2020年7月1日、北海道札幌市で立て篭もり事件が発生。
出動した道警刑事部捜査1課特殊捜査班SITの突入により犯人の身柄は確保され、事件は早期に解決しましたが、SITの一人が携行していた装備品に気になるものが。

北海道ニュースUHBの報道から引用した上記の画像によれば、静止画では詳細が判然としないものの、中央に映るSIT隊員はダットサイトおよび前方にハンドルを備えたM4に似た“小銃”を右手に構えています。
SITの装備品で”長物”と言えば、すでに判明しているとおり、セミオート・オンリーのMP5SFK(※SATマガジンが便宜上つけた非公式な名称)。
しかし、MP5系と今回の道警SITの持つ銃とでは明らかに全長、形状ともに大きく異なっています。

2007年、東京都町田市に出動したSITはセミオートオンリーのMP5を携行。出典 TBS News
2020年に自衛隊が制式化を発表した新型小銃・20式5.56mm小銃とも似ていることから、警察も配備したのではないかとの一部指摘も。
しかし、こちらもバットストックの形状が明らかに異なり、SITのものはマガジンが直線的。
さらに拡大した以下の画像に注目。

画像の出典 北海道ニュースUHB
フレーム上部にはダットサイトと見られる光学照準器らしきものが見えるほか、太いバットストックが。さらに銃口側に白線も。
いったいこの銃は。本当にM4でしょうか。
しかし、最後の切り札とされる警備部のSATに配備されるならまだしも、刑事部のSITが軍用小銃であるM4を配備する理由は皆無。
SITはSATと違い、交渉術(ネゴシエーション)によって被疑者に自ら投降させる解決法が主で、実弾を使った実力手段による目標排除は極めて限定的だからです。
であるなら、逆の考えも。
『法執行機関向けの非致死性装備』という可能性です。
その線から探ると、すぐに銃の正体が判明。
正体は?
北海道警察SITが携行していたこの”小銃”は米国製のPepperball VKSと呼ばれるガス銃です。
メーカーでは「Non Lethal」と表記しており、Non Lethalとは「非致死」という意味です。
SITの非致死性装備と言えば、閃光弾発射機であるブリュッガー&トーメ GL-06などのゴム弾および催涙弾発射筒の配備が確認済み。新たな装備が発覚した形です。

Pepperball VKSは米軍のMIL規格であるピカティニーレールを標準搭載。様々な光学照準器やハンドルなどを拡張可能。またバットストック内にガスタンクを備えるため、直径が太く大きく張り出しているのが特徴。今回、北海道文化放送のニュース映像で同定の決め手となったのはピカティニーレールのほか、太いバットストック、それにストレートマガジン。(写真の出典:PepperBall社)
発射出来る弾丸にはコショウの粉の詰まった弾丸や唐辛子の主成分であるカプサイシンと同等成分を含む粉末の詰まった弾丸、さらに無害な水の詰まった弾丸やインクの詰まったペイント弾があります。
また、ブラックライトで識別できるUV塗料の詰まった弾丸、窓ガラスを割るための硬質弾など特殊なものまで発射可能。
これら非致死性の弾丸は被疑者の人体や周囲に着弾すると破裂し、内容物の粉末または液体を撒き散らします。
同社製品のデモンストレーション動画では人の足元に発射する実演を公開。
連続で発射された弾丸の粉末により視界を遮るスモークが発生し、目くらましの効果も。被疑者の足元に向けて撃つだけでも行動抑止効果があるようです。
なお、VKSは1マガジンに10発から15発の弾丸を装てん可能。
一方、発射威力は10〜28ジュールの間で調整可能。
日本で現在市販されている6mmBB弾を使う競技用エアソフトガンは俗に言う『1J規制』が行われ、法定最大値は約0.98ジュール。
もし、被疑者が発砲を受けたなら、VKSの最低圧力でも市販のエアソフトガンとは比べ物にならないほどのダメージを受けるはず。
なお、日本警察向けに10ジュール以下にリファインされたなどの公開情報は見つかりません。
したがって、高圧のガスで発射されるペッパー弾は人体への直接射撃でもストッピングパワーは充分でしょう。
なお、道警のほか、愛知県警でも配備が確認されています。
海外ドラマが想像した日本の警察特殊部隊
実際に出動した日本の警察特殊部隊 pic.twitter.com/Q7syrt0sM0
— ぱらみり(健全アカウント) (@paramilipic) May 21, 2020
SITは相変わらずこのような非致死性の武器を好んで配備していますが、その理由は以下の項目にて言及しています。