このページでは、市街地で最も一般的に見かける、白黒ツートンカラーの「警ら用パトカー」について解説します。
警察車両の配備は、国費による調達仕様書(いわゆる入札仕様)に基づく車両と、各都道府県警察が県費で独自に導入する車両の、双方によって構成されています。

街頭で見られるパトカーは、一見するとどれも同じように見えますが、実際には所属部署や任務内容によって複数の種類が存在します。たとえば、警察署の地域課や交通課が運用する車両のほか、都道府県警察本部に所属する自動車警ら隊、交通機動隊など、本部直轄部隊が使用する車両もあります。
これらのパトカーは、所属部門ごとに車種の選定基準や運用方針が異なっており、その違いが外観や搭載装備にも反映されています。
今回は、警ら用パトカーに搭載されている各種装備や、その役割・構造について詳しく解説していきます。

パトカーの装備品各種
車体には警光灯やサイレンスピーカーが搭載されており、車内には車載無線機、各種資機材や装備が積載されています。さらに、一部車両では後席に被疑者対応を想定した防犯装備や、資機材収納設備などが設けられている場合もあります。
外部から見える赤色灯だけが、パトカーの機能ではありません。

警ら用パトカーは法執行のために多様なツールやデバイスを搭載。その中身は。
赤色灯&昇降装置 現在主流のライトの名称はパトライト社の「エアロブーメラン」
現在、各都道府県警察で配備されているトヨタ・クラウン(200系・210系・220系)などの警らパトカーには、赤色警光灯と、その視認性を向上させるための昇降装置が装備されています。
この昇降式警光灯は、停車時にルーフ上からさらに持ち上がる構造となっており、周囲の車両や歩行者に対して、警察車両が活動中であることを強く視認させる効果があります。

警ら仕様PCのルーフに設置された赤色灯&昇降装置
こうした構造自体は、1980年代頃から道路公団のパトロールカーなどでも採用されていたため、まったく新しいものではありません。しかし、近年の警らパトカーでは、通常状態でも警光灯位置が高めに設定されており、被視認性の向上が重視されています。
昇降装置は、電動機構とガスダンパーを組み合わせた構造となっており、車種や架装によっては、サイドブレーキを作動させた状態でトランクを開けると自動的に上昇するタイプも存在します。

警ら仕様PCのルーフに設置された赤色灯&昇降装置
この装備が本格的に導入されるようになった背景には、交通事故現場などで本線上に停止して活動していた警察官が、後続車にはねられて殉職する事故があったとされています。より遠距離から警察車両の存在を認識させる必要性が高まり、視認性向上装備として昇降式警光灯が普及していきました。
なお、この昇降装置は主に警察署地域課や自動車警ら隊の警ら用パトカーに採用されているものであり、交通機動隊や高速道路交通警察隊の交通取締用車両では、通常は装備されていません。
赤色警光灯のメーカーとしては、パトライト製が主流で、特に「エアロブーメラン」シリーズは全国の警察車両で広く採用されています。一方で、少数ながら小糸製作所製の警光灯も導入例があります。
近年では、赤色警光灯の上部へ360度カメラを追加搭載する事例も増えており、警光灯ユニット自体が「情報収集装置」の役割を兼ねるようになりつつあります。
ちなみに、日本のパトカーで円柱型の回転灯が主流だった時代に、現在のような横長バータイプの「散光式警光灯(バーライト)」導入を提案した人物として知られているのが、映画評論家の水野晴郎氏です。同氏はアメリカ警察事情に詳しく、日本警察へのバーライト導入を提言していたことで知られています。

また、パトカーでは、車両前面にも「前面赤色警光灯」が装備されています。これはフロントグリルやダッシュボード付近へ組み込まれる補助警光灯で、交差点進入時などの被視認性向上を目的とした装備です。
210系クラウンではLED式前面警光灯が標準的装備となりました。
LED式前面警光灯は従来のハロゲン式に比べて消費電力が少なく、発光応答速度にも優れており、長寿命であることから、210系クラウンからは標準装備となりました。
街頭犯罪対策として全方位カメラの搭載が進むパトカー
近年、街頭犯罪対策や警察活動の記録強化を目的として、パトカーの赤色灯上部に「全方位カメラ」を搭載する運用が進められています。
この装置は、従来の前方記録型ドライブレコーダーとは異なり、車両周囲を広範囲に撮影できることが特徴です。機種によって仕様は異なりますが、全天周型カメラや高解像度CMOSセンサーを採用したシステムも存在し、映像にはGPS情報や時刻情報が記録されます。
また、運用方式や通信機能の詳細については、警察本部ごとに異なりますが、一部システムでは、警察本部の通信指令センターと連携し、映像のリアルタイム伝送や遠隔確認に対応しているとされます。
従来型の車載ドライブレコーダーは前方記録が中心でしたが、全方位カメラでは周囲全体の状況把握が可能となるため、逃走車両、ひったくり、路上トラブルなどの初動対応や証拠保全能力の向上が期待されています。
この種の車載監視システムは、警察車両だけでなく、消防車両、自治体の防犯パトロール車両、警備会社の現金輸送車などにも導入が進んでいます。
現在のパトカーは、単なる移動手段ではなく、「走る情報収集拠点」としての性格を強めつつあり、全方位カメラはその象徴的な装備の一つと言えるでしょう。
サイレンアンプ&スピーカー
パトカーのサイレンは、センターコンソールに配置された操作スイッチのほか、助手席側フロアに設けられた足踏み式ペダルによっても作動できる構造となっています。
これは、運転中でも視線を大きく逸らさずにサイレンを操作するためのもので、交差点進入時などに瞬時の吹鳴操作を行いやすくする目的があります。

現在の警察車両で使用されているサイレンは、モーター駆動式ではなく、アンプによって音を生成する電子サイレン方式です。
国内では、パトライト製のサイレンアンプが広く採用されており、多くのパトカーに搭載されています。一方、過去にはパナソニックやクラリオンなども警察向けサイレン装置を製造・納入しており、メーカーごとに音色や吹鳴特性に違いがありました。

そのため、かつての警察装備ファンの間では、サイレン音を聞き分けてメーカーや車種を判別する楽しみ方も存在していました。
また、サイレンスピーカーの設置位置によっても音の反響や聞こえ方が異なります。ルーフ上の警光灯一体型スピーカーと、グリル内部や車体下部に隠して設置された覆面パトカー用スピーカーでは、音の抜け方や方向性に差が生じるため、経験者の中にはその違いを聞き分ける人もいたと言われています。
サイレン音そのものも、時代によって変化しています。かつては、警視庁のみが独特の高低差を強調した、いわゆる「ファンファン音」を採用していたことで知られていました。しかし現在では、全国的に「ウー」という統一型の電子サイレン音へ移行しています。
サイレン用の外部スピーカーは、多くの場合、警光灯中央部に組み込まれています。降雪地域では着雪対策が必要となるため、北海道などではスピーカー部分に防雪カバーを装着している例も見られます。
もちろん、この外部スピーカーにはサイレンだけでなく、車外向け拡声器としての機能も備わっています。なお、車載無線機用マイクと拡声器用マイクは別系統となっており、細長い形状のマイクが拡声器操作用として用いられることが一般的です。
さらに近年では、交差点進入時の視認性・注意喚起向上を目的として、高音域を強調した新型サイレンも導入されています。高知県警察で、高周波モードへ自動切り替え可能な新型サイレンの運用が報じられています。
ストップメーター

レーダーを搭載していない警らパトカーでも、速度違反の取り締まりを行うことは可能です。それを実現しているのが、矢崎総業やカンセイなどが納入している「ストップメーター」と呼ばれる速度測定装置です。
この装置は、交通取締用の覆面パトカーなどにも広く搭載されており、測定結果を記録紙として印字できる点が特徴です。違反検挙時には、レシート状の測定記録が出力されるため、速度違反で検挙された経験のある人には見覚えのある装置かもしれません。
ストップメーターとレーダー式速度測定器との大きな違いは、測定対象にあります。
レーダー式が対象車両そのものの速度を直接測定するのに対し、ストップメーターはパトカー自身の走行速度と追尾時間を基準として、対象車両の速度を算出する「追尾式」の測定装置です。
そのため、違反車両を一定距離にわたって同じ速度で追尾し、対象車との車間距離が変化していない状態を維持することが、正確な測定の前提条件です。
警察無線&ホイップアンテナ
無線警ら車には、デジタル警察無線機(現在はIPR型)が搭載されています。これが、パトカーが正式に「無線警ら車」と呼ばれる理由です。

白黒パトカーの場合、覆面パトカーのようにアンテナを秘匿・偽装する必要がないため、ルーフ中央には業務用のホイップアンテナが設置されています。一般的には、全長50センチ前後のアンテナが用いられます。

たとえば、トヨタ・クラウンのポリス・パッケージでは、あらかじめアンテナ基台や同軸ケーブルの配線ルートが車両側に組み込まれており、警察装備の搭載を前提とした構造になっています。
また、交通機動隊や高速道路交通警察隊の車両では、運用目的に応じてトランクリッド部分へ追加アンテナを装備する例も見られます。かつては、TLアンテナや、外観がアマチュア無線用アンテナに似たタイプが使用されることもあります。
一方、小型警ら車両、いわゆる「ミニパト」では、多くの警察本部で車載型の基幹系無線機や大型アンテナを搭載していません。
その場合、警察官が携行する署活系デジタル無線機(PSW)や携帯電話型端末(PSD)によって連絡を行うほか、基幹系無線については受令機による受信のみを行う運用が一般的です。


なお、カーロケーションシステムについては、別ページで詳しく解説しています。

アイドルアップ装置
多数の電装品を搭載するパトカーにとって、バッテリー上がり対策は非常に重要です。
警光灯、サイレンアンプ、車載無線機、車内照明、各種電子機器などを長時間使用すると、停車中でも電力消費が大きくなるためです。
そのため、多くのパトカーには、エンジンのアイドリング回転数を自動的または手動で引き上げる「アイドルアップ装置」が装備されています。
これは、停車中でもオルタネーターの発電量を確保し、バッテリー電圧の低下を防止する仕組みですが、特に赤色灯や無線機を使用したまま長時間待機する警ら活動では重要な役割を果たします。
車種や架装仕様によって構成は異なりますが、手動式の場合はセンターコンソール付近に「アイドルアップスイッチ」が設けられていることがあります。これを操作すると、通常のアイドリング状態よりもエンジン回転数が高めに維持される仕組みです。
パトカーのドアの秘密
「パトカーの後部座席ドアは内側から開かない」とよく言われますが、これは事実です。
白黒パトカー、覆面パトカーを問わず、多くの警察車両では、被疑者の逃走防止を目的として、後部座席のドアにチャイルドロックとは異なる専用の開閉制限措置が施されています。そのため、後席に乗せられた被疑者または被害者は、通常の操作では車内側からドアを開けることができず、捜査員と共に捜査員側ドアから降ります。
また、停車中のパトカーを見ると、運転席側ドアがわずかに開いた、いわゆる「半ドア状態」になっていることがあります。
一見すると閉め忘れのようにも見えますが、実際には一定の理由に基づく運用とされており、警察関係者の間では古くから知られている取り扱いです。ただし、防犯や運用上の観点から、具体的な仕組みや詳細について、この記事では公表を控えます。
なお、警察官の中には、日常的にパトカーを扱っている影響から、休日に自家用車を運転する際でも、無意識に同じ動作をしてしまう人がいるとも言われています。
パトカーは防弾?
街中で見かけるクラウンの警らパトカーやミニパト、覆面パトカーが防弾仕様になっているのか――。結論から言えば、一般的な警ら用パトカーは防弾化されていません。
警察庁が公式説明を行なっているわけではありませんが、その理由として考えられるのは、日本では諸外国と比べて拳銃犯罪が少なく、パトカーが銃撃を受ける事案自体が極めて限定的であることなどが挙げられます。
もっとも、実際に警察車両が銃撃された事例は存在します。たとえば2006年には北海道旭川市でミニパトが銃撃される事件が発生しました。また、2007年に発生した、いわゆる「函館市銃撃戦」では、追跡していた北海道警察の警らパトカーに対し、暴力団関係者がトカレフ型拳銃を発砲し、乗車していた警部補が重傷を負っています。
この事件では、警察官側も威嚇射撃および応射を行っていますが、こうしたケースは日本では依然として例外的な事案です。
一般車両の窓ガラスは数ミリ程度の厚さしかありませんが、防弾ガラスを採用する場合は大幅な重量増加が避けられません。ドアや車体にも補強が必要となるため、車両重量、燃費、運動性能、調達コストに大きな影響が出ます。そのため、日本の一般警らパトカーでは、防弾化による費用対効果が低いと考えられています。
かつて、1990年代から2000年代初頭の警察関連書籍では、「日本のパトカーのドア内部には鉄板が入っており、非常時には盾として使用する」といった説明が見られました。しかし、少なくとも一般的な警らパトカーについて、そのような本格的防弾施工が行われているという公的資料は確認されていません。
これは日本だけの話ではなく、アメリカでも通常の警らパトカーが全面防弾仕様となっている例は一般的ではありません。

ただし、ニューヨーク市警察(NYPD)では、2014年に発生した警察官襲撃事件を受け、2016年に当時の幹部が警察官保護を目的としたパトカーの防弾化推進方針を示したことがあります。
一方で、日本警察に防弾車両が存在しないわけではありません。
警護を任務とするSP(警護官)が使用する警護車両では、防弾仕様のセダンやSUVが用いられることがあります。こうした車両には、メルセデス・ベンツやトヨタ・セルシオなどをベースとした防弾仕様車が採用されてきました。

さらに、警察庁長官や警視総監など、要職にある警察幹部の専用車については、警護上の必要性から、防護性能を強化した仕様が採用されている可能性があります。ただし、その詳細な装備内容は公表されていません。
また、機動隊が運用する特型警備車や装甲車では、防弾・防護措置が施されています。これらの特殊車両は、暴徒対処や銃器使用事案への対応を前提とした装備です。

ほかに、機動捜査隊や暴力団捜査を担う組織犯罪対策局などには、防弾の「よう撃捜査用車」が配備されています。
その他の搭載品や架装品
パトカーには、警察活動に特化したさまざまな装備や架装品が搭載されています。
まず特徴的なのが、後部座席との間に設置されるアクリル製の仕切り板です。これはタクシーの防犯仕切りに似た構造ですが、被疑者保護や乗員への危害防止を目的として設置されるものです。
また、助手席側には、自動車教習車で見られる補助ミラーに似た「二段ミラー」が装備される場合があります。これは死角確認や停車時の安全確認を補助するためのものです。
助手席足元付近には、消火器やレスキューハンマーも搭載されています。レスキューハンマーは、市販品と同様にガラス破砕機能を持ち、事故車両からの救出活動などを想定した装備です。
さらに、特殊警棒を固定するための「警棒格納装置」が、ドア下部や足元付近に設けられている車両もあります。警棒を素早く取り出せるようにするための架装です。

トランク内部には、鍵付きの車検証収納ケースが備えられていることがあります。これは、無線警ら車では車載無線機関連装置がグローブボックス内に組み込まれる場合が多く、通常の収納スペースとして使用できなくなるためです。この構造は、機動捜査隊が使用する機動捜査用車両でも見られます。
近年では、救命装備の強化も進んでいます。たとえば、神奈川県警察の一部白黒パトカーでは、AED(自動体外式除細動器)を搭載した車両の配備が行われています。また、警察専用仕様のドライブレコーダーや映像記録装置の導入も進んでいます。
地域特有の装備として知られるのが、北海道の一部で装備されている野生動物対策機器です。北海道ではエゾシカとの衝突事故が問題となるため、市販の高周波式動物接近警告装置がナンバープレート付近へ取り付けられている例があります。
さらに、地域警察官や自動車警ら隊、機動捜査隊などの車両では、「所持品検査箱(決済箱)」と呼ばれる箱型装備を積載していることがあります。これは、職務質問時に対象者の所持品を一時的に置き、確認作業を行うためのもので、機動捜査隊の覆面パトカーなどでも使用されています。

パトカーの「都道府県警察名」表記の書体やマークなどもイロイロ

白黒パトカー自体は全国で同じ仕様だが、表記やマークは全国で微妙に異なり、都道府県警察ごとに個性を出している。ついに北海道警察でも入れてしまったPOLICE表記や、昔からの青森県警察の白鳥マーク。かつての大阪府警の白ヌキ表記などなど、どれも個性的である。
文字の表記自体も丸文字ゴシックから、角ゴシック、警視庁では独自のテクノっぽい字体。岡山県警察もナカナカ独特の味わいを持つ毛筆風で乙である。「県警察」表記だったり「県警」表記だったりも興味深い。
以上のように、軽くご紹介した。なお、交通取締り用覆面パトカーについては以下にて解説。

2026年現在の警らパトカーの主力車種──その1「トヨタ・クラウン」
「警らパトカーの王道」とも言える存在が、トヨタ・クラウンです。
現在でも全国の街頭で数多く見られる警ら用白黒パトカーの主力車種であり、長年にわたって警察庁の国費調達車両として都道府県警察へ配備されてきました。主な用途は地域警ら、110番通報への初動出動、事件・事故対応などで、まさに日本警察を象徴するパトカーと言える存在です。
インターネット上では、「なぜ警察が高級車に乗るのか」「もっと小型で燃費の良い車では駄目なのか」といった意見が見られることがあります。しかし、警察車両には長時間運用に耐える耐久性、高速巡航性能、車内空間、電装搭載能力、追尾安定性など、多くの条件が求められます。
クラウンは本来、高級セダンとして知られる車種ですが、日本警察においては単なる“高級車”というよりも、「高耐久の業務用大型FRセダン」かつ、パトカーのベース車両として評価されてきた側面が大きいと言えるでしょう。
近年の警ら用自動車では、クラウンのモデルチェンジに合わせて歴代モデルがパトカーとして継続採用されてきました。2026年現在は「220系」が最も新しく、次いで210系が配備されています。
交通機動隊や高速道路交通警察隊などの交通取締部門では、210系クラウン・アスリートが広く配備され、高速性能を活かした速度違反取締りに使用されています。
一方、クラウンを取り巻く環境も変化しています。
トヨタ自動車は2022年、従来型クラウンセダンの生産終了を発表し、その後はSUV的要素を取り入れたクロスオーバー型クラウンを展開しました。従来の「大型FRセダン」というクラウン像は、大きな転換点を迎えています。
そのため、今後の警察車両調達においても、従来型セダン路線を維持するのか、それともSUV・クロスオーバー系車両へ移行していくのか、警察車両ファンや業界関係者の間で注目されています。

往年の警らパト「BMレガシィ」
長年、日本の警らパトカーの主力車種として君臨してきたトヨタ・クラウンですが、2010年代前半、そのクラウンに次ぐ存在として全国の警察に大量配備されたのが、スバル・レガシィ(BM系)でした。
この車両は、2009年に登場した5代目レガシィセダン「BM9」をベースとしたもので、警察庁による国費調達車両として各都道府県警察へ配備されました。
当時の警察車両調達では、長らくFR(後輪駆動)セダンが重視されてきました。これは高速巡航性能や耐久性、積載性などを考慮したもので、結果的にクラウンが極めて有利な状況にありました(厳密にはトランク容量も考慮された)。
しかし2010年代に入ると、警察車両に求められる性能が多様化し、4WD車の実用性が再評価されるようになります。その流れの中で、水平対向エンジンとAWD(四輪駆動)を特徴とするレガシィが警察車両として本格採用されました。
特に積雪地域では、レガシィの走行安定性や悪天候時の機動力が高く評価され、北海道・東北・北陸などを含む多くの地域で警らパトカーとして運用されました。
また、BMレガシィは白黒パトカーだけでなく、機動捜査隊向けの私服用捜査車両(いわゆる覆面パトカー)としても広く配備されています。
2010年代中盤には、街頭で見かける警らパトカーの主力が「クラウン」と「BMレガシィ」の二大勢力となり、警察車両ファンの間でも“警らパトの2強”として知られる存在となりました。
ただし、その後は状況が変化します。
SUBARUはレガシィセダンの国内展開を縮小し、日本市場では大型セダン需要自体も減少していきました。一方、警察側でもトヨタ・クラウン210系以降の新型車両採用が進んだことで、BMレガシィの国費警らパトカーとしての大量配備は継続されませんでした。
そのため、BMレガシィは「クラウン一強時代に割って入った、数少ない国費配備の警らパトカー」として、現在でも印象深い存在となっています。

往年の警らパト「日産クルー」

かつて全国の警察署で広く配備されていた代表的な警らパトカーの一つが、日産・クルーです。
クルーは1993年に登場したセダン型車で、主に法人・タクシー用途を想定して開発されました。耐久性や整備性を重視した設計が特徴で、タクシー仕様のほか、教習車、公用車、そして警察車両としても多数採用されています。
警察では、国費調達車両および県費車両として広く導入され、1990年代後半から2000年代前半にかけて、多くの地域警察署で警らパトカーとして運用されました。
特に後期型では、現在の警らパトカーで一般化しているブーメランタイプの赤色警光灯や、昇降式警光灯装置を装備した仕様が採用されるようになり、現代的な警らパトカーの外観へ移行していく時期の代表的車種となりました。
運用の中心は地域警ら用白黒パトカーでしたが、一部の都道府県警察では例外的に、交通取締部門でも使用例が確認されています。たとえば、覆面パトカー仕様や、速度測定装置を搭載した交通取締用白黒パトカーとして運用されたケースも存在しました。
もっとも、クルーの配備状況には地域差もありました。積雪寒冷地では4WD需要が高かったことなどから、北海道など一部地域では配備例が比較的少なかったとされています。
その後、日産自動車によるセダン系法人車両の縮小や、警察車両調達の変化に伴い、クルーは徐々に姿を消していきました。
しかし現在でも、警察車両ファンの間では「2000年代の警らパトカーを象徴する一台」として強い印象を残している車種です。

パトカーはなぜ白黒なのか?
現在、日本全国で見られるパトカーの多くは、白と黒のツートンカラーで塗装されています。この配色の由来については、長野県警察が公式資料で説明しています。
それによれば、かつて日本国内では白色系の民間車両が多かったため、警察車両を一般車と明確に区別する目的で、車体下半分を黒く塗装する方式が採用されたとされています。
この白黒ツートン化によって視認性が向上し、遠距離からでも警察車両であることを識別しやすくなりました。現在では当たり前となっている白黒パトカーですが、その背景には「警察車両を目立たせる」という極めて実用的な理由があったわけです。
そして昭和30年(1955年)、この白黒ツートンカラーは全国的に警察パトロールカーの標準塗装として統一されました。
もっとも、警察車両の塗装はすべてが白黒というわけではありません。

たとえば、機動隊車両では白と青のツートンカラーが採用されることがあるほか、警備用途では濃緑色系の塗装が用いられる場合もあります。さらに、災害派遣用車両や特殊車両では、所属部門や任務内容に応じて異なるカラーリングが採用されています。
つまり、警察車両の塗装は単なるデザインではなく、「識別性」「視認性」「任務区分」を考慮した機能的な仕様でもあるのです。
典拠元 長野県警察
https://www.pref.nagano.lg.jp/police/rekishi/pato.html
ミニパトおよび小型警ら車の解説
地域警察官、特に交番勤務員などが使用する軽自動車・小型乗用車の警察車両は、一般に「ミニパト」あるいは「小型警ら車」と呼ばれています。
これらの車両は、主に660cc級の軽自動車や1000cc前後のコンパクトカーをベースとしており、地域課や生活安全課による巡回、防犯活動、駐車対策業務などに使用されています。
大型の警らパトカーと比較すると目立ちにくい存在ですが、実際には全国で非常に多数が配備されており、日常の地域警察活動を支える“警察官の足”とも言える存在です。
特に警視庁では、各警察署交通課が駐車違反取締りなどにミニパトを活用するケースも多く見られます。
車種も多彩で、東京都内では、
・ダイハツ・ミラ
・ダイハツ・ミラジーノ
・ダイハツ・ミライース
・ダイハツ・エッセ
・ダイハツ・ハイゼットカーゴ
・三菱・ミニカ
・スズキ・アルト
など、多種多様な軽自動車がミニパトとして運用されてきました。
また、軽自動車ではない小型警ら車としては、
・スズキ・ソリオ
・スズキ・スイフト
・トヨタ・パッソ
なども全国で採用されています。
これらのコンパクトカーは、軽自動車よりも室内空間や積載性、走行安定性に余裕があり、狭隘路巡回だけでなく、人員輸送や装備積載など柔軟な運用に対応できる点が特徴です。
ミニパトにも、警察庁が国費で一括調達する「国費車」と、各都道府県警察が独自予算で導入する「県費車」が存在します。販売店や架装工場のモータープールでは、納車前の白色車両に赤色灯のみ装着された状態のミニパトが並ぶ光景も見られます。
また、警視庁では、白黒塗装のミニパトだけでなく、外見上は一般車両に近い軽自動車型の覆面パトカーも運用されています。
こうしたミニパトにも、赤色警光灯やサイレンアンプは搭載されており、必要時には緊急走行を行うことが可能です。
ただし、セダン型警らパトカーに搭載されることの多い「ストップメーター(追尾式速度測定装置)」については、原則としてミニパトには装備されていません。そのため、本格的な交通速度取締りには向かない構成となっています。
また、車載通信系無線機を持たない車両が多く、携帯型無線機中心の運用が一般的です。

もっとも、警視庁のミニパトでは、ルーフに無線アンテナを装備した車両も数多く確認されています。
これは、高層ビル街では携帯型無線機単体では通信状態が不安定になる場合があるためです。勤務員が携行する署活系無線機を車載アンテナの同軸ケーブルへ接続し、通信状態を改善する運用が行われています。
同様の運用は、ビル密集地や通信条件の悪い一部地方都市でも見られます。

まとめ
パトカーは単なる移動手段ではなく、通信、警戒、追跡、現場保存、被疑者搬送など、多目的な任務を担う“移動型警察装備”として設計されています。
外観は一般車に近く見えても、その内部には車載無線機、サイレンアンプ、全方位カメラ、各種架装装備など、警察活動に特化した専用機材が数多く搭載されています。さらに、地域事情や部隊運用によって装備内容が異なる点も、パトカーという存在の興味深い特徴です。
また、警察車両には時代ごとの技術や運用思想が色濃く反映されています。近年では映像記録装置や通信機能の高度化が進み、従来の「走る警戒車両」から、「情報収集・現場指揮車両」としての性格を強めつつあります。
なお、神奈川県警察では、過去にスズキ・キザシをベースとした白黒パトカーを一部配備した実績があります。
キザシは、もともと国費による覆面パトカーとして警察庁の一括導入で全国へ配備されたことで知られていますが、警ら自動車としての採用は神奈川のみでした。

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