【動画解説】サバゲにも!自衛隊の迷彩用顔料(ドーラン)の塗り方

ドーラン自衛隊

訓練中の自衛隊員は顔を単一の暗緑色で塗りつぶしたり、まるで西瓜のような模様を描いている状況があります。

これは「擬装(ぎそう)」と 呼ばれるもので、擬装に使う塗料を米軍では「フェイスペイント」や「カムフラージュ・メイク」と呼びますが、自衛隊では迷彩用顔料、さらに「ドーラン」と呼びます。それでは顔面にドーランで偽装を施した自衛官について詳しく迫ってみましょう。

自衛官が顔に擬装を施す「ドーラン」や「フェイスペイント」とは?

顔に迷彩を描く自衛官はまるで”野戦のための化粧”をしているようです。実は「お化粧」というのは冗談ではなく、ドーランは実際に役者が舞台に立つ際に塗るものですし、自衛官が使うドーランも、まるでファンデのコンパクトのような容器に入っています。

そしてなにより、自衛官が愛用するこのドーランを作っているのは、大手化粧品メーカーであるクラシエ(旧・カネボウ)です。日本の女性をさらに美しく艶やかにすることに心血を注いできたあの美容化粧品事業の雄が、防衛装備品メーカーの1社だったとは。

その名も「クラシエ カムフラージュメイク」。意外と普通の名称です。

自衛官が擬装する理由は?森と同化するためよ

では、自衛官がこのような製品を使用して「擬装」を行う理由について考えてみましょう。

女性がお化粧をする理由は、目や口など顔のパーツを強調することで、その本来の美しさを引き立てるためです。

しかし、野戦任務をこなす自衛官が行う顔面の「擬装」はその目的とはまったく逆です。野外での擬装の目的は、顔の肌の色を目立たなくし、顔のパーツを認識できないようにして、周囲の自然環境に溶け込ませることにあります。要するに、顔を森林などの背景になじませて同化し、森に紛れることが目的なのです。

正面から見た人間の顔は目、鼻、口という3つのパーツで成り立っていますが、私たちの脳はこの3つのパーツを見ただけで自動的に「人の顔」と認識します。しかし、この機能は誤検知を引き起こすことがあります。

本来の目、鼻、口でなくても、例えば図形が目、鼻、口の位置に配置されていれば、脳はそれを人の顔だと錯覚してしまうのです。例えば、自動車のフロント部分がナンバープレートやヘッドライト、グリルなどの3つの要素で構成されていると、まるで人の顔のように見えることがあります。

また、心霊写真で偶然に目や鼻、口のように見える光と影が映ることもあり、その場合も顔がそこにあるように感じてしまうことがあります。これを「シミュラクラ現象」と呼びます。

このように、人間の脳は潜在的に顔を認識する能力を持っていますが、戦場で自分の姿を隠したい場面では、顔を晒すことが命取りになります。そのため、自衛官は目、鼻、口を隠して顔を顔であると認識させないようにするのです。これが「擬装」の目的です。

さらにもう一つの目的として、敵と味方の識別を行うために、特徴的な擬装を施すこともあります。陸上自衛隊の職種によっては、写真のように威圧感を与えるカモフラージュメイクを施す場合もあるのです。

「対ゲリラ戦闘訓練でも、彼我の区別をつけるため、自衛隊では装備品の身に着け方までも、明確に決められています。顔に塗る迷彩のドーランのパターンも、当日に隊長が決めたものに従い、それ以外は敵と見なされます」

引用元
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120615/Taishu_politics76.html

上記に引用させていただいたように、敵味方の識別用でもあるこのドーランの塗り方は訓練や演習においても大変重要であり、決して適当に塗りぬりしているのではなく、統制のもとで厳格に運用されているのが実情です。

自衛隊のドーランの塗り方

自衛隊のドーランの塗り方には、昼間と夜間の擬装で異なる方法が採用されています。

まず、昼間の野戦を想定した昼間擬装では、基本的に緑色を使用します。さらに、茶色と黒を少量加えることで、自然な色合いになります。秋の季節には、黄と茶を多めに使って、葉っぱや自然の色に合わせた擬装を施します。

顔の凹部分、例えば目の下などの影になる部分は明るい黄色で塗り、逆に出っ張った鼻の頭や頬などの凸部分は黒で塗りつぶします。このようにして、顔の立体感を消し、顔の特徴をぼかすことが目的です。

夜間擬装では、闇に溶け込むために、暗い黒を基調にした塗り方が基本です。暗い色合いで顔全体を覆い、夜間でも自衛官が視認されにくくなるようにします。

擬装のポイントは、色の境界線をぼかすことと、顔の周囲、特に耳の裏や襟元の首部分まで塗り残さないこと。顔や体の輪郭を隠すことが重要です。さらに、狙撃手などはギリースーツや草木を身につけて、人体の輪郭を隠す偽装を施せば、さらに効果的な擬装が完成します。

陸上自衛隊のM24対人狙撃銃

え?テメぇの塗りの説明じゃわからない?よく分からない場合は、参考動画で確認するのも良いでしょう。

自衛官とて、野戦化粧をしたら落とす

ドーランが”顔に施すお化粧”であることから、何かに気が付いた方も多いはず。とくに女性の方ならピンときた方がいますよね。

そう、化粧をしたならば、必ずメイク落としが必要です。

 

ドーランを落とすために多くの自衛官が使用するのは、手軽なクレンジングシート。現場でもよく利用されている方法です。

しかし、ドーランは頑固なため、クレンジングシートを何枚も使わなければならない場合があります。自衛隊の隊員たちの中でも、化粧落としには一定のこだわりがあるようです。

まとめ

ドーランによる顔面擬装について、簡単にまとめると以下のポイントになります。

  1. クラシエがドーランを製造していた。

  2. 昼用と夜用で配色が異なる

    • 昼間は緑をベースに、茶色と黒を追加。

    • 夜間は暗い色が基本。

  3. 顔の凸部分には黒で塗りつぶし、凹部分には明るい黄色を使って、影を強調する。

  4. 顔のキワや耳の裏、襟元まで塗る

  5. 色の境界線をぼかすことで、自然な仕上がりに。

  6. 秋は黄色と茶色を多めにして、季節感を反映。

そして、最も大切なのは、化粧は必ず落とすこと。自衛官でも、この基本は変わりません。

この記事の執筆にあたり、扶桑社発行の月刊自衛隊広報誌「MAMOR」Vol.105(扶桑社)を参考にしました。

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