野外炊具には「1号」「2号」および、それぞれの改良型が存在します。
基本的に野外炊具には自走するための動力が備わっていないため、専用車両に牽引されて現地へと輸送されます。この装備は、灯油バーナーを使用した炊飯器を6基搭載しており、最大で600人分の米飯を炊き上げることが可能です。主な用途は炊飯と味噌汁の調理ですが、加熱された湯を用いて戦闘糧食の湯煎や、食器洗浄用の温水として利用することもできます。
野外炊具は、調理活動中にもその能力を発揮し、災害派遣時にも欠かせない装備のひとつとなっています。製造は、防衛装備などを手がける静岡県の「マッキンリーネクスト株式会社」によって行われています。
さらに、野外炊具にはエンジン駆動式の回転カッターが搭載されており、野菜などの食材を効率よく切る際に重宝されています。
陸上自衛隊の演習時に、意外としっかりとした食事が提供される背景には、この野外炊具の存在が大きく関係しています。
なお、航空自衛隊には「パトリオット部隊」に随伴する炊事専用車両が存在し、1回の調理で最大200人分の食事をまかなうことが可能です。こちらはトラックベースの装備であり、展開能力もマル。
ただし、演習時には戦闘糧食を摂る場合もあります。また、近隣の駐屯地で調理された食事を演習場に持ち込むケースや、演習場に備えられた調理器具を使用して調理された食事を提供する場合もあります。
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自衛隊の野戦食事当番は大変だ!
自衛隊の野外炊事と飯ごう
演習で部隊の食事を担当する野外炊事班の隊員であっても、自衛官である以上、敵から攻撃されない保証はありません。そのため、戦闘に巻き込まれる可能性も想定しなければならないのです。
こうした状況を踏まえ、時にはガスマスクを装着したまま、小銃を片手に黙々と炊事にあたることもあります。
飯ごうとは
さて、野外で食事をする際に使用する炊具といえば、焚火でご飯を炊くための「飯ごう」があります。この飯ごうを使って炊飯することを「飯盒炊爨(はんごうすいさん)」と呼びます。
現在、陸上自衛隊で使用されているのは、旧型に比べて高さが低く、よりコンパクトになった『飯ごうII型』です。外装はツヤ消しのOD(オリーブドラブ)色で塗装されており、蓋のハンドルと掛子(中皿)を組み合わせることで、ご飯と汁物を同時に食べられるよう工夫されています。
これらの装備には、防衛省の検品印(Qマーク)が入っており、厳重に管理されています。したがって、インターネットオークション等に出品することは固く禁じられており、違反すれば警務隊の出動対象となります。
また、野外演習では温かい食事を運搬するために「麦缶(ばっかん)」と呼ばれる大型の保温容器が使用され、トラックで輸送されます。
自衛隊は飯ごうで炊飯しないのか?
実を言うと、現在の陸上自衛隊において飯ごうで実際にご飯を炊く機会は少なくなっています。現代の運用環境では、近隣の駐屯地や基地で調理された温かい食事を輸送したり、前述の『野外炊具』と呼ばれる移動式の調理装置を用いて大量調理し、部隊に配給する方式のほうが、現実的で効率的です。
さらに、レンジャー訓練では、極限環境下での行動を想定し、現地でヘビを捕らえて食べるような訓練も行われています(※実話)。なお、これはあくまで特別な例であり、一般の部隊では実施されません。
飯ごうの現在の使い方
それでは飯ごうは何に使われているのでしょうか。主な用途は、戦闘糧食(レトルト)の温め、つまり湯煎や、温かい食事を食べる際の食器としての使用です。
食器として使用する場合は、飯ごうの内部にビニール袋を敷き、直接食材が触れないようにして食事を取ります。食後は袋をそのまま処分できるため、洗浄の手間が省け、水資源の節約にもつながるという工夫がされています。
演習時には、飯ごうの蓋にラップをかけ、その上にカレーなどの料理を盛り付けることで、後片付けを容易にしています。また、本体にはご飯やカレー、蓋にはサラダやオムレツ、福神漬け、らっきょうなどを分けて盛ることもあります。
インスタントラーメンを飯ごうで茹でることも可能ですが、火を使えば煙が発生しますので、特に夜間では位置を敵に察知される恐れがあり、想定訓練中は原則として禁止されています。
「綺麗な野営メシ」とは
このように、現代の陸上自衛隊では、「飯ごうで火を起こしてグツグツ炊飯」というイメージよりも、効率的で衛生的な「綺麗な野営メシ」が実態となっています。ただし、レンジャー訓練などの特殊な場面では例外となり、現地調達の食材や飯ごう炊爨も依然として行われています。
なお、イカロス出版の書籍『いつでも食べたい!自衛隊ごはん』では、レンジャー訓練中の学生たちが飯ごうで炊いたご飯を食べている様子を詳しく掲載。その美味しさが伝わってくる内容となっています。
いつでも食べたい!自衛隊ごはん (イカロス・ムック)
4863205112 | イカロス出版 | 2011-10-29
自衛隊の野外炊具と飯ごうⅡ型のまとめ
以上の様に現在自衛隊ではレンジャー訓練などを除いて飯盒炊爨はめっきり減っているようです。
このようにまとめてみました。
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