【見破り術】覆面パトカーのアンテナの種類と進化論──ユーロ偽装から車内秘匿化への進化論…アンテナの歴史を追え!

警察車両における通信手段、すなわち移動体通信の運用および保全は、警察任務において常に重要な課題とされている。その中でも特に、車両の存在を秘匿する必要がある捜査車両、いわゆる「覆面パトカー」においては、装備されるアンテナの外見にも細心の注意が払われている。

これまで、覆面車両には「TLアンテナ」と呼ばれる自動車電話型アンテナや、アナログテレビの受信用として一般に知られる「TAアンテナ」などが多く用いられてきた。いずれも市販品に偽装した形状で、捜査用車両であることを悟らせない工夫が施されていた。

一方、警護用車両など秘匿性がそれほど求められない車種では、アマチュア無線や業務無線に似た形状のアンテナが現在でも使われている例がある。

そうした中で、2010年代から急速に普及したのが、ユーロアンテナと呼ばれる新型アンテナだ。欧州車に多く見られるデザインを模したこのアンテナは、全国の捜査用車両で採用が進んだ。

しかし2021年、警察無線が従来のAPR(アナログパケット無線)方式から、IPR(インターネットプロトコル無線)方式へと刷新されたことで、アンテナ設置の様相も一変することとなった。

とりわけ注目されているのが、外部アンテナを廃し、車内に通信機器を秘匿する動きである。IPR方式への移行に合わせ、リアトレイに着脱可能なユーロアンテナを設置し、外部からは通信装備が確認できない「アンテナレス」仕様の覆面車両が急増している。

こうした変化は、「偽装」から「秘匿」への段階的な進化とも評せる。外観から判断するのが困難になっている現状は、まさにその証左だろう。

この動きの一因として、2014年に発生した「覆面パトカーのアンテナ窃盗事件」が挙げられる。事件後、警察庁が各都道府県警に対し、車両装備の更なる秘匿化を指導した可能性が推定される。

実際、警察庁はアンテナをドアミラー内部に内蔵する特許まで取得しており、覆面パトカーの見分けは一段と難しくなっている。

とはいえ、現在もなお覆面パトカーの象徴として語られるのは、かつてのように後付けの外部アンテナを装着した車両のイメージだ。市販品を模したアンテナで車両の正体を隠そうとする、かつての涙ぐましい努力も、今やひとつの歴史となりつつある。

覆面パトカーのアンテナは、ただの装備ではない。時代ごとの技術革新と社会的要請を反映し続けてきた、通信技術と秘匿性の結晶ともいえる存在である。

本記事では、「覆面パトカーの見破りかた」という単に実用的な視点からの解説だけでなく、こうした覆面パトカーにおけるアンテナの歴史そのものにも目を向けている。

F1型アンテナ(ラジオ用ロッドアンテナ偽装タイプ)

覆面パトカー草創期を支えた「F1型ホイップアンテナ」──偽装技術の原点

1970年代から1980年代にかけて、日本の警察が使用した覆面パトカー(私服用無線車)において、通信装備の秘匿化はすでに始まっていた。その代表的存在として知られるのが、電気興業が開発したロッドアンテナ「F1型ホイップアンテナ」である。


F1型ホイップアンテナは、当時の市販車に標準装備されていたラジオ用ロッドアンテナの外観を模して設計されており、純正アンテナとそっくりの形状を備えていた。そのため、多くの車両では純正アンテナと置き換える形で設置されたが、中には純正のラジオアンテナを残したまま、その反対側に増設する事例も確認されている。

F1型ホイップアンテナの最大の特徴は、構造上の理由により、伸縮せず常に垂直に張られたままとなる点にある。純正のラジオアンテナは手動で引き伸ばす方式が一般的だったが、F1型アンテナは常時展開状態を保ち、無線通信に特化した仕様となっていた。

外観上の違和感が少なく、見た目には一般車とほとんど変わらないF1型ホイップアンテナは、覆面車両における「偽装」装備の先駆けとして極めて高く評価された。警察無線の秘匿運用における草創期を象徴する存在であり、その完成度としては、当時でも非常に高水準であった。

後に続くアンテナ偽装技術や秘匿技術の原点ともいえる存在であろう。

TLアンテナ(自動車電話用アンテナ偽装タイプ)

自動車電話ブームが生んだ覆面パトカーの象徴──「TLアンテナ」の系譜と現在

ダイヤモンド SR-780 144/430MHz帯2バンド自動車電話型アンテナ SR7801980年代、日本における移動体通信の幕開けを象徴する存在として、自動車電話が一大ブームを巻き起こした。NTTが展開した自動車電話サービスは、車両後部にアンテナを装着するスタイルで知られ、そのスタイルこそが、当時の技術的先進性とステータスの象徴ともなった。

この流れの中で、警察が通信装備の秘匿を目的に開発・導入した装備品が、「TLアンテナ」である。全長約60センチのこのアンテナは、トランクリッド(車のリア部分)に取り付けられ、外観はNTT製の自動車電話アンテナに酷似。警察仕様のTLアンテナは電気興業が製造を担い、1990年代には全国の警察本部で急速に普及した。

注目すべきはその徹底した偽装ぶりである。アンテナ本体にはNTT、あるいはNTT DoCoMoのステッカーが丁寧に貼付され、正規のアンテナのように偽装されていた。

しかし1990年代後半、携帯電話の飛躍的な普及によって自動車電話は次第に姿を消し、それに伴って、TLアンテナを装着した民間車両も激減した。現在、このアンテナを継続的に使用しているのは、警察車両や一部のタクシー(450MHz帯仕様の日本アンテナ製)に限られる。また、アマチュア無線愛好家の中には、ダイヤモンド社製の、やや全長が短い類似品を運用する者もいる。

その後、時代遅れとなったこのTLアンテナはむしろ目立つ装備品となり、覆面車両においてはトランクリッドに基台のみを残し、アンテナ本体はトランク内部に横向きで秘匿設置するという新たな運用も広がった。

アンテナの設置位置には一定の傾向はあるものの、車両後方から見て右側に設置されるケースが多い一方、左側に装着された事例も確認されており、明確な規格は存在しないと見られる。

TLアンテナに貼られた「ステッカー」には意味があった

前述の二種類あるステッカーだが、ラジオライフ1996年2月号[雑誌](三才ブックス)によれば、実はTLアンテナに貼られたこのステッカーには意味がある。NTTのロゴがあればVHF専用、NTT DoCoMoのロゴならVHFとUHFの共用アンテナで、後者には分波器(デュプレクサ)が併用され、1本のアンテナでWIDE基幹系の複数系統を運用可能である。

ラジオライフ1996年2月号[雑誌]
また、1980年代には安展工業(現在のアンテン)が製造した、パーソナル無線向けのオレンジトップ型アンテナ偽装タイプも存在した。80年代当時、自動車電話に憧れていた若者は多い一方で、高額な保証金を捻出できる層は限られた。そこで代替としての移動通信ツールとして火がついたのが「パーソナル無線」であった。その大流行を警察当局が利用したのである。

現在では新規導入は限定的

現在では新規導入はほぼ行われていないが、警備部の警護車両や、偽装の必要性が低い白黒パトカーでは現役で使用され続けている。

警護車の中には、1台の車両に2本、あるいは4本ものTLアンテナを搭載したケースも見られるため、一部ではTLアンテナはその独特の形状と存在感から、依然として「覆面パトカーの象徴」として認知されている。

警護車はSPがVIP警護のために使用する各種装備搭載の特殊な防弾車両

 

TAアンテナ(テレビ放送受信用アンテナ偽装タイプ)

覆面パトカーの偽装アンテナ、次の一手──「TVダイバーシティ型」無線アンテナの興亡

自動車電話アンテナへの偽装を極めた「TLアンテナ」が主流となった1990年代。しかし、その後テレビ受信機能を備えたカーナビの普及にともない、新たな「偽装」スタイルが登場する。テレビ受信用アンテナを装った無線アンテナ──通称「TAアンテナ」である。

取扱説明書によると正式には「日本アンテナ 無線用ホイップアンテナ TVダイバーシティ型」と呼ばれ、民生向けのテレビアンテナに極めて酷似した外観を持つこの覆面パトカー用アンテナは、特に2000年代初頭の車両のスタンダードとなった。過渡期にはTLとTAの混成装備の車両も確認された。

原型モデルは、カー用品メーカー・SEIWAがかつて発売していたテレビ受信用アンテナ「シティロードT17型」を模した形状および、2基で1セットの構成を採用しており、実際に捜査用車両にも多く見られたことから、愛好家の間では「シティロード型」としても知られている。製造は日本アンテナが担当し、2010年頃まで生産が続けられていた。

当時、テレビ受信機能付きナビが一般化する中で、車体にTVアンテナが設置されていること自体が不自然ではなくなり、このTAアンテナによる偽装は極めて効果的だったといえる。

TAアンテナの外観的特徴と技術的な側面

TAアンテナは、上下2段構造のホイップエレメントを備え、特に下段のエレメントは無線の送受信に対応。アンテナ基部は車種に応じて複数のバリエーションが存在し、マグネット固定式やフック式、さらには車体形状に合わせた専用型などが製造されていた。

2基で1セットであるが、警察用モデルでは、テレビ受信用を装いながら、実際は無線通信用の仕様となるため、片側が機能のないダミー、もう片側のみが警察無線用という設計も見受けられた。さらに希少な構成として、片側が実際のテレビ受信用、もう一方が無線通信用という混成モデルも存在したことが確認されている。

設置位置とその傾向

車種によって取り付け位置は異なるが、セダン型の覆面車両ではリアウィンドウの左右両脇に対称配置されるのが基本。ただし、片側のみの装着(上述したように、一方はダミーであるため)や、SUV・ミニバン型においてはルーフ中央あるいはリア上部に設置される例も存在した。

アンテナの同軸ケーブルはリアピラーやルーフモールを這うように引き込まれていた。

民生用との違い

TAアンテナは、上下2段のエレメント(空中線)構造となっており、特に下段のエレメントが実際の無線送受信を担っている。このエレメントは、アンテナ基台内に完全に収納されることがなく、構造上わずかに突出している。この設計により、外見上はシティロードT17とほぼ同一でありながら、通信性能が確保されている。結果的に、これが警察向け製品と民生品との決定的な外見上の違いである。

また、上段のエレメントカバーが破損しやすい、という欠点もあり、実際にカバー欠損のまま使用されている捜査車両も確認されていた。

ほかにも日本アンテナ製と、元となった民生用モデルSEIWA製シティロードT17とでは、以下のような違いがある。

比較項目 日本アンテナ製TAアンテナ SEIWA製シティロードT17型
下段エレメント後端 カバー内に完全に収納されない 完全に収納される構造
同軸ケーブル形状 丸型(無線用) 平型・2本組(TV用)
後端形状 末端が膨らんでいる フラットで膨らみなし
セイワの民生品仕様

これは元になったセイワの民生品仕様。下段のエレメント後端が膨れておらず、また同軸線が平たく、二本組みである点が、警察無線用との違い。

両者の細部の違い。

構造上の欠点と運用上の課題

一方で、TAアンテナには構造上の明確な欠点も存在していた。

  1. エレメントの曲がり事故
     アンテナのエレメントは極めて細く、最大展開状態でうっかりトランクドアを開けると、ドアがエレメントに接触して曲がってしまう事故が頻繁に発生した事例が見られた。
     特に、高速道路交通警察隊や交通機動隊の交通覆面では、違反車両停止後にトランクから矢印板やコーンを取り出す場面が多いため、この事故の発生率が高かった
     また、頻度は低いながらも、機動捜査隊や所轄署の車両にも同様のリスクがあった。

  2. 偽装性と通信性能のジレンマ
     アンテナの存在を目立たせたくないという理由と呪術の破損防止の目的で、エレメントを伸ばさずに運用する例も多かったが、その場合は無線の送受信性能が低下した。

  3. 秘匿型運用の導入
     こうした問題への対策として、後年にはアンテナ本体を後部座席や荷室に収納する「秘匿型(車内アンテナ型)」運用も試みられた。

その他のモデルと地域差

日本アンテナ製のTAアンテナが全国的には主流であったが、一部の警察本部では独自のモデルも併用していた。

  • パナソニック製「TY-CA39DA型」:全体的にフラットでシティロード型とはやや異なる外観。

  • 都道府県警独自仕様のオリジナルモデル:小型化されたテレビダイバーシティ型で目立たない設計。

市場での人気と現在の状況

Aアンテナは、2025年現在においてはほぼ使用されておらず、現場ではすでに旧式装備とされている。当然ながら民間車両への設置例は皆無に近い。

しかし、例の「アンテナ窃盗事件」当時は、マニアの間ではコレクターズアイテムとして評価が高く、オークションでは日本アンテナ製の実物モデルや、SEIWA製の民生品など、新品未使用品のものは10万円〜20万円で取引された例も存在する。

ユーロアンテナ(ヘリカル型アンテナ)

ユーロアンテナ偽装型の登場背景

2012年ごろから、従来のTVダイバーシティ型アンテナ(TAアンテナ)に代わり、全国の警察車両で一斉に採用され始めたのが、ユーロアンテナ偽装型アンテナである。

このアンテナは、ヨーロッパ車や国産高級車に見られる短く太い棒状の外観を模しており、2000年代以降の自動車に標準装備されるようになった「ユーロアンテナ(ショートポール型アンテナ)」と外観が極めて酷似している。

内部にはヘリカル構造の無線アンテナ素子が内蔵されており、見た目に反して実際の通信性能も非常に高い。外観と性能の両立に成功したこのモデルは、2025年現在、最も普遍的な警察無線用偽装アンテナとなっており、その汎用性と偽装性の両立性は過去随一である。

実際、このユーロタイプのアンテナは、交通取締用の覆面車両や刑事部門の捜査用車両、さらには日産エルグランドのようなミニバン型車両に至るまで、幅広く装着されている。

特に警護車では、複数系統の無線通信を必要とするため、1台の車両に複数のユーロアンテナ型が装備される例も見られる。見た目が自然で目立たず、着脱もマグネット(磁石)式で容易なことから、臨時的な指揮本部に設けられた固定局の仮設アンテナとしても活用されている。部屋の金属ドア表面にユーロアンテナが何本も無造作に“生えている”写真は不気味であった。 

代表的な2機種とその違い

現在、警察が運用しているユーロアンテナ型には、以下の2種類が主流である。

製造メーカー モデル名 エレメント形状 特徴 採用比率
日本アンテナ MG-UV-TP チルト可動式(角度調整可) 柔軟性が高く、堅牢な構造 圧倒的に多い
電気興業 モデル名不詳 固定式 固定構造 限定的配備

ひとつは日本アンテナ製の「MG-UV-TP」で、こちらはエレメントの角度を調整できるチルト機構付き。もう一つは電気興業製で、こちらはエレメントが固定式となっている。

このうち、日本アンテナ製MG-UV-TPはその柔軟な設置性と堅牢な構造から、全国の警察車両において事実上の標準装備となっており、捜査車両から交通取締車両、警護車両に至るまで幅広く使用されている。

なお、両機種ともNP型の同軸コネクタを使用しており、無線機器との確実な接続が可能である。

このように、ユーロアンテナ偽装型は、かつてのTAアンテナの役割を引き継ぎながら、より現代の車両環境に適応した形で発展を遂げ、いまなお警察車両における主要な偽装アンテナとして広く使われている。

日本アンテナ製ユーロアンテナ偽装タイプ MG-UV-TP

現行品はMG-UV-TP(TAG)で、底面のネオジウム磁石が塩化ビニル素材で覆われた仕様となっている。


警視庁高速隊に配備されたフェアレディZでは、当初ユーロアンテナが1本のみ搭載されていたが、その後、増設が行われている。このように、従来のTAアンテナが旧世代の装備となった今、特にルーフやトランクといったスペースに制約のある車種では、制服警察官が運用するパトカーにおいても、ユーロアンテナが積極的に採用されている。

さらに、MG-UV-TPには407.725MHz帯に対応した「3周波共用型」も存在しており、これにより、かつて旧型のカーロケ—すなわち警察無線による車両動態表示システム—で使用されていたデータ通信用の周波数にも対応可能である。この3周波共用型のMG-UV-TPは、従来の基幹系(VHF)および署活系(UHF)の2周波共用型と外見上の差異はない。

ただし、旧来のカーロケシステムは現在、全国的に廃止が進められており、最新のカーロケではVHF帯を用いたAPR(Audio Position Reporting)による重畳通信や、NTTドコモのFOMA回線を用いたパケットデータ通信が導入されている。FOMA方式においては、データ通信専用のモノポール型アンテナ—通称「タスポアンテナ」—が助手席側のAピラー脇、ダッシュボード上に設置されており、これは日本電業工作社が製造している。

警察さんのパトカーの『カーロケ』および『カーロケナビ』の仕組みと機能の解説

もっとも、外観こそ市販車にも見られる標準的なユーロアンテナであるものの、「後付けアンテナ」である以上、同軸ケーブルの処理には依然として課題が残る。

とりわけ問題となるのは、アンテナ本体そのものよりも、そこから引き込まれる同軸ケーブルの「存在感」である。リアガラスに沿わせて配線されたケーブルは、固定が甘ければ滑り落ちたり、浮き上がる。こうした状態は、車両観察者側から見れば明らかな違和感となり、偽装効果を損なう要因ともなる。

このため、覆面パトカーに搭載されるMG-UV-TPなどのユーロアンテナでは、リアウインドウの縁ギリギリにアンテナを設置する例が多い。これは同軸ケーブルを極力目立たせず、丁寧に処理するための措置である。具体的には、自己融着テープによってケーブルを保護したうえで、リアウインドウの溝に沿わせるように配線し、車体に自然に馴染むよう埋め込んで処理されている。ミニバン型の車両では、さらに「ピタック」と呼ばれる専用の樹脂製固定具を併用して、確実な固定が図られることもある。

ケーブルの引き込みは通常、リアウインドウの左右いずれかに沿って行われるが、その処理の精度には都道府県警ごとの違いが見られる。手際のよい自治体では、ケーブルがほとんど視認できないほど美しく処理されているのに対し、雑な施工がなされた車両では、ケーブルが浮いたり垂れ下がったりと、明らかに不自然な印象を与えてしまう。

加えて、こうした処理の不備は単なる外観上の問題にとどまらず、無線機器としての送受信性能にも影響を及ぼす可能性があるため、放置はできない。ケーブルの固定や修理、再処理といった作業は、通常、現場の警察官ではなく、技官や、都道府県ごとに契約された指定業者によって行われている。

MG-UV-TPの欠点を克服したWH-UV-TPとは

このようにMG-UV-TPには、同軸ケーブルが車外に露出し、後付けであることが一目でわかってしまうという、致命的な弱点がある。この欠点を根本的に解消する目的で開発されたのが、日本アンテナ製WH-UV-TPである。

WH-UV-TPは、車両に純正装備されるユーロアンテナと“換装”する方式を採用し、ケーブルをボディ内部に完全収納できる構造を取る。車外に配線が残らないため、外観上は純正アンテナと判別不能であり、偽装性は大幅に向上した。

日本アンテナの共通取扱説明書によれば、MG-UV-TPは磁石固定タイプ、WH-UV-TPは既存ベースの穴を利用する「穴開け式」に分類される。後者は固定強度と耐久性、そして秘匿性において優位に立つ。

市販車の純正ユーロアンテナは先端から根元までラバー一体成形だが、MG-UV-TP/WH-UV-TPはいずれも先端部のみプラスチック製という共通点がある。とはいえ、WH-UV-TP搭載車を走行中に識別するのはまず不可能である。

運用側の判断ひとつで、偽装の完成度には明暗が分かれる

もっとも、現場での配備は必ずしも偽装効果だけを優先したものではない。純正ユーロアンテナ非装着車にMG-UV-TPを追加した結果、後付けが目立つケースや、純正アンテナを残したまま偽装アンテナを重ねて装備し、かえって違和感を増幅させた“失敗例”も散見される。

覆面パトカーの偽装技術において、最も基本とされるのが「目立たないアンテナ配置」であるにもかかわらず、現実には標準ユーロアンテナのすぐ近傍に偽装型ユーロアンテナを増設するという、偽装効果を著しく損ねる例もある。


この傾向が特に顕著だったのが、国費により捜査覆面として全国で大量導入されたスバル・インプレッサ・アネシスである。同車はルーフ後部に純正ユーロアンテナを備えており、これを生かしつつ偽装アンテナを追加しようとした結果、既存アンテナの隣や直後ろ、あるいはリアトランク上といった場所にMG-UV-TPが装着される例が確認されている。その外観は不自然さが否めず、「偽装アンテナであることを隠すためのアンテナが、かえって存在を主張してしまう」という本末転倒な状態に陥っている。

同様のパターンは、やはり国費導入車両であるホンダ・フィットやスズキ・スイフトなどでも見受けられる。これらはいずれも標準でユーロアンテナが装備されているため、本来ならばWH-UV-TPへの換装が理想的なはずだが、現場の都合やコストの都合からか、MG-UV-TPが追設されるようだ。

一方で、トヨタ・クラウンマジェスタのような上級車両では、標準装備のドルフィンアンテナに加え、トランクリッド部にユーロアンテナが追加された例もある。これは公用車としての機能を優先した結果かもしれないが、車体後部に2系統の異なるアンテナが並立することとなり、秘匿性の面では課題を残している。

さらに興味深い点として、エレメント(アンテナ本体)を本来とは逆方向、すなわち前方に倒した状態で運用されている車両も一部に存在する。この理由については明確な技術的根拠は示されておらず、ルーフの反射を利用した受信効率の改善などが想定されるが、実際には習慣的な配置や単なる整備上の便宜による可能性も否定できない。

なお、警察車両に限らず、国土交通省の緊急車両などでも日本アンテナ製MG-UV-TPと同型のユーロアンテナが使用されていることがある。これは緊急時の無線通信用途に限らず、位置情報送信やデータ通信に使用されることもあり、車種や所属を問わず広範な運用が進んでいる証左ともいえる。

MG-UV-TPの類似品で市販品のMG-450-TPとは?

実はこの日本アンテナ製のMG-UV-TPには、ほぼ同一の市販品が存在するという、マニアには嬉しいサプライズがある。それが、主にタクシー無線などで使用される450~470MHz帯域に対応した単一周波数専用モデルMG-450-TPである。

見た目は警察無線用のMG-UV-TP(150MHz帯と350MHz帯の二波共用型)と、ほぼ同一であるが、MG-450-TPVはHF(150MHz帯)には非対応である。

覆面アンテナ風『MG-450-TP』による430MHz帯送受信実験動画

このように、二つは無線の周波数特性において明確に別製品であり、無線機器としての互換性はない。ただし、外観についてはアンテナの形状・サイズ・色調などに違いがなく、外見のみで両者を判別することは非常に困難である。

要するに、MG-450-TPは“見た目だけ覆面パトカー風”の市販アンテナであることから、あくまで視覚的演出を狙って、購入する愛好家も多いようだ。

一方、アマチュア無線局(ハム)の一部では、MG-450-TPを広帯域受信用、さらにはアマチュアバンドの430MHz帯用の送受信用アンテナとして流用する例も見られる。その性能は比較的良好だという。

電気興業製ユーロアンテナ偽装タイプ

EKワゴンのミニパトに搭載された電気工業製ユーロアンテナ。


電気興業製ユーロアンテナは情報が少ないため、モデル名、仕様など詳細が判然としない。

日本アンテナ製とともにほぼ同時期から配備され、とくに大阪府警での配備率が高いようだが、全国的には少ない。

エレメントの角度をチルトできないのが特徴となっている。

ユーロアンテナのまとめ

いわゆる「ユーロアンテナ」は、その細身でスタイリッシュな形状が近年の市販車のデザインにも広く採用されていることから、警察車両においても偽装用途に適しており、特に覆面パトカーや高速隊車両など、秘匿性を求められる車種に多用されている。

ただし、前述のように「MG-UV-TP」などの後付けタイプは、どうしても同軸ケーブルの処理に無理が生じやすく、リアガラスへの這わせ方や固定の不十分さによって、“バレ”の要因になり得る。とりわけ、アンテナ本体の形状や取り付け位置には一見違和感がなくとも、ケーブルのたるみや浮き、またはルーフ上のアンバランスな配置などが“ボロ”を出してしまうことが少なくない。

一方で、「WH-UV-TP」のように純正アンテナとの換装を前提とした埋め込み型の製品であれば、外観上は完全に市販車の標準仕様に見えるため、偽装性能は非常に高い。車に詳しくない一般人はもちろん、多少車両知識のあっても、走行中にこれを見破ることは困難である。

また、警察ではこうしたユーロアンテナを本来の車外設置とは異なり、車内、具体的には後部座席のリアトレイに鉄板を敷き、これをアースポイントとしてアンテナを仮設置する“変則的”な車内運用例も報告されている。これは配線処理を目立たせたくない事情から来た対応と考えられ、同軸ケーブルが車外に露出しないという点では効果的であるが、本来の電波特性や通信品質には多少なりとも影響を与えるおそれがある。

結論として、ユーロアンテナはその汎用性と見た目の自然さから警察車両の偽装における“定番装備”となっているが、施工の丁寧さや車種とのマッチング、そして何より配線処理の巧拙が、偽装効果の成否を大きく左右する重要な要素といえる。

アマチュア無線&業務無線風アンテナ

こ、これは偽装じゃないんだからね!これでただの業務車かハムの車に見える

ダイヤモンド M150-GSA モービルアンテナ M150GSA

アマチュア無線や業務無線のモービルホイップアンテナをあえて“偽装せず”に堂々と取り付けている覆面パトカーの存在は、非常に興味深い現象だ。今までの涙ぐましい努力はなんだったのか?とも思えてしまう。一般的な偽装型ユーロアンテナとは異なり、これはむしろ「業務車」を前面に押し出したド直球的偽装の可能性もある。

たとえば、セダンのトランク脇に立てられた細身のアンテナ――一見すると、市役所の公用車や、あるいは熱心なアマチュア無線家の自家用車に見える。しかし、その実体は、警察の捜査用車両、というのがこのアンテナの本質である。

この種のホイップアンテナは、145MHz/430MHzなどアマチュア無線の定番バンドと、警察無線が利用する帯域が物理的に近いため、見た目の整合性がとれてしまうという利点もある。

全長30〜60センチ前後のエレメントに、スプリングベース付きの構造、そしてトランクリッドやルーフ脇にしっかりと基台で固定されている――これらは一見して“本職”の無線ユーザーの車を思わせる仕様であり、観察者にとっては、「ああ、無線やってる人の車だな」で、見過ごしてしまう可能性もある。

加えて、業務無線風アンテナを備えたセダンは、かつての営業車や行政機関の公用車のイメージとも重なるため、現代的な“覆面”よりもむしろ「レトロな働く車」としての自然さが漂う。その意味では、偽装というより“キャラ付け”の一種と捉えることもできよう。

実際、SNS上で「第一電波工業製の150MHz帯1/4λアンテナを装備したスイフトの覆面パトカー」の存在が報告されているように、このタイプのアンテナ装備は一定の実例を伴って観察されており、“よく見ると怪しいが、見なければわからない”絶妙なラインに収まっている。

つまりこの手法は、ユーロアンテナのように「純正風」で隠すのではなく、「無線やってるっぽい」方向へ寄せて目立たなくする、“逆転の発想”的な偽装ではない“偽装”なのだ。警察車両であることを隠すための偽装ではなく、むしろ働く車のリアリティを自然に見せるという意味での演出であり、単に“隠す”というよりも“溶け込ませる”ことを目的としたスタイルと言える。

車内アンテナ

秘匿アンテナは究極の盗難防止策となるのか

アンテナの完全秘匿に成功したクラウン交通覆面。

車内に完全に秘匿されたアンテナ、いわゆる「車内設置型アンテナ」は、偽装やカモフラージュの枠を超えた、究極の秘匿手段として知られる。これは、もはやアンテナを“見せない”というレベルではなく、“存在させないように見せる”技術であり、現代の覆面パトカーにおけるアンテナ設置の最終形態とも言える。

外部アンテナの撤去によって得られるのは、視認性の排除である。車両の外観からは一切の手がかりが得られず、従来であれば即座に見抜かれていたユーロアンテナやモビホも、存在しない以上判断材料にはなりえない。まさに「アンテナによる特定」ができないという点で、秘匿の徹底が図られている。

この手法には二つの技術的アプローチが存在する。一つは、もともと屋外設置を前提に作られたアンテナを、特殊なアース処理などを施して車内に流用する方法。もう一つは、最初から車内設置を想定して開発された専用アンテナを使う方法である。

特に前者は、覆面車両の黎明期から一部で見られた工夫であり、1989年のラジオライフ誌に報告されたスバル・シグマの例などはその典型だ。「アンテン工業 DB-3」などの一般市販ホイップアンテナを、シート背面や足元スペースに設置して運用する手法は、外からまったく見えない反面、適切なアースや指向性処理が必要となるため、設置技術の習熟度が問われる。

(出典:http://www2.famille.ne.jp/~mst-hide/back20/20061.html)

近年では、210系クラウン・アスリートにおいても、リアトレイにアンテナが内蔵される事例が複数確認されており、元々ルーフに存在していたユーロアンテナが突然撤去されていたという報告もある。これは、ユーロアンテナの“見慣れた偽装”すらリスクと化した現状を反映した秘匿へのシフトといえる。

このような車内設置の場合、多くの人にはほぼ認識不能であり、「怪しいアンテナがないから安心」と思わせる「罠」のごとく、心理的効果すら期待されている。加えて、濃色スモークガラスの存在により、内装越しでも視認はほぼ不可能で、たとえ車両の後部座席に同乗したとしても、注意深く観察しない限り気づかれない。

一方で、これらの車内秘匿アンテナは、車両外部の鉄板と違い、ボディアースが不十分になりがちという欠点を抱える。そのため、無理に車内で使うための技術的補正や設置場所の選定が必要となり、置けばいいというものでもない。

また、視認されないという点では盗難防止や妨害回避といった副次的メリットもあり、「アンテナが見えるから狙われる」リスクを抑える役割も担っている。ある意味では、秘匿アンテナの存在そのものが、防犯措置の一種として機能しているともいえる。

総じて、車内アンテナは覆面パトカーのアンテナ偽装・秘匿の流れにおける最終段階であり、その存在は「見抜ける者にしか見抜けない」という構造によって、ますます警察車両の同定を困難にしている。今後、この技術はさらに洗練され、より広範に導入される可能性が高い。

また、大阪府警による日産・ステージアの交通取締用覆面パトカー配備は、アンテナ秘匿技術の中でも特異である。この車両は外観に一切のアンテナ類を装備しておらず、一般車両との判別が極めて困難であった点から、当時大きな話題を呼んだ。

雑誌ラジオライフ2005年2月号では、「大阪府警ステージア交通覆面のアンテナの謎」という特集記事が掲載されており、大井松田吾郎氏による詳細な調査によって、その「謎」は明かされた。それによれば、ステージアのリア・ラゲッジルーム内の側面(サイドウインドウ付近)に、スプリングベース付きのホイップアンテナが上下逆さまに設置されていたという。この設置方法は、一般的なアンテナ設置とは真逆の発想であり、外部に一切露出しないという徹底した秘匿運用であった。

ラジオライフ2005年2月号

大井氏はこの設置方法について、「取締りのための取り締まりを招きかねない」とし、車種選定と併せてやや批判的な姿勢を示している。つまり、秘匿性を追求するあまり、警察車両の存在自体が不明瞭になりすぎることで、公正性や透明性の観点から疑問が残る、という指摘である。

ステージアという車種自体、当時すでに官用車両としてはやや異色であり、その上でワゴンボディを活かして車内にアンテナを秘匿するという選択は、技術的には斬新でありながら、運用思想としては挑戦的すぎたとも言える。その稀少性を物語るように、2006年には模型メーカー「ヒコセブン」から、『ニッサン ステージア 300RX 大阪府警交通機動隊覆面車両』としてミニカー化されている。

1/43 レイズ RAI'S 日産 ステージア 300RX 2002 大阪府警察交通機動隊車両

『ニッサン ステージア 300RX 大阪府警 交通機動隊覆面車両』

その後、大阪府警ではこの「ステーションワゴン型交通覆面」のコンセプトを、スバル・レガシィツーリングワゴンへと継承している。大阪府警のステージア覆面は、秘匿と透明性のせめぎ合い、そして運用上の技術的限界が浮き彫りになった事例でもあった。

すなわち、このような車外用アンテナの車内運用には技術的な課題も存在する。特に、5W〜10W以上の出力で発射される高周波電波が、車内の電子機器や無線機に対して「回り込み」現象を引き起こす可能性がある。これは高周波の反射や自己干渉によるものであり、通信の不安定化や、機器の誤動作の原因となりうる。実際、車外設置を前提としたアンテナを室内に持ち込んで使う場合、アースの取り方や放射効率の低下、指向性の変化など、運用上の技術的調整が不可欠となる。

アコードの捜覆の例。リアトレイに警察無線用ホイップアンテナを設置。送信すれば乗員や被疑者は髪の毛が逆立ち、被爆しまくり。リアスモークを貼っていないだけまだ良心的。 出典 http://www2.famille.ne.jp/~mst-hide/back13/130808.html

一方で、もはや「秘匿のための改造」すら不要とする、車内専用に設計された警察無線用アンテナも登場している。これは、従来の外部アンテナや汎用アンテナを無理に室内へ流用していた時代とは一線を画し、警察車両のステルス性を飛躍的に高めたといえる。

画像の引用元 http://www2.famille.ne.jp/~mst-hide/back15/150803.html

アンテナにおいて電波の送受信を担う主要部品は「素子(エレメント)」と呼ばれるが、これらの専用車内アンテナでは、エレメントが黒色かつ薄型素材で構成されており、車内インテリアに自然と溶け込むように設計されている。たとえば、古典的なTAアンテナや針金アンテナを車内後部に設置した場合、それらの銀色のロッドが車内で異様な存在感を放ってしまうことがあった。これに対して、黒色のエレメントを用いたガラスマウントタイプのアンテナは、目立ちにくさという点で圧倒的な優位性を持つ。

 

無線機器搭載が隠せる 430MHz帯 ガラス貼り付け ボディーアンテナ

 

このガラスマウントアンテナは、車内側からリアウインドウなどのガラス面に貼り付けて使用するタイプであり、車外からの視認性は極めて低い。長さはおおむね50センチ程度とされ、両面テープなどで固定されている。素材も極薄で黒色、しかも直線的なデザインであるため、リアガラスの端やスモークフィルム越しにはほとんど認識できない。コンビニでアイスを買って車に戻る刑事の覆面車両にこのアンテナが貼られていたとして、それが「無線用アンテナ」だと即座に見抜ける市民は、おそらくほとんどいないだろう。

実際、警察密着型のテレビ番組などを通じて、四国地方の警察における使用例が多数確認されている。たとえば、徳島県警で捜査の最前線に立つ名物刑事・秋山氏(リーゼント姿でも知られる)が搭乗する三菱・エアトレック型の覆面車両のリアガラスにも、このタイプのアンテナが取り付けられていた。また、高知県警が導入しているスバル・WRX型の交通覆面においても、同様の黒色エレメントを貼り付けたガラスマウントアンテナが観察されている。

こうしたアンテナは、単に秘匿性が高いというだけでなく、車両の外観を一切変更せず、一般車両と完全に同化させられるという利点を持っている。市街地や住宅地での張り込み、移動中の監視活動において「目立たないこと」が最優先される状況では、この種の専用アンテナの有用性は非常に高いといえるだろう。

出典 世界びっくりカーチェイス2

そのほか、珍しいタイプの車内用ガラスマウントアンテナも。

無線アンテナをドアミラーに仕込んでしまう特許を警察庁は考案している

警察庁が考案した「ドアミラーアンテナ」に関する特許

特許情報(http://j.tokkyoj.com/data/H01Q/3095114.shtml)を参照すると、出願人は「警察庁長官」。これは手続き上の都合ではあるが、実際に警察庁がアンテナ技術の開発に関与していることを示す強力な証左である。特許文面中には、「見た目がスッキリする(原文ママ)」という記述も見られ、車両の外観を極力変えずにアンテナを実装する意図が明確に読み取れる。

ドアミラーアンテナとは、文字通りサイドミラーの内部にアンテナを仕込む構造をもつ。これにより、外部にアンテナを追加する必要がなくなり、無線通信機能を保持しながらも車両本来の形状・印象を完全に維持できる。

V字型車内貼り付け型アンテナが登場

V字型の車内貼り付けアンテナという新方式も一部の警察本部で採用されている。ガラスマウント型の進化版であり、エレメントがV字に展開されることで電波の指向性や感度を高めながらも、視認性を低く抑える設計となっている。

New!シャークフィンタイプ

高速隊の覆面パトカー 出典 photo-ac.com

さらに近年では、シャークフィン型アンテナを模した擬装型の新型アンテナも登場している。一般的な乗用車にも多く採用されているため、これを通信アンテナとして応用することは、視覚的なカモフラージュとして理にかなっている。ただし、上部に通信エレメントと思しき棒状の突起物が突出している場合もあり、完全な秘匿性という意味ではやや課題が残る。

また、フィン型であっても、150MHz帯など比較的低い周波数の運用においては、構造上の工夫が必要とされることから、実用化には依然として技術的なハードルが存在する。加えて、後付けである以上、同軸ケーブルの露出や取り付け部のわずかな違和感が、鋭い観察眼を持つマニアにとっては見破りのヒントとなってしまうことも否定できない。

外観は一般的なシャークフィン型アンテナに似ているが、特徴的なのは頂上部から後方に向かって6cmほど、棒状のエレメントらしきものがほぼ水平に突出している点である。

やはり、150MHz帯のような比較的低い周波数帯をフィンアンテナでカバーすることは技術的に難しいためではないか。

この突起があることで、いかにも無線通信を行うためのアンテナという印象で、結果として、見た目の秘匿性はやや犠牲になっているといえる。

警察無線の系統 その1『車載通信系(基幹系)』

やはり、こちらも後付けアンテナの宿命として同軸ケーブルがわずかに本体下部から露出。

現時点では全国でも目撃例は多くなく、プロトタイプ段階として一部での試験運用にとどまっている様子。だが、IPR(次世代警察無線)への完全移行が進めば、これらのアンテナの導入もさらに広がる可能性は高い。

覆面パトカーのアンテナのまとめ

このように、覆面パトカーのアンテナ技術は、外部露出→偽装→車内内蔵→構造への埋め込みという形で進化を遂げてきた。今や、「アンテナを見せないこと」は、単なる見た目の問題ではなく、捜査の成果や警察官の安全を左右する重要な技術的要素となっている。

とはいえ、どれほど技術が洗練されようとも、覆面パトカー特有の“空気感”や“気配”を完全に消し去ることはできないというのもまた事実である。ナンバーの法則性、ドライバーの挙動、そして微妙に浮いた装備の取り付け具合など、鋭い観察眼を欺くには、アンテナだけでは不十分なのかもしれない。

なお、一般市民が同種のユーロアンテナに興味を持つ場合、MG-450-TPのような合法的に市販されている製品を選ぶのが無難といえそうだ。

覆面アンテナ風『MG-450-TP』による430MHz帯送受信実験動画

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