陸上自衛隊に広く配備されていた7.62mm口径の「62式機関銃」に比べ、MINIMIは5.56mmへの小口径化がなされており、標準小銃である89式小銃と弾薬の共通化が可能という利点を持つ。これは弾薬の補給や携行効率を考慮した装備体系の簡素化に寄与している。
以下は5.56mm機関銃MINIMIの主な諸元である。
5.56mm機関銃MINIMI 諸元
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ) |
開発元 | FNハースタル社(ベルギー) |
国産製造 | 住友重機械工業 |
製造形態 | ライセンス生産(2019年度まで) |
生産数 | 約4,922丁(2019年度まで) |
口径 | 5.56mm×45 NATO弾 |
全長 | 約1,030mm(バットストック展開時) |
銃身長 | 約465mm |
重量 | 約7.1kg(装備時) |
装填方式 | ベルト給弾(M27リンク) |
有効射程 | 約600m |
射撃速度 | 毎分約700~1,000発 |
備考 | M249として米軍など多数国で採用 |
5.56mm機関銃MINIMIの脚(バイポッド)を掴んで射撃姿勢をとる陸自隊員と猫シャンの絵の箱。近年陸自では5.56mm機関銃MINIMIにもスコープを装着している。射手は標準装備のアイアンサイトではなく、照準眼鏡で狙いをつけている。(写真引用元:陸上自衛隊公式HP)
住友重機製機関銃MINIMIをめぐる一連の問題と機関銃更新の行方
陸上自衛隊が装備する5.56mm機関銃MINIMIについて、これまでに複数の問題が指摘されてきた。
まず技術面では、特定条件下において弾詰まりや暴発が発生することがあり、防衛省は現在、その条件下となる操作や状況を意図的に再現することを禁止している。これは兵士の安全を優先した措置であるが、装備そのものへの信頼性を問う声も根強い。
さらに、2013年には朝日新聞の報道により、製造元の住友重機械工業が、MINIMI機関銃の納入にあたり防衛省の要求する性能を満たしていないにもかかわらず、性能試験データを改ざんして納入を続けていた事実が発覚した。この改ざんは10年以上にわたって行われており、防衛装備品としての信頼性と企業倫理に対する重大な問題として社会的な批判を集めた。
http://www.asahi.com/articles/TKY201312130454.html
このような背景のもと、MINIMIは陸上自衛隊が長年使用してきた旧式の62式7.62mm機関銃の後継として配備が進められているが、有効射程の面での不安も指摘されている。日経新聞は「敵軍が7.62mm以上の火器を装備している場合、MINIMIの有効射程外から一方的に射撃されるおそれがある」とし、62式の退役がむしろ戦術上のハンディキャップになりかねないという懸念を示している。
こうしたなか、2019年から陸上自衛隊では次期機関銃の選定試験が始まった。候補として挙げられたのは、現行型を製造するベルギーのFNハースタル社のMINIMI、ドイツH&K社のMG5、そして住友重機械工業が新たに開発した新型機関銃の3種である。
しかしこの住友重機の新型をめぐっては、同社の下請け企業が日本政府の許可を得ずに設計図を中国企業に提供していたことが判明。外交的にも極めて問題のある行為とされ、日本政府は強く遺憾の意を表明した。これにより、住友重機械工業は事実上、機関銃製造からの撤退に追い込まれたと見られている(2021年、日経新聞報道)。
このような経緯から、次期主力機関銃としては輸入前提でのFN MINIMIまたはH&K MG5が有力とされる。いずれにせよ、国産による継続供給体制の維持は難しくなりつつあり、今後の装備選定は政治的、戦略的判断も含めた難しい選択を迫られることとなる。