海上保安庁といえば、巡視船・巡視艇を用いて海上警備や領海監視、海難救助などに従事する警備・救難機関で、言わば海の警察である。
近年では、尖閣諸島周辺の情勢緊迫化に伴い、南西方面への新型巡視船の集中配備が進んでいる。
しかし、北海道周辺や北方海域の警備が後回しにされているわけではない。
たとえば、長年にわたり北海道周辺での警備任務を担ってきたのが、巡視船「そうや(PLH01)」である。
「そうや」は1978年に竣工した大型ヘリコプター搭載巡視船で、砕氷能力を備え、極寒地での救難や警備を任務としてきた。
そのため、地元では「北の守護神」とも称されている。
この「そうや」は、かつての南極観測船「宗谷」とは直接の系譜関係はないものの、名前を継承しており、「宗谷」の事実上の後継といえる存在である。
一方、初代南極観測船「宗谷」(PL107)は、もともとソ連の発注による耐氷型貨物船「ポロチャエベツ」として建造が始まった。
しかし契約は破棄され、その後、日本で商船「地領丸」として使用された後、海軍に買い取られ特務艦に改装、終戦後は民間組織に移籍され、引き上げ船としても活躍した。
その後、1949年(昭和24年)12月12日付で海上保安庁へ移籍し、灯台補給船(LL-01)として活動した後、巡視船(PL107)として改装され、1956年から南極観測船として運用され、日本の南極観測事業の黎明期を支えた。
1962年に南極観測任務を終えた後は北方海域の巡視や砕氷任務にあたっていた。
「宗谷」は単なる一隻の船ではなく、まるで一人の人間のような生き様を見ることができる。
そして、1984年(昭和59年)に国際映画社によって制作されたテレビアニメ『宗谷物語』にて、それがまさに描かれたのである。