グロックとフィクション作品――ハリウッド映画から日本の児童アニメにまで登場する“神格化けん銃”の構図

グロックは「金属主体だった拳銃の常識を打ち破ったポリマー素材の先駆け」であり、「ポリマー・オートマチックの代名詞」とも言える存在だ。その意味でも称号は「オート・ザ・ポリマー」がふさわしいと言える。

1990年代初頭、グロックはアメリカ本国において、その革新的なポリマーフレーム構造と高い信頼性により、急速に市場を拡大し、各地の法執行機関で採用されるようになった。

「オート・ザ・ポリマー」その苦難の歴史

金属の冷たい輝きと、滑らかに動くスライドの音。それがセミオート・ピストルの美学だった時代に、一つの異物が銃の本場に入り込んだ。中部ヨーロッパ諸国の一国、オーストリア発のグロック――それは単なる異国の銃ではなかった。グロックとは、「ポリマーでオートを作る」という発想の具現だった。そして、その革新性こそ、「オート・ザ・ポリマー」という表現で象徴されるにふさわしい。

1980年代初頭、グロック17が登場したとき、米国の保守的な銃器界は困惑した。ポリマーだと?プラスチックのガン?使い捨てなのか?それにしては高価じゃないか。こんなもので命を託せるのか?だが、シューターたちの答えは明快だった。軽く、錆びず、操作が明快。そしてなにより、撃ちやすい。道具としての本質が、旧来の様式美を一気に押し流してしまった

それまでのセミオート・ピストルは、スチールのスライドとフレーム、グリップパネルはウッドかフェノール樹脂(ベークライト)で構成されることが前提だった。ポリマーは補助的な材料、せいぜいグリップパネルの素材にすぎなかった。それをフレームそのものに用いるという発想は、まさに異端だった。しかしその異端がやがて主流となり、今日ではポリマーフレームのオートが世界標準となっている。

グロックは一切の無駄を省いた構造を持つ。ハンマーではなくストライカーを内蔵する。マニュアルセイフティはない代わりに、トリガーセイフティを持つ。引けば撃てる。その単純さが、整備性と訓練効率を飛躍的に高め、軍・警察・民間を問わず支持を集めた。

アメリカ警察特集コラム第3回『米国警察における拳銃装備の実情──なぜグロックが圧倒的支持を受けているのか』

保守本流の象徴ともいえるSmith & Wessonが大顰蹙を買った訴訟事案

グロックの成功を前にして、米国最大手のガンメーカーが選んだ手段――それは、露骨な模倣だった。

銃器の世界は本来、保守的である。素材の変更、構造の革新、操作思想の転換――いずれも受け入れられるには時間がかかる。だがグロックは、本場アメリカの最大手ガンメーカーですら動かさざるを得ないほどの影響力を持っていた。その実例が94年に起きたある出来事である。

アメリカのS&Wが94年に製造販売したポリマーフレームオート「SIGMA」は、見た目から内部構造に至るまで、あまりに露骨なグロックの模倣でった。

当然のようにグロック社(GLOCK Ges.m.b.H)から販売差し止めの訴訟を起こされた。この一件は、S&Wにとっての黒歴史として語られ、業界の失笑と批判を浴びることとなる。ただ、この失敗はM&Pで巻き返している。

しかしそれは裏を返せば、94年当時で、もはやポリマーオートの潮流は無視できない規模にまで成長していたことを意味していた。しかも、グロックという「異端」を通さずには到達できない領域がそこにあったのだ。

メディアにグロックはどう登場したか

だがその一方で、まるでおもちゃのような外見とポリマー製であるという特異性から「色物」扱いされることも少なくなく、とりわけフィクション作品の中では、そのイメージがしばしば強調・誇張されて描かれてきた経緯がある。

一方では、X線に写らない素材ゆえに「社会不安を引き起こすテロリストの銃」として強調され、一方では無機質でスパルタンなシルエットから「未来の警察の銃」として描かれることもあった。実用の世界では賞賛された機能美も、虚構の世界では冷笑の対象となったのである。

逆に「グロック社が金を払ってるんちゃうんか?」とさえ思えるほど、明らかに不自然にグロックを賛美する作品もある。

今回はそれらフィクション作品で描かれたグロックについてのコラムである。

『ダイ・ハード2』

「金属探知機に映らない銃」という演出は結果として大衆に誤解を与えた

1990年に公開された映画『ダイ・ハード2』の一幕は、フィクション作品におけるグロックにまつわる誤解の象徴といえる。劇中、主人公のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、空港警察のロレンゾ署長に対して「こいつは空港の金属探知機で発見できない“ドイツ製”の磁器製銃『グロック・セブン』だ!あんたの1ヶ月分の給料より高い!」と声を荒らげる。

この台詞は公開当時のアメリカ国内でも大きな波紋を呼んだ。登場するグロック17は、当時としては比較的初期の段階でハリウッド映画に登場した実銃であり、米陸軍特殊部隊出身の敵役スチュアート大佐やその傭兵たちがサイドアームとして携行している。

しかしながら、この「グロック=探知できない銃」という描写は、事実ではない。まず、劇中で言及された「グロック・セブン」なるモデルは存在しないのはともかく、グロック社が製造する拳銃の約83.7%(重量比)は通常の軍用鋼で構成されており、残りの樹脂部品も「ポリマー2」と呼ばれる高密度ナイロン系ポリマー製で、放射線不透過性のため、X線検査装置によって検出が可能だ。

加えて、フレームなどに使われる樹脂部品の多くには鋼が埋め込まれており、それはX線検知対策ではなく、あくまでも機能性と精度の向上を目的とした設計である。実際、グロック社を含む世界の主要銃器メーカーはいずれも、金属探知機やX線装置をすり抜けるような「セラミック製」「磁器製」「プラスチック製」の拳銃を製造した実績は一切ない。仮にそのような構造であっても、弾薬そのものが金属素材である限り、セキュリティ装置での検出は不可避である。

この誤解は、グロックがアメリカ市場に登場した当初、非金属部品を多用した軽量設計が注目されたことで、「探知機に映らないのではないか」との懸念が広がり、それがそのまま本作『ダイ・ハード2』にてフィクションとして映像化されたと考えられている。

本作に登場する銃器を供給したシネマ・ウェポンリー社の銃器専門家マイク・パパック氏は以下に述べている。

「金属探知機に引っかからない銃など存在しないし、あってはならない。私は撮影スタッフにその旨を伝えたが、脚本通りに撮ると決まっていた。それで話は終わった」

シネマ・ウェポンリー社の銃器専門家マイク・パパック

このように、『ダイ・ハード2』における描写はあくまでも演出上のフィクションであり、現実のグロック・ピストルとは大きく乖離している。現在においても、この誤解が根強く残っていることからも、映画の影響力の大きさと、正確な銃器知識の重要性が浮き彫りになっている。

参照 https://www.imfdb.org/wiki/Die_Hard_2#Glock_17

実際には、グロックのフレームやマガジンはポリマー製であるものの、スライド部分は金属で構成されており、当然ながら通常の金属探知機に反応する、というわけだ。

しかし、実際の技術的事実と異なる部分を含むものの、当時の一般的な認識、すなわち「グロック=ミステリアスで最先端、犯罪者も選ぶほどの一級品」といったイメージを反映しているとも言える。「アンタの給料じゃ買えない銃だ」と続けるマクレーン。その台詞は、“高性能ゆえの特別性”を強調する典型的なハリウッド的演出であった。

かつては「低価格・高性能」の象徴とされてきたグロック拳銃だが、近年では競合製品の台頭により、その立ち位置に変化が見られる。特にポリマーフレーム・ストライカー式オートにおいては、H&K社のSFP9、ベレッタ社のAPXなどが、より割安な価格で供給されており、グロックとの価格差が顕在化しつつある。

実際、自衛隊が次期拳銃として採用を検討した三機種――GLOCK 17、SFP9、ベレッタAPX――のトライアルにおいて、価格面ではSFP9が最も安価であったとされる。ただし、価格のみをもって総合評価を語ることはできず、各国の運用ニーズや整備体系、既存装備との互換性などが大きく影響を及ぼすのも事実である。

そして、グロックは、その登場以降、アメリカでは実銃として、そして日本ではトイガンとして、まさに一大ブームを巻き起こした。「グロック旋風」は、フィクションの中で生まれた神話性と、現実の運用実績とが交錯した、稀有な例といえるだろう。

そうでもなきゃMGCがあんなバリエーションごっそりだしたりせんわい(笑)

『ロボコップ3』

筆者にとって、ダイ・ハード2よりも、ある意味で印象深く心に残るワンシーンを描いた映画がある。1993年公開の『ロボコップ3』である。警官たちに日常的に無料でコーヒーやドーナツなどを提供し、自然と「彼らの溜まり場」になっているダイナー(深夜も営業する小規模で安価なレストラン)へ、その米国警察の伝統を知らぬ間抜けな強盗が入る。

アメリカ警察特集コラム第9回 『警官へのドーナツの無料提供は本当の話』

強盗が「エビバデ、金出せ〜!!」と銃を構えて叫んだ次の瞬間、店内に居合わせた複数の警官が一斉に腰のグロックを抜き、犯人の顔にレーザーサイトの照準を合わせ、銃口を向ける。ただ一人、店内奥の席でテーブルの上にグロックを無造作に置き、新聞を読んでいる女性警官アン・ルイスを除いて――。

『Robocop 3』©Orion Pictures

その直後、無線で応援要請が飛ぶ。「おい、俺この前行ったぞ!次は誰か行けよ!」誰が行くかで沈黙が続いた末に、誰かが始めた“ルイスコール”が次第に全員の声で大きくなる。ルイスが無言で新聞を下ろすと、口元の風船ガムが「パチン」と小さく弾け、場面は銃撃戦で追い詰められた別の警官たちへと切り替わる。このさりげない緊張の演出と、風船ガムの割れる音による場面転換が、極めて効果的なのだ。

というか、サンドイッチ類が美味そうなんだよ(笑)みんなも自宅でサンドイッチやミスタードーナツ食べる時はテーブルにグロックを置いてくれ(笑)

なお、日本においても2021年、2025年と、ついにグロック45が一部の警察で地域警察官に配備され始めた。また、制服での飲食店の立ち寄りと購入も全国的に緩和されている。今後は、ミスタードーナツのレジに並ぶ警察官の腰に、本物のグロックが装着されている光景を目にする機会が増えるだろう。ドーナツとグロック――アメリカ文化を象徴するこの組み合わせだが、日本ではさしずめ「うどんとグロック」のほうがしっくりくるかもしれない。食と銃――本来交わるはずのない対象を日常の中に組み込んでいく様は、時代の移り変わりを如実に物語っていると言える。何を言ってるんだお前は(笑)

『追跡者(原題:U.S. Marshals)』

一方、映画『逃亡者』のスピンオフ作品『追跡者(原題:U.S. Marshals)』では、主演のトミー・リー・ジョーンズ演じる連邦保安官サミュエル・ジェラードが、前述の「ダイ・ハード2」とは対称的に異常とも言えるほどグロックを絶賛する場面が存在する。

劇中、ジェラードは米国外交保安局の特別捜査官ジョン・ロイスと「銃は持ってるか?」「ええ。でかいのを」「見せてみろ」と問答。ロイスが提示したのはステンレススライドのタウラス PT945であったが、これをいかにも汚らしそうに掴む感じで受け取ったジェラードは失笑。「グロックを買って、ニッケルメッキのこの弱虫ピストルは捨てろ」と罵倒。

『U.S. Marshals』©Warner Bros. Entertainment

グロック22に絶大な信頼を寄せ、足首の予備のサブコンパクト・グロックと共に常時携行するジェラードは「グロック以外はけん銃にあらず」とまで言い切る。その熱狂的なまでのグロック推しには、「これは露骨なステルスマーケティングではないか」という意見もある。確かに強烈なプロモーションのように見える。

なお、このタウルスとロイスさんはのちの伏線であるから、ここでは詳細を伏せておく。

グロックのグリップアングルについて

グロックのグリップアングルは他の一般的なけん銃と比べ、独特である。Glockが設計したグリップアングルによる自然なポイントとバランスこそが、けん銃として成功している大きな理由の一つとする指摘もある。

[ BATON airsoft ]GLOCK G19 Gen5 MOS CO2GBB 【JASG認定】

モデルガンメーカー出身のイラストレーターであり、著書『コンバット・バイブル―アメリカ陸軍教本完全図解マニュアル』などで知られる上田信氏が過去に発表した漫画(日本のオタク青年の主人公が米諜報機関(CIA?)のサイト「ミリタリークイズ・全問とっけるかな♪」に全問解答してエージェントとしてスカウトされる内容)において、グロックの照準線に関する説明が登場する(なお、90年代、上田信氏の『コンバット・バイブル―アメリカ陸軍教本完全図解マニュアル』はアメリカ本国で兵士が実際に教材として使っていたという逸話がある)。

作中、教官が主人公に対して「握ってみろ」と促し、グロックを手に取らせる場面が描かれている。主人公はその瞬間、「あれ?なんか勝手に銃口が上を向きますね」と口にする。この描写は「ダイ・ハード2」のような、いきすぎた演出ではなく、実銃グロックの設計思想そのものを反映させた場面である。

グロック社によれば、これはポイントシューティング、すなわち直感的な照準行動をより自然に行えるよう、グリップと銃身の角度を調整した設計によるものである。こうした意図は、従来の拳銃に慣れた使用者には違和感を与えることもあるが、訓練を経た後の精度や迅速な射撃姿勢の獲得に寄与する設計上の特徴とされている。

ちなみに、以下の彼らは二人ともジェラードの部下だが、「IMFDB」ではグロックの握り方が酷いとして注釈がついている。

『U.S. Marshals』©Warner Bros. Entertainment

同サイトでは「カップとソーサーのようなひどい握り方と、利き手の低い位置での握り方に注目してほしい。1990年代の法執行機関では、まだ標準化された訓練が全ての部署で導入されていなかったため、このような不適切な拳銃の握り方がまだ一般的だった」としている。

『U.S. Marshals』©Warner Bros. Entertainment

これも間違った構え方だそうです。

『U.S. Marshals』©Warner Bros. Entertainment

なお、ジェラード本人もひどいとのこと(笑)スライドが後退したら親指が抉れるでしょうな。

これが正しいフォームらしい!?

このように、フィクション作品における描写の中にも、実銃に基づいた現実的な考察が盛り込まれている事例は少なくない。グロックの設計哲学は、現実と創作の双方において、しばしば象徴的に描かれてきたと言えよう。

そしてこのような描写は、映画における製品登場(プロダクトプレースメント)のあり方や、特定ブランドの露出が作品全体の印象に与える影響を考える一例である。実際に、現実の法執行機関が使用する拳銃の選定には、性能や価格、安全性など複数の要素が絡んでおり、映画のような単純な優劣の話では済まされないのが現実である。

『地雷震』

また、「グロックと日本の警察」をテーマとする際に忘れてはならない作品が、漫画『地雷震』である。1989年に読み切りとして発表され、1992年から連載された本作では、新宿署の飯田響也刑事がグロック19を携行している。

日本の警察官がグロックを使用するという設定は、当時の日本の法執行実態を考慮すれば極めて先進的なものであった。なお、この設定には1990年公開の『ダイ・ハード2』におけるグロック登場の影響が色濃く反映されている可能性がある。

『新宿鮫』シリーズ

一方、大沢在昌氏の代表作『新宿鮫』シリーズでもグロックは登場する。鮫島警部が犯人の使用するグロックの装弾数に驚く場面があり、同シリーズにおけるリアリティ追求の一端を担っている。ただし、主人公・鮫島自身の携行銃はあくまで旧来の警察装備、ニューナンブM60である。

『シティーハンター グッド・バイ・マイ・スイート・ハート』

アニメ分野においてもグロックは存在感を放っている。新宿を舞台としたもう一つの作品『シティーハンター』だ。1997年に放送されたテレビスペシャル版『シティーハンター グッド・バイ・マイ・スイート・ハート』では、主人公・冴羽獠が敵の持つグロックを「褒める」描写、逆に相手が冴羽のコルト・パイソンを皮肉る描写があり、作品内での銃器を巡る駆け引きが印象的に描かれている。

『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』

同じ1997年公開の『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』でも、悪役「鬼熊」が携行する拳銃として、グロックが明確に描写されている。児童向けアニメである『ドラえもん』シリーズにおいて、銃器描写にリアリティを持たせるためにあえてグロックを登場させたという点は、銃器に詳しい視聴者やマニア層にとっても興味深い要素といえる。

劇中では、鬼熊がスライドを引いて初弾を薬室(チェンバー)に装填する、あるいはマガジンを中途で引き抜いて残弾数を確認する所作など、実銃操作を忠実に再現した動作が盛り込まれている。これらの描写は、本来子ども向けであるはずのアニメーションにおいては異例ともいえるリアリズムであり、演出意図の深さやスタッフの知識を感じさせるものだ。

さらに興味深いのは、原作漫画版での鬼熊は「SIG SAUER P228」を使用していた点である。この変更は、アニメ制作スタッフ側の判断によるものと見られ、やはりグロックが持つ「現代的で無機質な強者」のイメージが、映像作品としてのインパクトを高めるために選ばれたのではないかと推察される。

また、グロックではないが、同じく1997年公開の『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』でも、銃器描写のリアリティは際立っていた。千葉県警の女性刑事がM92FS(ベレッタ)を駆使し、アクションシーンを展開する姿は、児童向けアニメ(大人も対象としつつも)の枠を超えた迫力を持っていた。

これらの作品に共通するのは、銃器というモチーフが単なる「武器」としてだけでなく、キャラクターの個性や世界観の説得力を高める要素として機能しているという点である。

現在(2025年)から見れば、1997年の作品に登場したグロックとM92FSのどちらが「時代を超えて生き残ったか」という問いも興味深くはないだろうか。実際、日本の法執行機関では現在、グロック17やグロック19、さらに最新型であるグロック45などが制式採用されている。一方のM92FS(バーテック)も、警視庁や各警察本部のSITなどで使用が確認できるが、世界的に見れば主流の座は“オート・ザ・ポリマー”に譲った格好だ。

つまり、28年後の今も「現役」であり続けているのは、やはりグロックであった。そう考えると、1997年当時のアニメ作品においてグロックを選択した演出判断は、単なる偶然ではなく、ある種の時代感覚――そして未来への先見性――の表れだったのかもしれない。

藤子・F・不二雄作品に見る銃器描写の「異常なリアリティ」

余談だが、藤子・F・不二雄作品といえば、「子供向け」「教育的」といった印象が一般的だが、実際には銃器をめぐる描写に、時に驚くほどリアルで大胆な演出がなされていることはあまり知られていない。特に1987年(昭和62年)から放映されたアニメ版『エスパー魔美』では、ガスガン仕様のM16を小学生が魔美にフルオートで乱射するという場面が登場し、さらに違法ガンマニアの中学生までもが登場する。

これらの描写は、今の基準で見れば『ひぐらし』以前から刺激的であり、当時のアニメが持っていた自由さと、子どものリアリティを描くことに対する作り手の本気度を感じさせる。

筆者も、当時の子供時代、エアガンでよく撃ってはいけないものを撃ったものである。教頭のクレスタとかな。

加えて、2024年にNetflixで新作アニメ化された『T・Pぼん』では、主人公である平凡な中学生・ぼんが、旧日本軍の南部十四年式拳銃の操作にまったく違和感なく熟達している。リコイルスプリングの特徴やセーフティ機構、装填方法まで熟知しているような描写は、むしろ違和感を覚えるほどだ。

だが、これもまた藤子作品における「銃器=現実の入り口」という独特の演出のひとつとも解釈できる。

このような描写の背景には、藤子・F・不二雄という作家の世代的な文化が色濃く影を落としているのではないか。藤子氏の創作キャリアが始まった昭和30〜40年代、当時の中学生男子の間では、西部劇や戦争映画の影響でモデルガン趣味が広まりを見せていた。刑事ドラマよりもむしろ西部劇の影響が強かった時代であり、のび太が「射撃(とあやとり)の名人」という設定も、単なるギャグではなく当時の少年たちの夢や憧れを代弁するものであったと思える。

たとえば、『ドラえもん』では、総理大臣の警護にあたるSPがワルサーPPKを装備していたり、のび太が西部劇スタイルで自室で的撃ちをする際、玩具のピストルはコルト・シングルアクション・アーミー(通称ピーメ)であるなど、現実に即した銃器が意識的に選ばれているのだ。

藤子作品と銃器に関する包括的な考察は、今後も十分に研究・評論の対象となり得るだろう。

覆面パトカーの出る国内外のアニメを考察しよう!

また、近年の話題としては『サザエさん』においても、マスオさんがグロック風の水鉄砲ライターをカツオのいたずらで誤って持参し、会社で上司に向かって水を発射してしまうというエピソードが放送された。まさかの「サザエさん」ワールドでグロックのシルエットが描かれるとは、視聴者の間でも驚きをもって迎えられた。

グロック風ライターは実際に市販されており、マニア層からの人気も高いが、なぜこのアイテムが国民的アニメ『サザエさん』の劇中で採用されたのか、その理由は制作側の意図に関して明かされていない。

実際、そのグロックのライターにスポットを当てた(!?)こんな日本映画まである。

ピストルライターの撃ち方

まとめ

まぁそういうわけでグロックに関する少し偏った登場作品の紹介であったが、この記事書いたおっさんは萌えアニメ知らんのだな……ってのがよくわかる記事であった。

ともかく、過去の「色物」などという揶揄は過去のものとなり、グロックの存在そのものが規範となった2025年。萌えアニメどころか、ついに現実の日本のお巡りさんの腰にグロックが登場している。

今や、「オート・ザ・ポリマー」という言葉を使わずに、現代の拳銃を語ることはできない。

東京五輪警備で警視庁自動車警ら隊に配備された「GLOCK45」の一斉回収は『二つの不安要因が原因』との一部指摘あり