【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、無線受信や運用に関して総務省総合通信局の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、各種記事はそれらの調査結果に基づいて構成しています。

非常通信用4,630kHzは意味ない?それとも形骸化?制度と実態のギャップとの課題を考察

災害の発生を知った無線局は非常通信の連絡設定用周波数である4630kHzの傍受に努めるほか、必要に応じて各アマチュアバンドに設定された非常通信用周波数や呼び出し周波数の聴取および非常通信に対応するのがアマチュア局です。

4,630kHzは、モールス信号(CW)による非常通信の連絡設定を目的として制定されている、アマチュア無線では特に重要な周波数の一つです。

アマ局が他のアマ局だけでなく、警察や自衛隊などの公的機関とも非常時に直接交信できる手段として、制度上も位置づけられています。

注意

ただし、非常通信に関しては、「他の通信業務に優先して妨害を受けず、また妨害を与えることなく行うことができる」とされており、公的機関との直接通信を明確に制度化しているわけではないため、「制度上も位置づけられている」わけではありません。

あくまで連絡設定のための打ち合わせ用周波数です。

無線局運用規則第4章第226条では、「非常事態が発生したことを知った無線電信局は、なるべく毎時0分および30分過ぎから、それぞれ10分間、A1A電波(CW)によって4,630kHzを聴守しなければならない」と定められています。

このため、日本国内で自然災害などの非常事態が発生した際、被災地のアマチュア局がこの周波数を利用して、救援機関と直接通信する運用が想定されています。

ただし、4,630kHzはCWモードでの運用が前提であり、音声による通信(SSB等)は認められません。そのため、実際に活用するにはモールス通信の知識と習熟、そして3アマ以上の資格が必要です。

※4630kHzの運用や有効性については、アマチュア無線局の間でも見解が分かれる部分があります。この記事は、現行制度および過去の法令に基づく情報を整理したものであり、特定の立場を代表するものではありません。客観性を保ちつつ適切に留保したものと思いますが、あくまで個人の一意見としてご了承願います。

特徴:4630kHzと他の非常通信周波数

1. 4630kHz(モールス通信/CW)

  • 制度上の位置づけ:

    • 無線局運用規則第226条に基づき、非常事態発生時にA1A(CW)で聴守する義務がある。

    • 毎時00分と30分から、それぞれ10分間の聴守が推奨されている。

  • 運用モード:

    • CW(モールス信号)限定。

  • 使用資格:

    • 第3級以上(モールス通信可能な資格)でなければならない。

  • メリット:

    • 電波が遠くまで届きやすく、災害時に電源が乏しい状況でも通信可能。

    • 混信に強く、短文の情報伝達には向く。

  • デメリット:

    • 習熟が必要(モールス信号を解読・送信できる人が限られる)。

    • 音声通話に比べ、即時性や利便性に劣る。

    • 自衛隊・警察など公的機関側にCW受信設備や人材が限られる可能性がある。

  • 実績:

    • 運用例は不明。災害時に実際に使われた明確な事例は不明。

4630kHz帯に関するアマチュア局の運用実態

4630kHz帯は定期的な訓練にも使用されています。ただし、過去にこの周波数が実際の災害対応において運用されたかどうかについては、現時点で明確な事例は確認されていません。

また、この周波数をアマチュア局が使用するには、免許申請時にあらかじめ4630kHz帯の使用を含めた周波数指定を受けておく必要があります。これは電波法およびアマチュア業務の運用規定に基づくものであり、無許可での運用は認められていません。

市販されている大手メーカー製のHF帯対応アマチュア無線機の多くは、技術的にはこの周波数に対応しています。しかしながら、すべてのアマチュア局が事前に4630kHzの使用申請を済ませているわけではありません。結果として実際の災害時に即応できる体制が十分に整っているとは限らない状況です。

このような背景から、制度的に使用可能であることと、実際に現場で即時的活用できるかどうかは別の問題と言えます。

制度的意義と実効性の評価が分かれる点

というのも、その制度的意義について疑問視する意見も一部のアマチュア局の間にあるのです。

つまり、非常時であっても通信相手の側にモールス信号の運用スキルや資格が求められるため、実際に連絡が成立する可能性は限定的ではないかとの懸念です。

そのため、この周波数にこだわらず、災害時などの非常時においては、より平易な運用が可能な他の周波数帯(以下で解説)で対応すべきではないかとする立場も見られます。

【2025年版】災害時に活用される無線周波数の知識──防災・行政・航空救難・アマチュア無線の周波数解説

まとめ

つまり、4,630kHzの制度上の位置づけは明確である一方、現実的な有効性については評価が分かれているのが現状です。

災害時においては、4630kHzに限定せず、利用可能な無線設備と周波数を用いて非常通信を行うのが現実的かつ実務的な対応と言えるでしょう。

まとめると以下のようになるでしょう。

  • 4630kHzは制度的には重要だが、運用実態や実効性に欠ける

  • 実際の非常時対応には、SSBやFMによる簡便な音声通信の方が実用的とされる。

  • アマチュア無線の非常通信活動では、「資格・設備・平時の訓練」がすべてそろって初めて効果が発揮されるため、制度と現場の運用のギャップは大きい。

  • 実際の災害時には4630kHzに限らず、稼働できる無線設備を使い、音声通話(SSB、FM、デジ簡など)を用いて救援の通信を行うのが現実的。

警察や自衛隊の中には今でもCWでの対応能力に長けた職員がいます。しかし、これらの公的機関側の人員が限られるため、やはり音声での通信が、より適切で平易な手段と思われます。

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