【覆面も白黒パトも乗りこなす】警視庁「遊撃特別警ら隊」の機動力と実力 | シグナリーファン@セキュリティ

【覆面も白黒パトも乗りこなす】警視庁「遊撃特別警ら隊」の機動力と実力

地域部
【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

自動車警ら隊同様、街頭犯罪予防活動を担う遊撃隊・・その最大の特徴は「神出鬼没な機動力」と「職務質問技能の専門化」

パトカーを機動展開の手段として積極的に活用し、広域的な職務質問に強い自動車警ら隊です。

実は、さらに神出鬼没で職務質問のプロ集団とされるのが、警視庁地域部地域総務課に2個中隊で編成され、都内全域でパトロールに当たる「遊撃特別警ら隊(通称:遊撃隊)」です。

警視庁では、東京都内を10の方面に分け、それぞれの方面に方面本部を置き、自動車警ら隊(自ら隊)は各方面本部の下に配置され、管轄区域内のパトロールや事件・事故の初動対応などを担当しています。

遊撃隊はそのうち、第7方面深川警察署に本隊を置き、自ら隊同様に犯罪の未然防止を目的とした機動警らを任務としています。

しかし、遊撃隊は方面本部ではなく、地域部地域総務課に直轄配置されています。

このため、7方面の管轄に縛られず迅速に展開できる機動力、さらに選抜された隊員が職務質問のエキスパートであることが特徴です。

つまり、機動力と職務質問技能の専門化という点で際立った遊撃隊は、他県警の地域部の執行隊と比較してもユニークな運用と言えます。

警察無線の系統 その1『車載通信系(基幹系)』
日本警察の無線通信は、複数の独立した通信系統が存在し、それぞれが特定の役割を担っています。ここでは、警察通信の中枢的役割を持つ車載通信系(基幹系)について解説します。【注意事項】本記事は、過去に受信が合法であった時代の専門誌や公開資料をもと...

見ていきましょう。

遊撃隊本隊の配置される深川警察署管内の治安状況

警視庁深川警察署は、東京都江東区の西部を管轄しており、署員数はおよそ310名です。所管区域には門前仲町や清澄白河、木場、豊洲といったエリアが含まれ、住宅地と商業施設、再開発エリアが混在しています。

深川警察署が公表している刑法犯認知状況(過去5年間)の資料によれば、近年、深川警察署の管内では刑法犯の認知件数が年間1,000件台前半で推移しており、東京都23区内では比較的落ち着いた治安水準を保っています。

たとえば2023年には約1,315件、2024年も1,250件程度の刑法犯が認知されました。

これらの中で最も多いのは自転車盗などの非侵入窃盗で、年間700件前後を占めています。

一方で、住居侵入などの侵入窃盗は年に10件以下と、かなり抑制されています。

粗暴犯に分類される傷害や暴行事件も100件前後にとどまっており、地域住民の日常生活に直結する凶悪事件は多くありません。

ただし、特殊詐欺の電話や訪問による被害は依然として一定数発生しており、警察は防犯広報活動を強化しています。

また、清澄白河駅周辺などは都市再開発の進展により若年層やファミリー層の流入が続いていますが、犯罪率は区平均を下回っており、比較的安全な居住環境と評価されています。

こうした背景のなか、警視庁地域部の「遊撃特別警ら隊」は、機動性と職務質問の技術に優れた専門部隊として、深川署に本隊を置いています。

遊撃隊は江東区内のみならず、東京都全域で活動する部隊ですが、地域に根差した警察署に拠点を構えることで、地元の治安動向を踏まえた的確な対応が可能との立場を警視庁は取っています。

東京五輪警備で警視庁自動車警ら隊に配備された「GLOCK45」の一斉回収は『二つの不安要因が原因』と一部で指摘あり
2025年5月追記2025年、現在開催中の大阪関西万博にて、警備に当たる大阪府警の制服警察官がグロックを携行している様子がSNSに投稿されている。2021年に開催された「2020東京オリンピック」は、前例のない社会情勢での開催となったが、大...

遊撃隊の活動・連携体制

  • 隊長には警部または警視補が任命され、地域部地域総務課長の指揮のもと運営される。

  • 他の自動車警ら隊や所轄署とも連携しつつ、派遣体制による迅速な展開が可能。

  • 職務質問の研究が使命の一つ。

車長として勤務する隊員の多くが、警察庁指定の「広域技能指導官」に任用されています。

広域技能指導官とは、全国の警察官の中から、特に優れた知識や技術を有する者に与えられる称号であり、警察庁が公式に指定する制度です。

指導官に選ばれるには、被疑者の取り調べ、情報収集や分析、サイバー犯罪、薬物や銃器に関する捜査、交通事故の捜査、通信指令、交通規制など、さまざまな分野において高度な専門技能を有していることが条件です。

広域技能指導官は、自らの所属する警察本部だけでなく、全国各地の警察本部に出向き、実践指導を行うこともあり、遊撃隊でも若手警察官への指導が厳しく、実戦的である傾向があります。

遊撃隊の武器はパトカーと職質である

バッジに込められた任務への想い

遊撃隊の活動をデザインで表した警視庁の公式バッジ。引用元 https://www.jiji.com/jc/d6?id=mpdpinbadge&p=mpdpinbadge-mpdbadge16

時事通信の報道では、2003年10月から遊撃特別警ら隊の警察官が制服の襟に着用しているバッジには、いくつかの象徴的な意味が込められています。

バッジは盾の形をしており、中央にはパトカーの赤色灯と、車体に使われる赤・黒・白の3色が配されています。

「遊撃」の文字があしらわれており、左右に広がる金の翼は、パトカーに2人1組で乗車する警察官同士の緊密な連携を表現しているとのことです。

このデザインには「攻めの姿勢」や「平和を守る決意」といった意味も込められているとされています。

遊撃隊の活動は、自動車警ら隊と同様に、警らパトカーを積極的に活用し、不審者に対する職務質問を中心とした街頭警らを担っています。

特に、繁華街などでは凶器の所持が疑われる人物、特殊詐欺の受け子、不法残留の外国人などを対象に、職務質問を行うことが多くなっています。

警察さんに職務質問で怒られるNG行動とは
街中で突然、警察官から「こんにちは」と声をかけられる——。これは、ご存知、地域警察官による明るいあいさつ運動、通称「バンカケ」です。ですが、実際のところは職務質問であり、驚愕するケースが少なくありません。職務質問は、事件や事故の未然防止を目...

遊撃隊の隊員は、対象者の視線やパトカーを見たときの反応、さらには薬物使用が疑われる人物の歩き方など、わずかな兆候を見逃さず、必要があればすぐにパトカーを降りて声をかけます。

こうした職務質問から、犯罪の端緒が発見されることは少なくありません。

遊撃隊は、不審者を見極める経験と観察力に長けた、いわば職務質問のスペシャリストといえます。

警察無線で使われた通話コードや警察用語・略語の一例
一般には知られていない“警察の言葉”─通話コードと専門用語の世界街なかで警察官が無線を用いてやりとりしている場面を目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。しかし、そこで交わされている会話の内容は、なかなか理解しづらいものです。たとえ...

遊撃隊車両

基本的に白黒の無線警ら車を配備しています。パトカーのルーフに表記されるコールサインは「撃(数字)」になります。

警ら用無線自動車の解説
このページでは、市街地で最も一般的に見かける白黒ツートンの「警らパトカー」について解説する。警察車両の配備は、国費調達における調達仕様書(いわゆる入札要項)と、各都道府県警による県費車両の独自採用方針の両方によって決定されている。街頭で見ら...

地域警察官が覆面パトカーで警らする遊撃隊

さらに、遊撃隊の隊員は地域警察官でありながら、例外的に機動捜査隊のように私服や覆面パトカーによる警ら活動が認められている点も特筆すべき特徴です。

全国的に見ても、こうした地域部としては異例かつ特殊な運用の中で、遊撃隊は同じ地域部に所属する自動車警ら隊とも日常的に連携を取り合いながら、都内の犯罪抑止と治安維持にあたっています。

参照および引用資料:

  • 深川警察署 刑法犯認知状況(過去5年間)
    https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/ichiran/kankatsu/toukei/fukagawa/01_Hanzai01.html

  • 警視庁の仕事紹介「交番勤務・地域警ら」職員インタビュー(マイナビジョブ20’s)
    https://jobebook.mynavi.jp/archives/25/38357_keishicho/index.html#page=1

  • 「警視庁遊撃特別警ら隊運営規程」第3条(任務)、第5条(担当区域)https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/johokoukai_portal/kunrei/kunrei_chiiki.files/002.pdf

🔎 警察車両に関する記事は「車両カテゴリー」にてご紹介しています。
他の関連記事もぜひご覧ください。

 

タイトルとURLをコピーしました