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HF帯での諜報戦の実態とは?受信時の注意点など解説

HF無線
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深夜のHF帯チューニングにはご用心

短波(HF)帯を受信していると、発信主体や目的が明確でない特異な通信に遭遇することがあります。その中でも特に知られているのが、数字の羅列や、NATOフォネティックコード(アルファ・ブラボー・チャーリー…)など、意味を解釈しにくい信号を送信する「ナンバーズステーション」と呼ばれる存在です。

これらの通信は、特定の受信者に対して情報を伝達する手段の一つと考えられており、その運用主体については、2026年現在も各国で運用されていると考えられますが、公式には明らかにされていません。

ただし、各国の情報活動との関連が指摘されることもあり、冷戦期以降現在に至るまで、断続的にその存在が確認されています。

本稿では、こうしたナンバーズステーションを中心に、HF帯における特異な通信の実態と、その受信にあたって留意すべき点について整理します。

【注意事項】本記事では、短波(HF)帯無線における国家間の諜報活動に関連すると報道等で指摘されている特殊な無線通信やラジオ放送の事例を紹介しています。受信にあたっては法令を遵守し、違法な通信活動を行う外国政府に協力することのないよう、十分ご注意ください。

HF帯とその性質

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この特性を活かし、世界中の航空管制当局、海運業者、海事機関、そしてアマチュア無線局などが合法的に通信を行っています。

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しかしこの広大で匿名性の高い周波数帯には、しばしば非合法な通信も存在します。

諜報活動とHF帯

短波(HF)帯は、電離層反射による長距離通信が可能である特性から、歴史的に各国の情報活動において重要な通信手段の一つとされてきました。特に、秘匿性を伴う遠距離連絡が必要な場面において利用されてきたと考えられています。

こうした通信の形態としては、暗号化された信号や定型化された音声コードの送信などが知られており、いわゆる「ナンバーズステーション」に代表されるような運用が確認されています。

ただし、その運用主体や具体的な通信内容については公的に明らかにされているものは限られています。

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また、過去の事件に関連して、無線通信が何らかの形で利用された可能性が指摘されるケースもあります。例えばグリコ・森永事件においては、VHFの警察無線が妨害されたほか、HF帯アマチュアバンド(7MHz)に関する「犯人のやりとり」とされる交信が報じられています。ただし、事件は未解決であることから、詳細は不明です。

歴史的に見ると、この種の秘密通信は第二次世界大戦期から冷戦期にかけて広く行われていたとされます。代表的な事例としては、ゾルゲ事件のように、無線を用いた諜報活動が摘発された例も知られています。また同時期には、対外宣伝を目的とした地下放送やプロパガンダ放送も各国で実施されていました。

現在においても、HF帯では発信主体が明確でない通信が断続的に確認されています。これらの中には、デジタル変調や暗号化技術を用いた復調困難な信号も含まれており、通信内容の秘匿性が高められていると考えられます。

このように、HF帯には制度的に正規の通信だけでなく、その背景や目的が明らかでない多様な通信が混在しており、その一部は歴史的にも情報活動と関係してきたと見られています。


不明な通信や放送の種類

短波帯や広帯域受信においては、発信主体や目的が明確でない通信や放送が受信されることがあります。これらは一見すると同種のものに見えますが、実際には性質の異なる複数のカテゴリーに分けることができます。

まず、技術的・制度的な観点からは、免許を受けずに送信される不法無線局や、規定された周波数帯を逸脱した運用(いわゆるオフバンド運用)が挙げられます。

また、音楽番組などを無許可で送信する海賊放送も、この範疇に含まれます。

一方で、国家レベルの情報活動や心理戦に関連するものとして、送信主体を秘匿または偽装した地下放送や、特定の受信者に対して暗号化された指令を送る乱数放送(ナンバーズステーション)が知られています。

これらは、一般的な放送や通信とは異なる目的と背景を持つ特殊な存在です。

このように、内容や発信元が不明確な無線通信の中には、制度違反によるものから国家的な情報活動に関わるものまで、幅広い性質のものが混在しています。こうした信号を識別し、その背景を推測することは、受信趣味の一つの醍醐味ともいえます。

アンカバー

アマチュア無線におけるアンカバーとは、指定された周波数外で交信をする不法無線局のこと。以下の記事で解説しています。

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海賊放送

いわゆる「海賊放送」とは、国の免許を受けずに行われる非正規の放送を指します。通常、ラジオ放送は法令に基づき免許を受けた事業者のみが実施できますが、それ以外の個人や団体が無許可で送信を行う場合、このように呼ばれます。

この現象を国際的に見ると、その背景には当時の政治体制やメディア規制、さらには音楽文化の広がりなど、複数の要因が存在します。例えば冷戦期においては、東欧の社会主義圏では西側文化の流入が制限されていたため、外国音楽への需要が満たされにくい状況がありました。こうした環境が、非正規の放送や越境受信への関心を高めた一因の一つといえます。

一方で、海賊放送は必ずしも東側諸国に限った現象ではなく、西側諸国においても、放送規制や既存メディアへの不満を背景に発生しています。特に音楽番組の需要が高かった地域では、広告収入を目的とした商業的な海賊放送も存在しました。

日本においては、東西対立の影響は相対的に小さいものの、音楽番組やディスクジョッキー文化への需要を背景に、無許可でFM局を模した形態の不法無線局が出現した例があります。

代表的な事例としては、八王子市の『FM西東京(JONT-FM)』(1979年)、東京都港区の『KYFM』(1985年)、日野市の『JOUT-FM百草』(2011年)などが挙げられます。

地下放送

いわゆる「地下放送」とは、放送主体や送信拠点を秘匿または偽装しつつ行われる非公然の放送形態を指します。

プロパガンダ放送

類似する概念として、「謀略放送」がありますが、これは特に対外宣伝や心理戦を目的としたプロパガンダ放送を指す用語です。この種の放送は、第二次世界大戦期から冷戦期にかけて各国で広く運用され、敵対国の国民や兵士に対して情報的影響を与えることを目的としていました。

あたかも現地の正規放送であるかのように装い、送信地点や運営主体を偽装されました。

その内容は、戦況に関する情報操作や、自国の優位性の強調、敵対勢力に対する批判など多岐にわたり、心理戦の一環として位置づけられます。こうした放送は、検閲を回避しつつ敵対国社会に影響を及ぼす手段として利用されてきました。

具体例としては、第二次世界大戦中に日本側が実施した対外宣伝放送「ゼロ・アワー」などが知られています。

第二次世界大戦中、1943年から1945年にかけて、日本は米国をはじめとする連合国に対し、対外宣伝放送という形でプロパガンダ活動を行いました。その一環として、ラジオ・トウキョウ(現在のNHK)で放送された番組が『ゼロ・アワー(The Zero Hour)』です。

『ゼロ・アワー』は、英語を話せる日系の女性や、日本軍の捕虜となった連合国兵士が司会を務めるラジオ番組でした。

内容は、戦況の概要や、アメリカの流行歌、さらにはアメリカ兵士の家族や友人へのメッセージなど、幅広いものでした。

『ゼロ・アワー(The Zero Hour)』の目的

放送の中には、連合国兵士の郷愁(ホームシック)を誘い士気を挫くための巧妙なメッセージが含まれており、これは日本政府による「心理戦」の一環、すなわち謀略放送そのものだったのです。

NHKは国営の偽情報発信源……情報統制の司令塔と欺瞞放送

当時の日本は、内閣の要職を軍人が占める軍事優先の国家体制にありました。

そのため、外務省・大本営・内閣情報局が緊密に連携。情報収集から宣伝、出版・芸能の統制までを一手に担った内閣情報局は、いわば「国営の宣伝・世論統制機関」として機能し、外交や報道のすべてを軍事目的のためにコントロールしていたのです。

司会者は米軍捕虜や日本在住の日系アメリカ人女性が登用された

当初、司会を務めたのは旧日本軍の捕虜となった連合国兵士でした。

中には、日本側からの強い圧力を受けて司会を引き受けざるを得なかった兵士もいたものの、その中には、キリスト教の価値観など人間としての普遍的な理想を伝える内容を放送することで、ささやかな抵抗を試みた者もいたと言われています。

その後、日本の参謀本部の少佐は、国内に住む日系アメリカ人の女性に目をつけたのです。

日本軍が日系アメリカ人女性を徴用

突如として日本政府と軍部に目をつけられた日系アメリカ人女性。彼女こそ、アイバ・トグリ・ダキノ(戸粟郁子)でした。

郁子は、昭和16年7月に叔母の見舞いのため来日したものの、同年12月の太平洋戦争開戦により、アメリカへ戻ることが困難となりました。

彼女は応じませんでしたが、特別高等警察(現在の公安警察)は郁子に日本へ帰化するように公権力で脅迫。

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昭和17年から郁子は日本放送協会海外局米州部業務班でタイピストとして勤務し、日本軍参謀本部の恒石重嗣少佐の下で対外宣伝ラジオ番組のスタッフとなり、昭和和18年11月からラジオ・トウキョウ放送によるプロバガンダ放送『ゼロ・アワー(The Zero Hour)』の女性アナウンサー「みなしごのアン(もしくは“みなしごのアニー”)」として、戸粟郁子のキャリアがスタートします。

『ゼロ・アワー』の女性アナウンサーたち

当時、『ゼロ・アワー(The Zero Hour)』の女性アナウンサーは戸粟郁子のほか、最大で20人ほどいたとされています。

その中にはWW2開戦直前、太平洋横断中に行方不明になり、日本軍に秘密裏に囚われたという説のあるアメリカ人女性飛行士、アメリア・イアハートも含まれていたという噂がありますが、これが事実かどうかは不明です。

彼女らは日本政府の命令により、日本が戦況で有利であるとする誇張した内容や、米兵を侮辱する原稿を読み上げました。

侮辱されつつ「東京ローズ」と愛称をつけた米兵たち

敵国のプロパガンダ放送であるにもかかわらず、太平洋戦線で従軍していたアメリカ兵たちは、彼女たちに対して憎しみを抱くどころか、むしろ親愛の情を抱いたようで、彼女たちを「東京ローズ」と愛称で呼び始めました。その結果、アメリカ兵にとっては心の支えとなる存在になったこともありました。

日本側のプロパガンダ工作員として、その役目に就いた「東京ローズ」。では、彼女たちはどのような放送を行っていたのでしょうか。

以下の動画は、1946年に米国で早くも映画化されたもので、あくまでフィクションですが、この『東京ローズ』が当時、かなりの人気を誇っていたことを裏付けていると思われます。

物語の中では、米海軍の空母内で無線機から流れるアメリカの歌謡曲に耳を傾ける兵士たちの前に、女性の流暢な英語が流れてきます。「こんにちは、ヤンキーの坊やたち、こちらは日本のお姉さんよーん…」と自分たちを揶揄する声に、兵士たちは驚きます。

ベテラン兵士がニヤリとして、「こいつが例の東京ローズさ…フヒヒ」と若い兵士たちに教えるシーンが描かれています。

もちろん、これは娯楽映画なので、演じている東京ローズは実際の彼女らではなく、いかにも米国人の女性アナウンサーのネイティブな発音です。

一方、下の動画は米国国立公文書館所蔵の動画で、実際に当時従事していた東京ローズの一人、アイバ・トグリ・ダキノ(戸粟郁子)による再現です。東京ローズたちは自分を『みなしごのアニー』と名乗りました。

 

両者の声を聞き比べると、ご覧の通り、実際の東京ローズは明らかに日本人女性然とした声です。

その愛くるしさのある声かつ、彼らの母国の言葉で、ときに軍事的に性愛的に挑発し、ときに同情を寄せる”東京ローズ”の彼女たち。

もちろん、そんな彼女たちを憎む米軍兵士もいたでしょう。しかし、熱狂的リスナー、アニーオタを獲得したのも事実です。

ただ、日本当局の目論見通り(!?)、心理戦として彼ら米軍兵士の心を挫き、士気を低下させたかという軍事的な評価の観点では不明です。

日本政府当局が行った米国兵士向け謀略放送『ゼロ・アワー』に出演した”東京ローズ”の一人、戸粟郁子 画像の出典 NHK公式サイト『NHKアーカイブス』

東京ローズは『みなしごアニー』を自称し『彼方たち米国海兵隊が恐れるカミカゼがいつも彼方たちの艦艇を狙っているわ。かわいそうなものね』『“みなしごアニー”が音楽を届けるわよ』『また明日のこの時間に放送するから、それまでいい子にしていてね』など、戦争の進行状況を日本側の有利に強調して伝え、前線の米兵を挑発する一方で同情を寄せるなど、巧みなツンデレで日本側のプロバガンダ工作を担いました。

さらには彼ら米兵が故国に残してきた妻や最愛の女性を引き合いに出し『彼女たちは今ごろ貴方ではない他の男とベッドの上かもしれないわよ・・日本のお姉さんは同情するわ』など、薔薇のように甘く刺々しい情緒的な性愛ワードを使って煽る”東京ローズ”は米軍兵士を虜にしました。ツンデレの元祖は日本の謀略放送の女性だったとは。

ついには、アメリカ空軍は自分たちの主力爆撃機であるB29にまで、この東京ローズをモチーフとしたマスコットキャラクターまでノーズアートとしてペイントしてしまいます。

郁子のその後

無論、プロパガンダ工作も軍事におけるれっきとした情報戦の一環です。したがって、「東京ローズ」による放送も、アメリカにとっては明確な敵対行為と見なされました。

終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)およびアメリカ当局は、こうした対米放送に関与した人物の戦争責任を追及するため、“東京ローズ”に対する捜査を開始。

しかし、関係者への執拗な聞き取りにもかかわらず、名乗り出たのは日系二世のアイバ・トグリ・ダキノ(戸粟郁子)ただ一人でした。

彼女はアメリカ市民権を持っていたにもかかわらず、日本側の放送に協力したことで戦争責任を問われ、東京・巣鴨プリズンに11か月間収監された後、アメリカ本国に送還されました。そして国家反逆罪で起訴され、懲役10年の厳しい判決が下されました。

実際には7年間の服役を経て釈放され、その後3年間の保護観察処分を受けます。

彼女の名誉が回復されたのは、1976年のジェラルド・フォード大統領による特赦による市民権の回復、そして2006年、アメリカ退役軍人会による表彰によってでした。

その表彰の直後、彼女は90歳で静かに生涯を閉じています。

NHKが日本政府と共に嘘の放送を繰り返していた歴史の事実。まさに、戦争という時代の激流に翻弄された日系女性の一人であったと言えるでしょう。

「東京ローズ」はその後、日本国内でもドラマやミュージカルの題材として取り上げられるなど、その存在は長く語り継がれることになりました。

こうして見ると、日本政府が意図した心理戦は、結果としてアメリカ兵の士気を下げるどころか、むしろ逆の効果を生んだといえます。『ゼロ・アワー』はまさに、そうした逆効果の典型例でした。

一方、当然アメリカ側も謀略放送を行っていました。その代表が『ザカライアス放送』と呼ばれるラジオ番組で、日本側の放送とは異なり、一貫して無条件降伏を促す政治的なメッセージが中心となっていました。

ちなみに、こうしたラジオ放送による心理戦とは別に、アニメーション映画など他のメディアを使ったプロパガンダも存在しました。

たとえばアメリカでは1943年、日本のニュース番組を風刺したアニメ『Tokio Jokio』が制作されています。

当時のプロパガンダ映画は、敵国の軍や指導者を嘲笑し、自国の国民の士気を高める目的で作られましたが、その多くは今日の視点から見ると、差別や偏見を含んだ内容であったことは否めません。

このような事象は、まさに「日米放送戦争」とでも呼ぶべき情報戦の一端であったのです。

なお、朝鮮半島では今もこのような宣伝放送が続いています。

軍事工作目的と推測される無線局

上述のナンバーステーションによる乱数放送などは工作員への指令という明確な目的があり、非公然の無線局ですが、軍隊が行う暗号通信も実に奇妙です。

乱数放送

一般に、解読不可能な乱数を読み上げる無線局をナンバーステーションと呼びます。

もちろん、世界各国へ潜入中の工作員への指令が目的です。

世界にはナンバーステーションの事例がいくつかあります。

『リンカーンシャー・ポーチャー』

イギリスの諜報組織・MI6がキプロスから運用していたとされる『ナンバー局(Numbers Station)』です。

『UVB-76』

ロシアのモスクワ近郊の村から4625kHzまたは6998kHzにてブザー音が発信されるUVB-76″ザ・ブザー”も、『ナンバー局(Numbers Station)』とされています。

ロシアの謎無線局“UVB-76”とは
ロシアのモスクワ近郊の村から、4625kHzか6998kHzの周波数使て、SSBモードで短いブザー音が24時間ずーっと流れとる「UVB-76」、通称 "The Buzzer"(ザ・ブザー)。ソ連時代から今もずーっと続いとる目的不明の無線局な…

おそらく、世界で最も短波放送受信マニアから注目度が高い無線局です。それゆえに妨害が行われることもあるようです。

『A3放送』

日本人拉致との関連性を指摘されているのが北朝鮮のA3放送です。

おそらく、世界で最も短波放送受信マニアから注目度が高い無線局です。それゆえに妨害が行われることもあるようです。

【乱数放送】A3放送に潜む北朝鮮の“拉致指令”の謎
かつて冷戦下の世界を背景に、不気味な存在感を放っていた「乱数放送」。80年代のような緊張感こそ薄れたが、この放送はいまだに短波や中波帯にしぶとく残っている。何のための放送か。表向きはただの数字の読み上げ。しかし、その実態は、各国の諜報機関が…

この乱数放送は北朝鮮国営の放送局から放送されるものでした。

現在は形を変え、品を変え、あらゆる方法で伝達を試みているようです。

『米空軍のHF-GCS』

米空軍が頻繁にHFで運用する『HF-GCS』は明確な軍事通信です。

『スカイキング』なる謎のコールサインで「答えるな」と命令するやいなや、不明なコードを日本を含む世界の米軍基地から同時かつ一方的に発令します。

【解説】米軍の「HF-GCS」とは?─世界規模の短波無線通信網を読み解く
「認証コード、アルファ・チャーリー・エコー、ロミオ・セブン・ナイン……」このようなフォネティックコードによる通信を受信すると、その内容の性質上、背後で何が行われているのか想像をかき立てられます。ときにそれは緊急性の高い通信であるかのように受…

人類終了という暗い未来を感じさせる「終末通信」と言えます。

『Japanese Slot Machine(ジャパニーズスロットマシン)』

日本の怪電波「ジャパニーズ・スロットマシン」です。海上自衛隊が運営しているとされます。

『Japanese Slot Machine(ジャパニーズ・スロットマシン)』とは?海上自衛隊の無線
インターネットの掲示板に投稿された一つの録音ファイル。それがすべての始まりだった。「なんだこの音は?」「発信源はJapan」「スロットの音のように聞こえる」その信号は、HF専門家の間で『Japanese Slot Machine(ジャパニー…

電波妨害・電波ジャック

軍事やテロの文脈において、敵対勢力や治安機関が使用する周波数に対して同一周波数で大出力の信号を送信し、通信や誘導機能を妨げる行為は、一般に電波妨害(ジャミング)と呼ばれます。これは電子戦(Electronic Warfare)の一要素であり、通信の成立そのものを阻害することを目的とした手法です。

電子戦は本来、電波の妨害だけでなく、受信・分析や防護といった複数の要素から構成されており、電磁波領域における包括的な作戦分野として位置づけられています。

一方で、第三者が通信に割り込み、音声や信号を差し替えるような行為は、厳密には電波妨害とは異なる性質を持ちます。本稿では便宜上、こうした行為を「電波ジャック」と呼びますが、これは通信内容の乗っ取りやなりすましに近い概念です。

実際には、特定の軍用無線に対して意図的に音声を流すなどの事例が報告されることもありますが、多くの軍用ジャミング装置は意味を持たないノイズ信号を用いるため、受信趣味の観点では内容を把握できる通信とは性質が異なります。

ただし、通信への割り込みが行われた場合には、政治的主張やメッセージが含まれることもあり、単なる妨害とは異なる側面を持つ点には注意が必要です。

軍用無線局・警察無線局への電波妨害

各国の軍隊では、通信を妨害・攪乱する電子戦能力が整備されており、日本においても航空自衛隊および海上自衛隊において、電子戦に対応した装備の導入が進められています。これらは主に有事における対外的な軍事行動を想定したものであり、通常の国内運用とは性格を異にします。

一方、日本国内においても、過去にはアナログ警察無線に対する電波妨害事案が発生しています。昭和59年(1984年)には、滋賀・京都・奈良・和歌山の各府県において警察無線が断続的に妨害を受けたほか、同年9月の自由民主党本部放火襲撃事件の発生時にも、警視庁の無線通信が一定時間にわたり混信・妨害を受け、警察活動に影響が生じました。

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アナログ警察無線の時代―傍受・妨害・そして攻防の記録 月刊『ラジオライフ』のバックナンバーには、かつて日本全国の警察本部に配備されていたアナログ方式の警察無線に関して、現代では考えられないような歴史的伝説が数多く記録されている。言うまでもな…

また、アナログ警察無線に対する不正な電波の送信として、第三者が通信に割り込み、警察活動への不満を表明したり、日本警察と直接関係のない世界平和への祈り、さらに偽の指令を出す事例も報告されています。

放送局や防災無線への不正介入

メッセージ性を伴う不正な通信という観点では、第三者が意図的に電波や通信系統に介入し、放送や業務無線に影響を与える事例も過去に確認されています。

日本国内では1985年、東京都杉並区において、防災行政無線が何者かにより不正に作動させられ、特定の選挙候補者に対する誹謗中傷が長時間にわたり流される事件(いわゆる杉並区防災無線電波ジャック事件)が発生しました。

当時の防災無線は、特定の制御信号(トーンスケルチ)によって起動する仕組みであったため、条件を満たす信号を送信することで第三者が介入可能であったことが背景にあるとされています。

また1987年には、米国イリノイ州シカゴで地元テレビ局のニュース番組「The Nine O’Clock News」に不正な映像が割り込む事件(いわゆるマックス・ヘッドルーム事件)が発生しました。

この事件では、放送中の番組映像が一時的に差し替えられ、発信者不明の映像が流されたことで大きな話題となりましたが、その動機や意図については明確になっていません。

さらに近年では、電波そのものではなく、放送システムや配信基盤に対するサイバー攻撃によって番組内容が改変される事例も確認されています。2022年のロシア・ウクライナ情勢では、ハッカー集団による侵入によりロシア国営テレビの放送内容が書き換えられたと報じられました。

このように、一口に「電波ジャック」と呼ばれる現象であっても、実際には無線通信の悪用、送信設備への介入、さらにはサイバー攻撃など、複数の異なる手法が存在しており、それぞれ技術的背景は大きく異なります。

わが国の情報機関による傍受体制

外国政府による非公然通信や特殊な放送については、その一部が情報伝達手段として用いられている可能性が指摘されており、各国において情報機関や捜査機関が関心を持つ対象となっています。

日本においても、安全保障や治安維持の観点から、自衛隊情報本部や警察庁警備部(公安/外事)などが、それぞれの所掌に基づいて情報収集活動を行っていると考えられます。また、内閣情報調査室は、政府内における情報の集約・分析機能を担う組織として位置づけられています。

自衛隊の諜報活動
スーツに身を包んだスパイが、世界を駆けめぐる—そんな映画のワンシーンのような出来事、映画の中だけでなく、実は現実でも繰り広げられています。世界が仕掛ける“見えない戦い”  情報機関の現在地とは各国の政府機関や軍事組織の中には、「情報機関(I…

このような通信の収集・分析は一般にSIGINT(Signal Intelligence)と呼ばれ、無線通信や電磁波を対象とした情報活動の一分野です。具体的な手法や運用の詳細については公表されていませんが、各機関において、専門的知見を有する職員により、分析が行われているとみられます。

一方で、無線愛好家の間でも、いわゆるA3放送、ナンバーズステーションなどの特殊な放送が受信され、その内容の解読が試みられてきました。

日本とソ連・北朝鮮との間の情報交換を無線でやり取りしているのでは、との疑いを当時の公安警察は厳しく監視していた。

引用元 アイコム株式会社公式サイト https://www.icom.co.jp/personal/beacon/ham_life/ja3ig/5035/

しかし、乱数表や暗号方式の詳細が不明であることから、外部の受信者がその内容を正確に解読することは一般に困難であり、これら北朝鮮政府の行う非公然通信の全容は依然として不明です。

まとめ

このようにHF帯の周波数を探っていくと、国際放送、業務通信、各国の軍用通信など、さまざまな信号を受信できる可能性があります。合法的な無線通信が数多く行われる一方で、多様な通信が混在する独特の領域が、まさに受信趣味としてのHFの醍醐味というわけです。

ただし、受信にあたっては、特定の思想や政治的立場に過度に影響されたり、陰謀論的な解釈ではなく、あくまで電波伝搬やアンテナ特性、DX受信といった技術的観点から整理することが重要です。

ただ、政府機関による市民の監視は陰謀論ではなく、我が国の治安政策において実際に行われている情報保全および情報収集活動の一環です。

過去には、陸上自衛隊情報保全隊が市民活動の動向を情報収集していた問題が発覚し、訴訟や批判に発展した事例もあります。この問題については、憲法上の権利との関係が争点となり、司法判断や日本弁護士連合会からの指摘も含め、社会的な議論が行われました。

このような経緯から、安全保障分野に関わる情報の取り扱いについては、現在においても慎重な姿勢が求められます。

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