特殊急襲部隊(SAT:Special Assault Team)は、テロや重武装犯罪への対処を目的に1996年、警察庁により創設された警察の精鋭部隊である。
警察白書によれば、2025年現在、SATは全国8都道府県(北海道、東京都、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県)に設置され、合計約300人規模で編成されている。
通常の機動隊や銃器対策部隊では対処困難な事案に即応する部隊として位置づけられており、ハイジャックや重要施設占拠事件、銃器を使用した重大事件への対処を想定している。
SATの装備は高性能かつ多様で、自動拳銃(SIG P226)、短機関銃(MP5サブマシンガン)、狙撃用ライフル、自動小銃(89式小銃)、特殊閃光弾のほか、防弾装備、暗視装置などの先進的装備を備えている。
戦術によってはヘリコプターを使用した上空からの作戦も行われるが、部隊展開に使用される機体は対テロ任務用に防弾化されている。

これらの装備と訓練体制はすべて、警察白書、専門誌、報道において根拠の裏付けがなされており、SATは警察の対テロ・重武装対応の中核といえる存在である。
本稿では、警察庁が公式に公開している広報資料や公文書および報道などを基に、SATの発足経緯や任務内容、装備体系といった運用実態について事実に即して整理し、事実確認を重視して詳述、その実像に迫る。
特殊急襲部隊(SAT)──警察白書に見る、国家的な対テロ即応戦力の実像
1996年、警察庁は重大凶悪事件やテロに対応する特殊部隊として「特殊急襲部隊(SAT)」を創設した。平成16年警察白書(※)によれば、当時のSATは北海道警、警視庁、大阪府警に加えて、千葉、神奈川、愛知、福岡の各県警に配備され、全国7都道府県体制で運用されていた。
その後、2005年に沖縄県警にも発足し、2025年現在は全国8の都道府県に配置されている。
④ テロ対処部隊
ア 特殊部隊(SAT)
特殊部隊(SAT)は、北海道、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡及び沖縄の8都道府県警察に設置されている。全国で約300人の体制で、自動小銃、サブマシンガン、ライフル銃、特殊閃(せん)光弾、ヘリコプター等が配備されており、ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事件、銃器等の武器を使用した事件等に出動し、被害者や関係者の安全を確保しつつ、被疑者を制圧・検挙することを任務としている。
(※)引用元:警察庁公式サイト『第2項 警察におけるテロ対策』 https://www.npa.go.jp/hakusyo/r01/honbun/html/vf122000.html
【出典】警察庁公式サイト『平成16年 警察白書「第7章 警察の危機管理体制の強化』
刑事部には捜査一課にSIT(特殊事件捜査係)が編成されているが、SATは、主にハイジャックや重要施設の占拠といった、より重大な重大テロや、銃器を使用した立てこもり事件など、通常の部隊では対応が困難な事案に備えて配備されている。

画像の引用元 【CBC News】坂口警察庁長官が愛知県警のSATを視察
各部隊は警察庁警備局の統制下に置かれ、都道府県警察本部長からの要請により出動する体制となっている。
SATの対応する事件
- 銃器犯罪
- 航空機の乗っ取り(ハイジャック)
- テロ
- 人質立てこもりなどの凶悪事件

白書では、SATが地方警察ごとに設置されているにもかかわらず、全国的な視点から警察庁の 一元指揮的での運用がなされている点を強調。
つまり、SATは発足当初から、各都道府県警の通常の機動隊とは一線を画す「日本政府直轄に近い統制」が行われていたことが読み取れる。
今日のSATの装備や出動事例を考察するうえでも、この部隊運用の位置づけが明確に示されている点は極めて重要である。
また白書では、SATの装備や訓練水準についても言及されているが、特に専用の訓練施設の整備や、最新の装備導入が図られており、隊員には高い専門技術と即応性が求められる実情に触れている。
SATは機動隊のバリアントではなく、国家レベルの治安維持を担う重要な戦力として、法整備や制度面の支援を受けながら強化されてきたことが記されている。
白書には明確な表現で、SATが「銃器使用事案等の重大事案に対する初動対応力の強化」の中核を担っていることが述べられており、地方自治体の枠組みを越えた広域的な治安対処部隊としての役割が示されている。
【出典】
警察白書 平成16年版 第7章「警察の危機管理体制の強化」>「特殊急襲部隊(SAT)」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h16/hakusho/h16/html/F7002020.html警察庁 警備局「焦点」第279号(PDF) 特集:重大事案における初動対応体制の強化
https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten279/pdf/p18.pdf
1. 設立と任務
設立年:1996年(平成8年)に正式発足。
任務:重大凶悪事件、テロ、ハイジャック、立てこもり事件等に対応し、迅速かつ専門的な対処。
配備:2025年時点で、東京都、大阪府、北海道、千葉県、神奈川県、愛知県、福岡県、沖縄県。
指揮系統:警察庁警備局警備運用部警備第三課の指導下。
【出典】
警察庁「令和3年 警察白書」https://www.npa.go.jp/hakusyo/r03/index.html
2. 前身部隊
SAT(Special Assault Team)は、1996年に正式に発足したが、前身には警視庁第六機動隊特科中隊(SAP)や大阪府警第二機動隊(零中隊)が存在している。
これらの部隊は77年の日本赤軍によるハイジャック「ダッカ事件」を契機に発足したものであったが、警察は存在を認めず、国民には一切非公開の非公然部隊であった。
【出典】
朝日新聞 http://www.asahi.com/special/070518/TKY200705180228.html
95年、オウム真理教信者を名乗る男によって、全日空機がハイジャックされ、北海道・函館空港に着陸した事件で警視庁SAPが出動し、初めてその存在が明らかになった。

函館空港ハイジャック事件で突入の瞬間。当時の映像より(引用元 北海道テレビ放送 HTB)
この際、一部は全日空の整備服を着て偽装した道警機動隊員と警視庁SAP隊員が機内に突入し、被疑者を確保した。
96年のSAT正式発足により、現在の体制となったが、警視庁では当初SAPを踏襲し、第六機動隊にSATを置いたのちに警備部警備第一課に移管、機動隊からは独立させている。
3. SAT/SAP/零中隊の主な出動事例(報道確認済)
【直接介入】1979年 三菱銀行立てこもり事件(大阪)【突入支援】
大阪府警零中隊(SAT前身部隊)が初の突入実績。犯人射殺・人質救出が行われた(当時の新聞報道)。【突入支援】1995年 全日空857便ハイジャック事件(函館空港)
北海道の警察と警視庁第六機動隊特科中隊SAP(SAT前身部隊)が合同で出動。SAP隊員が機内突入支援を行った(NHK報道記録に基づく)。【突入支援】2000年 西鉄バスジャック事件(福岡)
福岡県警SATおよび大阪府警SATが出動し、広島県警の銃器対策部隊と合同で対応。現場では後方支援を行ったと報道されている。【突入支援】2003年 名古屋立てこもり放火事件(愛知)
愛知県警SATが出動。犯人が死亡する騒動となったと中日新聞などが報じた。【直接介入】2007年 愛知県長久手町立てこもり発砲事件
愛知県警SITおよびSAT、大阪府警MAATが出動。後方支援のSAT隊員が犯人の弾に被弾し、殉職と報道された。【直接介入】2007年 佐世保銃乱射事件(長崎・ルネサンス事件)
福岡県警SATが出動し、長崎県警銃器対策部隊と合同で犯人の捜索任務に対応と報道された。【突入支援】2012年 愛知県豊川市の豊川信用金庫蔵子支店人質立てこもり事件
愛知県警察SATがSITと共に出動し、SITの突入を支援したと報道された。- 【突入支援】2023年 長野県中野市4人殺害事件
警視庁の特殊捜査班 (SIT) および神奈川県警察SATが応援派遣されたと報道された。長野県警は“犯人は説得して投降”と記者発表した。
⚠️ 注意点
SATの出動は、報道により事実確認されたもののみを記載。
出動時の詳細な装備や人員規模については、報道では省略される傾向がある。
- その他、90年代の事件は、報道ベースで確認できる事例が限られている。
1996年に発生した「在ペルー日本国大使公邸占拠事件」に関連して
1996年(平成8年)12月17日に発生した「トゥパク・アマル革命運動(MRTA)」による在ペルー日本国大使公邸占拠事件に関連して、当時、警視庁の特殊急襲部隊(SAT)が日本国内で突入シミュレーションを実施していたという指摘もある。
詳しくは以下の記事にて考察を行った。

戦闘以外のSATの任務
SATの知られざる任務としては、テロの標的にされやすい国の元首が来日した際の私服警護、アメリカやイギリスなどの大使館警備、さらにテロリストや要注意人物の顔や特徴を掴むための情報収集(採証治動)がある。
【出典】
三才ブックス「ラジオライフ 2005年2月号」
特殊急襲部隊(SAT)と他部隊の連携
警察庁資料にみる任務分掌と共同運用体制
平成15年版警察白書によれば、特殊急襲部隊(SAT)は、銃器や爆発物が使用される凶悪事件や重大テロに対応するため、全国7都道府県警察に設置されている部隊である。
SATの設置目的は、「銃器使用事案等への迅速かつ的確な対応体制の確立」にあり、1996年の設立以降、地方警察組織の一部にありながら、警察庁の統制下で全国運用される体制がとられている。
SATの運用において重要な要素は、単独行動ではなく、他部隊との有機的な連携である。
警察庁は、SATが出動する事案において、まず第一段階の対応を担うのが機動隊等に編成された「銃器対策部隊」であると明言している。

銃器対策部隊は、事件発生時に初動を担い、現場の封鎖、被害者救出、またはSAT到着までの防御線確保などを任務としている。
SATは、こうした銃器対策部隊の支援を受けつつ、より直接的な介入・制圧を行う。
さらに警察庁は、化学兵器や生物兵器などを用いたテロ、いわゆるNBC(Nuclear, Biological, Chemical)事案に対応するため、8都道府県警察にNBCテロ対応専門部隊を設置したと公表している。
SATは物理的制圧を担うのに対し、NBC部隊は汚染の封じ込めや除染など、特殊環境下での専門的対応を行う。
両者は任務領域を分担しながら、必要に応じて共同で現場に投入される体制となっている。

また、白書では自衛隊との連携にも言及がある。警察と自衛隊は、有事や災害対応における役割分担を確認し、日常的に訓練や連絡調整を行っている。
SATは、地理的に遠方の現場に展開する際、自衛隊や海上保安庁の輸送手段を利用するとされ、これも制度上の支援体制として整備されている。
このように、SATは単独の作戦部隊ではなく、銃器対策部隊、NBC対応部隊、さらに必要に応じて自衛隊などとも連携し、階層的・複層的な治安対処体制の中に位置付けられていることが警察白書から読み取れる。警察庁は、各部隊の役割を明確に分掌しつつ、統合的な治安対応力を確保するための制度整備を段階的に進めてきた。
【出典】
警察庁『平成15年 警察白書』第6章「公安の維持」>「警察の対応」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h15/html/E6001020.html
SATの装備変遷 ― 2002年公開の動画から読み取る個人装備の事実

画像の出典 2002年に公開された警視庁SAT訓練映像(警察庁)
SATの装備は、地域警察官と異なる警察装備として、例外的に軍用規格に準じた高性能な火器と戦術装備を配備する。

2025年現在、MP5A5をSAT隊員が構えている姿は複数の報道映像でも確認されているが、その配備状況が公的に詳細が明らかになったのは、2002年に警察庁が初めて公開した警視庁SATの公式訓練映像による。
以降、主に報道写真・訓練取材・公開映像などから分析されてきた。
● 火器の変遷と現行装備
【初期】
その中で隊員がH&K MP5(9mm短機関銃)、USP、グロック19などを携行している姿が正式に公知された。


なお、SAP時代はH&K P9S拳銃を使用していたという。

画像の出典 2002年に公開された警視庁SAT訓練映像(警察庁)
当初からフレームにはフラッシュライトが装着されており、装備の現代化の一端といえる。
近年の報道によれば、SATに配備される拳銃に関しては、USPの登場が減り、代わりにSIG P226Rの使用が確認できる。

特殊部隊SATが使用するSIG P226R自動拳銃
陸上自衛隊特殊部隊および海上自衛隊特殊部隊でも配備されており、日本政府機関が信頼性を置くハンドガンである。
なお自衛隊においては2020年に新拳銃として「SFP9」の配備を決定したが、警察でも機動隊を中心に配備しが判明している。

MP5に対する日本警察庁の類稀なる信頼
現在、日本警察ではMP5をSATのほか、刑事部のSITや機動隊の銃器対策部隊などに配備している。
このうち、警備部で配備されるMP5はセミ、フル、3点バーストを備えた通常モデル、SITの配備するMP5はシングルファイヤ(連射機能がない)モデルとなっている。
一方で、前身である警視庁特殊部隊『SAP』および大阪府警特殊部隊『零中隊』では、70年代の発足当初から、サプレッサー仕様のMP5SDの使用を明かす元警察官の証言がある。

警察庁ではMP5を以下のように評価している。
この機関けん銃は、銃の性能に対する信頼性、警備対象となる重要施設周辺の環境、外国警察における導入実績等を考慮し、上記のような任務に当たる銃器対策部隊員等が所持するのにふさわしい銃種として選定したものであり、国際テロ情勢等を踏まえながら、的確な運用を行うこととしている。
出典および引用元 警察庁公式サイト『平成14年 警察白書:(2)テロ対処部隊の活動』:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h14/h140202.html

【中期】
2005〜2007年にかけ、北海道や愛知での合同訓練現場にSATと見られる部隊が参加し、MP5を確認。
【近年】
2020年以降、主たる銃器はMP5が引き続き配備されているが、副装備では当初見られたグロック19やUSPは報道で見られなくなり、拳銃はP226Rに統一されていると推測される。
なお、2021年には警視庁自動車警ら隊の地域警察官がグロック45を使用していることが確認されている。

● 個人装備の特徴
出動服:正式公開当初から現在に至るまで、紺系のアサルトスーツが着用されている。外国の特殊部隊が着用する戦闘服と同等の耐熱性が推測される。一方で、オーストラリアのクイーンズランド州における訓練においては陸上自衛隊と同じ2型迷彩服の着用も確認されている。
アーマー:当初の防弾チョッキは大部分が強度の高い合成繊維を使った防弾素材とされている。その後、プレートキャリア型のハードアーマー(Level III以上と推定)へと移行。2007年の長久手町事件で殉職者が出たため、現在は上腕部を保護するプレートが追加されている。
ナイトビジョン:偵察機材として配備。
その他装備:ドア破壊用バッティングラム(鉄製の大型ハンマー)、集音器材なども配備。
警察系特殊部隊であるSATの主力装備が9ミリ口径の短機関銃MP5であることを踏まえると、陸上自衛隊の特殊作戦群と比較しても、SATはより柔軟かつ市街地に特化した運用が際立っているといえる。
装備の選定にあたっても、あくまで最小限の武力行使に基づく法執行機関としての役割が反映されており、その使命と運用思想の違いが明確に表れている。
【出典】
警察庁による「警視庁特殊急襲部隊SAT」訓練動画公開(2002年)https://www.youtube.com/watch?v=PUmYUVqM6Uo
報道機関による公開訓練映像
愛知県警SAT隊員殉職がSAT運用に与えた影響
2007年5月、愛知県長久手町(当時)で元暴力団組員の男が38口径の回転式拳銃を所持して民家に立てこもり、発砲によって犯人の家族や警察官が負傷する重大な事態となった事件において、愛知県警察特殊部隊SAT隊員が殉職した。
これはSATに初の殉職者が出た事案である。
この事件はSATの運用体制と装備選定に重大な影響を及ぼしたとされる。
以下に、事案後における実際の変化と、それが意味する教訓について解説する。
個人防護装備の強化
殉職した愛知県警SAT隊員は、元暴力団組員の被疑者が立てこもった民家から約10メートルの道路上でチョッキ型の防弾衣に防弾ヘルメットを着用し、同僚隊員らが防弾盾をかざした上で拳銃を構え、玄関前に撃たれて倒れていた長久手交番の巡査部長の救出を後方から支援していた。
なお、実際の救出活動の主力はSATではなく、SITであった。
その際、隊員は被疑者が発砲した拳銃弾(38口径の回転式拳銃でスペイン製ルビー・エクストラ (Ruby Extra)と見られる)に被弾した。
弾丸は盾をかすめて、隊員の左の肩口から左胸に入ったという。
朝日新聞の報道によれば、防弾チョッキは高強度の合成繊維で構成されていたが、弾丸の進入角度が悪かった可能性が指摘されている。
この事案を受けて、警察庁は全国のSAT部隊に対し、個人防護装備の見直しと戦術の再検討を進めた。
とくに、防弾ヘルメット、防弾盾、プレートキャリア型防弾ベストについては、防御範囲と性能の拡充が急務とされた。
従来の装備には、上腕部や頸部の防護に課題があるとされていたため、装備更新ではこれら部位の防御力向上が焦点となった。
SATは都市部における銃器事案に対応する部隊であるという性格上、市街地での至近距離交戦にも耐えうる装備の必要性が改めて認識されたのである。
【出典】
朝日新聞『装備・安全検証へ SAT隊員死亡で警察庁』 2007年05月18日16時41分
http://www.asahi.com/special/070518/TKY200705180228.html
特殊部隊支援班(SSS)の配置
殉職事件以降、警察庁は『特殊部隊支援班(SSS)』、通称“スリーエス”と呼ばれる専門チームを発足させた。
SSSは「SAT Support Staff」の頭文字を略したものである。
SATの効果的な運用と受傷事故の防止を目的に、SATや銃器対策部隊に対して、全国8都道府県警に配置されたSATが現場に出動する際、隊員の態勢などについて現地で本部長に助言するほか、刑事部や本庁との連絡調整を行うとされる。
(2)テロへの対処態勢の強化
〔1〕 テロ対処部隊の充実強化(一部略)
特殊部隊については、平成19年5月に愛知県長久手町で発生したけん銃使用人質立てこもり事件を踏まえ、警察庁において、特殊部隊支援班(SSS)(注4)を編成した。
注2:Special Assault Team
3:N(Nuclear:核)B(Biological:生物)C(Chemical:化学)物質を使用したテロの総称
4:SAT Support Staff、通称スリーエス出典 警察庁公式サイト『平成20年 警察白書』:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h20/honbun/html/k4300000.html
報道によれば、人員は警察庁のほか、警視庁、大阪府警のSAT経験者、現役隊員ら10人程度で構成。
SATが出動した際、このうち2、3人が現地に赴き、警察本部や現場の指揮所などでSATの態勢や活用方法について助言し、本庁警備局や刑事部のSITと連絡調整を支援するという。
これにより、SATの突入行動が「一発勝負」ではなくなり、多層的・連携的な支援体制が整備された。
【秘話】SATの前身『SAP』の個人装備はミリタリー雑誌の通販広告で隊員が自費で「軍拡」していた
日本における本格的な対テロ特殊部隊「SAT(特殊急襲部隊)」は、現代的な装備と訓練体制を持つが、その発足には極めて厳しい歴史があったことをジャーナリストの伊藤明弘氏が伝えている。
それによれば、SAP時代は隊員の苦労が絶えなかったようである。
1977年の「ダッカ事件」を契機に、警視庁や大阪府警などが密かに「対ハイジャック部隊(SAP/零中隊)」を創設。部隊は「存在しない」とされ、予算も付かず、装備は軍事雑誌の通販などを頼りに隊員が自費で調達していた。
とくに個人装備を文字通り、個人の資金で調達したという。具体的な調達方法がミリタリー愛好家のそれと同じである。
まずもって問題となったのは、どうやって装備品を購入していくかだった。何しろ当時は、Amazonはもちろんインターネットも普及していない。活躍したのは、月刊の軍事専門雑誌の広告ページだったという。
もちろん、銃器は正式な国家間での調達であった。
今でこそ、警察庁が警察白書の中でベタ褒めしているSATのメイン武器である『MP5』。

ところが、そのMP5サブマシンガンやヘルメットですら、SAP時代は独GSG9との縁で融通してもらったという。

記事によれば、SAP(Special Armed Police)は警察内部で密かに編成された非公表・非公式の特殊部隊だったため、次のような理由で予算がつかなかったのだ。
■ SAPに予算がつかなかった理由
組織上「存在しない」扱いだったため
→ 正式な部隊名として公文書や予算申請に記載できなかった。秘密裏に編成された特殊任務部隊だったため
→ 予算要求の過程で公開されることを避ける必要があった。結果的に、装備品の調達は個人任せになった
→ 部隊の予算では足りず、隊員が自費で装備(ホルスター、ナイフ、懐中電灯など)を購入。
→ サブマシンガンなど法的に個人が国内調達できない装備は、ドイツのGSG9から借り受けた。
つまり、制度として未整備だったことと、秘密部隊ゆえの「存在を公にできない」というジレンマの結果、隊員の個人的な“軍拡”になったわけだ。
ちなみに、隊員の給料は一般的な警察官の給料とほぼ同じであり、特定の手当てがつくだけだという。
これについては、当時SAP隊員であった元警視庁警察官の伊藤鋼一氏のインタビューから引用した。
ーそんな過酷な仕事ですから一般の警察官と比べると給与面などいろいろ優遇されていそうですね。
基本的に給料は一般の警察官と変わりませんでした。あるとすれば、リペリング降下やヘリに乗った時などに時給60円ほど危険手当が上乗せされるだけです。
あとは、カシオのG-SHOCKが貸与されるくらいでした。
また、優遇とはちょっと違いますが、土日が休みで、宿直勤務がないというのは、警察の他の部署と比べると変わっているところかもしれません。
当時、私は一般のマンションに住んでいたのですが、ご近所の方は私が規則正しい通勤をしていたので、誰も警察で働いているとは思ってなかったみたいです。
引用元 ラジオライフ2005年2月号
1995年、全日空857便ハイジャック事件で初の強行突入が実施され、特殊部隊の存在がマスコミを通じて明るみに出た。
これを契機に1996年、正式な部隊としてSAT(特殊急襲部隊)が発足するまでは、存在を隠す必要があったことが、予算上の最大の障壁だったということだ。
なお、SAP時代から対戦車ライフルを装備していたという。
このように、部隊を取り巻く環境は厳しかったが、隊員たちは選び抜かれた精鋭だった。スナイパーは、ボルトアクション式の狩猟用ライフルから対戦車ライフルまで、さまざまなライフルでの訓練を行っていた。
訓練は深夜の羽田空港で極秘に行われ、スナイパーは機体に仮想のXY座標を思い描いて射撃するなど、極限状況を想定した訓練が続いた。
その後も、西鉄バスジャック事件(2000年)、長久手発砲事件(2007年)など、国内での重大事件で出動し、実戦経験を積んでいるSAT。
記事は、日本の特殊部隊が表舞台に立つまでの「涙ぐましい努力」と、「今なお縁の下で活動を続ける彼らの存在」に光を当て、敬意を込めて締めくくっている。

特殊急襲部隊SATが被疑者の「頭部」を狙う判断
致死的制圧力が意味するもの
あるフィクション作品の中では、「SATが出動したという事実は、自分たちが降伏しない限り、死を意味する」と悟り、恐怖に慄く被疑者の描写が登場する。
こうした描写は、過剰な演出として受け止められることもあるが、その背景には、SATの実際の任務性質に根ざした、ある種の現実が反映されているという見方も存在する。
すでに解説した通り、SATは警察庁および各管区警察局の所管にある対テロ特殊部隊であり、警察組織の中でも最も高度な火器使用と戦術運用が許容された部隊である。
SATが犯人の急所を狙う理由
SATの運用目的は「即応・即制圧」にあるとされている。
任務の性質上、SATには致死力を伴う制圧行動が求められる場面が存在し、必要であれば犯人の急所である頭部を狙って射撃することも辞さない構えである。

実際、SATが展開される状況というのは、通常の説得や交渉では事態の解決が困難であると判断された、極めて危険度の高い最終局面である。
SAT投入自体が、「最終的には致死を伴う武力制圧も辞さない」という重大な方針を示すものと解されている。
SAT隊員の高い射撃能力
元警視庁特殊部隊SAP・伊藤鋼一氏によれば、SAP時代の射撃訓練は週に3回ほどだったという。
普段はどんな訓練をしていたのですか?
軸となるのは、スタミナ、後敏性、射撃術を向上させる訓練です。
特に射撃は週に3回は訓練を行っていました。一般の警察官なら射撃練習は年に1~2回程度。それと比較すればいかに多いかが分かると思います。また一般の警察官と比べると射撃の練習方法も違います。
(引用元 三才ブックス「ラジオライフ 2005年2月号」元警視庁特殊部隊SAP・伊藤鋼一氏インタビュー)
年数回という地域警察官などの射撃訓練実施回数に比べると、如何に多いかがわかる。

さらに「射撃時は必ず静止して発砲する」という。
私がいたのは先陣を切って強行突入する “制圧班”。当然、狭い航空機内での戦闘や、テロリストとの銃撃戦を想定した訓練になるわけですから、いわゆる静止した状態で動かないターゲットを撃つというものではありません。
具体的には「移動→静止→照準→射撃→移動」という一連の動作をいかに早く正確にこなすかということを中心に鍛えていました。
銃を撃つ時は必ず静止するんですか?
はい。映画みたいに走りながら正確な射撃をするなんて芸当はよほどの達人でもない限りできません。万が一でも人質に当てるようなマネはできませんからね。
また、映画などに出てくる特殊部隊員は格闘家のような強さを見せますが、それは事実と少し違います。確かに毎日のようにアフター5は、空手、柔道、合気道などの徒手格闘術の稽古がありましたよ。しかし実戦で重要になるのは、先ほど上げた3つの要素と他の隊員との連携です。
(引用元 三才ブックス「ラジオライフ 2005年2月号」元警視庁特殊部隊SAP・伊藤鋼一氏インタビュー)
【出典】
三才ブックス「ラジオライフ2005年2月号」元警視庁特殊部隊SAP・伊藤鋼一氏インタビュー
「一撃で無力化する」ための選択・・根拠は?
SATの前身にあたるSAP(特殊部隊)出身の伊藤鋼一氏が記した著書『警視庁・特殊部隊の真実: 特殊急襲部隊SAT』においても、SATの行動理念は「即応・即制圧」であり、現場では「怯まず、かつためらうことのない制圧行動」をとることが当然の前提とされる。
2025年現在において、SATによる被疑者射殺の公式記録は確認されていないが、SATの射撃行動が最終手段であることに変わりはない。
その戦術下において、急所を狙うという合理的で致命的な行為は、人質や周囲の無関係な人命を守るための、極限下での決断として位置付けられていると言っても過言ではないではないだろう。
このことを裏づけるように、これまで確認できる範疇では、報道等で公開されてきたSATの実弾訓練において、標的の頭部をピンポイントで狙う射撃シナリオが含まれている例が見られる。

引用元 ANNnewsCH サミットを来年に控え 特殊部隊SATの訓練公開(15/12/23)
これは威嚇射撃や単なる制圧を目的としたものではなく、犯人による引き金操作や起爆といった次の行動を即座に封じ込めるための一撃として、標的の三角形ゾーン(額から鼻筋を結ぶ逆三角)を狙い撃つ(即死または即時の行動不能を想定)という合理性に基づいた選択が採用されていることを示している。

引用元 時事通信トレンドニュース警視庁、神奈川県警SAT合同訓練=実弾連射、閃光弾投てき、狙撃で犯人制圧
こうした極限の現場において、一瞬の判断で制圧を完了させる訓練内容は、犯人の即時無力化を想定した現場対応の一環である。
同様の概念は、アメリカ合衆国の「連邦航空保安官」(Federal Air Marshal)にも見られる。実名非公表の現職保安官の証言によれば、彼らは「攻撃者を撃ってその行動を止める」ことを徹底的に訓練されており、まずは胴体といった致命的打撃が可能な部位を狙い、次に神経系を遮断する目的で頭部を撃つとされる。
航空機という密閉空間においては、犯人が爆発物を所持している可能性を念頭に置く必要があり、その起爆を防ぐには瞬間的な無力化が不可欠という判断が背景にある。
また、頭部狙撃の概念は、SATが模範としている海外の特殊部隊、たとえばドイツのGSG-9やイギリスのSAS、フランスのGIGNなどと共通しており、いずれも「ワンショット・ワンキル」による迅速な無力化を基本戦術として採用している。
このように、頭部を積極的に狙撃するという行為は、単なる致死性の高さを求めたものではなく、犯人の「次の行動」を起こさせないための最終的な抑止手段であり、制圧戦術として現場レベルで合理性がある。
これは日本におけるSATの訓練と、各国の特殊部隊、アメリカの航空保安官の実務とで共通する、安全保障上の「即応力」の体現と言えるだろう。
警察の致死的制圧の事例-「過剰な警察権の行使」といった批判も
当然、SATでは詳しい運用基準を公開しておらず、被疑者に対する行動指針など、手の内を明かすことなどないため、類推せざるを得ない。
ただ、諸外国の例を見る限り、特殊部隊の行動指針は「死なせるために撃つ」のではなく、「被疑者に対して致死的制圧を行使しなければ人質が命を奪われる」状況においてのみ撃つという厳格なルールのもとに行動している。
SATが諸外国の部隊を手本としているならば、同じ指針であることは明白だ。
一方で、このような致死的制圧手段に対しては、市民や一部の人権団体から「過剰な警察権の行使」といった批判が出ることもある。
警察の対応が結果的に“犯人射殺”という重大な帰結を招き、当時大きな社会的批判を浴びた例として、1970年5月に発生した『瀬戸内シージャック事件』がある。
広島県の呉港から出港した旅客船「ぷりんす号」が、ライフルを所持した20歳の被疑者に乗っ取られたハイジャック事件である。
船は出航直後、ライフルを所持した被疑者に制圧され、被疑者はその後警察のヘリや船舶に向けて銃を発砲し、警察官が胸を射たれるなどして重傷を負った。
ぷりんす号の乗員9人と乗客37人の安全を守るため、当初警察は説得と交渉による解決を模索したが、最終的に射撃制圧を決断し、大阪府警の狙撃手が犯人を狙撃、被疑者は死亡した。
これは戦後初の犯人狙撃によって人質を救出した事件であもるが、警察側の対応に際して、産経新聞は世論調査を実施し、過半数の国民はあの場面での狙撃は妥当であると答えた調査結果を公表した一方、批判の声もあった。
また、一部の弁護士グループが狙撃を行なった大阪府警の機動隊員を地検に告発した動きもあった。
当時の警察組織には特殊部隊がなく、高度な人質救出訓練体制は整備されておらず、装備・戦術の限界が背景にあったことも否定できないという見方もある。
一方で、1979年に発生した「三菱銀行人質事件」においても、大阪府警察本部警備部第二機動隊の零中隊(現在のSATの前身部隊)が突入作戦を実施し、7名の隊員が強行突入の上で被疑者に対して計8発の銃弾を発射し、射殺した事例がある。
このとき、使用された拳銃は45口径であり、発射された弾丸のうち1発は被疑者の頭部に命中していたとされている。
この事案は、警察による実力行使の究極的かつ限界的事例として位置づけられている。
作戦に際しては、すでに警察官や人質が4名殺害されていたことから被害拡大を防ぐために警察がやむを得ず射殺を辞さない強行突入に踏み切ったとされており、その判断と対応は事件当時から現在に至るまで検証の対象となってきた。
一方、同じく警察の特殊部隊であるSIT(特殊犯捜査係)は、被疑者の説得や確保に重点を置き、必要最小限の武器使用によって抵抗の排除を行う。

SATの任務は、あくまでその先─すなわち、説得や包囲、交渉が破綻した場合の「最終局面」における強制制圧を担っている。
「最終制圧任務部隊」としてのSATの責務は、あくまで市民の生命を最優先に確保し、脅威の排除を最短時間で実現することにある。
これが、SATが“日本警察の最後の切り札”と一部で呼ばれる所以だ。
SATは1996年の正式な発足以降、警察庁の統括のもと、きわめて慎重な運用がなされており、投入はあくまで極限状況における最終的選択肢として位置づけられている。
ただし、2025年7月現在において、SATが制圧行動の中で被疑者を射殺したという公式な記録は存在していない。
しかしながら、SATが現場に投入されるという事実それ自体が、「致死的な制圧」が現実の選択肢として存在していることを意味する。
すなわち、SATが展開する状況は、交渉や通常の説得によっては解決困難であると判断された事態であり、隊員による制圧行動が治安回復のための合法かつ不可避なものである可能性を含んでいる。
このように、SATによる頭部への射撃は、無差別な暴力行為ではなく、あくまで国家の治安維持における「最後の矜持」である。
そして、社会秩序を崩壊させかねない事案に対して、国家がいかにして公共の安全を守るかという「テロ抑止」の観点から、SATの存在は今後も議論の対象となり続けるだろう。
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SAT選抜条件の“定説”を検証―「未婚・若年・近視不可」説の根拠
このように、特殊急襲部隊SATに関しては、その活動内容とともに、隊員選抜の条件についても長年さまざまな情報が出回ってきた。元隊員へのインタビューや著書など、公的ではないが現場経験者の言葉は重い一方で、一部の書籍や映像作品等を通じて独り歩きしてきた裏付けに乏しい“通説”もある。
そのようななかでも広く知られているのが、「SAT隊員は未婚者で25歳以下、近視は不可」といった隊員選抜の条件である。
この説は、2002年に出版された毛利文彦氏の著書『警視庁捜査一課特殊班』に登場した。
しかし、この「条件説」については、同書出版当時から、かつて警視庁の特殊部隊SAP(SATの前身)に所属していた関係者などによって、裏付けに疑問が呈されていた。
つまり、それが制度的な選抜要件なのか、あるいはあくまで隊員像にすぎないのかという点である。
この点に関連し、1996年5月28日付の中国新聞では、SAT公式発足時の実情が報道されている。記事には、「警視庁第6機動隊SAT隊員の平均像」として、まさに「未婚・若年・視力良好」といった特徴が記載されている。
これは、毛利氏の記述と符合する内容であり、少なくとも当時の報道に基づく一定の事実認識に基づいている。
警視庁の第6機動隊といえば、SATの前身である当時のSAPの配備先である。SAP時代は隊員の私費装備など、逸話や苦労話はすでに記した通りだ。
新規発足当時はSATもまだ機動隊の中の部隊であったが、現在は機動隊からは独立している。
ただし注意すべきは、これはあくまで「平均像」の紹介であり、制度上の「選抜条件」ではないという点である。
銃器を使ったハイジャックやテロなどの凶悪犯罪に対処する警察の特殊部隊「SAT(Spe-cial Assault Team=特別攻撃チーム。通称サット)」の存在が公表された。
7都道府県警察に配備され、重大事件が発生したときは、県境を超えて出動、強行突入して犯人検挙、被害者の救出にあたるという。
前身は警視庁と大阪府響に約20年前に誕生した”秘密部隊”。今回の存在発表は、銃器犯罪が多発する中での「犯罪抑止力」という要素も強いようだ。
この秘密部隊はハイジャック事件の頻発を受けて77年に創設された。正式名称はなく警視庁の普備関係者の間では「SAP」とか「6機の特殊(部隊)」とか呼ばれてきた。過去の約20年間で、その姿を垣間見たのは95年6月の全日空機ハイジャック事件のときだけ。
第6機動隊のSATは3個班体制で、合計60人。平均的な隊員像は25歳以下の独身、身長165~180cm、懸垂40回以上、腹筋1,000回以上、1,500m走5分以内と体力抜群。ほとんどの隊員が空手や少林寺拳法、サッカーなどの経験者で近視は不可。機動隊の中から指名されるエリートたちだ。
各班内は「突入・制圧班」、突入の足場を作る「支援班」、「狙撃班」など役割が細分化されている。
「ぴったりと息を合わせて秒単位で正確に任務を遂行する訓練を積んでおり、ほかの部隊との混成は難しいくらい訓練度が高い」と関係者は話している。
海外の先輩特殊部隊であるSAS(英)、GSG9(独)などへも隊員を派遣してノウハウを蓄積してきた。またGSG9の隊長を日本に招いて学んだこともあるとか。公表された装備は防弾性の透明なマスク付きヘルメット、防弾チョッキ、ライフル、高性能自動けん銃、レーザー距離測定機、暗闇でも視界が維持できる暗視装置など。
(引用元 1996年5月28日/中国新聞)
ただし、“独身説”についてはその後、2007年の愛知県警SATの殉職事案において、凶弾に倒れた隊員が家庭を持っていたことが報道で明らかになっており、「未婚でなければならない」という条件が実際に存在した可能性は低い。
少なくとも、厳密な応募条件としては現在に至るまで確認されていない。
また、近視に関しても同様で、イカロス出版『最新 日本の対テロ特殊部隊』(2010年)などで「眼鏡着用者は選抜されない」との指摘が見られるが、これについても、1996年の同報道では「近視は不可」とされており、やはり当時の実務的な傾向を反映した内容と考えられる。
元SAP隊員の伊藤鋼一氏のインタビューから
ラジオライフ2005年2月号には警察特集が組まれているが、その中にSATの前身である元SAP隊員の伊藤鋼一氏のインタビューが掲載されており非常に興味深い。
第六機動隊はSATの予備軍!?
ー警察組織の精鋭部隊SATですが、どういう人がなれるんですか?
私がいたSAP時代は、世間一般にいわれている25歳以上の健康で優秀な独身警察官というような厳密な規定はありませんでした。
実際に22~23歳の隊員もいましたし、既婚者もいました。選抜される流れは警視庁の場合、まず警備部の幹部がSAPになりうる素養を持った人間を書類選考、適正を判断すると第六機動隊に集めます。
そしてそこから更にふるいにかけられ、SAPの適正ありと判断されるとある日いきなり上司に呼び出されます。
そこで初めて、SAPの試験入隊に参加する意志があるかを聞かれるわけです。試験入隊とはSAPになりうるだけの資質があるかを確かめるための適正テストみたいなものです。
ビルの10階ほどの高さから命綱一本で飛び降りさせられたり、約30kgの土嚢を背負っての30mダッシュ、腕立て、腹筋、懸垂、長距離走を失継ぎ早にやらされるというハードなもの。平たくいえばシゴキですね(笑)
誤解を受けるといけないので補足すると、試験入隊を真摯に考え、危険と隣り合わせの任務に付く特殊部隊員になることを真剣に考えているかを見分けるため行っています。私がいた頃は毎年、6人くらいのSAP候補者が試験入隊に来ましたが、半数近くはギプアップしていきました。
(引用元 ラジオライフ2005年2月号)
また、伊藤鋼一氏によれば、SATは普段、テロに遭う可能性の高い外国大使館の警備任務にも就いているという。
SAT選抜における基準は現在も明確には公開されておらず、公式情報として確認可能なのは、体力、精神力、射撃技能等の高度な適性が求められるという点にとどまっている。
こうした状況から判断すると、現在広まっている「条件説」の一部には、過去の報道に基づいた根拠があるものの、それが制度上の絶対条件であるとは限らず、実際の選抜では時代に即して緩和されたり、より柔軟で多面的な評価が行われている可能性が高い。
また、報道や出版物に基づく検証は今後も必要だが、情報の出所と文脈を慎重に見極める姿勢が求められる。
余談だが、上記1996年の報道ではSATの装備品についても触れており、興味深い。
装備品が公式に映像公開されたのは2002年であるので、96年当時はまだ「高性能自動けん銃」のモデルについて明らかになってはいない。

まとめ
SATは、制度、装備、人員、運用のすべてにおいて、警察の中でも最も高度かつ特殊な部隊である。
なお、米国のFBIにはSATに近い特殊部隊としてHRTと呼ばれる特殊部隊が編成されている。
今後も警察白書など一次資料を通じて、その実像に迫りたい。
■ 参照・出典資料リンク(市販書籍)
三才ブックス『ラジオライフ2005年2月号』2005年
毛利文彦『警視庁捜査一課特殊班 (角川文庫)』、2002年
イカロス出版『最新 日本の対テロ特殊部隊』、2010年
中国新聞1996年5月28日付「ベール脱いだSAT」
■ 参照・出典資料リンク(警察庁公式サイト)























































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コメント
[…] 日本警察では、2002年にSAT(特殊部隊)の訓練動画が公開された際、グロック19の配備が公にされました。さらに、近年ではグロック17が警視庁のSP(警護官)に配備されています。 […]
[…] さらに2000年代以降は、映画、漫画、アニメ、小説とメディアを問わず“自衛隊の非公然な機関が特殊作戦”を扱う作品が続出しており、その描写は多様化している。「非公然」とは、その存在が公になっていない機関や活動のことである。軍事の世界では長らく米陸軍特殊部隊「デルタフォース」がそうであった。日本の警察では70年代に創設されたSATの前身部隊「零中隊(大阪府警)」や「SAP(警視庁)」がそうであろう。警察庁が一切その存在を認めなかったのだ。 […]
[…] あと、警察さんのSAT(特殊急襲部隊)も陸自の2型を着とることがあるらしいで。 […]
[…] また、こんな実例もあります。オーストラリアのクイーンズランド警察が“自衛隊の迷彩服を着用し、MP5を構える日本警察特殊部隊SAT隊員”の画像を警察の広報誌に載せた騒動はとても興味深い事例です。警察や自衛隊の特殊部隊の装備は日本側にとって非常に敏感な情報であり、公にされることに対して当局者が警戒感を抱くのは理解できます。 […]
[…] 一方で、陸自特殊作戦群におけるM4カービンの秘匿配備、海自特警隊のH&K HK416導入、さらに警察特殊部隊(SAT)によるMP5の運用など、国内でも特殊部隊における装備の高度化・国際化が進む中、陸自では半世紀近くにわたって日本の防衛を支えてきた64式はその役割を終えた。 […]
[…] 警察では警視庁や神奈川県警特殊部隊SATで配備しており、さらにはUSPを発展改良させたP2000を警視庁SP用として配備する。 […]
[…] 日本国内でのP226運用状況は、警視庁や神奈川県警SAT、海上保安庁特殊部隊などでも確認されている。 […]
[…] 事実、2002年には警察庁が特殊急襲部隊(SAT)へのMP5配備を正式に公表しているが、それ以前から大阪府警の特殊部隊「零中隊」が試験的にMP5を導入していたという元警察官の証言も存在する。これらの記録を踏まえれば、日本政府や関係機関においてMP5運用の知見はすでに存在していたと考えられる。 […]
[…] この89式小銃は、自衛隊の他に、海上保安庁や警察のSAT(特殊急襲部隊)にも配備されており、日本国内で広く運用されている制式小銃の代表格といえる。 […]
[…] 政府専用機の機内では、上級職の搭乗者──たとえば総理大臣や外務大臣、皇族といった要人──には寿司や和牛ステーキ、高級ワインなどの豪華な食事が提供される。一方、同行するSP、SAT、外務省職員、報道関係者などには、ハム、ソーセージ、目玉焼き、サラダなどのシンプルながら栄養バランスに配慮されたメニューが供される。 […]
[…] 新型デジタル迷彩作業服を着用した隊員たちは、実戦的な突入訓練を行っており、警察特殊部隊SATなどでも採用されている器材『ドアブリーチャー』を用いて建物への突入を行う。 […]
[…] 仮に敵対勢力によるJR変電所、浄水施設、携帯通信網(NTTドコモ等)、電力鉄塔、警察機関施設等への破壊・攪乱・コマンドゥ攻撃が行われた場合、即応するのは警察力(特殊部隊SATおよび機動隊各機能別部隊)に加え、特殊作戦群が投入される可能性が想定されている(※典拠元 自衛隊統合運用教範②、2023年政府防衛白書③)。 […]