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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

暴発が相次ぐM18(P320)でついに米空軍で死亡事故発生。空軍はM18の使用即時停止命令

引用元 Security Clearance News & Career Advice

厳格な米軍のトライアルを突破し、安全装置までつけて採用されたはずの大手拳銃メーカーの拳銃。しかし、米空軍で悲劇的な死亡事故が発生した。

2025年7月20日、米ワイオミング州にあるF.E.ウォーレン空軍基地で勤務中の空軍兵士が、携行していたM18拳銃(SIG Sauer製P320)による暴発を受けて死亡するという事故が発生した。

今回の米軍の事故を受けて、空軍の中でも最精鋭とされるGlobal Strike Command(戦略打撃軍)は、M18(P320)の即時使用停止を命じ、全基地での一斉点検に踏み切った。

M18(P320)は米陸軍や海兵隊でも制式採用されているが、トリガーに触れていないのに発砲したという訴えは過去にも数多く報告されており、その信頼性に改めて大きな疑問符がついた形だ。

⚠ ご注意(この記事の立場について)
本記事は、米空軍基地におけるM18拳銃の発砲死亡事故に関して、現在判明している事実と複数の報道をもとに構成された考察記事です。

記事中では、SIG Sauer社製P320/M18シリーズに関する複数の暴発報告や訴訟事例にも触れていますが、製品に設計上の欠陥があると断定するものではありません

SIG Sauer社は一貫して「正しく使用された場合、同社製拳銃に欠陥は存在しない」と公式に表明しており、現在も訴訟を通じてその立場を主張しています。

本稿は特定の立場を擁護または非難する意図ではなく、読者が事実と争点を多角的に理解する一助として執筆されたものです。

事故の概要

2025年7月20日 午前1:30頃(現地時間)、 F.E. Warren 空軍基地(ワイオミング州チェイエン)において、 21歳の第90保安部隊グループ、第90保安部隊飛行隊所属兵士、ブレイデン・ロヴァンさん(Brayden Lovan)がM18(P320)の暴発により死亡した。報道によると、ワイオミング州での任務中は武器保管区域内で作業を行っていた。

この件を受けて、AFGSC(地球規模攻撃軍団(Air Force Global Strike Command)の略)は7月21日付で全司令下部隊に対し、M18拳銃の使用を即時停止させ、その間はM4ライフルを代替装備とすることを指示した。

M18について

画像の引用元 https://www.americas1stfreedom.org/content/sig-m18-aces-army-reliability-test/

M18は、アメリカ軍が2017年に制式採用した拳銃「モジュラー・ハンドガン・システム(MHS)」の一部で、SIG Sauer社製P320をベースとしたコンパクトサイズのモデル。フルサイズモデルのM17とともに、ベレッタM9の後継として選定された。

【日本警察が使うベレッタM92】SITが採用した理由&アメリカでの歴史とスペック解説

M18は主に空軍、海軍、海兵隊などで使用されており、同一フレームをもとにサイズや構成を柔軟に変更できる「モジュラー設計」が特徴。また、M18には手動セーフティレバー(親指で操作する外部安全装置)が搭載されている。

主な特徴

  • 9mm弾使用(9×19mm パラベラム)

  • ストライカー方式(ハンマーなし)

  • ポリマーフレーム

  • マガジン容量:17発または21発

  • アクセサリーレールと光学サイト対応のスライド

M18の安全機構はトリガー・セーフティ、ドロップ・セーフティ、ファイアリング・ピン・ブロックを備えており、基本的にP320と統一である。

軍用モデルであるM18は、より厳しいMIL-SPEC基準に準拠しており、耐久性の向上が確保されている点が特徴だ。

一方、P320は民間市場および警察向けに幅広く販売されているモジュール式の拳銃であり、ユーザーによるカスタマイズ性が高い。

だが、M18とP320双方で暴発事故の報告が存在し、これは単に運用環境の差異だけでは説明できない根深い設計上の課題を示唆している。

民間用P320と比較した場合の違いはあるものの、基本的な機構は共通しており、暴発リスクは完全には排除されていない現実が浮き彫りになった。

◆ 第1節:事件の概要と軍の対応

シグ・ザウアーM18は、銃器メーカーのP320シリーズの一部であり、民間人、法執行機関、そして軍内部で意図しない発砲の疑惑が報じられたことを受けて、法的調査の対象となっている。

なお、アメリカ軍では、これまでにもM18の暴発事故が相次いでおり、海兵隊が発表した報告書は、日本国沖縄県の警備ブース内で発生した意図しない発砲事件の詳細を詳述している。

捜査官は監視カメラの映像を検証し、警備員が銃器を不適切に取り扱ったわけではなく、安全装置が作動していたにもかかわらず発砲したと判断した。

しかしながら、米軍は2024年までM18の事故について懸念する理由はないとしていた。

https://www.nhpr.org/nh-news/2024-06-25/documents-detail-u-s-soldiers-shot-by-their-own-sig-sauer-guns-military-says-no-reason-for-concern

  • 2025年7月20日、F.E. Warren空軍基地での当直勤務中に兵士が銃撃により死亡。

  • 発砲したのは本人が携行していた M18拳銃(P320ベース、SIG Sauer製)。

  • 事故の詳細は非公開だが、空軍は即座に AFOSI(特別捜査局)と安全局による調査を開始。

  • Global Strike Command は M18の全使用中止(stand-down)命令を発令し、点検までの間は M4ライフルによる代替装備に切り替え。

◆ 第2節:M18(P320)の過去の事故と訴訟

民間のユーザーや警察機関による暴発事故が相次いでいる。

ベースであるP320シリーズは過去にも「トリガーを引かず暴発」とされた報告が100件以上存在し、民間や警察などの法執行機関のユーザーの間で誤射の疑いで悩まされ、多数の訴訟が提起され、使用禁止措置が行われている。

ただし、SIG社は一貫して「設計は安全」「誤使用や環境要因による」としている。

当サイトでは、米国内においてP320の暴発が相次いでおり、現在係争中であることをお伝えた。

銃器メーカー「SIG SAUER社」に米国で相次ぐ巨額賠償命令…P320に相次ぐ暴発問題巡り

  • P320シリーズは2017年ごろから民間・警察・軍に広く採用されてきた。

  • しかし「トリガーに触れずとも発砲する」という複数の報告があり、これまでに少なくとも 100件以上の暴発事故が記録。

  • 警察官や民間人の負傷・訴訟が相次ぎ、賠償金も数百万ドル規模で発生。

  • 2024年にはペンシルベニア州でP320の暴発による死亡事故が訴訟化。

◆ 第3節:SIG Sauer社の主張と各機関の反応

  • SIG Sauer社は「製品は安全であり、誤ったホルスター使用や外部要因による」として責任を否定。

  • 一方で、2025年にはワシントン州警察学校がP320/M18の新入生使用を禁止し、SIGが訴訟で応じる事態に。

  • 今回の空軍事故は、連邦レベルの安全基準見直しを迫る新たな引き金となる可能性も。


まとめ

現在、事故の正確な原因究明は進行中だが、M18/P320シリーズを巡る安全性への疑義は依然として払拭されていない。

今回の事件を受けて、AFGSCが取った使用停止と安全点検の措置は“予防原則”として理解できる。今後、調査結果を踏まえて軍内部および民間の各機関がどのような判断を下すか、冷静かつ事実ベースで注視する必要がある。

また、Global Strike CommandはM18の代替としてM4ライフルを一時的に配備したことが確認されている。

事故の詳細や原因は現在も調査中であり、製造元であるSIG Sauer社は製品に設計上の欠陥はないと主張している。

一方で、過去には同型銃に関する暴発報告や訴訟も存在し、安全性に対する懸念は根強い。

P320の暴発は、単なる「個別事故」の枠を超えつつある。

ただし、現時点では事実関係の整理と調査が続いており、明確な結論には至っていない。関係機関の発表を踏まえつつ、慎重かつ公正な情報発信が求められる状況である。

今回の空軍での死亡事故が、銃器メーカー、軍、法制度の三者にどのような問いを突きつけるのか。今後の調査結果と対応に注目が集まっている。

参考文献

https://www.military.com/daily-news/2025/07/23/air-force-command-pauses-use-of-m18-handguns-after-security-airmans-death.html?amp

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