海上保安庁は警備および救難機関。その役割と司法警察権とは?

海保に緊急車両はないって本当?

海上保安庁には緊急車両が存在しないという事実もあります。海保は警察と消防の両方の任務を担う組織であり、必要に応じて陸上で拳銃を携行して警察活動を行うほか、特殊救難隊が資機材を積んだ車両で出動することもあります。

それでも、これらの車両には警察のパトカーのような赤色灯やサイレンは装備されておらず、緊急自動車としての指定も受けていません。なぜ海上保安庁の車両が緊急車両指定されないか海保はこれまでに2度、警察庁に対し自らの車両を緊急自動車として認定するよう申請しましたが、いずれも「必要性が薄い」という理由で却下されています。

そのため、緊急時には警察のパトカーに先導してもらうか、消防と協定を結んで消防車両で海保隊員を輸送する対応が取られています。検察や厚生労働省の麻薬取締官、入国管理局などにも緊急車両が配備されている中で、緊急通報機関であり、警察権を持ち、時には武器も携行する海上保安庁が緊急車両の認定を受けていないというのは、確かに不思議な現状と言えるかもしれません。

中国漁船団が超高級赤サンゴを密漁!サンゴ泥棒にMP5を突きつけた!

いま、日本の貴重な赤サンゴが、堂々と中国人によって不法に採掘されています。2014年10月ごろから、小笠原諸島の近海、日本の排他的経済水域に中国の漁船団が大量に現れ、海底に眠る赤サンゴを違法に掘りまくっているという事態が報じられるようになりました。

その数、およそ160隻以上。海上保安庁も指をくわえていたわけではなく、数隻を拿捕し、不法採取の容疑で中国人乗組員を逮捕しました。

が、それでもなお、実効性のある厳格な対応がなされない限り、今後もこうした不法密漁は続くと見られています。小笠原諸島の住民にとっては、自分たちの目の前で資源が根こそぎ奪われていく現実に、ただただ不安と怒りを募らせる日々が続いています。

一方、警視庁も手をこまねいているわけではなく、小笠原村には機動隊員約20名を派遣し、陸からの警備に当たっています。

そもそも密漁というのは、漁業で生計を立てている正規の漁師から“食い扶持”を盗むという、極めて卑劣な犯罪行為です。

かの名作アニメ『釣りキチ三平』でも、魚紳さんが弁護士資格を持っていながらも、怒りのあまり密漁者の若者を釣竿でフルスイングするという名シーンが描かれているほど、密漁は倫理的にも看過されるべきものではありません。もちろん、海上保安庁は警察と連携しながら密漁事件の摘発に取り組んでいます。

密漁者は、海産物を現行犯で押さえられそうになると、すぐさまウニやナマコを海に投げ捨てて証拠隠滅を図るため、接近にはタイミングと技術が必要です。理想は、密漁者が“盗ったブツ”を手に持っているその瞬間を狙って、強襲制圧。証拠ごと確保するという作戦になります。

実際、2014年には世間を騒がせた「ファミマ土下座事件」の主犯格らが、密漁にも関与していたことが後に明らかになっていますが、反社会的勢力による密漁が社会問題になています。

赤サンゴ、それは魔よけと5000万円の価値

ここ最近でも、中国の漁船が日本の領海内に入り込み、赤サンゴを密漁して海上保安庁に逮捕されるという事件が相次いでいます。

とくに狙われているのが、希少価値の高い「赤サンゴ」。これは中国国内で“魔よけ”として重宝されており、原木ともなれば日本円でなんと5000万円を超えることもあるという、超高級天然資源なのです。つまり、これはただの密漁というより、海の中の宝石を、堂々と盗みに来ているわけです。

しかも、泥棒しても日本の警察や海保(実質的に準軍隊)にあまり強く取り締まられない、捕まっても検察に謎の不起訴処分にされるとわかっているものですから、やりたい放題。

結果、日本の海は珊瑚も魚も資源ごとごっそり“浚渫”され、荒れ果てる一方です。

特殊部隊SSTが出動、包丁相手にMP5!

だが、海上保安庁もついに本気の制圧に乗り出しました。小笠原近海において、大阪特殊警備基地から特殊部隊SST(特別警備隊)がヘリで出動。海上で中国漁船に接近すると、上空からロープでラぺリング降下。

待ち構えていた中国人乗組員たちは、包丁やモリなどを振り回して大暴れ。しかし、SST隊員は一切ひるまず、MP5機関けん銃を構えて威嚇・制圧に入りました。

違法操業の現場での実力行使――もはやそれが必要とされるほどに、この「海の略奪」は深刻なのです。

記事全文は以下のリンク先にて:週刊文春記事

各国の「海上保安庁」を見てみよう

■ アメリカ合衆国沿岸警備隊(United States Coast Guard)

歴史あるこの部隊は、名実ともにアメリカ5軍のひとつ。軍隊にして、警察でもある――それが「コーストガード」です。現在は国土安全保障省(DHS)の管轄下にあり、平時には国内外の法執行権限を持ち、戦時には海軍の一部として作戦行動に従事するという、文字どおり“海の軍警ハイブリッド”。

特徴的なのは、正規の連邦職員(隊員)に加えて、7000人を超える民間スタッフも雇用しており、これは日本の海上保安庁とは大きく異なる点です。

■ 韓国海洋警察庁(Korea Coast Guard)

2014年、セウォル号沈没事故での対応失敗を契機に、一度は「解体」された悲運の組織です。事故後の世論の非難が集中し、政府は責任を取る形で「海洋警察庁」を廃止。その後、新設された「国民安全処」内に「海洋警備安全本部」として再編。ところが、2017年に文在寅政府が発足し、またしても“復活”。韓国らしいとも言える、組織改廃の早業を見せてくれました。

■ 中国の海上治安機関群(China Maritime Law Enforcement)

中国では話が違います。公安部、農業部、税関、海事局などがそれぞれ独自に“海の警察”を持っているという、典型的な縦割り官僚主義の産物。
これにより、どの機関がどこまで権限を持っているのかが極めて不明瞭で、実際の現場では命令の錯綜や行動の遅れがたびたび問題になっています。なお、2018年以降は「中国海警局」が軍と一体化され、事実上の“海軍の外郭団体”として活動するようになっており、民兵と軍が融合した不透明な存在です。

■ 海上保安庁(Japan Coast Guard)

日本の海上保安庁は警察とは異なる組織体系のもとにある独立した法執行機関です。いわゆる捜査機関でありますが、国の公式文書などでは「警備救難機関」という呼称が多いようです。防衛省ではなく、国土交通省の管轄に置かれ、「軍ではないが警察とも違う」という中立的立場で活動しています。

とはいえ、実際には領海侵犯や密漁、災害対応など、準軍事的な役割も担っているのが現実。

この“非軍事組織”でありながら実力行使も辞さないというスタンスは、曖昧な平和主義と現実主義のせめぎ合いの中で、器用にバランスを取ってきた日本らしい形といえるでしょう。

各国の“海の警察”は、その国の政治体制と軍事思想を反映しています。

国名 組織名 特徴
アメリカ United States Coast Guard 軍隊であり、警察でもある。国防と法執行を兼務
韓国 海洋警察庁 解体→再編→復活。政治の波に翻弄された海の機関
中国 海警局など複数 軍・公安・行政が混在。命令系統は不明瞭
日本 海上保安庁 軍でも警察でもない独立機関。柔らかい顔で硬い任務を遂行