街を走る所轄署や本部執行隊の白黒パトカー。
一見どれも同じ『税金で購入されたパトカー』に思いがちです。
しかし、実はパトカーには大まかに分けて、国(警察庁)が一括購入して各都道府県警に配分する”国費”、それに各都道府県が独自の予算を使ってそれぞれ購入した”県費”の2種類があります。
パトカーの県費購入と国費購入の違いを知れば、ご当地パトカーが生まれる理由もわかります。
まずは無線警ら車の代名詞であるトヨタ・クラウン。その多くは国費で配分された車両です。
沖縄県警に配備される無線警ら車には「特別防錆処理」という塩害によるサビ対策の処理が施されて納入されますが、基本的に警察本部が違えども、中身は全く同じなのが国費導入車両。
ところが、各都道府県では国費配分のパトカーだけでは第一線車両の充足率を充たせていないのが現状です。
「国費パトカー」で足りない分を補う「県費パトカー」

そこで登場するのが各都道府県が自前の予算、すなわち各自治体の費用で独自に導入する県費購入のパトカー。
なお、本項では便宜上、都費、府費、道費を全て含め『県費』と呼称します。
さて、県費で購入する白黒パトカーのラインナップは国費購入車両と比べると、各都道府県によってそれぞれの特徴が見られるのが実情。
県費車両ではプリウスやインサイト、アリオン、キューブ、ベルタなどのマイナー車種が珍パトハンターに人気が。
例として以下のページでプリウスのパトカーについて言及しています。

それにしてもバラエティが色とりどりです。なぜ、こんなにも地域ごとに採用される県費パトカーに違いが出るのでしょうか。
それは各都道府県の予算の規模、またその地域で力の強いディーラーが、在庫の捌けない不人気車種を突っ込んでくることなどが理由。
だから、全国それぞれその都道府県にしか存在しない変わりダネ車種、いわば「ご当地パトカー」が誕生してしまいます。
熱心なパトカーマニアが追っかけているのは、実は国費配備より県費ものパトカー。
交通取締り用パトカーを例にすると、北海道警察が日産ティアナのレーダー・パトカー、青森県警では同じくローレルを配備。
また、警視庁では2004年に都費購入で交通取締り用のマツダのRX-8を導入。
都費購入である警視庁の交通用パトカー・マツダRX-8。2016年、後述の日産フェアレディZ”ニスモ”に後継を譲った。
警視庁交通機動隊のマークX覆面。こちらも警視庁の都費購入。
どれも通常、その警察本部の管轄内でしか見られないご当地パトカーなのです。
[box class=”blue_box” title=”国費塗りと県費塗り”]国費や県費で導入されたレガシィやクラウンといったパトカーでは、トランクドアの塗り分けに違いも。これがいわゆる『県費塗り』と『国費塗り』。パトカーを後ろから見て『黒色の比率』が多めなら、その車両はほぼ県費購入。なんのためにこんな塗り分けをしているのか詳しくは不明。しかし、この塗り分けの違いもパトカーマニアを一喜一憂させるポイントの一つ。
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このように日本の警察車両には大きく分けると、国が一括で購入して全国に配分する国費購入、そして国費で足りない分を補うため、それぞれの都道府県が自らの予算で購入する県費購入があるわけです。
高級車も!寄贈パトカーとは?
しかし、実は県費購入や国費購入のパトカーだけではないのです。
それが地元の医師や企業などが、節税と名売りを兼ねて都道府県警に寄贈する、その名も「寄贈モノ」のパトカーです。
寄贈パトカーもまたマニアを熱くさせるもの。

では、この寄贈されるパトカーにはどんな車が顔を並べるのでしょうか。
全体的に見ると、高級車が寄贈が目立ちます。
過去の例を出せば、栃木県警察で1973年から1984年まで公務に使用したというフォード社の「マスタング マッハ1」。
当時、同車を寄贈したのはJA共済連栃木。マッハ1は同県警高速隊に配備され、東北道での交通取り締まり任務に従事。
一方で新潟県警や神奈川県警にはポルシェの寄贈配備も。神奈川県警のポルシェは当時の正規輸入業者が県警に寄贈した車両です。

これらのように、日本の警察は過去において外車、高級車のパトカーの配備も。それらは寄贈車両でした。
また、1995年11月17日付けの読売新聞では、医師がベンツの交通覆面パトカーを茨城県警に寄贈したとのこと。
同記事によれば、千葉県警のBMWなど、外車の交通覆面パトカーは意外と多くの県警で採用されているとも報じています。
県警に3,200ccのベンツを寄贈したのは医師で、これまでにも県警にバスを寄贈するなど、多大な貢献をしているとのこと。
ホンダのNSX、日産のフェアレディZ”ニスモなど高級スポーツカーも寄贈
栃木県警察高速道路交通警察隊ではホンダが誇る最高級スポーツカー『NSX』をパトカーとして運用。
もちろん、こちらも県費ではなく寄贈車両。
当時、栃木県内にNSXを製造していた工場があったゆえんでホンダから警察に寄贈されたとの事。
1992年に初代が寄贈されたが、事故による全損で廃車となり、現在は2代目です。
友達から送られてきたー俺もなまで見たかったんだけどー pic.twitter.com/xKgvc3oo4i
— ましろ🌸 (@masiro_er34) 2017年5月5日
参考サイト様
http://www.j-sd.net/honda-nsx-meeting-touring-happening/
http://policecar.nomaki.jp/nsx.html
このように自動車メーカーから寄贈をされたパトカー。しかし、自動車メーカーのほうにメリットは宣伝以外に何かあるのでしょうか。
実はあります。
日本の高速道路は交通マナーがめちゃくちゃでもはやサーキット。
警察はその取り締まり名目で高速走行を毎日天下御免で行なっているとなれば、企業にとってはまたとない走行データ収集のチャンスです。
このようなハイパワーマシンを警察に寄贈することでデータ回収したい狙いもあるとか。
さらに栃木県警が2018年6月に日産栃木工場から寄贈された日産GT-R(R35型)も話題性の高い警察車両です。
こちらも日産の工場が栃木にある由縁での寄贈。
それまでも栃木県警察では前述のホンダNSXをはじめ、日産Z33フェアレディZ Version.NISMOを導入していたほか、スバルのインプレッサWRX STiなど多くのスポーツカーを配備していることで知られています。
とくに傑作交通取り締まり用パトカーと呼び声が高いR33 GT-Rは白黒と覆面で活躍。

写真はwebモーターマガジン公式サイトから引用したもの。同ウェブサイトではパトカーのリミッターについて非常に興味深いポイントが紹介されています。
それによれば、1992年に同県警へ寄贈されたホンダNSXの贈呈式時、“リミッターは解除済み”とアナウンスされたとのこと。
パトカーのリミッターに関しては以下の記事にて言及し、180km以上の速度が出せるか否か、複数のソースを元に検証を行っています。

なお、寄贈された日産GT-R(R35型)は鹿沼インターにある同県警高速隊本隊に配備され、東北自動車道や北関東道などが取り締まりの主戦場とされるほか、交通安全の啓発活動等で積極的に展示を行う予定とのことです。
警視庁のフェアレディZ”ニスモ”のパトカーは都費もの
一方、警視庁でもフェアレディZ”ニスモ”パトカーを配備。しかし、こちらは栃木県警と違って、2016年に警視庁が都の予算で購入したいわゆる”県費モノ”。

同車は、同じく都が独自購入した前配備車両のマツダ製RX-8の後継車と見られている。
警視庁広報課のTwitter公式accountと日産自動車株式会社(@NissanJP)Twitter公式accountでは同車について、それぞれ「配備しました」と「お納めしました」とツイートされており、どちらにも寄贈という言葉はなし。
そうなれば、普通に考えて警視庁が東京都の予算(税金)で買った県費モノ・パトカーの可能性が高いでしょう。
なお、パトカーのミニチュアで定評のあるRAI’Sから発売されている同社のミニチュアモデルの説明によれば、今回配備されたニスモZは東京都の予算で配備されている車両との記載が。
参照元 http://www.gulliver-inc.com/SHOP/H7181601.html
ところで、フェアレディZのパトカーといえば、1974年当時、神奈川県警交通機動隊が配備していたというフェアレディZの覆面は変わり種。
RAI’Sシリーズは実在する警察車両のミニチュアをリリースしてきたシリーズで警察マニアに定評がありますが、このフェアレディZの交機覆面仕様(1974年当時)では、ルーフの赤色回転灯を廃した代わりにボンネットの両サイド付近に隠された赤色灯がせりあがるという仕組みになっており、以下のように説明されています。
神奈川県警察覆面車両はボンネット上にあるウィンドウォッシャー液とバッテリーのメンテナンス用の開閉部が改造され、リトラクタブルヘッドライトのように赤色灯が装備されている。
典拠元 https://www.hiko7plus.co.jp/item/H7437402/
なんとも驚きの機構が。
しかしながら、これら2ドアのハイパワーパトカー、どうやら現場の高速隊員にはあまり好まれなかったようです。
やはりこれらのスポーツカーは車内が狭い為、ガタイの良い高速隊員では乗り心地が悪いほか、 二人乗りであるために違反者を助手席に乗せなければならないという手間がかかるとのこと。
切符を切る間、一方の隊員は何をしているかと言うと、車外で見張り。
高速道路上でパトカーや違反車両の後方に立ち、後方警戒という名の棒振り、旗振りをやるわけです。これが非常に危険だとして嫌われたようです。
そのほかの高級パトカー
ほかにも一部の高速隊では日産スカイラインGTRや三菱GTOなどの白黒や交通覆面パトカーも配備。どうもこれらのスポーツカーは減り、クラウンばかりと画一化した感じが。
しかし、現在でもハイパワーのスポーツカーは交通警察にとってどうしても手放せないのか、一部ではスポーツカーをパトカーとして使っており、愛知県警察高速道路交通警察隊では中期型GTOのMRが2014年でも現役。
そして2015年からは、高知県警察交通機動隊でスバルWRX S4の交通覆面パトカーが県費で新たに配備。
一方、警視庁が東京都の予算で配備する交通取締り用マークX+Mスーパーチャージャー交通覆面パトカーについては、価格がおよそ800万円の怪物マシン。
今日目撃したマークX +Mスーパーチャージャーの覆面。
ユーロアンテナのおかげでバレバレw
一般道の取り締まりに800万円のスーチャー付きマークXが必要かどうか別としてカッコいいな。何か独特のオーラがある…
ほかに高速隊に3台入ってるから恐ろしい。
交機はコイツだけの模様。 pic.twitter.com/apTohTZz9c— E26系の住民 (@hzj2414) 2017年1月4日
現在、マークX+Mスーパーチャージャーの覆面パトカーは警視庁が都費で配備するのみで、他の道府県警察には存在しません。
レクサスのパトカー

レクサス自体はすでに警護車に導入されていますが、制服パトカーでは今回の高級クーペ「LC500」が初。
今回寄贈を受けたのもやはり栃木県警で、2018年に日産R35GT-Rパトカーを寄贈した栃木県内の会社役員によるもの。その価格、なんと1,740万円。
ベンツの覆面パトカー
単に「ベンツの覆面パトカー」といった場合、そう珍しいものでもないようです。
パトロールをしない警護車を覆面パトカーと呼ぶのは語弊がありますが、ともかく、警視庁SPが警護用に運用する黒塗りベンツの警護車が現在も配備されています。

ところが、交通取り締まり用の覆面ベンツといった場合、ちょっと珍しい上に、ある意味衝撃的な存在です。
こちらは黒塗りではなく、明るいブルー色で、バブル時代に高速道路でよく取り締まりに従事するなど、当時からマニアや職業ドライバーからは知られた存在であったとのこと。
ただ、その存在を知らない一般市民からは評判が悪かったとも。
とくに大阪府警の交通覆面ベンツはナニワ金融道のベンツより、市民から恐れられていたといいます。
パトカーの寄贈を受けるにあたって、警察側では寄付者が組織運営上、弊害を生じるものではいけないとしている
なお、一般の人がパトカーを寄贈しようとして、個人でパトカー仕様の車を改造して作り、それを警察に寄付し、警察がそれを使うようなことはありません。
パトカーへの改造(架装)は各メーカーの特装部門で行われており、日産ならオーテック、トヨタならトヨタテクノクラフト。
また、ホンダNSXパトカーを架装したのはエスティサポートという専門業者です。
また、警察への寄贈にも各種の制限が設けられており、個人や団体が思い立って車両を寄贈しようとしても警察では寄贈を受けるにあたって事前に厳重な調べが行われるのが実情です。
警察庁の公開資料には寄付者が警察組織運営上、弊害を生じるものではいけないので注意すること……という主旨の記載があるくらいです。
https://www.npa.go.jp/pdc/notification/kanbou/kaikei/kaikei19550917.pdf
また一例として岐阜県警の公式サイトでは以下の資料が公表されています。
自動車、原付自転車などの場合、所有権を団体又は特定の個人に留保し、維持費を警察予算でまかなうこととして、これを無償借上使用する場合がある
典拠元 https://www.pref.gifu.lg.jp/police/gifuken-keisatu/horei-shiryo/kitei/tsutatsu-tsuchi/kaikei/index.data/tu-s39-kei210.pdf
このように、寄贈された警察車両の所有権を団体または特定の個人に留保し、維持費は警察予算でまかなうという特殊な例もあるようです。
まとめ
このように税金での購入に限らず、一般市民や企業、団体から寄贈された警察車両があるので。
昨今では無線警ら車に210系クラウンが配備となり、高級車のパトカーという言葉自体も陳腐に。
また現在では国産車でも十分に性能を発揮できることからか、外国車の交通覆面パトカーはほぼ用廃となり、わずかに活躍する国産高級スポーツカーがその後釜をつとめている現状です。
しかしながら、かつて日本警察でも、ベンツにポルシェ、ムスタングなどの高級外国車を高速隊の白黒および、交通覆面パトカーとして配備していた歴史があったのです。

なお、外国製高級車のパトカーは第一線を退いても、しばらくは客寄せパンダとして交通安全啓発イベントなどで活躍するのが通例。
そして、パトカーの寄贈と言っても、警察側では手放しで喜んでホイホイと受け取っているわ
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