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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

日本警察の配備するM3913とは?レディスミス(篠原涼子モデル)を嫌う男性向けに「NL」モデルも。その微妙な差異とは?

女性向けレディスミス(Ladysmith)と女性向けに限定されない“ノーロゴ”レディスミス

画像の引用元 http://www.imfdb.org/wiki/Smith_%26_Wesson_3913

M3913には「レディスミス(M3913LS)」という派生型があります。名前は「女性向け」の印象を与え、デザインの違いなどごくわずかですが、流麗で魅力的なスタイリングは多くの男性ユーザーにも好評です。

比較項目 M3913 3913LS(レディスミス)
スライド形状 オリジナル 両利き用セーフティが非搭載
フレーム形状 オリジナル 銃身下から伸びる斜め直線が優美
ロゴ・刻印 オリジナル “LADYSMITH”の刻印あり
対象層 一般 主に女性

性能的な差はなく、外観の違いといったデザインにとどまります。

日本警察が採用しているのはM3913オリジナルです(LSモデルではない)。

レディスミスシリーズは、滑らかな曲線やコンパクトなサイズ感で女性ユーザーへ訴求力を高めた製品です。

しかし、基本設計はあくまでS&Wの堅牢な構造そのもので、護身用・警察用に求められる信頼性は十分に備えています。

現代版「レディスミス」シリーズ(1980年代以降)

以下のモデルが主に「Ladysmith」シリーズとして販売されていました。

モデル名 形式 口径 特徴
Model 60LS リボルバー .38 Special ステンレス製・小型・軽量
Model 65LS リボルバー .357 Magnum 若干大型。強装弾に対応
3913LS オート 9mm コンパクトオート。M3913の派生モデル
642LS リボルバー .38 Special DAO(ダブルアクションオンリー)モデル

男性向けLadysmithと噂される謎モデル『M3913NL

コンパクトで信頼性の高い9mmオート「スミス&ウェッソンのM3913」ですが、実はこのモデルにはいくつかの“分家”が存在します。

まず外せないのが『M3914』。これはM3913とほぼ同型ながら、フレームがブルーアルミニウム、スライドがブルーカーボンスチールという、ちょっとダークで精悍な仕上がりのモデルです。

さらに上位派生として知られるのが『3913TSW』。これはタクティカルレールを搭載し、両利き対応のセーフティ/デコッキングレバー、フラッシュフィットマガジン、そして遅延ロック解除式の発射システム(リコイルディレイドブローバック)まで備えた、タクティカル系の流れを汲んだモデルです。まさに“TSW”=タクティカル・スミス&ウェッソンの名を冠するにふさわしい一丁。

そして、さらに見逃せない派生として「M3913NL」があります。

このモデル、実はスミス&ウェッソンが「レディスミスとは呼ばれたくない人たちのため」に用意したモデル。

アメリカでも「このサイズ感、デザイン、完璧」と思った男性ユーザーが多かったんですが…「Ladysmith」とスライドに刻まれていると、それだけで“萎える”という風潮があったのです。

これを危惧したスミス&ウェッソン社が市場に投入したのが「M3913NL」です。

内部機構や信頼性は同じだけど、外観・名前・デザインの「マーケティング的な違い」が主なポイントなのです。

スミス&ウェッソン3913NLはS&Wモデル3913をベースにしていますが、レディスミスと同様のダストカバーを備えています。S&W 3913NLは3913「レディスミス」と同一ですが、NL版には写真にあるようにスライド右側に「レディスミス」の刻印がありません。3913NLは3913レディスミスの後継として発売され、デザインは気に入っているもののスライドの「レディスミス」の刻印が気に入らないユーザー向けに設計されました。3913NLの「NL」は「No Logo(ロゴなし)」、「New Look(ニュールック)」、「Non-Ladysmith(非レディスミス)」、「Non-Left(非左利き)」の頭文字をとっていると噂されています。これは、両利き用セーフティが装備されていないためです。

引用元 https://www.imfdb.org/wiki/Smith_%26_Wesson_3900_pistol_series#Smith_.26_Wesson_3913

男性が女性用の拳銃を使う、ということが憚られるアメリカのお国柄です。

あの流麗なスライド、コンパクトな設計、申し分ない握り心地。でも――
「レディスミス」って刻印萎えんねん!ワイは女性刑事やないねん!…という声が、きっと多数寄せられたのでしょう。

というわけで、M3913NLはスライドから“Ladysmith”の刻印を削除し、バイカラーの精悍な外装をまとって「男女兼用レディスミス」として再登場。“中身はレディスミス、見た目はジェンダーニュートラル”という、まさに未来を先取りしたモデルでした。

テレビドラマ『アンフェア』で活躍したM3913

M3913は日本でも根強いファンがいます。その厚い支持層を作った原因がテレビドラマ『アンフェア』(2006年、フジテレビ系)であり、本作における篠原涼子演じる主人公・雪平夏見です。彼女が使用していた拳銃が「S&W M3913 Ladysmith(レディスミス)」なのです。

画像の引用元「アンフェア」フジテレビ

他の男性刑事たちは無印のM3913(標準モデル)を使用していたのに対し、雪平のみがLadysmith(?)という描写は、意図的な演出であったと感じます。

『アンフェア』の覆面パトカー劇用車 170系クラウン アスリート

そして、これはちょっとした裏話ですが、『アンフェア』のドラマ版および各映画ではM3913の仕様がやや異なっています。

とくに、ドラマ版では『LadySmith』刻印がスライドにない、ノーロゴ仕様だったようです。

『アンフェア』で使用されたプロップガンの製作担当は、特殊部隊SATなどでもおなじみのMP5まで手がけるガンエフェクト専門業者のPYROTECH(パイロテック)さん。

なんと、ここに隠された逸話が。

今までのTV版・映画で使われていた「レディースミス」は実は無刻印だったんです。しかし今回は銃のアップがあると言う事で、ガンエフェクトを担当されたパイロテックさんから刻印を依頼されました。

出典 ガン&RCショップ「マッドポリス」https://madpolice.co.jp/hpgen/HPB/entries/58.html

そして、雪平が使っていた「S&W M3913」に『LadySmith』の刻印加工を施したのが、業界では知られた存在、ガン&RCショップ「マッドポリス」さん。そして、その映画版とは「アンフェア the answer」です。

アンフェア the answer DVDプレミアム・エディション

ただ、先に挙げた派生型のLSとNLの違いを見る限り、雪平のM3913のグリップはアイボリーではなく黒いため、M3913NLに見えなくもありません。

無論、日本警察はレディスミスは配備していません。ここに「敢えて」のフィクション性を絡める遊び心が逆に嬉しいものです。

主人公・雪平は刑事としてタフでありながらも、どこか壊れた美しさや繊細さを持つキャラクターとして描かれている本作。

実在する装備を忠実に再現しつつ、主人公にだけは印象的なディテールを与える。この「Ladysmith」は彼女の“女性であること”を象徴するアイテムとして、際立たせたい意図が伺えます。

このM3913、ステンレス・シルバーのピカピカ仕様で、見た目からして威嚇力、MAX。無駄に美人刑事が持ってこそ映える銃。通常なら艶消しの黒が考慮されるはずのSIT(特殊捜査班)突入係にまで配備されていたりします。

マル暴専用の防弾「よう撃捜査用車」に乗った柔剣道有段者枠採用の組対の人が、コレを隠し持ちつつコウカクする姿を想像するとチョット。家裁の人みたいに言うのやめなよ……。

エアソフトガンの『M3913』

現在までに、大手メーカーから、M3913はトイガンとしてラインナップされていませんが、先に挙げた「マッドポリス」さんでは過去にハンドメイドのカスタム品として発売が行われました。

余談ですが、ウェスタンアームズからは過去に『M4013TSW』のガス・ブローバックガンがモデルアップされていました。このトイガンは.40SW弾を使用する実銃M4013TSWをガスブローバックのエアソフトとしてモデルアップしたものです。

https://www.hyperdouraku.com/airgun/wa_m4013tsw/index.html

このM4013TSWガスブロを日本の某警察機動隊では訓練時、M3913の代用品として手にしていたことも知られています。全体的な雰囲気としては確かにM3913と似ていますが、日本の法執行の現場では、その大口径弾薬を使う銃口がちょっと浮いてましたね(笑)


結論:日本警察のM3913は強いのか?

9mmの威力はニューナンブの38口径やP230(JP)の32口径より確実に強い

M3913は最新鋭のストライカー式ポリマーフレーム拳銃に比べれば、やや古さを感じさせる設計です。

しかし、日本警察が重視する「操作の確実性」「誤射防止」「堅牢性」「携行性」においては今でも十分通用します。

一発ごとの命中と抑止を重視する日本警察にとって、M3913は“必要にして十分”、むしろオーバースペック気味な「堅実な戦力」と言えるでしょう。

ただ、現在の刑事部SITでは、ベレッタ92バーテックが使用されるなど、ほぼ2倍となる装弾数の拳銃を並行配備しています。

【日本警察が使うベレッタM92】SITが採用した理由&アメリカでの歴史とスペック解説

また、昨今では警視庁の自動車警らなど一部限定でグロック45の配備が行われており、こちらは装弾数が最大17発というハイキャパシティです。

東京五輪警備で警視庁自動車警ら隊に配備された「GLOCK45」の一斉回収は『二つの不安要因が原因』と一部で指摘あり

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