警察の機動隊――集団警備力の中核を担う実力部隊
各都道府県警察の警備部に編成されている「機動隊」は、警察組織において“集団警備力”の中核です。
テロやゲリラといった有事における治安警備をはじめ、災害現場における救助活動や雑踏警備など、さまざまな局面に対応する実力部隊として位置付けられています。
本稿では、機動隊がこれまでに直面してきた過酷な現場を振り返り、その任務の幅広さと社会的役割の重要性について考察します。
多岐にわたる任務――治安から災害、特殊事案まで

引用元 ANNnewsCH 陸自と警視庁、千葉県警の約200人 初の合同訓練(19/02/26)
機動隊の任務はテロやゲリラなどの集団的かつ重大な不法事案への実力対処に加え、自然災害時の救助活動、群衆が集まる場における雑踏警備、さらには広域における一斉取締りなどが含まれます。
これらの任務はいずれも機動隊の高い練度とマンパワー(動員力)を活かしたものです。
原発災害にも対応――福島第一原発での放水作業
2011年3月に発生した東日本大震災において、東京電力福島第一原子力発電所の事故対応では、警視庁機動隊が高圧放水車を用いて原子炉の冷却作業に従事。
犯罪抑止の現場へ――振り込め詐欺対策にも出動
近年では、振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の撲滅を目的とした捜査活動にも、機動隊が動員されるケースが増えています。治安維持のみならず、犯罪抑止や市民生活の安全確保にも深く関わるようになっており、その活動範囲はさらに拡大しています。
今後も機動隊は、変化する社会情勢に対応しながら、多様な現場での即応力を発揮し続けるものと見込まれます。警察力の一翼を担うその存在は、ますます重要性を増しているといえるでしょう。
日本最大の部隊規模を誇る――警視庁機動隊
全国の警察本部の中で、極めて高い即応力と装備力、大規模な編成を誇るのが首都の治安を守る警視庁機動隊です。
警視庁には第一から第九までのナンバー隊が常設されており、いずれも都市部における大規模警備や緊急事案への即応を担っています。
さらに、テロや銃器犯罪に特化した「銃器対策レンジャー部隊」や、特殊車両や装甲車を用いた技術支援を担う「特科車両隊」など、専門部隊も編成。
SATの所属と位置づけにも注目
ハイリスク事案の“最終手段”とも言える特殊急襲部隊(SAT)と機動隊の関係性についても触れておきましょう。
多くの道府県警察本部では、SATは警備部機動隊に編成されており、機動隊の一部隊という位置づけです。
しかし、東京および大阪という大都市が抱えるリスクの多様性や即応性の必要性から、警視庁と大阪府警に限っては、それぞれの警備部の警備第一課に独立編成され、機動隊から切り離されています。
SATの運用形態にも各警察本部の特性が表れていると言えるでしょう。
機動隊が向き合ってきた「ゲバルト」――実力部隊の知られざる戦歴
現在では治安の維持や災害救助、さらには詐欺対策にまで活動の幅を広げている機動隊。
しかしその歴史をたどると、かつては命がけの「市街戦」とも言える局面に数多く動員されてきた“戦う部隊”でした。
安保闘争の時代――コンクリートが飛ぶ「戦場」
昭和43年、全国に渦巻いた安保闘争のさなか、機動隊は大学キャンパス内で左翼学生らの激しい抵抗に直面していました。
特に象徴的な事件となったのが、日本大学における機動隊員の殉職です。学生たちが高所から投げ落とした12キロにもおよぶコンクリート片が直撃し、若き隊員の命が奪われました。
この時代の「ゲバルト(暴力的活動)」は、もはやデモという範疇を超えた日本国内の市街戦の様相を呈しており、機動隊員たちは日々、命をかけて法の執行にあたっていたのです。
興味深いことに、こうした行動に加わっていた最高学府「東京大学」の学生らは、後に中央省庁へと“ちゃっかり”就職し、官僚になっていたとも言われます。また、当時の四コマ漫画にも、ゲバ棒を持って登校していた学生がそれから数年後、制服に身を包み、「警棒」を携えて出勤するというオチのものもありました。これは何を皮肉っているのでしょうか?当時の公務員採用では、身辺調査が行われていなかったために起きた“昭和の珍事”でした。
成田空港建設と三里塚闘争――殉職者を出した行政代執行
昭和46年、新東京国際空港(現・成田国際空港)の建設予定地でも、激しい反対運動が展開されました。行政代執行が実施された際、千葉県警に応援派遣されていた神奈川県警の特別機動隊員3名が殉職するという痛ましい事件が発生します。
この悲劇を受けて、昭和52年の三里塚闘争では、機動隊側にも強硬な対応が見られました。通常は上空に向けて発射されるはずの「ガス筒発射器」が、わずか5メートルの至近距離で水平に発射され、反対派メンバーの頭部を直撃するという事件も。法の執行と暴力の応酬は、常に紙一重です。
あさま山荘事件における機動隊の奮闘――命を賭して突入した隊員、極限の現場で殉職
1972年2月19日、過激派組織「連合赤軍」の残党5人が、長野県軽井沢町の浅間山荘に管理人の妻を人質に立てこもる事件が発生。対応にあたったのは、地元の長野県警察機動隊のほか、応援派遣を受けた警視庁機動隊であり、人質救出を目的とした包囲・突入作戦が直ちに開始されました。
事件は厳寒の山中での長期戦となり、突入までに10日間を要しました。最終的に2月28日、部隊が山荘への強行突入を敢行。突入のさなか、最前線で任務にあたっていた機動隊員2名が殉職。さらに、民間人1名も命を落とし、機動隊員26名を含む計27名が重軽傷を負いました。
現代のゲバルト?――渋谷ハロウィン暴動
学生運動が沈静化した現代、2008年の第24次西成暴動を最後に、かつてのような過激な暴動はほとんど見られなくなりましたが、新たな形の混乱が起きています。
2018年の「渋谷ハロウィン暴動」では、仮装した若者たちが大量に渋谷に集結。軽トラックが横転させられるなど、近年ではまれに見るほどの混乱状態となりました。
この事態に対し、警視庁は数百人規模の機動隊を投入、あわせて“DJポリス”と呼ばれる広報警察官も展開。騒然とする現場に対し、強制排除と懐柔の双方を駆使した柔軟な対応を行いました。
ヘルメット一つにも歴史あり――警備警察の装備と進化

機動隊の任務の重要性を物語るのはその装備品の数々です。
ヘルメットにも、その過酷な現場経験が反映されています。かつて使用されていたヘルメットは、バイザーにポリカーボネートを採用し、防弾ガラスも搭載されるなど、一般警察官の装備を超える高い防御力を備えていました。
というのも、当時は東京大学安田講堂などの高所から、石やコンクリート片、さらには火炎瓶が容赦なく投げつけられる状況だったからです。
現代の機動隊員には、さらに進化した新型装備が配備されています。ヘルメットには耳や首元まで覆うプロテクターが備え付けられ、暴徒からの投石攻撃に対する防御力も格段に向上しました。技術と教訓が融合したこの装備こそ、機動隊の過去と現在を象徴する存在だと言えるでしょう。
写真は機動隊員の着用する防弾性のない暴徒鎮圧用ヘルメット。
機動隊の武装
機動隊の代表的な装備といえば、大盾、警棒(または警杖)、そして催涙ガス銃です。催涙ガス銃は、警察内部では「ガス筒発射器」と呼ばれており、過去の激しいデモでは機動隊の主力装備として用いられてきました。
実際の警備活動に出動した機動隊員。ライトブルーの出動服に身を包むが、けん銃は着装しない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表的な武装 | 大盾、警棒(または警杖)、催涙ガス銃(警察では「ガス筒発射器」と呼称) |
| 安保闘争期の装備 | 濃紺の出動服、編み上げ靴、肘当て(コテ)、ポリカーボネート製バイザー付きヘルメット、銀色のジュラルミン製大盾 |
| 現在の機動隊装備 | 素材の耐久性が向上した出動服・出動靴、防御力の高いプロテクター類、襟元まで保護するヘルメット、バイザー付き |
| けん銃携行の有無 | 雑踏警備時は携行しないのが原則 |
| 盾の特徴 | ジュラルミン製で投石や火炎瓶への防御に有効だが、防弾性はなし。あさま山荘事件ではライフルで撃ち抜かれた実例あり |
| 活動服の識別点 | 機動隊員の活動服には襟元に桜のバッジが付き、一般警察官との識別が可能 |
| 近年のガス銃の使用 | 安保闘争のような大規模デモが減少し、現在では主に訓練や展示でしか見られない |
| 盾の攻撃的使用 | 一部では暴徒に対して盾を「殴打用」に使用した例もあり、過去に報道されたことがある |
安保闘争の時代には、機動隊員たちは「出動服」と呼ばれる濃紺の上下に編み上げ式の出動靴、肘当て(いわゆる“コテ”)、そしてポリカーボネート製のバイザー付きヘルメットを着用していました。
銀色の大盾を構えたこのスタイルは、当時の象徴的な姿でした。
なお、この銀色の大盾はジュラルミン製で、火炎瓶や投石にはある程度の防御力を発揮しますが、防弾性はありません。
実際、あさま山荘事件では、立てこもり犯のライフルによって盾が貫通された事例もあります。とくに、90年代から摘発が増えた旧ソ連製のトカレフは非常に強い威力を持つことで知られているが、ジュラルミンの盾では全くの無力です。

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現在では、当時に比べて装備の素材や性能が大きく進化しており、防御力や機動性が向上しています。
たとえば新型のヘルメットには耳当てや襟元までガードするプロテクターが付属し、顔面への投石にも耐えうる構造となっています。
また、機動隊の装備は本来、防御と制圧を目的としていますが、過去にはこれが攻撃的に使われた事例もあります。とある県の祭りで暴走族が機動隊員を挑発し、これに激昂した隊員が大盾で殴りつけたという報道もありました。
現在の日本では、安保闘争のような大規模で激しいデモ活動は少なくなり、催涙ガス銃の実戦投入を見ることはほとんどありません。訓練や公開演習の場でしか見られないというのが実情です。
雑踏警備などの一般的な警備活動では、機動隊員はけん銃を携行しないのが基本です。あくまで大盾や警棒、ガス銃などの「非致死性装備」によって集団の制圧を行います。
ただし、場合によっては交番勤務の地域警察官と同じ「活動服」で出動することもあり、このとき機動隊員であることを示すのが、襟元に付けられた桜のバッジです。
機動隊に配備されている盾 新旧比較

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現在、日本の警察では、従来のジュラルミン製の盾に代わり、より軽量で防御性能に優れたポリカーボネート製の盾が全国の警察本部に配備されています。これらの盾の製造を手がけているのが、有限会社ナンワで、同社は警察用のみならず、自衛隊や民間警備会社向けの防弾盾なども製造・販売している実績のあるメーカーです。
ポリカーボネート製の盾には大・中・小の3サイズがあり、使われる場面や任務に応じて使い分けられています。旧式のジュラルミン製の盾に比べると非常に軽量で、取り回しがよく、それでいて高い防弾性能を備えているのが特徴です。
この種のポリカーボネート盾は、世界の警察機関でも広く使用されており、トカレフ短銃やマグナム弾といった強力な拳銃の弾丸にも耐えうる設計となっています。ただし、さすがに自動小銃などの高威力弾には対応が難しく、銃弾の種類によっては貫通のリスクがあります。
なお、こうした盾は機動隊だけでなく、刑事部や地域警察(交番など)でも必要に応じて配備されており、事件現場や突発的な危険への対応に使われています。

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そして、警察の中でも特殊部隊にあたるSAT(特殊急襲部隊)では、さらに強力な防弾性能を持つ「小銃対応大盾」が使用されており、対テロや銃器使用事案に備えた万全の装備体制が整えられています。
機動隊の新型車両
令和5年4月7日朝、今年で創設75年となる警視庁機動隊が新宿区の明治神宮外苑にて機動隊観閲式を行ないました。
式には小島裕史警視総監ら幹部が多数参列し、1400人の隊員が一斉に行進する姿を観閲。
今年で創設75年となる警視庁機動隊の観閲式が7日、東京都新宿区の明治神宮外苑であり、小島裕史警視総監ら幹部が見守る中、街頭でのひったくり事案の捜査に従事する”覆面バイク部隊”、トヨタSAIの覆面パトカーを第一線の主力捜査車両とすることで知られている公安機動捜査隊、テロ対策の任に当たる銃器対策部隊や災害救助の任に当たる特殊救助隊など10隊の隊員約1400人が、警備犬6頭、機動隊車両75台と共に行進しました。
そして、この特殊車両が何台も参加する今回の機動隊観閲式にて目撃された”警察車両”らしからぬ、ある車両がSNSで話題です。それは黒色の『ジープ・ラングラー』だ。正式名称はJeep Wrangler Unlimited Rubiconで、赤色警光灯を備えた車両。
視閲式当日、警察幹部の巡閲用車両として登場したようですが、ほかにも撮影用にカメラを乗せた個体も目撃されたようです。
内装が赤色系で、こちらも警察車両っぽくないという指摘もあり、なかなかインパクトある車両のようです。
機動隊の「分隊長」と「小隊長」とは
機動隊は、警察の中でもとくに指揮命令系統による統制を必要とする大規模な編成です。その中でも「中隊長」「分隊長」「小隊長」は、実働における指揮官として重要なポジションを担っています。
機動隊における指揮官の階層と役割(一覧)
| 役職名 | 想定階級 | 指揮対象 | 規模の目安 | 主な任務・役割 |
|---|---|---|---|---|
| 中隊長 | 警部/警部補 | 中隊(約3小隊) | 約80〜120名 | 中隊全体の指揮・作戦立案・出動判断・安全統制 |
| 小隊長 | 警部補/巡査部長 | 小隊(約3分隊) | 約22〜24名 | 現場指揮、部隊の直接統制、現場の臨機応変な対応 |
| 分隊長 | 巡査部長 | 分隊(数名〜10名) | 約5〜10名 | 分隊の現場行動の管理、特定任務の遂行(例:突入、警戒線維持、雑踏整理など) |
■ 分隊長とは
分隊長は、おおむね5~10人程度の小規模な単位「分隊」を率いるリーダーです。階級は巡査部長クラスが多く、現場では最前線で部下を直接指揮します。
分隊は警備、雑踏整理、災害対応などの現場で柔軟に行動できる単位であり、分隊長は状況判断・現場指示を即時に行う立場です。
■ 小隊長とは
小隊長は、複数の分隊を束ねる「小隊」(通常22~24名程度)を指揮します。階級は警部補から警部が多く、作戦全体の指揮・調整を行います。
小隊長は、隊員の配置計画や指令本部との連絡、装備の統制などにも関与するため、部隊運用の中心です。場合によっては中隊長(100人規模)への補佐役も担います。
実際の運用例
たとえばデモ行進の警備では、分隊長が現場で隊員に盾の配置や誘導の指示を出し、小隊長は複数の分隊の動きを全体として監視しつつ、事案発生時には指揮本部と即応連携を図ります。
機動隊の使う警察無線 『携帯通信系(部隊活動系)』
機動隊が使用する「部隊活動系」
大規模な警備活動や災害対応の最前線で、警備警察の実動部隊である機動隊が使用している無線通信があります。
通称「携帯通信系」または「部隊活動系」と呼ばれるこの系統は、現場での機動的な指揮・連携を支える重要な警察無線です。部内では「隊内系」とも呼ばれます。
たとえばサミットや国際的な大型イベントの際、全国各地の警察本部から派遣された機動隊が警備にあたりますが、その際、現場での連絡や部隊間の連携、交通整理に使われるのがこの携帯通信系です。
通信には「UW」と呼ばれる可搬型無線機が使われます。これは、署活系無線機に比べて大型で、背負って運用されるのが特徴です。

署活系や車載通信系と異なり、無線中継局を経由せず、端末同士が直接通信を行う通相互方式を採用してます。
この通信系は、狭いエリア内での運用を想定しており、出力は1ワットと低出力で通信範囲は限られますが、密集地での即応性や秘匿性に優れています。
周波数はアナログ時代には142~162MHz帯の25波を使用していましたが、現在はデジタル方式へ移行し、162MHz帯を引き続き使用。「小隊長」など部隊独自の呼び出しが使われることが多く、実戦的な雰囲気を帯びた無線運用とされています。
この部隊活動系無線は、当時、デジタル移行した警察無線の中でも、一部地域ではアナログで残り、比較的長く受信が可能であった通信系です。大阪府警などでこの無線機を駐車違反取締り用として転用していたケースも確認されています。
現在では暗号化されたデジタル通信へと移行し、法的にも技術的にも傍受は不可能となっていますが、機動隊という「最後の実力部隊」の現場を支える通信手段として、その役割は今も変わっていないようです。
管区機動隊とは?
通常、機動隊は各都道府県警察が独自に編成しており、その所属する警察官もすべて、その都道府県警察の一員として任務にあたっています。しかし、これとは別に「管区機動隊」と呼ばれる特別な機動隊が存在します。
この管区機動隊は、東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州といった全国の7つの「管区警察局」が臨時に編成するもので、いわば都道府県の縄張りを一時的に超えて組織される広域部隊です。
大規模災害や深刻な事件が発生した際に、あらかじめ「管区機動隊員」として指定されていた警察官たちが、それぞれの県警本部から召集され、管区機動隊員として現場に出動します。
ただし、北海道警察と警視庁は、それぞれ「管区警察局」制度に属しておらず、管区機動隊にも参加していません。警視庁には独自の大規模部隊がすでに存在し、北海道警察もまた管区をまたがる必要がないため、独立した運用がなされています。
機動隊の「機能別部隊」
銃器対策部隊・RATS・銃器レンジャー、“第3の警察部隊”の任務とは
機動隊は機能別部隊が編成されているという特色があります。

最新 日本の対テロ特殊部隊
4384042256 | 柿谷 哲也 | 三修社 | 2008-10-31
機動隊には、専門部隊として、爆発物処理班、機動救助部隊、水難救助部隊、銃器対策部隊等の機能別部隊が編成されています。
機動隊の機能別部隊その1 銃器対策部隊 & 銃器対策レンジャー部隊

機動隊の中でも、特に重武装かつ即応性に優れた部隊が「銃器対策部隊」です。銃器を使用した重大事件が発生した際の対処にも出動します。
警察で短機関銃を配備する部隊というと、SATが話題に上がります。また、刑事部のSITでも一部で単発仕様のMP5を配備しています。
しかし、機動隊の中でも、銃器を使用した重大事件が発生した際の対処に出動するSATに次ぐ重武装かつ即応性に優れた部隊があります。それが「銃器対策部隊」です。
SATと違って、マイナーな部隊ですが、その違いは意外と知られていません。
このように、銃器対策部隊は、通常警備の延長では対応できないシリアスな局面において、現場の治安を保つ最後の一線を担っているのです。
機動隊の機能別部隊その2 原発特別警備部隊
こちらも注目すべき存在が「原発特別警備部隊」です。
その名のとおり、各地にある原子力発電所の警戒・防護を任務とする部隊で、原子力施設の安全を警察の立場から守っています。
一見すると、私企業である電力会社の施設を警察が守っているという構図は、戦前の「請願巡査制度」を思わせるような印象を受けるかもしれません。韓国などでは現在も類似の制度が残っていますが、日本の場合、電力会社が警察に対して直接的に警備費を負担しているわけではありません。
電力供給は国民生活の基盤であるライフラインの一部と位置づけられており、その公益性を重視して、警察による原発警備の経費はすべて国費でまかなわれています。
日本警察が原子力施設の警備体制を強化したのは、比較的最近のことです。2000年代初頭、世界各地で「ゲリラ・コマンドゥ」と呼ばれる不正規戦が注目され始め、重要インフラ施設に対する攻撃への懸念が高まったことが背景にあります。
こうした国際情勢の変化を受け、日本でも2004年、ついに警察官を常駐させるかたちでの本格的な原発警備体制が導入され、「原子力施設警戒隊」が発足。
なお、海外における原子力施設の警備体制はすでに高度に組織化されており、たとえばアメリカでは、エネルギー省(DOE)の傘下にある法執行機関が武装警備を担当するほか、イギリスでは「英国原子力公社警察隊(Civil Nuclear Constabulary)」がその任に当たっています。
日本の原発特別警備部隊は、装備の面でも非常に高度なものを備えます。自動式けん銃に加え、ドイツ製のサブマシンガン「MP5」や、高精度なライフル「M1500 バーミンター(害獣駆除仕様)」なども配備されています。

ただし、これらの特殊装備は原発敷地内であってもむき出しの状態で携行されることはなく、普段は専用のケースに収納され、民間人に対する不要な威圧感を与えないよう配慮。あくまで、必要なときに即応すべく備えているのです。

さらに、こうした警備力の向上には、自衛隊との連携も重要な役割を果たしています。現在では警察と陸上自衛隊の間で「治安出動時における協定」が結ばれており、原子力警備部隊も含め、各地の警察部隊は自衛隊と定期的に実戦的な合同訓練を行っており、警察官が自衛隊ヘリに同乗して上空からの索敵や、銃器を携えた共同警備の演習なども含まれています。
このように、原発特別警備部隊は、国家の重要インフラを保護するための要として、現代の治安維持の最前線に立っています。
機動隊の機能別部隊その3 各種救助部隊
東日本大震災や広島土砂災害、熊本地震でも救助に活躍!警察と災害救助活動
日本全国の警察では、災害時や緊急事態に対応するため、専門の救助部隊である「広域緊急援助隊」が編成されています。中でも警視庁には、「警視庁機動救助隊」と「特殊救助隊」が設置されており、特に前者は『レスキュー110』の通称で知られています。
また、国内のみならず、海外で大規模災害が発生した際には、北海道、警視庁、埼玉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の9都道府県警察本部の機動隊から選抜された隊員によって「国際警察緊急援助隊」が編成され、現地での救助活動に従事することもあります。
さらに、全国の警察には地域ごとに山岳救助隊が組織されており、山岳地帯での遭難救助や捜索活動では、航空隊のヘリコプターとの連携によって迅速な対応が図られています。
また、水難救助についても、各都道府県警察には専従の水難救助隊が存在します。ただし、これらの隊員は日常的には警備やパトロールなど他の業務に従事しており、水難救助が必要となった際に召集されて部隊として活動します。水難救助の際には「水難救助車」と呼ばれる特殊車両が投入されるほか、水中の証拠物件の捜索なども任務に含まれています。
銃器対策部隊の任務とSATとの違い
日本警察の銃器対策部隊(銃対)は、警察庁を頂点とする全国の警察機構の中で、銃器や爆発物を使用する犯罪、あるいはテロリズムへの対応を目的に都道府県警ごとに機動隊に編制されている。
銃対は、アメリカやヨーロッパ諸国のSWAT(特殊火器戦術部隊)に相当するが、日本特有の法制度や治安環境に応じて運用されており、その構成・任務・装備にも独自性がある。
一方、警察の最精鋭部隊は警察庁の直轄指揮下にある対テロ特殊部隊である「特殊急襲部隊(SAT)」であり、東京・大阪など全国8の警察本部のみに配備されている。
SATは、9mm特殊拳銃(SIG P226など)や短機関銃(H&K MP5など)を使用し、防弾装備や特殊車両も整備され、主にハイジャック、人質立てこもりなど、特に凶悪な銃器使用事件、テロへの即応を任務とし、国内では最も高い訓練水準と装備を有する。
警察庁では必要に応じて警視庁や神奈川県警のSATを全国へ派遣する運用を行なっているが、全国配備されていないSATの隙間を塞ぐ形で配備されているのが、各県警機動隊の『銃器対策部隊』、通称“銃対”である。
銃器対策部隊は銃器等を使用した事案への対処を主任務とし、重大事案が発生した場合に、SATが到着するまでの第一次的な対処に当たるとともに、SAT到着後は、その支援に当たる。
つまり、SATが未編成の警察本部では、銃器対策部隊が警備警察の「初動対応部隊=SWAT」として機能している。
現在、全国の警察本部機動隊に配備された銃器対策部隊の隊員数は全国で約2,100人(令和元年 警察白書より)。
装備面でも非常に充実しており、SATも配備するMP5サブマシンガン、自動小銃、防弾盾、さらには耐弾・耐爆仕様の特型警備車両(装甲車)まで投入されており、重装備のテロリストや武装グループへの対応も想定されている。

画像の出典ANN
SITは刑事部として、主に立てこもりや誘拐、殺人など重大事件の捜査と初動対処を刑事警察の立場から担う一方、銃器対策部隊は警備部に属し、テロや爆発物事案を含むより武力的対処に重点を置いた訓練と装備を有する。

これらの部隊は通常警察官としての職務を行いながら、必要に応じて招集される即応型部隊として機能している。
- 銃器対策部隊とは特殊部隊でも通常機動隊でもない機動隊の機能別部隊のうちの“銃器事件特化チーム”
- SITやSATに次ぐ、知られざる第3の警察部隊
- SAT到着までの初動対応が任務
埼玉県警察 RATS
埼玉県警察の「RATS(ラッツ)」は、主に銃器犯罪、立てこもり、人質事案といった凶悪事件に即応するための銃器対策部隊である。

画像の出典 共同通信
当初は1996年に銃器対策部隊が全国の機動隊に編成され、その後SATの後方支援を担う専門部隊が整備された中で、埼玉県警は独自にRATSの名称を採用し、対テロ・銃器事案向けの装備訓練の充実を図ってきた。
隊員は突入訓練、制圧術、高所からのロープ降下、バリケード突破などの特殊技能を習得している。MP5サブマシンガン、P2000拳銃、防弾装備(ボディーアーマー、盾など)を装備し、SATと同等レベルの装備と訓練水準を維持し、武装した凶悪犯への対応や人質救出を想定した訓練も行っている。
全国の都道府県警では、同様の役割を持つ部隊が「銃器対策部隊」「銃器レンジャー」などの名称で運用されているが、埼玉県警は独自の呼称を用いている点で注目されているが、その装備にも注目されている。
RATSの装備品は、とくにMP5に関して他の都道府県警の銃器対策部隊と比べ、より性能を向上化させるためにオプションてんこ盛りの方向にあるという一部指摘もある。
RATSは警察庁警備局直轄の特殊部隊SAT(特殊急襲部隊)ではなく、あくまで県警機動隊の枠内で設けられた“銃器対策部隊”である。
しかし、その装備や能力の点から一部では、限りなくSATに近い『準特殊部隊』と称されることもある。
元RATS隊員で特殊部隊向けの装備開発やボディーガード(4号警備)、特殊作戦訓練の提供を手がける田村忠嗣氏は、米国のSWATやFBI-HRTの訓練、自衛隊との共同訓練などで交流・研鑽をしていたと語っている。
埼玉県内での立てこもり事件などの重大事案が発生の折には、RATSの出動が確認されている。
県警は部隊の詳細を明かしていないが、装備や訓練の様子は一部のニュース映像で確認されており、防弾装備や突入器具を携行して活動する姿が紹介されている。
警視庁 銃器レンジャー部隊
警視庁機動隊の中でも特異な存在である「銃器レンジャー部隊」は、第七機動隊にのみ編成されている専門部隊である。
その起源は1969年(昭和44年)に結成された「レンジャー部隊」にさかのぼり、2001年(平成13年)には任務の特性に応じて「銃器レンジャー」と「山岳レンジャー」に再編された。
「レンジャー部隊」と聞くと陸上自衛隊をイメージしがちだが、ロープを多用し、より高度な任務に対応するという定義は同じである。
銃器レンジャー部隊は、高層建築物における強襲突入を専門とする特別高等作戦部隊で、銃器使用が想定される凶悪事件や人質立てこもり事案などに対応し、犯人の制圧や人質の救出任務が主である。
通常の銃器対策部隊同様の任務だが、「レンジャー」の名称の通り、突入戦術に加え、ヘリコプターや高所からのラペリング降下で上階から突入するといった高度かつ機動的な作戦にも対応できるよう、日頃から厳しい訓練を重ねている。
また、降雪下での実戦想定訓練も実施されており、通常の市街地だけでなく多様な環境下における即応力を高めている。
その活動は、警察署との連携による共同訓練の中でも確認されており、災害対応とは異なる「銃器事案への即応」を強く意識した組織となっている。
レンジャー部隊は、警視庁機動隊の中で、第七機動隊にのみ編成されています。昭和44年にレンジャー部隊が発足し、平成13年「銃器レンジャー」と「山岳レンジャー」に再編されました。
※出典:警視庁公式ウェブサイト「第七機動隊 銃器レンジャー部隊」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/shokai/katsudo/kidotai/kidotai/dai7kidotai.html
警視庁 緊急時初動対応部隊(ERT)
特筆すべきは、警視庁での独自強化である。2015年4月からは、銃器対策部隊の中に緊急時初動対応部隊「ERT(エマージェンシー・レスポンス・チーム)」というチームが編成され、万が一テロが発生した際には、SATよりも先に現場へ駆けつけ、即応的な初動対応を行う。
人員は「銃器対策部隊」から選抜された警察官で編成され、SATと連携しながら大規模事案に対応する。
SAT(特殊急襲部隊)との違い

埼玉県警のRATSや、警視庁の銃器レンジャーの訓練は陸上自衛隊のレンジャー教育課程に委託しており、非常に過酷な訓練を経た精鋭たちによって構成されており、その実力はSATにも劣らぬレベルとされている。
しかし、銃器対策部隊はあくまで「警備警察の中の即応力」として整備されており、特殊部隊(Special Forces)であるSATとは明確に区別されている。

SATは警察庁が主導する全国規模の広域部隊であり、テロリズムやハイジャックといった国家的脅威に対応するための部隊である。
以下の点で、銃器対策部隊と明確な違いがある。
| 区分 | 銃器対策部隊(RATS等) | SAT(特殊急襲部隊) |
|---|---|---|
| 所属 | 各都道府県警察(機動隊) | 警察庁警備局指揮下 |
| 任務範囲 | 主に管内の銃器・暴力事案への初動対応 | 全国規模でのテロ・重大武装犯罪対処 |
| 常設状況 | 常設・専従 | 常設・専従で一部は機動隊から独立 |
| 装備 | 9mm拳銃、MP5、簡易突入装備など | MP5、狙撃銃、小銃等 |
| 特徴 | 初動制圧重視 | 大規模突入、陸海空作戦も対応可 |
■ 補足
銃器対策部隊は、SATの「最後のカード」に先立ち、通常機動隊と異なり、拳銃や自動小銃などの銃器を用いた凶悪事件に即応するため、特別な訓練と装備を受けた機能別部隊である。現場で最初に“対銃器戦闘”にあたる警察力として極めて重要な位置を占めている。
銃対の展開手段「小型遊撃車」
銃器対策部隊の展開手段として、現在配備が進んでいるのが「小型遊撃車」と呼ばれる特殊車両である。
小型遊撃車は、トヨタ・ランドクルーザーをベースに、耐弾ガラスやボディの防弾加工を施した専用車両で、現場における機動性と防御性の両立を図って設計されている。
2022年には、ある事件の被疑者護送にも投入され話題となった。この特殊車両の出動理由は“被疑者奪還”を警戒した警察当局の思惑にある。
実際、国内では過去に自動小銃や散弾銃が使用された重大事案が複数発生しており、一般的な警察車両では対応が困難な状況が想定されていた。たとえば、都市部で突発的に発生する銃撃事件、あるいは施設占拠型のテロ事案などでは、最初に展開される部隊の装備と車両が、初動対応の成否を大きく左右する。
これまでも機動隊には防弾化された各種警備車が配備されていたが、SUVのような機動性は期待できなかった。
小型遊撃車は、こうした危険な現場において、銃対の隊員を安全に展開させるとともに、突発的な逃走事案への備え、現地での持続的な対応を可能とするための移動拠点としての機能も兼ね備えている。加えて、空港や原子力発電所などの「重防対象施設」における防衛任務においても、同車両は防御的・威圧的な存在感をもって配備されることがある。
SATが出動する以前の段階で、まず銃対がこの小型遊撃車を駆って現場に急行し、初期の制圧・封鎖・偵察を担うという構造は、警察の銃器事案対応における合理的な多層構造の一端をなす。言い換えれば、小型遊撃車は「最初の盾」としての役割を果たす装備なのだ。
まとめ
銃器対策部隊は、市民を巻き込む凶悪・銃器事件への第一線対応を担う専門部隊であり、SATに先立つ独立した抑止力として機能している。
1996年以降、テロ情勢の変化に対応しつつ、装備・人員・訓練体制が着実に強化されてきた。
ほかにも、沖縄県警の国境離島警備隊や、海上保安庁の特殊警備隊(SST)、など、状況に応じた銃器・爆発物への対応力をもつ部隊が各所に存在するが、それらとも連携がされる。
日本国内では銃器犯罪の発生件数が欧米諸国に比べて圧倒的に少ないとはいえ、暴力団や密輸組織、あるいは「ローンウルフ型」の個人による銃器使用事件への備えが求められている。
近年はドローンや模倣銃、3Dプリンタによる銃器の製造といった新たな脅威も念頭に置かれ、訓練内容や装備の見直しが続けられている。
このように、機動隊は単なる集団警備のための部隊ではなく、災害時の救助活動や特殊な犯罪への対応まで、幅広い任務を担っています。
警視庁には特殊車両を運用する「特科車両隊」も設けられているほか、裏カジノ店の鋼鉄製の扉をエンジンカッターで切り開いて突入するような場面も、実際に彼ら機動隊が担っているのです。
また、近年ではオレオレ詐欺などの特殊詐欺の取り締まりにも機動隊が活用されており、その活動領域はますます広がっています。
機動隊の集団警備力は、現場主義と法治国家としての制約の中で、高度な専門性と即応性を両立させるよう編成されており、公共の安全維持とテロ抑止の要となっています。
📚 出典一覧(警察庁公式サイト「警察白書」)
- 平成16年 警察白書 第2項 テロへの対処態勢の強化:「」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h16/hakusho/h16/html/F7002020.html - 令和元年版 警察白書 第2項 警察におけるテロ対策:「イ 銃器対策部隊」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/html/vf122000.html - 令和4年版 警察白書 第2項 国際テロ対策:「(2)テロ対処体制の強化」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r04/honbun/html/y6612000.html - 平成14年 警察白書 銃器対策部隊の装備・体制:「(2)テロ対処部隊の活動」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h14/h140202.html - 平成20年 警察白書 第3節 国際テロ対策:「(2)テロへの対処態勢の強化 〔1〕 テロ対処部隊の充実強化」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h20/honbun/html/k4300000.html - 平成15年 警察白書 機動隊活動と銃器対策部隊:「2)テロ対処部隊の充実強化」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h15/html/E6001020.html - 平成22年 警察白書 第2 国際テロ対策:「〔1〕 テロ対処部隊の充実強化」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h22/honbun/html/m4120000.html - 平成26年 警察白書 第2 国際テロ対策:「図表6-7 テロ対処部隊の概要」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/honbun/html/q6120000.html









































































































