警ら用パトカーには法執行のために多様なツールやデバイスが搭載。その中身は。
赤色灯&昇降装置 現在主流のライトの名称はパトライト社の「エアロブーメラン」
現在、各警察本部でポピュラーなクラウン200系/210系、レガシィ、神奈川県警のみ採用のキザシなど、警らパトカーの多くは赤色警光灯および、警光灯の視認性を高めるための昇降装置が備わっている。
ルーフを一段高くした赤色警光灯のこの架装自体は、すでに80年代から道路公団のパトカーなどで採用されており、とくに目新しいスタイルではないが、ルーフが高くなり、通常の状態でも警光灯の視認性が良い。この昇降装置は電動とガス圧で作動し、サイドブレーキをかけた状態でトランクを開けると自動でせり上がるという優れもの。

警ら仕様PCのルーフに設置された赤色灯&昇降装置
さらに、停車中に上昇させることで、周囲の一般車両にパトカーの存在、事件事故現場で警察官が活動中であることを知らせやすい。この装置が導入されるに至ったきっかけは、現場の本線上にパトカーを停めて作業中の警察官が、一般車両に轢かれ殉職した事案。

昇降装置のない高速隊のPC
昇降装置を架装しているのは所轄署や本部自動車警ら隊の警ら用PCのみで、交通機動隊や高速隊の交通取締り用PCでは備わっていない。
赤色警光灯のメーカーは複数あり、警察では主にパトライト社の赤色警光灯「エアロブーメラン」を採用しているが、少数では小糸製作所の製品も採用している。
近年では赤色灯の上部に360度カメラを搭載した例も。
ちなみに過去、日本のパトカーで円柱形警光灯が主流であった当時、散光式警光灯(バーライト)を採用するよう提案したのは映画評論家でアメリカの警察に詳しい故・水野晴郎氏であったという。
また、車両の前面には前面赤色警光灯が装備されている。最近配備されたレガシィで装備しはじめ、210系クラウンではもはやLED式が標準。

集光式前面赤色警光灯。
LEDタイプは一基の赤色灯に6個のバルブがついており、消費電力が少なく、明るく視認性が良い。なお小型のミニパトは前面赤色警光灯を装備していない。
街頭犯罪対策としてパトカーの赤色灯上部に360度記録撮影できる『全方位カメラ』が搭載開始
近年、街頭犯罪対策として、パトカーの赤色灯上部に360度を記録撮影できるカメラの搭載が進んでいる。
この全方位カメラは300万画素のカラーCMOSセンサーを搭載し、GPS情報とともに映像が記録される特別なカメラ・システムだ。
警察本部通信指令センターからの遠隔操作により、レンズの向きを自在に操作できるほか、中継も可能。
警察以外でも、消防車、市町村のパトロールカー、警備会社の現金輸送車両でも普及が進み、ドライブレコーダーよりも一歩進んだシステムと言えそうだ。
従来のドライブレコーダーでは撮影できる画角が前方のみで、遠隔操作や即時配信もできなかったが、新たに配備された全方位カメラではカメラを通して撮影されたひったくり犯の顔貌データなどを即座に通信指令本部へ送信できるのが特徴だ。
この特別仕様カメラ・デバイスは治安維持活動を担うパトカーにとっては画期的な次世代装備と言えそうだ。
サイレンアンプ&スピーカー
サイレンはセンターコンソールにあるスイッチのほか、助手席フロアに設けられた足踏み式のペダルでも作動できるのが特徴。
現在の緊急車両のサイレン音はアンプで作られる電子サイレン。現在はパトライト社が優勢で、ほとんどのパトカーは同社製品を搭載してるが、過去にはパナソニックやクラリオンなども製造、納入しており、メーカーによって音色の違いがあった。
サイレン音を聞きわけ、メーカーを当てるのが、まさにマニアの真骨頂で高貴な遊びだったのだ。彼らは遠くから聞こえてくるサイレン音の曇り具合でそれがルーフにスピーカーを積んだ白黒パトカーのサイレンか、グリルや車体下部に隠されて取り付けられた覆面パトカーのスピーカーから発するサイレン音なのかも聞き分けることができる耳を持つという。
サイレンの音色はかつて、全国で警視庁のみが独特の「ファンファン音」だったが、現在は全国の警察本部でサイレン音は「ウ~」に統一されている。
サイレンの外部スピーカーは通常、パトライトの中央部分に併設され、北海道警察などの場合、雪対策のためオプションのカバーをつける。
もちろんサイレンのほかに拡声器の機能も備えている。車載通信系用無線機のマイクと拡声器のマイクは別々で、細長いマイクのほうが拡声器用。
2017年には高知県警では交差点通過時に高音域に切りかえる新型サイレンも登場している。