第1空挺団が怖い理由とは?
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第1空挺団が怖い理由とは?

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出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場 陸上自衛隊
出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場
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第1空挺団は、国内唯一の空挺部隊として、迅速展開・高所降下を専門とする精鋭部隊です。千葉県習志野駐屯地に所在し、空中から作戦展開する能力を備えています。

この部隊の降下訓練では、まるで「東京タワーの天辺と同じ高さ」、「新幹線と同じ速度」で飛ぶ輸送機からの飛び降りが例えられています。

実際には、高度およそ 340 m前後、飛行速度は 時速200~300 km という条件で降下が行われています。

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団員はいずれも高度な身体能力と精神力を備え、厳しい訓練を経て空挺徽章を授与されます。

さらに、多くの隊員が陸自屈指の過酷なレンジャー課程を修了しており、国内でも最高水準の即応力を誇ります。

このような過酷な環境下で降下を成功させるには、徹底した訓練と高い精神・身体の強靭さが求められます。

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第一空挺団の概要

出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場

陸上自衛隊の精鋭部隊「第1空挺団」は、日本で唯一の機動運用部隊として、ヘリボーンや空挺降下による空中機動作戦を遂行する専門部隊です。

第1空挺団の主な任務と役割

  • 敵占領地域への空中突入、機動展開による迅速な部隊投入

  • 災害時や人道支援時における緊急展開および物資・人員降下

  • 千島・南西諸島など島嶼部の防衛任務に際して、航空機やパラシュートを使った先行投入

この部隊の最大の特徴は、「空挺降下」による迅速な戦力展開能力にあります。

出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場

高速で飛行する輸送機からパラシュート降下し、敵部隊の後方地域へ浸透・制圧を行うことが任務の中心です。

空挺降下は、地上経路の確保が難しい状況や、敵の防衛線を突破する必要がある場面で、兵員と装備を短時間で投入できる極めて有効な手段です。

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特に、島嶼防衛や離島奪還といった作戦環境では、その機動力と展開力が重要な戦力となります。

空中機動のもう一つの形「ヘリボーン」とは

第1空挺団の空中機動展開には、落下傘による空挺降下のほかに「ヘリボーン」と呼ばれるヘリコプターを用いた戦術も含まれます。

ヘリボーンは、ヘリが着陸して隊員を下ろす方式と、上空でホバリングしたままファストロープやラペリングで隊員を降下させる方式の二種類があり、局地的かつ迅速な投入を可能にします。

ヘリボーンのポイント

  • 「ヘリボーン」はヘリコプターを用いる空中機動の総称で、着陸して隊員を下ろす方法と、上空からロープで降下させる方法(ファストロープやラペリング)の双方を含みます。

  • ファストロープやラペリングは、着陸が不可能あるいは危険な場所での迅速展開に有効ですが、ヘリ自体が発見されやすい、ホバリング中は被弾しやすいといった脆弱性があります。

  • 撤収時には、機体に被弾されるリスクを減らすために機内へ収容せずホイスト(吊り上げ)やファストロープでの速やかな離脱(エクストラクション)を行うことがあります。

ただし、ヘリボーンにはホバリング状態での視認や対地被弾といった脆弱性が伴います。

そのため、展開・撤収の方法は状況に応じて選択され、撤収時には機内に隊員を収容せず「エクストラクションロープ」によって隊員を吊り下げる形で離脱し、被害リスクを低減する運用がとられることがあります。

作戦時には、ヘリコプターによる「ヘリボーン」(CH-47JA、UH-1Jなど)と、輸送機からの「空挺降下」を状況に応じて使い分け、迅速かつ広範囲に展開できる機動力を発揮します。

こうした空中機動力により、第1空挺団は正規軍との戦闘のみならず、ゲリラやコマンドゥなどによる不正規戦、離島や重要拠点の防衛といった多様な任務にも対応可能です。

部隊構成

組織的には、かつて東部方面隊の隷下にありましたが、2007年の改編で中央即応集団(廃止)に移管され、地域を問わず全国規模での即応運用が可能となりました。

その後、2018年の再編で陸上総隊の直轄部隊となり、国内外のあらゆる事態に即応できる体制が整えられています。

また第1空挺団は、全国の普通科部隊が大隊規模で構成される中にあって、3個空挺大隊を基幹とする大規模な精鋭部隊です。

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団は普通科3個大隊、特科大隊、対戦車中隊、通信中隊、後方支援中隊、および空挺教育隊などから構成され、総員は約1,500〜2,000名に及びます。

任務上の性格は、同じ陸上総隊隷下の中央即応連隊と異なり、第1空挺団は主として国内有事や離島防衛において、空挺降下作戦を含む空中機動展開を担います。

一方、中央即応連隊は国際平和協力活動や在外邦人救出など国外任務を中心とし、規模は約700名規模です。

在外邦人救出のための「誘導隊」、かつて第1空挺団内に編成

第一空挺団の国外任務としては、海上自衛隊の海外拠点が初めて設置されたジブチにおいても、同団の隊員が施設警備任務にあたっています。

また第1空挺団では災害派遣任務への即応体制に加え、かつて海外での有事を想定した在外邦人の避難誘導部隊「誘導隊」が1999年に団内に編成されました。

これは紛争地に取り残された邦人を、政府専用機を活用して安全に避難させる目的で構想されたものです。

誘導隊はのちに再編され、現在は中央即応連隊の「誘導輸送隊」として運用されており、2021年8月にはアフガニスタンに派遣され、首都カブールにおける邦人輸送任務を遂行しています。


空挺団員への登竜門―厳格な選抜基準

空挺団員として任務に就くには、肉体的・精神的に高い資質が求められます。

候補者には年齢、身長、体重、胸囲に関する厳格な基準が課され、さらに知能・性格・適性検査および体力検定に合格する必要があります。

項目 内容
年齢制限 陸曹は36歳未満、陸士は28歳未満
適性検査 知能・性格・作業素質・職業適性の各検査に合格すること
体力検定 一般は5級以上
身体条件 身長161cm以上、体重49kg以上、胸囲78.5cm以上

空挺隊員となるには、通常の隊員以上の練度と意志、そして任務に対する強い覚悟が必要不可欠です。

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2020年には女性隊員として初の空挺団員が誕生しています。

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降下訓練始めは毎年1月

毎年1月、千葉県の習志野演習場では「降下訓練始め」が行われます。

この訓練では、航空自衛隊のC-1輸送機やC-130H輸送機、陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH-47などから完全武装の空挺隊員が次々と降下し、その技量と士気を披露します。

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この訓練は一般公開されることもあり、自衛隊の即応力を象徴する恒例行事です。

最難関の「空挺レンジャー課程」とは

第一空挺団の多くの隊員が空挺およびレンジャー課程を修了しています。

第1空挺団では、併設の「空挺教育隊」が隊員教育を担いますが、その中でも「空挺レンジャー課程」は国内でも最難関とされる教育課程です。

空挺レンジャー課程は、高高度からの降下、長距離行軍、夜間潜入、敵地での自活訓練など、極めて過酷な訓練内容で知られ、習志野駐屯地に設けられた約45メートルの落下傘訓練塔にて、実際の降下に備えた地上訓練が行われます。

本番では、C-1やC-130H輸送機、CH-47大型ヘリコプターからのパラシュート降下訓練が実施され、隊員は高度な空挺技術を身につけます。

かつては仏製「ひとにいさん傘(696MI)」と呼ばれるパラシュートも使用されていましたが、現在は米国製T-10系パラシュートが主流です。

訓練の危険性は非常に高く、過去には殉職者が出た事例もあり、降下前に遺書をしたためるという伝統も残っています。

特殊部隊「特殊作戦群」との関連

第一空挺団と特殊部隊「特殊作戦群」は、どちらも陸上総隊隷下に所在し、習志野駐屯地を拠点とすることから、地理的・運用上の近接性が際立っています。

ただし、その任務と役割には明確な違いがあり、第一空挺団は精鋭集団ながら、その位置付けは特殊部隊ではありません。

第一空挺団は、国内有事や離島防衛など、自衛隊の迅速展開を主眼に置いた部隊です。

空中機動を駆使し、敵部隊の後方やアクセス困難な地域へ兵員と装備を投入することを主任務としています。

そのため、多くの隊員が空挺資格やレンジャー課程を修了しており、部隊全体が高い即応力と身体能力を持っています。

一方、特殊作戦群は、国内外を問わず特殊作戦任務を遂行するための陸自唯一の特殊部隊です。

敵地での偵察・救出・不正規戦対応など、より専門性が高く、少人数での迅速かつ秘匿性の高い作戦を想定しています。装備や訓練も空挺団とは異なり、特殊作戦に特化しています。

両部隊は同じ駐屯地に拠点を置くことで、訓練や情報共有における相互補完が可能です。

第一空挺団の空中機動能力と、特殊作戦群の精密な戦術運用能力は、国内外の有事や災害対応において柔軟に組み合わせることができます。

そのため、直接的な作戦連携というよりも、互いの専門性を活かした支援・補完関係にあると考えられます。

また、特殊作戦群の隊員選抜はもっぱら、第一空挺団から行われていたとされます。

総じて、第一空挺団と特殊作戦群は、任務範囲や作戦手法に違いはあるものの、同一駐屯地での共存により、陸自の即応能力と特殊作戦能力の双方を高める関係性を築いていると言えます。

第一空挺団がヤバイと言われる理由

第一空挺団の掲げるモットー、それは「精鋭無比」。彼らを語る時、必ずと言っていいほど聞かれるフレーズです。

しかし、さらなる隠れたフレーズもあります。

それは……第一狂ってる団

いくら“特別な死生観”を持つと言われる彼らとて、あくまで自衛隊法の範囲内での活動であり、平時における民間商業地区での無制限な作戦を前提としているわけではありません。

ところが、とくに昭和の頃は研ぎ澄まされた狂気のような噂もよく聞かれたといいます。

第一空挺団の隊員は休日ごとにシャバへ向かい、ある地区へ足を運びます。束の間の休日、彼らも普通の人同様、レジャーを楽しむのです。ところが、それはとても健全とは言えない異常な遊戯でした。

ヤクザ狩りです。

また、3階の窓から飛び降りて一階の自販機で飲料を買ってたよ、という話もよく聞かれました。

倫理も階段も、特別な死生観の前では易々と超越する彼らのエピソードには震えるほかありません。

第一空挺団の装備品

第1空挺団の装備は一般的な普通科部隊と大きく変わりませんが、運用上の工夫が施されています。

小銃、軽機関銃や迫撃砲など

出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場

これまで長らく、折曲銃床型の89式小銃が配備されていた第一空挺団ですが、2025年現在、その主力は後継である「20式小銃」に代わっています。

20式5.56mm小銃は『ある目的』を想定して開発された
89式小銃の後継、ついに登場─20式5.56mm小銃とは何か1989年に導入された89式小銃から31年を経た2020年、防衛省はその後継となる新たな主力小銃「20式5.56mm小銃」を公式に発表しました。20式小銃は2014年に研究が開始さ...

折曲銃床型の89式小銃は輸送機によるパラシュート降下時などに取り扱いやすくする仕様ですが、20式小銃も伸縮型のストックを搭載しており、最短状態では790mm程度です。

これは折曲銃床型の89式小銃の最短状態である670mmには及びませんが、20式小銃は最短状態でも肩にストックを当てられるので、射撃しやすく、扱いやすいと言えます。

出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場

また、9mm拳銃9mm機関けん銃、M24SWS狙撃銃、ミニミ軽機関銃が配備されます。

出典 第1空挺団 令和6年度第2次空挺団演習 自衛隊 東富士演習場

さらに無反動砲や迫撃砲など多岐にわたる火器が配備されていますが、普通科部隊と比べて大きな差はないと言えます。


映画や漫画に描かれた第1空挺団の姿

第1空挺団は、映画や漫画の題材としても描かれてきました。代表例としては、以下のような作品があります。

①『第八空挺部隊 壮烈鬼隊長』(1963年)
→ 日活が製作し、空挺部隊を題材にした戦争映画で、空挺隊員の訓練や士気を描いています。劇中の部隊名は「第八空挺部隊」となっていますが、陸上自衛隊第1空挺団をモデルにしたとみられます。

②『右向け左!自衛隊へ行こう』(1994年)
→ コメディ(!?)映画で、習志野駐屯地でのロケが行われ、実際の空挺団員がエキストラとして参加しています。降下シーンも本物の装備を使用して撮影されました。シリーズ化されており、人気の高さを伺えます。実際、面白い。

③ 板垣恵介氏の経歴
→ 『グラップラー刃牙』などの作者・板垣恵介氏は陸上自衛隊第1空挺団出身で、5年間在籍していました。本人が複数のインタビューで公言しており、作中の戦闘描写や精神論にも自衛隊での経験が強く反映されています。その名も「自伝板垣恵介自衛隊秘録~我が青春の習志野第一空挺団」を書かれています。

自伝板垣恵介自衛隊秘録~我が青春の習志野第一空挺団~ (少年チャンピオン・コミックス)


精鋭部隊・第1空挺団の現在

2025年現在も、第1空挺団は依然として陸上自衛隊の中核を担う精鋭部隊として存在感を放っています。

習志野駐屯地を拠点に、国内外の情勢に即応できる機動力と空輸展開能力を維持し続け、災害派遣や離島防衛など多様な任務に対応しています。

近年は無人機や次世代装備の導入も進み、空挺作戦の様相は新たな段階に入りつつあります。

伝統の厳しい訓練と精神を受け継ぎながら、現代戦に適応する姿勢を貫く第1空挺団は、今後も日本の安全保障の最前線で重要な役割を果たしていくでしょう。

出典

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