日本では国家資格であるアマチュア無線技士の級は4つ。各級はそれぞれの級数とアマチュアの『アマ』をつけて『○アマ』と略されるのが一般的です。取得には国家試験と『養成課程講習会』があり、最上級の1アマ以外は養成課程講習会でも取得が可能です。上級になるにつれ、使用できる周波数帯域と送信出力の拡大が許可されます。これは、アマチュア無線家がより高度な技術を学び、広範な通信を楽しむための仕組みです。
それでは日本のアマチュア無線技士資格のそれぞれの級の違いをご説明いたします。
第1級アマチュア無線技士(1アマ)
第1級アマチュア無線技士、通称1アマは4つの級で最上級で、いわゆる上級アマに区分されます。試験レベルは短大卒以上です。1アマの試験会場では時折、小学生を見かけることもあり、合格すれば新聞の地方版を飾ることもあるようです。過去、朝日新聞1996年5月20日版では1アマに合格した9歳の少年を取り上げています。
それによれば、三重県四日市市に住む小学4年生の少年が9歳7ヶ月で1アマに合格したとのこと。試験を執り行う日本無線協会によれば、それまでは12歳3ヶ月が最年少だった記録が、大幅にその記録を塗り替えたとあります。同少年の気になる試験対策は『漢字や計算方法を丸暗記。勉強した以外のパターンの問題は諦める』戦術だったそうです。モールスの実技試験が廃止されて以降、1アマの合格率は一気に20%から40%まで上昇しています。
気になる1級の操作範囲は“アマチュア無線局の無線設備の操作”となります。すなわち、「アマチュア局に許可されるすべての周波数とモード、最大出力(1kw)までの操作を行うこと」が許されます。なお、1アマの操作範囲を行える1アマ以外の無線資格は第1級および第2級総合無線通信士となっています。
令和5年度現在、1アマの取得方法は(財)日本無線協会が年3回(4月、8月、12月)開催している第1級アマチュア無線技士国家試験を受験し、合格することが必要です。試験はマークシート方式です。試験地は東京都、札幌市、仙台市、長野市、金沢市、名古屋市、大阪市、広島市、松山市、熊本市、那覇市と全国各所で開催されています。令和5年度現在、受験料は9,600円となっており、4つの級のうち最も高額です。総務省の平成21年度版「通信白書」によれば、1アマの資格者数は26.000人です。これは全アマチュア無線技士の全体の0.7%です。
第2級アマチュア無線技士(2アマ)
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- 第2級アマチュア無線技士の主な操作範囲
- アマチュア無線局の空中線電力200W以下の無線設備の操作
- 第2級アマチュア無線技士と同等の操作範囲を免許される他の国家資格
- 第3級総合無線通信士
- 第2級アマチュア無線技士の利点
- いわゆる上級アマだが、養成課程講習会での取得も可能
- 特定のアニメキャラに想いを重ねることができる
- 4アマと3アマでの従事者免許証に記載された『総合通信局長』という官職名と異なり、2アマからは『総務大臣』になり、自分も偉くなったと錯覚できる
- 第2級アマチュア無線技士の主な操作範囲
工学の難易度はゴロアワセ暗記で突破できた3アマ、4アマと比べ物にならないほどグンと上がりますが、旧試験と比較すると容易です。現在では1アマ同様に通信術の実技試験もなくなり、モールスの知識を確認することに主眼が置かれ、法規の中にモールス関連問題が出るにとどまります。法規は4アマ、3アマと受験をして合格してきた人ならば、暗記で充分に対応可能です。このため、4・3アマ同様、記述式試験のみの現在の2アマは昔と比べ、合格率は高くなっています。
なお、従事者免許証に記載された免許を与えてくれた官職も、4アマと3アマでは各「総合通信局長」名だったものが、2アマからは「総務大臣」になり、なんだか仰々しさもアップしています。
法で定める2アマの操作範囲は”アマチュア無線局の空中線電力200W以下の無線設備の操作”になっています。周波数については全て使えます。なお、2アマの操作範囲を行える無線資格には他に「第三級総合無線通信士」があります。
令和5年度現在、2アマの取得方法は年に3回行われる第2級アマチュア無線技士国家試験のほか、ついに2015年からは養成課程講習会でも取得できるようになり、すでに講習会での2アマ取得者が誕生しています。なお、JARD主催の養成課程講習会の費用は7万円程度になっています。
国家試験はマークシート方式です。試験地は東京都、札幌市、仙台市、長野市、金沢市、名古屋市、大阪市、広島市、松山市、熊本市及び那覇市と全国各所で開催されています。受験料は令和5年度現在、7,800円となっています。総務省の平成21年度版「通信白書」によれば、2アマの資格者数は75.000人です。これは全アマチュア無線技士の全体の2.3%です。
なお、テレビアニメに登場する高校生の女性キャラクター『武部沙織』が2アマを取得し、無線の知識を部活動で役立てていることから「俺も2アマ取って彼女に想いを馳せたい」という成人男性が多くなっているようです。やだもー。
第3級アマチュア無線技士(3アマ)
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- 第3級アマチュア無線技士の主な操作範囲
- アマチュア局の無線設備の操作(空中線電力50ワット以下で18MHz以上又は8MHz以下)
- 10MHzおよび14MHzの操作は不可
- 3アマからモールス通信が可能
- 第3級アマチュア無線技士と同等の操作範囲を免許される他の国家資格
- 3アマの操作範囲のみに該当する他の国家資格はなし
- 第3級アマチュア無線技士の利点
- モービル運用が目的なら最大出力の50Wまで出せる
- モールス通信ができることで、より遠距離の交信(DX)が可能
- 第3級アマチュア無線技士の主な操作範囲
3級と4級までが、いわゆる「初級アマ」です。3アマから法規の中にモールスに関する問題が出題されます。つまり、モールスは3アマで許可されます。4級の資格を所持していれば、養成課程講習会にて3アマを取得することも可能です。
法で定める3アマの操作範囲は”アマチュア無線局の空中線電力50W以下の無線設備で18メガヘルツ以上または8メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するものの操作”となっています。最大で50Wまでの出力が許可されますから、モービル運用だけ楽しみたい方は3アマまで取得してしまえば、事実上なに不自由なく法律で規定された『移動するアマチュア局』に許可される上限の50Wで楽しむことができます。
令和5年度現在、3アマはCBT方式の国家試験により年間を通じて実施されます。CBT(Computer Based Testing)方式とは、コンピュータを利用して実施する試験方式で、受験者は画面上に表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。CBT国家試験についてはこちらをご覧ください。または養成課程講習会で講習と修了試験を経て取得が可能です。国家試験の受験料は令和5年現在、5,400円です。
なお、総務省の平成21年度版「通信白書」によれば、3アマの資格者数は20万人と、全アマチュア無線技士の6%です。3アマ(のみ)に相当する他の無線資格は現在のところ、ありません。
第4級アマチュア無線技士(4アマ)
- 第4級アマチュア無線技士の主な操作範囲
- アマチュア局の無線設備(無線電信を除く)の操作(空中線電力20ワット以下で30MHz超もしくは空中線電力10ワット以下で21MHz以上30MHz以下又は8MHz以下)
- 10MHz・14MHz・18MHzは操作不可
- モールス通信は不可
- 第4級アマチュア無線技士と同等の操作範囲を免許される他の国家資格
- 第1級海上無線通信士、第2級海上無線通信士、第4級海上無線通信士、航空無線通信士、第1級陸上無線技術士、第2級陸上無線技術士
- 第4級アマチュア無線技士の利点
- もっとも試験が容易
4つの級のうち最も簡単なクラスです。小学生でも楽に合格できるほど、やさしい国家試験になっていますが、さらに優しい養成課程講習会にて取得もできます。4つの級の中で唯一、モールスの運用が許可されず、よってモールスに関する問題は出題されません。
法で定める4アマの操作範囲は”アマチュア無線局の無線設備で次に掲げるものの操作(モールス符号による通信を除く) 1 空中線電力10W以下の無線設備で21メガヘルツから30メガヘルツまでまたは8メガヘルツ以下の周波数の電波を使用するもの 2 空中線電力20W以下の無線設備で30メガヘルツを超える周波数の電波を使用するもの”です。実質的に20W出すことができれば、144MHzや430MHzでもアンテナ次第で数百キロもの広範囲に電波が飛びますから、それで事足りているという方も多いのかもしれません。また、4アマでは現在、3.5MHz、3.8MHz、7MHz、21MHz、24MHZ、28MHzの各HF帯バンドが許可されており、HFを楽しみたい方も4アマでOK。しかし、モールス通信は許可されず、CWを楽しみたい方は3級を目指しています。
令和5年度現在、4アマはCBT方式の国家試験により年間を通じて実施されます。CBT(Computer Based Testing)方式とは、コンピュータを利用して実施する試験方式で、受験者は画面上に表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。CBT国家試験についてはこちらをご覧ください。または養成課程講習会で講習と修了試験を経て取得が可能です。国家試験の受験料は令和5年現在、5,100円です。
なお、総務省の平成21年度版「通信白書」によれば、4アマの資格者数は300万人です。これは実に全アマチュア無線技士の90%です。
4アマの操作範囲を行える無線資格は第1級海上無線通信士、第2級海上無線通信士、第4級海上無線通信士、航空無線通信士、第1級陸上無線技術士、第2級陸上無線技術士となっています。
ただし、業務用の「特殊無線技士」の資格で、アマチュア無線を運用することは法律上できません。
おまけ 国外のライセンス制度
記事の冒頭で『日本では』と断りを入れた理由はアメリカ、ドイツ、オーストラリアなど各国によってアマチュア無線の資格の分類数が違うからなのです。
例えばアメリカでは最も初級の「テクニシャン・クラス」、中間の「ジェネラル・クラス」、そして最上級の「エクストラ・クラス」の三つのみ。また、日本と違って、はじめから最上級の試験を受けることはできず、下から順番に受験して合格しなければなりません。
さらに、アメリカのライセンスは包括免許のため、従事者免許証と無線局免許状が1つになっているのも特徴です。なお、日本人でも取得することが可能です。
参考サイト様 http://ja1yuu.blog.fc2.com/blog-entry-30.html
アマチュア局が免許を受けることができる周波数帯と、免許を受けることができる空中線電力、さらにアマチュア無線が運用できる業務用無線従事者資格、外国のアマチュア無線資格で操作できる範囲などについてさらに詳しくお知りになりたい方はJARL公式サイトでご確認ください。
http://www.jarl.or.jp/Japanese/6_Hajimeyo/shikaku.htm
最後に
各級において受験要項や受験料の改定が行われている場合があるため、受験に際しては必ず事前に日本無線協会の公式サイト等にて詳細をご確認していただけるようお願い申し上げます。
なお、4級と3級の資格が取得できる養成課程講習会についても詳しく解説しています。