海上保安庁は警備および救難機関。その役割と司法警察権とは?

語学堪能な保安官が指定される海上保安庁の国際捜査官とは

海上保安庁も、警察と同じくときに犯罪捜査を行うため、捜査のプロが必要。国際捜査官は現場の犯罪捜査を担当する職域であり、船長が兼務することもある。

海上保安官になるには?海保が独自に持つ教育機関「海上保安学校」へ入校せよ!

海上保安学校は海保の職員として採用された海上保安官の卵が入る学校です。ここで海上保安官に必要な基本的な知識やけん銃射撃などの実技を教育しています。

国家公務員として身分が保証され、学生には入校中、月額14万円程度の給料が出ます。

海上保安官になるには?

海上保安庁が執り行う海上保安大学校・海上保安学校学生採用試験を受験し、合格する必要があります。採用後は海上保安学校および海上保安大学校に入校し、海上保安官に必要な能力や教養を身に付けます。

海保は精神的にも肉体的にも過酷です

海上保安庁は「警察」と「消防防災機関」の役割を併せ持った警備救難機関組織で体育会系です。体育会系は完全なるオッス連呼の弱肉強食の世界ですので、頭が悪かったり、声が小さかったり、目が悪かったりなど、能力に劣る者は断然不利。また、先輩のさまざまな命令などに口答えをしたり、ボートで逃げたり反抗するようでは組織の指揮系統を維持できないのでやっていけませんから、体育会系の作法を中高生の早いうちから身に着けた特殊な協調性がある人材が求められています。

年齢や健康状態などの条件あり

海上保安庁の職員すなわち海上保安官になりたいならば、海上保安学校の採用試験に応募、合格する必要があります。つまり、海上保安官は学生としての採用です。幹部候補生の場合、国家公務員採用 I 種試験の区分のうち、「理工 I 」、「理工 II」、「理工III」、「理工 IV」、「農学 IV」の合格者を採用しています。

海技免状所有者を採用

海技免状などの有資格者は随時、採用試験を行い、海上保安学校門司分校で採用しています。

典拠元
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2010/html/shigoto/p109_02.html

海上保安大学校とは

海上保安大学校は海保の幹部職員としての教育を行います。教育期間は、本科4年、専攻科6ヶ月、研修科(国際業務課程)6ヶ月の合計5年です。

海上汚染防止のための複合基地……横浜海上防災基地とは

神奈川県にある海上保安庁横浜海上防災基地は、関東地区の大規模海上災害発生時における海上保安庁の防災拠点として機能するよう整備されたものです。想定される首都直下地震クラスにも耐え得るように耐震設計を基本として、岸壁・ヘリポート・訓練研修施設・指揮所機能を有する事務所棟が一体的に整備されています。

この基地には、横浜海上保安部および、横浜機動防除基地が入居しています。

典拠元 http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/yokohama/gyoumu/ans.htm

横浜機動防除基地と機動防除隊

横浜機動防除基地と機動防除隊は横浜海上防災基地内に設置、編制されており、事故などによってタンカーから海上に流出した重油、化学物質を除去する部隊。

管区の縄張りを超え、迅速に全国展開が可能です。化学物質の海上流通出事故では初動対応が拡散防止のかなめ。

なお実際の防除活動は、防除隊以外にも特警隊などの隊員が行うことも。

海難に対して365日24時間いつでも緊急出動可能!海保のレスキュー部隊!空からヘリで駆けつける機動救難士とは?

機動救難士は海上保安庁のそれぞれの管区の各航空基地に配されている救助隊員。

同種の活動を行う隊員としては東京の羽田空港を根城とする特殊救難隊の隊員がいますが、トッキュー隊が管区を超えて全国規模で出動できるのに対し、機動救難士はそれぞれの管区内の活動に限定されます。

特殊救難隊との違いは機動救難士は小規模なチーム編成であり部隊としての編制ではないことが大きな違い。

特殊救難隊

特殊救難隊は、1974(昭和49)年11月、東京湾で起きたタンカーと貨物船の衝突による火災海難がきっかけとなり、翌年1975(昭和50)年に海上保安庁に発足した部隊です。

危険物積載船の火災消火、転覆船や沈没船内からの乗組員救出、ヘリコプターからの降下による吊り上げ救助など、海保の中でも高度で専門的な知識技能を必要とする「特殊海難」に対応することを任務としており、羽田特殊救難基地で1年365日24時間出動できる体制をとっています。

「どんな状況でも諦めない」ことが隊員のプライドです。人員数は約40名とまさに少数精鋭です。 一部の好奇心旺盛な漫画家が漫画にしたことで有名になりましたが、特殊救難隊員たちはみんな身長180センチ以上の大男で頭も角刈りで雄臭く、特別な人生観を持ったマッコウクジラのように豪快な男たちです。

特殊救難隊は彼らだけが特別に着用を許可されたオレンジ色の救難活動服とベレー帽をかぶっています。荒海で体を冷やしてはいけませんから厚さ5ミリのウエットスーツを着用し、どんな海域でも対応するように配慮されています。

彼らは海難現場へ到着すると、ヘリコプターから5mの高さから直接海に飛び込みます。当然彼らの装備のほとんどは防水対応になってますから、無線機などもほぼ完全防水処理になっています。

羽田の特殊救難基地においては特殊救難隊用の車両として、トヨタのハイエース、三菱のトラックなどが配備されています。

部隊編制は?

現在、海上保安庁には約200人の潜水士がいます。この中から選ばれた36人の隊員で構成するのが最精鋭、「特殊救難隊」です。特殊救難隊は6名を1チームとしておりチームには救急救命士の資格を持つ保安官もいます。

参考サイト 海上保安庁公式サイト
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2010/html/shigoto/p104_01.html

第三管区海上保安本部羽田特殊救難基地とは?

海上保安庁の第三管区海上保安本部羽田特殊救難基地は羽田空港内に設けられており、もっぱら海上での事故におけるサーチ&レスキューを担っているセクションです。

隊員らは東京消防庁で訓練を受けており、ひとたび要請があらば第三管区内に限らず、日本全国どこの海域でも出動します。

海上保安庁の料理人!

荒れる海では調理を一層難しくさせる。マッコウクジラ跳ねる荒海をゆく巡視船の乗組員は船上での食事も自ら炊事しなければならない。

船艇内で調理を担当しているのは各巡視船の主計科員の海上保安官。主計科は主に庶務や物品管理、調理などを担当するが、その海の調理人たるや、民間のシェフ顔負けの腕を持つ者も多い。

なにしろ時化で巡視船が大きく揺れても全乗組員の胃袋を満たすため、炊事をやめるわけにはいかない。

大海原に浮かぶ巡視船の調理室。70名程度の乗組員の巡視船では約4名の調理担当員がメシを作る。今でこそ、電気による調理が行なわれるが、昔はガス調理だった。食堂については会議室と一部兼用となっている。

食事は健康の源でもあり、乗組員の体調維持のため、料理のレパートリーを増やすことも欠かせない。やはり、食べる側の乗組員にとっても、料理の味は船によって差が出るという。全国どの管区にも有名な主任主計士(料理長に相当)がいる。同じく、船の上のシェフがいる海上自衛隊でも事情は同じで、ある護衛艦の艦長が腕のいい隊員を自分の船の給養員としてスカウトすることもあるという。

今は一隻を残し、すべての巡視船の調理室では電気調理器具が標準化されている。なお海上自衛隊の潜水艦も、昔から電気での調理を行っているが、こちらは艦内の酸素を節約するための措置だ。

各地の海上保安本部では、主計科職員の調理技術向上のためにメシを作る腕を競う職員の料理コンテスト「巡視船調理競技会」を開催している。盛り付けや衛生面も採点対象になり、一切手が抜けない。このようにして海保の料理人たちは日々技術の向上に努めているのだ。

次のページでは海上保安庁が登場した昭和のアニメをご紹介する。

海上保安庁の登場したアニメ作品があるって本当?

昨今では自衛隊が大人気で、自衛隊が主題となるアニメは多くなり、航空自衛隊の航空救難団が主役の作品や、戦国自衛隊の海自版のような二番煎じのアニメ作品も一部で見られるようになった。タブーは破られたのだ。

では、もう一方の海の護りたる海上保安庁はどうか。

実は1984年という比較的早い時期に海上保安庁の巡視船「宗谷」の一生を描いたテレビアニメ作品「宗谷物語」がテレビ東京系列で放映されている。

80年代の海上保安庁は今よりもっとマイナーな組織であり、テレビアニメへの登場は極めて異例だったと言えそうだ。

ただし「宗谷物語」は海上保安庁を描いたというより、「宗谷」という一隻の船の一生を史実に基づいて描いた作品となっている。

もともと、宗谷は戦時中にロシアの発注により作られた大型船で、完成間際に開戦となり、ロシアに引き渡されず、一度は商船となったのち、日本政府に徴用され太平洋戦争を生き抜く運命となる。

戦後は樺太引上げ船として活躍後、海上保安庁に水路測量船として採用され、さらには船体改修を受け、巡視船(PL107)へ船種変更したのち、1956年から1962年まで南極観測船として日本の南極観測任務に従事。観測業務終了後、宗谷は北海道の第一管区海上保安本部に配備された。

1963年に択捉島のヒトカップ湾で起きた流氷による大規模な海難事故では函館から宗谷が出動し、海難現場の流氷を破氷しながら、閉じ込められた漁船群の乗組員らを救出する活躍を見せた。その後も宗谷は北の海の守り神と呼ばれ、実に1000人以上の人々の命を救うなど、活躍したのであった。

アニメではこれらの史実を描く一方、人間ドラマも描かれた。激しい任務によって船体の寿命が近づいてきた宗谷には廃船の危機が迫りつつあった。しかし、その船体の保存を望む声は全国の人々から相次いだ。宗谷は解体も保存も運命が決まらぬまま、日本一周という最後の旅に出発し、人々と別れの挨拶を交わしてゆく。

宗谷の最後の姿を子供たちに見せようと、岬にはある小学校の分校の校長と児童らが急いでいた。しかし、突然の落石によりバスが通れず、徒歩で岬へと向かう。岬に停泊し、校長と子供らを待つ宗谷と乗組員ら。そのさなか、東京の海上保安庁本省から無線で、宗谷の永久保存が決まったという吉報が舞い込んだ。

岬へ着いた校長と児童らに宗谷の乗組員が手旗信号でその喜ばしい決定を伝えると、校長も喜び、徒手による手旗信号で『おめでとう』と返す。子供らと宗谷の船長らは互いに手を振り、宗谷の明日を祝った。

しかし、船員になりたいという若者があるエピソードに登場し、海上保安庁の職員もそれに声援を送るのだが、海上保安庁が就職先として選ばれないというのが、なんとも苦笑する。

本作品では宗谷が活躍した各時代ごとに、その史実に基づくエピソードが21話にわたって詳しく描かれており、宗谷という一隻の船の生涯を描いた作品となっている。

2020年時点で、Amazonで視聴が可能だ。

灯台の管理も海保の仕事

灯台は航路標識と呼ばれる大変重要な施設

実は一部を除いて日本にある灯台のほとんどは海上保安庁の交通部(旧・灯台部)という部門が保守管理する。

単に管理と言っても灯台は船の安全運航を左右する大切な航路標識。徹底された保守管理が行われるのだ。灯台は防波堤付近だけでなく、島などにも設置されており、そのような場所へ保安官が行くためには航路標識業務用船や灯台見回り船を使用する。

かつての「灯台守」有人灯台は2006年を最後に消滅

戦前から戦後にかけて、灯台は灯台守と呼ばれる公務員が居住することで保守管理を担っていた。戦後は灯台の管理を海上保安庁が担い、海上保安官が灯台に滞在することで業務を行ってきた。このような灯台を有人灯台と呼ぶが、時代が進み遠隔制御の自動化が当たり前のようになると、ついに2006年、長崎県の女島灯台の自動化完了を最後に日本から有人灯台は姿を消した。

海保のキャラクター

今はやりのカワイイキャラはいるの?

昨今の官公庁ではマスコットキャラクターが多い。例えば、自衛隊にはピクルス王子とパセリちゃん。総務省総合通信局の電波りようこちゃん。警視庁には古くからピーポくんがいる。そのどれもが漫画やアニメ調のキャラクターだ。

では、海上保安庁にもカワイイ公式キャラがいるのだろうか。実はいる。思わずおっさんがギュッと抱きしめたくなるような、かわいらしいタテゴトアザラシをモチーフにした「うみまる」くんと「うーみん」ちゃんの二人だ。

自衛隊では駐屯地や部隊、地方協力本部ごとに全く異なるオリジナルのキャラクターが各種いるが、海上保安庁では、どうやら「うみまるくん」をベースに各管区ごとにそれぞれの地方の文化や偉人などとコラボさせてご当地キャラ化しているようだ。

例えば北海道の第一管区なら、札幌農学校の教授であったクラーク博士。秋田や青森などを管轄する第2管区海上保安本部では、なまはげやねぶた祭りなどをモチーフにしたうみまるくんがいる。その数は現在50種類以上。

このように、各地に合わせて一人で50種類ものコスプレをする海保のうみまるくんは、自衛隊や警察のキャラクターに比べると忙しいのかもしれない。うーみんちゃんもだぞ。

http://www.kaiho.mlit.go.jp/07kanku/kids/plofile.html

現在、海上保安庁では女性保安官の人員数が年々増加傾向

地上勤務の場合は事務的な仕事をはじめとして航空機の整備士も活躍。また、男性保安官同様に巡視舟艇に搭乗する乗組員のほか、特別警備隊にも女性海上保安官が海の上で活躍している。

ただし、特殊部隊であるSSTに女性保安官はいない。

女性機動救難士も活躍中!

北海道の第一管区海上保安本部では巡視船「そうや」主計士補の清水希枝さんが女性機動救難士として活躍している。

典拠元
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2010/html/shigoto/p108_01_c11.html

女性保安官が主題の作品

女性海上保安官が主人公の小説が、現在の公ギャルの萌え萌えブーム以前の80年代末に出版されている。それが故・胡桃沢耕史氏の作品『輝け女艇長(キャプテン)』。

日本初、海上保安庁の女艇長-二等海上保安正に任命された、こんがり美人の沖田澪子(26)。海を愛する横浜ッ娘が、海の猛者9人を従えて、横須賀海上保安部の巡視艇「しほかぜ」の舵を取る。

80年代末と言えば、バブルの真っ只中。そんな時代に公務員になる人間はよっぽどの……と言われていたが、そんな時代に女性公務員、それも制服系の公ギャルが主役を張っていたこの作品。現代のラノベ作家は読め読め読めっ(残響音)。なお、筆者は読んだことがない。