日本警察仕様のP230……「日本警察の迷走」「採用は不適切」とまで評された1丁

──評価低迷のP230、その顛末

各種警察装備において、熱狂的なファンは少なくありません。

例えば警察車両。「覆面カムリが至高」「いや、やっぱり覆面キザシいいわあ」といった推し愛語りがSNSで繰り広げられるのは日常風景。

日本警察装備マニアにとって、推しはもはや“信仰”に近いもの。一部では信心が強すぎて合同結婚式みたいになることも。

無論、ドラマの主役でもある警察用けん銃でもマニアの推し愛は顕著。ニューナンブM60を支持する根強い声もあれば、最新のサクラ(S&W M360J改)を愛でる者も。

好みは千差万別で、そこに“絶対”はありませんし、たとえ銃器専門家からの評価が芳しくなくとも、特定のモデルを軽率に貶すことは決してできません。軽々しく貶せば、袋叩きが待っています。

日本警察が使用する小火器については、以下で詳しくまとめています。→ 警察の使う主なけん銃と配備状況

なお、筆者の推しは…一瞬で消えた『警視庁のグロック45』なんていいですねえ。嘘つくなよ(笑)

【悲報】2020東京オリンピックで警視庁自ら隊配備の「GLOCK45」即回収

 

そんな中でも、評価が分かれ続けているのが、配備が30年近い日本警察仕様SIG SAUER P230、通称“P230JP”です。

この中型オートは、かつて警察庁が「地域課(制服警察官)の全回転式けん銃を自動式に置き換える」ことを視野に導入を進めていたとも言われています。

当時、世界的には9mm口径自動拳銃への流れが加速しており、日本警察もまたその波に乗ろうとした形跡が見られました。

しかしながら、それは結果として実施されませんでした。理由は諸説ありますが、P230が採用された当初から「信頼性や威力において懸念や不満が出た」とも囁かれています。

その結果、「地域課(制服警察官)の全回転式けん銃を自動式に置き換える」計画は実現されませんでした。

ここで困ったのがSIG社側です。“日本仕様”P230は宙に浮いた状況に。最終的にSIG社は、この余剰在庫を米国民間市場に向けて放出

こうして、日本警察専用モデルだったはずのP230日本警察仕様が、アメリカで“Japan Police edition”のラベル付きで販売されるという、日本警察の装備品、それもけん銃では、ある意味で特異とも言える展開を迎えたのです。

なお、似た事例にはFBIとS&W社にもあります。→「「法執行機関の銃が変わった日 ~マイアミ銃撃戦とノースハリウッド事件~」二つの事件とは・・?

むしろ、このP230の一件こそが、警察装備の世界における“政治”や“現場の声”の複雑さ、そしてその背後にある警察×企業のリアル取引を象徴しているという点で異色の一丁とも言えます。

ともかく、装備の評価はあくまでも時代背景や現場の事情に左右されるものであり、単純な“良し悪し”では語れぬもの。

ましてや、扱ったことのない者が安易に星一つで否定できるものでもありません。

P230は私服警察官を中心に配備される.32ACP弾(32口径)の中型けん銃

製造元は「SIG Sauer(シグ・ザウアー)」。現在はSWISS ARMS Neuhausenとなっています。

本来、P230は、ドイツ警察向けに開発されたコンパクトオートで、日本では90年代(wikipediaによれば1995年、アームズマガジン誌によれば1997年としています)から全国の警察本部において地域、刑事/生活安全、警備(SP/機動隊)での配備、さらに皇宮警察にて皇宮護衛官にも配備されています。

とはいえ、その貸与者の半数以上は私服警察官と見られ、機動捜査隊員やSPへの配備が多く見られました。

P230 日本警察仕様 ― 主な仕様

KSC P230JP ブラックHW ガスブローバック
項目 内容
名称 SIG SAUER P230 日本警察仕様(通称“P230JP”…ただしSIG社の正式名称にあらず)
口径 .32ACP(7.65mm ブローニング)
全長 169mm
重量 約500g(空マガジン時)
装弾数 8発(+1)
作動方式 シングル/ダブルアクション
フレーム材質 ステンレス鋼
追加機能 日本警察の求めに応じたランヤードリング/手動式安全装置(マニュアル・セーフティ)
配備部署 都道府県警察(刑事・生活安全部/警備・公安部/地域部他)、皇宮警察
運用上の課題 配備が主流の.38口径回転式拳銃より威力が不足
備考 警備部(機動隊/SP)等においては.9mm口径の別モデルに更新が進む。SIG社が余剰品を米国市場へ放出

.32ACP弾の開発経緯──冷戦下、テロ対策から始まった欧州警察拳銃の進化と武装強化で生まれた

日本警察の採用モデルはマガジン8発、チェンバー1発の合計9発を装填できる口径.32ACP弾仕様モデル

P230は90年代から2000年代初頭にかけ、機動隊など第一線部隊への配備が行われていますが、地域警察官への貸与でポピュラーな38口径のニューナンブやサクラに比べて低威力です。

この比較的低威力な小口径弾の.32ACP(7.65mm)の開発背景にあるものとは。

1960年代の末まで、西ヨーロッパ諸国の警察が使用していた拳銃の主流弾薬であった、.32ACP(7.65mm)。

7.65mm口径の拳銃は、携帯性や操作性を優先させ、これは東側諸国でもほぼ同様で、警察用拳銃はあくまで「警察官自身の安全を守るため」の装備とされていました。

ところが、1970年代に入ると状況は一変。西ドイツでは「ドイツ赤軍(RAF)」が活動を活発化させ、イタリアでは「赤い旅団」が国家を標的とした武装闘争を展開。さらに、パレスチナ系過激派「黒い九月」による欧州域内でのテロも相次ぎました。

こうした治安情勢の変化を受け、ヨーロッパ各国の警察では本格的な武装強化が進められることになります。

テロリストと正面から交戦せざるを得ない状況で.32ACP弾はあまりにも頼りない

とりわけ、拳銃の更新は重要な課題とされました。テロリストと正面から交戦せざるを得ない状況が現実となる中、既存の7.65mm口径の拳銃では対応が難しいと判断されたのです。

その結果、警察の標準拳銃として9×19mmパラベラム弾を導入。

もともと軍用として開発された9mm弾は、高い威力と貫通力を備えており、近接戦闘における信頼性も高く評価されています。

現在では、7.65mm口径のけん銃は世界的にもマイナー化。軍や警察の主力装備としては見られません。

しかし、民間市場においては、護身用としての需要や、法執行官のバックアップ用のサブコンパクト拳銃では依然として使用されており、信頼性と携帯性を求める特に米国を中心に小口径弾を使用する銃は高い人気を維持しています。

P230の評価

では日本警察独自の仕様に改修された上で導入されたP230の評価とは?

P230は一般的ではない安全装置の後付けや、.38口径に比べて威力の劣る.32口径であることなどから、筆者の大好きなアームズマガジンさんでは『日本警察独自仕様のP230採用は不適切!厚生労働省のM85Fのほうがずっといい!』とまで評されています。

KSC P230JP ABS 18歳以上ガスブローバック

ちなみにマトリのM85は当サイトでも解説中です。→ 「麻薬取締官が『警察官には認められない連射が可能なオートマチック』を使う理由とは?

麻薬取締官が『警察官には認められない連射が可能なオートマチック』を使う理由とは?

ともかく、日本警察独自仕様のP230の評価は良くないようです。

それでも一時は、警察の地域課において回転式けん銃をP230に一斉に切り替える計画があったとも言われています。

ところが――その構想は立ち消えとなり、日本警察は突如として“梯子を外す”かたちに。

結果として、SIG社は余剰となった日本警察仕様のP230を米国市場に放出するという、まさに“苦い結末”を迎えることになります。

P230は1996年に生産が終了。その後は調整可能なリアサイト、フレーム、スライド、バレルのわずかな変更、そして.32 ACP弾の再導入した『P232』に置き換えられました。

日本の対テロ政策とP230…議論と批判

テロと対峙するために進化した警察の装備。その一つひとつに、冷戦という時代の緊張と、対処する現場警察官の要求が色濃く反映されたわけです。

とはいえ、日本では22口径と.38口径の中間に位置する.32口径と法執行については、軍事・治安系マニアの間で「低威力の7.65mm口径のけん銃は適切か?」と議論も。

当然、威力のある銃、そうでない銃を状況によって使い分けることを当局側も想定の範囲と思われますが、原発の常駐警備など、小銃を所持した武装工作員による大型車両を使った突入、航空機によるゲリラ浸透も想定されるような第一線の実戦部隊に非力なP230が主力となるかどうか、察してください。

なお、とあるフィクション作品では長野県警はニューナンブM60が効かない被疑者に対し、捜査員はP230を使えという謎命令を出していて面白かったです。

【フィクション作品考察】『仮面ライダークウガ』でのSIG Sauer P230使用通達の謎…『アギト』登場のリアルな覆面パトカーも紹介

 

日本警察の現場で使用される拳銃といえば、組織犯罪対策部(組対)で主力となっている9mm口径のM3913、そして、全国の刑事部特殊捜査班(SIT)などで配備されているベレッタ92(9×19mmパラベラム弾仕様)が代表的です。いずれも、軍や法執行機関で広く採用されている強力な拳銃です。

一方で、SIG SAUER P230が使用する.32ACP弾(7.65mmブローニング)は、その威力に大きな差があります。

実際、.32ACPのエネルギーは9×19mmパラベラム弾の約3分の1程度とされています。

たとえば、もしあなたが法執行官であって、たった一人で秋葉原の路地裏――サトームセンの前で、ダガーナイフを持ち興奮状態にある男を追いつめ、確保しようとしていたとします。

そのとき、右手に構えているのが、M3913ベレッタ92ではなく、.32ACP仕様のP230だったとしたら――少なからず不安を感じるかもしれません。

実際にアメリカでは、アドレナリンにより痛覚がマヒした被疑者に対して、9mmや.38スペシャルの弾では制圧できなかったケースも報告されています。こうした事例が重なり、FBIでは10mmオート弾などのより高威力の弾薬が導入されるきっかけにもなったわけです。

「法執行機関の銃が変わった日 ~マイアミ銃撃戦とノースハリウッド事件~」二つの事件とは・・?

ともかく、以下のテーブル内に引用した専門誌の「アームズマガジン」による警備部の要人警護のSPの装備するけん銃についての考察ですが、次のように考察されています。

一般の警察官の場合、被疑者に向けて発砲する事態になっても可能な限り、殺さず抵抗力を奪って逮捕することを目指すのだが、警備部の場合は違う。相手はテロリストであり、警護する対象を守ることが最優先だ。テロリストがボディアーマーを装着している可能性もあるため、確実に相手を倒すためには狙う場所は1ヵ所しかない。警備部の警察官にとってP230JPのような操作性最悪のマニュアルセーフティなど論外だ。1980年代ならともかく、90年代以降は非力な7.65mmなど採用しない。事実、警備部の装備の主流は現在、HK P2000からグロックになりつつある。トリガーを引くだけの確実に撃てる。そしてパワーがある。彼らにはこれが重要なのだ。

出典 アームズマガジン『日本警察拳銃「SIG P230JP」の迷走』

「90年代以降に非力な7.65mmを採用した日本警察の意図は?」という論点ですね。

とはいえ、P230のなんと酷い言われようでしょうか。

しかし、これは民間人でありながら日本警察仕様のP230を実際に扱って撃ったライターが書いたのだから真実と言わざるを得ません。

なお、この『日本警察仕様P230』は、日本警察が納入のハシゴをはずしたために400丁余りの在庫が出ており、困ったSIG社は2001年、米国の一般市場に大放出。

つまり、米国内では民間人であっても“日本警察仕様版P230”を購入可能。無論、プレミアム価格となっているであろうことは想像に難くありません。

また、同誌では『P230の採用は不適切ではないか。これに比べれば厚生労働省麻薬取締官が導入したベレッタ85Fの方がずっと良い。』とまで断言。ずっといいそうですよ、厚生労働省さん!

日本警察仕様「P230」に搭載された「とある独逸の手動式安全装置(マニュアル・セイフティ)」…その理由は?

日本警察の“安全”へのこだわりを示す例かもしれません。

本来、P230は、ドイツ警察向けに開発されたコンパクトオートで、標準仕様ではマニュアルセーフティを持ちません。

しかし日本が導入したP230は、暴発防止のために特別にマニュアルセーフティが追加されている”日本警察仕様。

KSC P230アーリー HW 18歳以上ガスブローバック

オリジナルのP230。トリガー後方に見えるレバーは起こしたハンマーを安全に落とすためのデコッキング・レバー。※モデル品

KSC P230JP ブラックHW ガスブローバック

日本警察で配備される特注のP230。セイフティ・レバーとランヤード・リングが追加された。※モデル品

ほかにも、カールコードを連結させるためのランヤード・リングも装備されています。

これらの装備は、オリジナルのP230には存在しない装備であり、日本警察が特注した「暴発対策」および「強奪対策」を明確に反映したもの。

“デコッキングレバーだけ”では満足しなかった日本人警察官

P230のトリガー後方に見える”押し下げ式のデコッキングレバー”は、「引き起こされて撃発可能状態にあるハンマーを安全に倒す」ために備わっている元からの機構。

本来であれば、P230にマニュアルセイフティはないものの、事実上、デコッキングレバーが”手動の安全装置”の役割を果たすため、薬室に弾薬が装填された状態で銃を携行しても安全性に問題はありません。

しかし、日本人はそれには満足しませんでした。

東京の警察庁の要望は『なんだろう……独立した手動の安全装置つけてもらっていいですか?』でした。

ええ~!?同じ値段で追加の安全装置を!?同じ値段かどうかは不明ですが、結果的に応じてしまうSIG社。

当然、日警の伝統、けん銃吊りひもおよびナスカンを装着するための『ランヤードリング』も絶妙のデザインでグリップに仕込んでくれました。

こうして日本警察の要請によって、マニュアルセイフティ(手動式安全装置)とランヤードリングを追加で搭載したP230は通常モデルと区別をつける便宜上『P230JP』と呼ばれていますが、SIG社の公式な名称ではありません。

ともかく、日本の警察における拳銃の安全対策は、機械的な構造・手作業の安全措置・そして装備の特注に至るまで、非常に多層的であるということがわかります。

ドラマに映えるP230、その存在感

さて、ドラマファンの皆様、お待たせいたしました。「日本警察仕様のSIG Sauer P230(P230JP)」つながりで、フィクション作品における描写を考察してみたいと思います。

どんなに専門誌にボロクソにされても、ドラマでの活躍とくれば、話は別。

『SP 警視庁警備部警護課第四係』

90年代に配備が始まったP230。しかし、それが『プロップガン』としてテレビドラマの中で本格的に活躍するようになったのは、おそらく、2007年に放送されたフジテレビ系ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』からと、配備開始からはだいぶ遅れてからのことではないでしょうか。

本作では主人公をはじめとするSPたちが、この“日本警察仕様P230”を携行し、華々しく登場したことが印象に残っています。

『ジョシデカ!-女子刑事』

とはいえ、P230が画面の中で印象的だった作品といえば、筆者の記憶でまず浮かぶのが、2007年にTBS系で放送されたドラマ『ジョシデカ!-女子刑事』です。

この作品で仲間由紀恵さんが演じていたのは、「射撃だけは得意」という設定の女性刑事・畑山来実。

しかし、その彼女が使用していたのは、先にご紹介した『SP』に登場する“日警仕様P230”ではありません。SIG Sauer P230 SL(ステンレスモデル)を模したプロップでした。

SIG-Sauer P230SL with spare magazine and unfired rounds - .380 ACP

SIG-Sauer P230SL with spare magazine and unfired rounds – .380 ACP by https://www.imfdb.org

このプロップを製作した旭工房さんによると、ベースとなったのはマルシンのモデルガン「ワルサーPPK/s」だそうです。外装の加工や質感の再現など、かなりの手間をかけて仕上げられたとのことです。

※参考:旭工房さん公式サイト TVドラマ「ジョシデカ!-女子刑事-」で主役の来実が実際使用したプロップガンのレポート

このように、現実の警察が配備しているモデルをあえて微妙にアレンジして使用する演出は、リアルさを残しつつもドラマとしての個性を演出するための意図が感じられます。

同様の演出は、篠原涼子さん主演のドラマ『アンフェア』でも見られました。ヒロインの雪平夏見のみがM3913の“レディスミス”仕様を使用し、他の捜査官たちは日本警察仕様のM3913を携行していた点も非常に興味深い例です。

アンフェアの記事はこちら→「『アンフェア』の覆面パトカー劇用車 170系クラウン アスリート

『仮面ライダークウガ』にP230の名が…!

日本警察版P230がドラマに定着してから、すでに15年が経ちました。

しかし、そのもっと前――今から25年前の2000年に放送された『仮面ライダークウガ』では、すでにP230という名前が登場していたのです。

ええっ!と、驚きの声を上げたくなるところですが、『仮面ライダークウガ』は特撮ドラマでありながら、劇中に実在する警察組織がきちんと描写されています。

装備や車両に関しても実在するものをベースにしており、リアリティの追求という点では、下手な刑事ドラマ以上のこだわりが見受けられました。

ただし、ここでのP230はあくまで“名前だけの登場”であり、実際の登場シーンがあるわけではありません。

クウガのストーリーについては、別の記事で解説しています。

【フィクション作品考察】『仮面ライダークウガ』でのSIG Sauer P230使用通達の謎…『アギト』登場のリアルな覆面パトカーも紹介

今後も、こうした“実銃とプロップガンの関係性”や、“配備モデルの演出上の変化”について、引き続き観察していきたいと思います。

P230JPのモデルガン&エアガンを楽しむ

さて、少し視点を変えてみましょう。

日本政府がSIG Sauer社に「マニュアルセーフティ付き」を特注した日本警察仕様のP230――通称『P230JP』。このモデルをガスガンやモデルガンとして製品化しているのが、皆さんご存じKSC社です。

KSCP230JA KSC P230JP-A

このP230JPという名前は、KSCが製品名として使ったことで、そのまま「日本警察版P230の通称」として広く定着。

これは、実銃メーカーが公式に採用していない名称が定着したという点で、東京マルイの『MP5-J』と似たケースです。

KSCでは、モデルガン版のP230JPを発売する以前からプロップガンメーカーとの技術連携を行っており、7ミリ火薬を採用することで従来品に比べて発砲音やスライド作動の迫力が格段にアップしました。

その性能はまさに「火を噴くようなブローバック」。これまでのモデルガンでは味わえなかった迫力が実現され、映像作品でも映える仕様になっています。

言うなれば、これはプロップ業者との共同開発のようなもので、最初から邦画・TVドラマでの使用を前提に企画されたモデルだったのです。

このあたりの裏話は、KSC公式サイトの開発エピソードにも詳しく記載されています。

※出典:KSC公式サイト『P230モデルガン シリーズ開発エピソード』

まとめ…日本警察×SIG、その深い関係

日本の警察組織では、SIG社製のオートマチックピストルが制服警官から特殊部隊まで幅広く採用されています。こうした背景には、SIGと日本警察の“運命共同体”的な関係があるように見受けられます。

1995年前後のアームズマガジンでは、マルシン製PPKベースのP230を構えた編集部員が、紫のスーツにサングラス姿で都庁をバックにポーズを決めるという、まるで舘ひろし風の合成写真が掲載されていました。筆者は今でもその写真を忘れられません。

その後、日本警察はP230の配備に続いて、マニュアルセーフティのないP226をSATに導入。さらにSPも、グロック(※メーカーオプションではセーフティ付きも選択可能だが、基本モデルには非搭載)や、H&KのP2000を採用しています。

このような流れから見ると、日本警察における「自動式拳銃に対する安全装置の考え方」が、時代とともに変化してきていることが読み取れます。

なお、SPに配備される拳銃はこちらの記事で解説しています。

【警備部の装備トレンドは?】警視庁SPの使うけん銃にP2000など登場