「認証コード、アルファ・チャーリー・エコー、ロミオ・セブン・ナイン……」
このようなフォネティックコードによる通信を受信すると、その内容の性質上、背後で何が行われているのか想像をかき立てられます。ときにそれは緊急性の高い通信であるかのように受け取られることもあります。
しかし、こうした印象のすべてが実際のHF-GCSの運用を正確に反映しているとは限りません。
アメリカ空軍が運用する『HF-GCS:High Frequency Global Communications System』は、短波(HF)帯を使用して長距離通信を行う、米軍の世界規模広域通信ネットワークのひとつです。
HF-GCSは、地上局と航空機、さらには戦略通信の中継を含めた広域通信を担うものであり、長距離伝搬が可能な短波帯の特性を活用しています。
HF-GCSで用いられる音声通信の一部には、NATOフォネティックアルファベットによる符号化されたメッセージが含まれます。これらは一見すると暗号的に聞こえますが、全てがそうではなく、実際には通信内容の正確な伝達や誤認防止を目的とした標準化された手法です。
また、こうした通信の多くは、実任務に直結するものだけでなく、定期的な訓練や通信確認の一環として発信されていると考えられています。そのため、受信された内容のみから通信の緊急性や背景を断定することは困難です。
詳しく見ていきましょう。
HF-GCSについて
HF-GCSは、主にアメリカ空軍が中心となって運用していますが、他部隊とも連携しながら、航空機をはじめとする各種プラットフォームとの通信を担っています。
HF-GCSのシステムは1950年代にその起源を持ち、長距離伝搬が可能な短波帯の特性を活かして、衛星通信などが利用できない状況でも通信を維持するための手段として発展してきました。
HF-GCSは戦略任務に関連する通信に用いられる場合もありますが、それに限定されるものではなく、平時の通信確認や訓練、運用維持のための通信も含まれます。
HF-GCSは世界各地に配置された複数の送信拠点によって構成される分散型ネットワークであり、米空軍基地のほか、他軍種の航空基地や関連施設とも連携しています。これにより、地球規模での通信カバレッジを確保しています。
指揮統制機能についても、特定の単一拠点に完全に依存する構造ではなく、複数の管制機能が相互に補完し合う形で運用されています。たとえばアンドリュース統合基地は重要な拠点のひとつですが、ネットワーク全体は冗長性を持たせた構成となっており、各地の送信局が役割を分担しています。
また、日本の横田基地を含む海外拠点も、このネットワークの一部として機能しているとされていますが、具体的な運用詳細の多くは公開情報が限られています。
防衛省防衛研究所によると、HF-GCSは以下のように定義されています。
「短波(HF)帯を使用して飛行中の戦略爆撃機などに核攻撃命令を送信するための地上固定通信施設として、米空軍のHF-GCS(High Frequency Global Communications System)がある」
(出典:https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/pdf/2022/202203_07.pdf)
一方で、旧ソ連から現ロシアにかけて運用されているとされる短波通信局UVB-76は、いわゆるナンバーステーションの一種として知られています。この局は断続的なブザー音と音声送信で知られていますが、その具体的な任務や運用主体の詳細は公的に明らかにされていません。

HF-GCSとUVB-76はいずれも短波帯を利用した軍事関連通信と見られる点では共通していますが、前者が多拠点による指揮統制通信ネットワークであるのに対し、後者は単一または限定的な送信源による継続的な信号発信という特徴を持つとされており、運用目的や構造は大きく異なる可能性が指摘されています。
また、UVB-76が使用している周波数帯では、第三者によるものと見られる音声の混入が報告されることがあります。過去には音楽や各種音声が流された事例が観測されています。
HF-GCSは米軍指揮命令システムであり、公然の通信である
短波(HF)通信の世界は、その特性上、遠距離まで電波が到達することや、内容が容易に解読できない場合があることから、しばしば神秘的あるいは陰謀論的に語られることがあります。

しかし、HF-GCSは、アメリカ軍の指揮統制通信の一部として構築・運用されているものであり、日本の自衛隊が開かれた公式サイトで言及している通り、完全な非公然システムというわけではありません。
このネットワークは、戦略任務に関連する通信にも使用される可能性がありますが、それに限定されるものではなく、平時においては気象情報の共有、空中給油の調整、航空機の運用報告など、日常的な業務通信にも利用されていると考えられています。
一方で、国際情勢が緊迫した場合には、より重要度の高い通信が増加する可能性があります。
HF-GCSで観測される通信の中には、いわゆる緊急行動メッセージ(EAM)と呼ばれる形式のものが含まれることが知られています。また、「Skyking」と通称されるメッセージ形式も報告されていますが、その具体的な運用や優先順位の詳細については公開情報が限られており、断定的に説明することは困難です。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件の際には、こうした短波通信の活動量が増加したとする観測もあります。
なお、HF-GCSで用いられる音声通信では、NATOフォネティックアルファベットが使用されることがありますが、これは暗号化ではなく、音声伝達の正確性を高めるための標準化手法です。実際の通信内容については、符号化や暗号化が施されている場合もあり、外部の受信者がその意味を正確に解釈することは一般に困難です。
しかし、冷静かつ機械的な声で「認証コード」を繰り返し読み上げる米軍コマンドの一方的な指令を受信すると、映画の世界にいるような感覚に没入できます。
主な目的は三つ
HF-GCSはホワイトハウス通信局 (WHCA)、統合参謀本部 (JCS)、航空機動コマンド (AMC)、航空戦闘コマンド (ACC)、空軍航空情報局 (AIA)、空軍資材コマンド (AFMC)、空軍宇宙コマンド (AFSPC)、米国欧州空軍 (USAFE)、太平洋空軍 (PACAF)、航空気象局 (AWS) といった部隊間で円滑に命令を伝達するためのシステムです。
米軍の地上軍事基地から戦略爆撃機、空中給油機、および他の航空機に指示を送るために使用されます。
EAM (Emergency Action Messages)
緊急行動メッセージ(Emergency Action Messages)は核攻撃の作戦指示を含む可能性がある重要な暗号指令です。
空中指揮所が飛行中に発令します。
航空機からの非機密電話
航空機に搭乗している操縦士や搭乗員が地上へ公務として非機密の電話をする際にもこのネットワークが利用されます。通常はDSNに接続されます。
周波数と変調方式
アマチュア無線のHF通信同様、HF-GCSも単側波帯(Single Sideband, SSB)変調方式のうちのUSBモード、電離層を利用して地球の裏側まで電波を届かせることができます。

ただし、デジタルのALE送信モードも使用されています。
主な HF-GCS 周波数
HF-GCSは4.721kHzから15.016kHzまでの間に主要周波数が複数あります。以下はよく知られる周波数の例です。運用状況により変更される可能性があります。
-
4721 kHz
4721 kHz (USB) Maybe Aero Off Route US Air Force Worldwide (17-02-2025) https://www.youtube.com/watch?v=uF9QavyeW9g -
6739 kHz
Skyking transmission, 6739 kHz https://www.youtube.com/watch?v=oF-DMhpJOAI -
8992 kHz
United States Air Force Emergency Action Message 8992 kHz https://www.youtube.com/watch?v=qGzS6F0hr7g
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11175 kHz
United States Air Force Emergency Action Message on 11175 kHz https://www.youtube.com/watch?v=rBdMBS2Kmko -
13200 kHz
13200 KHZ USAF Global HF EAM Emergency Action Message https://www.youtube.com/watch?v=gADB25Cfxik -
15016 kHz
US Military HFGCS FIREOPAL EAM Broadcast 15016 KHz https://www.youtube.com/watch?v=eXGG9slFI3c
上記のうち、主要な周波数は11175 kHz(昼間)と4721kHz(夜間)で24時間、365日送信しています。
日本国内某所で筆者が受信した際は、日本時間で平日の15時30分すぎ。周波数は11175kHzでした。受信機材はいつものD-808。

ノイズが酷いながらも、航空特殊無線技士の送話試験で自信なさげな受験生のような抑揚のない男性の声で「ゴルフ、アルファ、フォクストロット……」と読み上げる声が、とても不気味。
一回の送信時間は2分弱で送信間隔は15分でした。
これが1日の間、間欠的に送信されているはずです。
世界の終わりは緊急行動メッセージ「EAM」とともに…
「緊急行動メッセージ(Emergency Action Message)」は米軍の核攻撃命令、すなわち核攻撃部隊への指揮・コントロールのための通信です(米国公文書である「米統合参謀本部議長指示に記載)。
すなわち、アメリカ大統領が直接指令する軍事行動、究極的には核攻撃命令です。
不幸にして核戦争が開始される前段階、合衆国大統領の核ミサイル発射命令に関して、長距離パトロール飛行中の戦略爆撃機、戦略ミサイル潜水艦などにHFGCSを通じて、ミサイルの発射のための暗号コードがこの周波数で伝えられるのです。
世界の終わりに飛ぶ飛行機・・E-4BやE-6Aから発せられる最後の緊急行動メッセージ

E-4B National Airborne Operations Center The E-4B serves as the National Airborne Operations Center and is a key component of the National Military Command System for the President, the Secretary of Defense and the Joint Chiefs of Staff. Pictured: AF File Image
アメリカ合衆国の国家空中作戦センター(NAOC)として運用される航空機E-4B(ナイトウォッチ)はボーイング747-200Bを核戦争時の作戦司令用航空機(空中指揮所)として改修した機体。「緊急行動メッセージ(Emergency Action Message)」は最終的に同機から発令されます。
国家空中作戦センター(NAOC)
地上の指揮統制施設が破壊された場合でもアメリカ政府の指導層(大統領、国防長官、参謀長など)が、空中から指揮をとれるよう設計された四種類の航空機を「国家空中作戦センター」(NAOC)と呼びます。
特に核攻撃で地上インフラが破壊された際に戦略的決定を行い、軍全体を指揮できます。
最終的に、というのは本来、EAMはペンタゴンの国家軍事指揮センター(NMCC)から発せられますが、敵の先制攻撃によって破壊された場合は、ペンシルベニア州レイヴンロックの代替国家軍事指揮センター(地下核ミサイル防護基地)サイトRがその機能を代替し、最終的に空軍のE-4B ナイトウォッチ、または海軍のE-6A (TACAMO)からEAMが発令されるのです。

E-6Bマーキュリーの飛行経路をFR24で追ったもの。平時はトランスポンダーを入れているので追跡が可能ですが、有事はもちろん不可能。
翼端のフェアリングにESMアンテナやHFアンテナを装備している一方、同機が超長波(VLF)通信を行う場合、胴体後部より長大なアンテナを機外に展開。

超長波(VLF)は深海にいる海軍の戦略核ミサイル原潜とも確実に連絡を取ることができます。
いずれも真っ白な機体が不気味ですが、これらの任務が「世界の終わりに飛ぶ飛行機」と呼ばれる理由です。
EAMは6文字のヘッダーで始まります。このプリアンブルにはいくつかの異なる用途がありますが、NPSはミニットマン ミサイル発射について、「プリアンブルは、乗組員に非封印認証のどの版とページ番号を使用するかを伝えます。正しいページに移動すると、乗組員はどのメッセージ チェックリストを使用するかがわかります。」と述べています。
受信乗組員は、メッセージと指示がコピーされた緊急アクション チェックリスト バインダーにアクセスします。その後、メッセージが続き、繰り返されます。
EAMメッセージは基本的に30文字。しかし、以前は200文字を超える冗長なEAMもありました。メッセージは通常「Mainsail Out」で終わり、送信元に基づいて変更されることがあります (例: Offutt out)。Mainsail は、ネットワーク内のすべての地上局の集合的なコールサインです。2013 年から 2015 年 4 月まで、「Mainsail Out」は発信元よりも一般的に使用されていました。
それ以来、送信者/受信者にはコールサインが使用されることがほとんどです。
もう一つのユニークなコールサインはスカイマスターです。これはUSSTRATCOMの全ての空挺指揮ユニットの集合コールサインです。
発令された場合は横田を含む世界各国の複数のHF-GCS局から同時に同じメッセージが放送されているため、特異なエコーが聞こえます。
最新動向(2025年6月追記)
2025年6月、中東地域におけるイスラエルとイランの緊張の高まりや、6月21日夜(日本時間22日午前)の米軍によるイラン空爆を背景として、アメリカ軍のHF-GCSによる通信活動が一時的に増加したと観測されています。
特に6月14日前後にEAM(緊急行動メッセージ)および、SKYKING指令が、複数の周波数帯で短時間に集中して送信される事例が確認されており、一部のモニターはこれを有事対応または即応態勢の演習に関連した動きと見ています。
以下参照:以下は2025年6月時点の観測に基づく情報です。
2025年6月中旬〜下旬にかけて、HF-GCSによる通信の顕著な増加が複数のモニターにより確認されています。
Shortwave Observer(@shortwave78)の報告によると、4724 kHz にて“PINOCCHIO”というコールサインを使用した通信が複数回捕捉されたとのこと。これは通常のコールサインと異なる形式です。https://x.com/shortwave78/status/1937732223182209462
NEET INTEL(@neetintel)によれば、6月14日前後に“250614 HFGCS Emergency Action Message A”という約246文字に及ぶEAMが放送され、送信に20分を要したとの記録があります 。https://x.com/neetintel/status/1933922365089681430
これらの情報を総合すると、以下のように考察できます:
通信頻度の急激な上昇と、異例の長さ・形式を持つEAMの出現は、実戦に関する通信だった可能性がある。
中東情勢の緊迫化(例えば、英軍機の展開や米国の爆撃機展開など)が同時期に報じられており、これらと連動した即応体制の確認、または脅威に対する準備の可能性が高いと推測。
今回の米軍によるイラン空爆では125機もの航空機が投入されたと産経新聞が報じています。
HF-GCSはその特性上、突発的な通信の増加が地政学的変化の兆候として現れることがあり、今回のように中東方面での情勢悪化(空爆、艦艇の展開、あるいはイラン周辺の動揺)と連動するケースも少なくありません。
HF-GCSの通信量やパターンは、世界情勢の変化を間接的に読み取る一つのシグナルとなるため、引き続き中東沿岸域での米英軍展開情報とのクロス分析など、継続的なウォッチが有効です。公式発表の有無も併せて追うべきでしょう。
「スカイキング、スカイキング… 答えるな」これは何を意味するのでしょうか?
深く息を吸い、抑揚のない声で話し始める米空軍女性兵士。
「Skyking,Skyking, do not answer」
「アルファ・チャーリー・エコー、ロミオ・セブン・ナイン、認証」
(少し間を空け、メッセージを再確認する)
通称「Skyking message(スカイキング・メッセージ)」は米国戦略軍から発信される指令のメッセージです。”スカイキング”は現在、HFGCS上にネットワークされている全ての軍部隊を意味するコールサインとされています。
上述のEAMの派生と考えられますが、EAMを含む他のすべてのトラフィックを中断するほど重要な位置づけです。研究者によれば、EAMで指示された作戦(核攻撃)の最終指令(”go” or “do not go”)とされています。
“DO NOT ANSWER”
- 意味: このメッセージに対する返答は不要、または禁止されている。
- 受信側が応答すると、その位置や存在が敵に暴露されるリスクがある場合に使用。
- また、極めて重要な一方通行の指令であることを強調。
通常、通信オペレーターの「Skyking,Skyking, do not answer(応答するな)」という発言で始まる怖い極秘指令です。航空機側に応答させないのは、航空機の位置を秘匿するため。命令に背いて応答し、自分の位置を敵勢力に晒す航空機はいません。
スカイキングの不気味なメッセージは「答えるな」に続き、特定の指令コード(例: NATOフォネティックコードを用いた暗号化メッセージ)で行います。コードワード、時刻を表す2つの数字が続き、2文字の認証文字列で終わります。
分単位の時間 (0932 Z の場合は「32」と発音されます)、および「チャーリー ジュリエット」などの2つのNATOフォネティックからなる認証文字列で構成されます。スカイキングは1回繰り返され、受信状態が悪いことがよくあります。
「スカイキング」メッセージは「フォックストロット ブロードキャスト」とも呼ばれ、EAM とは異なる形式で送信されます。

スカイキングメッセージは優先度が最も高いため、進行中のEAMを中断することもあります。「スカイキング」は、戦略爆撃機、偵察機、およびさまざまな支援機の配備も担当するすべての単一統合作戦計画 (SIOP) 航空機およびミサイル作戦にメッセージを送信するためのグループ的なコールサインです。
指揮官から受け取った命令は暗号形式のため、傍受する者の想像をかき立て、特に「核戦争の準備」と関連付けられると、恐怖を感じる人もいるでしょう。
しかし、実際にはスカイキングが送信されたとしても、必ずしも核戦争など、暗い未来の暗示ではありません。また、スカイキングやEAMは敵性国家に指令の頻度を探られぬように意図的に通信頻度を増加させています。
HF-GCSによるEAMやスカイキングメッセージは映画に登場することもあります。『ウォー・ゲーム』(原題: WarGames)や『First Strike』では米合衆国大統領から核ミサイルの発射命令をNATOフォネティック・コードで下達した米国戦略ミサイル空軍の兵士たちが冷静に手際良くコードの答え合わせをして発射準備を行う場面が描かれています。
アメリカ空軍女性士官が今日も米軍基地から謎のコールサインで行うスカイキング・メッセージ。それがSSBモードの場合は安くて高性能の上側波帯 (USB)対応短波ラジオと少しの忍耐力があれば、「何か地球が終わるような重大な事態が起きているのではないか」という精神不安を呼び起こす通信を聞くことができます。

出典 wikipedia https://www.numbers-stations.com/usa/hfgcs/
まとめ
アマチュア無線家や短波受信愛好家が、EAMや「Skyking」を受信したとしても、その内容は外部から正確に把握することはできません。現実的に可能なのは、受信した日時や周波数、信号の特徴などを記録し、同好の間で情報を共有・整理することに限られます。
こうした通信が訓練によるものか、あるいは別の目的によるものかについても、公開情報だけで確定的に判断することは困難です。そのため、受信者の側としては、事実として観測できる範囲を冷静に積み重ねていくしかありません。
一方で、冷戦期から現在に至るまで、核抑止をめぐる緊張が繰り返し語られてきた歴史を踏まえると、これらの通信が持つ意味の重さを完全に切り離して考えることもまた難しい側面があります。短波通信の向こう側にある運用や意思決定の詳細は見えませんが、その存在自体が、現実の安全保障環境と密接に結びついていることは確かです。
静かな短波帯に流れる無機質な音声は、ときに受信者の想像をかき立てます。しかし重要なのは、その印象のまま、不安に引きずられることなく、観測可能な事実とそうでない部分を切り分けて捉えることです。
それでもなお、「なぜこの通信が行われているのか」と考えてしまうのは、無線に関わる者として自然な関心ともいえるでしょう。聞き逃さず、しかし過度に意味を読み込みすぎない。この距離感こそが、短波受信という営みの本質なのかもしれません。

余談ですが、1996年公開のインデペンデンス・デイでは、興味深い通信描写が登場します。
作中では、衛星通信などの近代的な通信手段が使用不能となる中、米軍統合司令部が各国軍に対して反撃を呼びかける手段として、短波(HF)帯によるモールス通信が用いられます。日本の自衛隊を含む各国と連絡が取れる場面に対し、当時の米国大統領が驚きを示すと、海兵隊の将軍が「こんな古い方法でね」と応じるやり取りが印象的に描かれています。
また同作では、アメリカのアマチュア無線家を介した日本への情報伝達がニュースとして扱われる場面もあり、短波通信が持つ「国家を越えて届く」という特性が象徴的に表現されています。
こうした描写はフィクションではありますが、短波通信の本質をよく捉えています。実際、HF-GCSのようなシステムが現在も運用されている背景には、衛星通信に依存しきらない通信手段を確保するという現実的な必要性があります。
短波通信は、電離層反射を利用することで地球規模の通信を可能にし、衛星や地上インフラが制約を受ける状況でも運用を継続できる特性を持ちます。そのため、現代の軍事通信においても、主通信手段を補完する重要な役割を担っていると考えられます。

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